世にも不思議な転生者   作:末吉

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新章開始、です


思いの試練
83:招待という名の


*……視点

 

 大智が目を覚まし、目の前で忽然と消えて二ヶ月が経過した。

 季節はもう進級。にも拘らず、大智は二学期の終わり以降からずっと登校していなかった。

 代わりといってはアレだが、八神はやてが学校に復帰。すぐに溶け込み、なのはたちと同じく男子を賑わせる人気者となった。

 

 無論、天上以下大智とそれなりに仲がいい人たちは疑問に思い雄樹やアリサ達に訊ねるが、本人たちも分かっていないため進展はなかった。

 

 

 そんな、春休みの事。

 

 管理局の手伝いを未だに続けている(家族公認)なのはは、新聞受けに封筒が入っていたのを見つけた。

 

「誰からだろう?」

 

 首をひねり差出人を探すが何一つ書かれておらず、宛先もなかった。

 今はお昼。両親は喫茶店へ行っており、美由希と恭也はその手伝いをしに行っている。

 昨日も管理局の手伝いついでに大智を探していたが見つからず、落胆しながら泥のように眠っていたのだから、それも当然だろうが。

 

 それはともかく。春休みという立場上どんなに長く寝ても起こされないなのはは、こんな何も書かれていない封筒が入っていることが不思議だった。

 とりあえず中を確認しようかなと思ったが、それは家の中の方がいいかもと思い、家の中へ戻った。

 

『おはようございます、高町さん。今日も遅い起床ですね』

「おはようナイトメア……って、起してくれないからだよ」

『マスターは普通に五時起床ですね。ほぼ毎日。それからマラソンや筋トレ、精神統一をこなして七時ぐらいに朝食を食べます』

「…それって長嶋君の生活リズムが正確過ぎるんじゃないの?」

『目覚まし無しで普通に起きますからね。熟睡してるかどうか怪しいですけど』

「本当に、すごいなぁ……」

『で、その封筒は?』

 

 大智のデバイスであるナイトメアに指摘され、手に持っていた封筒を思い出すなのは。

 

 なぜデバイスがあるのかというと、病室で置き去りにされていたからだ。携帯電話と共に。

 誰が持ってるかという話になった時自然となのはに向いたのは、きっと家が近いからという理由だろう。

 という訳でナイトメアはなのはの下にあるのだ。

 

 なのはは、ナイトメアに白い封筒を見せて「新聞受けのところに入ってたの」とあった場所を答え、それを聞いたナイトメアは少し考えて最近つけている大智からもらったペンダントと一緒に身に着けているレイジングハート(待機状態)に訊いた。

 

『その封筒に魔力に似た感じしません?』

『微かにします。マスター以外の』

「え?」

 

 話を聞いていたなのはは不思議に思った。封筒から魔力を感じるって、どういう事? と。

 良く分かっていないなのはに、レイジングハートは言う。

 

『中身を確かめてみたらどうですか?』

「う、うん」

 

 言われるがまま封を切る。そして中身を取り出すと、三つ折りになった手紙が入っており、「招待状」と書かれていた。

 

「招待状? ……えっ!?」

 

 一体どんなことが書かれているのか不思議に思ったなのはは手紙を開く。そして、そこに書かれていたことに驚いた。

 

『我々が長嶋大智とその記憶を預かっている。返してほしければ以下のメンバーを集めて自身が通う学校の校庭に来られたし。なお、時間は今日の十五時まで。一秒でも遅れた場合、この話はなしとなり二度と会えないだろう。

 

フェイト・テスタロッサ 八神はやて 斉原雄樹 高町なのは ヴォルケンリッター 』

 

「え、十五時? ってえっと、何時だっけ……あ、午後三時のことか……って、時間ないじゃん!」

 

 読み終わったなのはは、時計を見て現在時刻を確認する。

 12:37。これから手紙に書かれていた人物たちに電話をして学校の校庭へ行くとなると、時間的にはギリギリになるかもしれない。

 そう思ったなのはは、学校へ行きながらでもいいかと思い直し、先に昼食(または遅い朝食)を済ませることにした。

 

 13:00。なのはは家を出てバス停へ向かう。学校近くへ向かうバスが出ているかどうかわからないが、登校時が体で覚えているからか普通にバス停へ行った。

 バス停へ到着し時刻表を確認する。そこで知った事実に、なのはは頭を抱えた。

 

「学校行のバスが走ってない……どうしよう」

 

 スクールバスだったのか、目当てのバスは走っていなかった。

 交通手段の一つ(しかも本命)が消えたために焦っていると、なのはの携帯電話が鳴りだした。

 急いで取り出して電話に出る。

 

「は、はい! 高町です!!」

「あ、なのは? あんた今どこにいるのよ?」

「え、い、今それどころじゃないんだよアリサちゃん! 長嶋君の手掛かりが見つかったの!!」

「いやだから。あたしのところ(・・・・・・・)にも来て(・・・・)面倒だから全員まとめて行こうと思ってこうして電話してるんだけど、どこにいるの?」

「え? …いつも学校へ向かうところのバス停」

「そう。ならそこで待ってなさい」

 

 ブツッと電話してきた方――アリサから切れる。

 ツーツーツーという音が響く中、なのはは呆然としていた。

 

「どうしてアリサちゃんにも来たんだろう?」

 

 

 数分後。

 いつぞやのマイクロバスで登場したアリサ達に話を聞こうとしたなのはだったが、それより先にアリサに「さっさと乗りなさい」と言われ慌てて乗る。

 そのままバスは出発した。

 

 流れのまま席に座ったなのはは、近くにいた斉原に訊ねた。

 

「一体どういう事?」

「僕も良く分からないけど……どうも大智は神様達に拉致られてたようだね」

「らち?」

「誘拐と言った方が分かりやすいかな? 道理で見つからないわけだよ」

「でもどうして神様達ってわかるの?」

「だって差出人も宛名もなしに出せるのなんてあの人たち以外考えられないから」

「……あー」

 

 そう言われて納得するなのは。一方、斉原の隣に座っていたはやては不満げに斉原に声をかける。

 

「うちのこと好きやって言うたのに、普通に他の女子に声かけるんかいな」

「いや、質問されたら答えるでしょ普通」

「それもそうやけど」

「それに、大智に一言言いたいんでしょ?」

「まぁな。勝手に消えて今頃現れるんやから、文句の一つや二つは言いたいわ」

「なら別にいいじゃない」

「……なんか話逸らされた気がするんやけど」

「そう?」

 

 こんなセリフを笑顔で言うのだから、斉原は実に腹黒い。

 本能的に距離を置きたくなったなのはは後ろを向く。

 すると、後部座席にアリシアとヴィータがおり、膝で座って後ろの景色を眺めていた。その前では静かに目を閉じているシグナムに、姉の行動に心配するフェイト。

 

 いつも通りのメンバーだと思ったなのはは、学校に着くまで車窓の景色を眺めることにした。

 

 

「で、なんで私達はこうして集められたのかしらね?」

 

 アリサは鮫島を帰し、誰もいない校庭に足を踏み入れて呟く。

 

「長嶋君を助けたいから来たんでしょ、アリサちゃん。少なくとも、私はそう思ってここにいるよ?」

「臆面もなくよくそんな風に言えるわね……」

 

 そう? と首を傾げてからアリサの後に続くように入るすずか。

 

「でもなんで私のところにはアリサちゃん達の名前がなかったんだろう?」

「私も姉さんの名前が書いてなかった。母さんは何か意図がありそうねって言ってたけど」

「覚えてるかな、私の事」

 

 その後になのは、フェイト、アリシアが入り。

 

「そういえば、どうしてアインスは呼ばれなかったんでしょう?」

「確かに。ヴォルケンリッターと名乗ったのは我々だからそうまとめられても仕方ないが、大本だったあの人が呼ばれなかったのは不思議だ」

「出発間際へんなこと言ってたな、確か。なんだっけ……えーと」

「『私には参加する資格はありません』だったな」

「どういうことやろ?」

「さぁ?」

 

 ヴォルケンリッター、はやて、雄樹が足を踏み入れた途端。

 

 その場にいた全員が(・・・・・・・・・)姿を消した(・・・・・)

 

 

 

「どうやら、全員到着のようじゃな。オーディン」

「14:32。そのようですゼウス」

「…で、俺はいつになったらここから出られるんだ? 正直、なんであの日からずっと(・・・・・・・・)ローテーション組まれて闘わされているのかわからないんだが」

「もう少しの辛抱じゃ。丁度二分されて(・・・・・)到着したようじゃし」

「組手はこれで終わりだ。大智はそこで休んでいろ」

 

 そう言って消えるオーディンとゼウス。それに伴って闘っていたランスロットも消え、大智はその場にへたり込んで息を整えながら「俺ってこんなに弱くなったのか…」と思い、ボロボロになっている石畳の訓練場で大の字に寝転がった。

 

 傷だらけの体の傷が癒えていることを気にせず。

 

 

 

*アリサ・バニングス視点

 

 校庭に居たはずなのに、いつの間にか城みたいな廊下にいた私とアリシアとすずか。

 あれ? 他のみんなはどこに行ったのかしら? もしかしてはぐれた?

 そう考えたけど、すぐさま首を振ってその考えを否定する。

 シグナムさん達がいるのにはぐれる訳がない。ならこの組み合わせには何か意図があるはず…。

 

「アリサちゃん。どうかした?」

「アリシアは気にならないの? 私達三人だけの理由」

「え? 魔法が使えないからでしょ?」

「あ……」

 

 そう言われて気付く。私やすずかは魔法を知って二ヶ月。アリシアは魔導師の素質があまりないから魔法があまり使えないことに。

 となるとますます私達が呼ばれた理由が分からないわね。一体どういう事かしら?

 

「とりあえず考える前にこの先に進んでみよう? 続いてるみたいだし」

 

 長嶋に吸血鬼だとばれた夏休みが終わったある日、私達にそのことを告げたすずかが先を促す。

 その日からすずかは以前より二割増しで明るくなった気がする。

 すずかだけじゃない。なのはやフェイトも。何をやっていたのか詳しく教えてくれなかったけど。

 

 私もその一人かもしれないと思いながら、すずかとアリシアに「行くわよ」と言って歩き出した。

 

 三分後。

 

「長いわね、この廊下」

「そうだね…」

「まだ大丈夫だよ、私は」

 

 そこから更に四分後。

 

「…まだ着かないのかしら?」

「疲れたよ……」

「少しきついかな…」

 

 更に五分後。

 

「いつまで歩かなきゃいけないのよー!」

「もう足が…」

「さすがにつらいね……」

 

 私達は延々と続く廊下に苛立ち、その場で足を止めて叫んだ。

 なんなのよもうこの廊下!! 進めど進めどキリがないじゃない!

 思わず地団太を踏む。するといきなり風景が変わり、廊下と壁が真下に大きい扉があるだけになった。

 

 まるで地獄の蓋のような感じがするその扉は、私達が見た瞬間に開き、そのまま落下した。

 

 一体何なのよ、これは!




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