世にも不思議な転生者 作:末吉
理不尽極まります。話が進んでいくことに、すごく。
*……視点
「……ここは?」
「お城みたいだけど……」
「の前、が正しいけどな」
「それにしても大きいなこれ。上が見えねぇ」
「だが、尋常ではない雰囲気を感じる」
「そうね。気を引き締めないと……」
「………」
「どうした雄樹」
目の前の城を見てなのはたちは驚いているにもかかわらず、雄樹だけが真剣な眼差しでそれを見ていたのでザフィーラは思わず訊ねたが、彼は特に何も言わずバリアジャケットを展開する。
一同その様子に驚くが、雄樹は特に気にせず前方に佇んでいる
「
対し答えは否。
だが、続く言葉に雄樹の心臓は凍りつきそうになった。
「――だが、障害の一つではある。同じ甲冑の者よ。この
「―――なっ! ラ、ランスロットだって!?」
信じがたい名前を聞き思わず声を上げる雄樹。が、甲冑姿――ランスロットはその間すら容赦なく攻撃する。
身動ぎすらしていないように見えるにもかかわらず、彼のバリアジャケットの腹部に穴が開き、そのまま後ろに、声も上げずに倒れ込む。
「雄樹ぃぃぃぃぃぃ!!」
「是非もなし」
抑揚のない声で雄樹をそう評価し、身を翻すランスロット。
自分の攻撃に耐えられないものに
「ど、どうして!?」
「くそっ!」
「なんでや!」
「――――障害は乗り越えるためにあり、それは己の力でこそ切り開かなければならない」
叫ぶ少女達の声に切り込むようにランスロットは語る。
「都合の良い助けはない。それと同じで、同じ戦場に立てなければ助けることはできない」
あくまで淡々と、戦神としての矜持を。
「決闘に助けはない。あるのは勝者か敗者。生者か死者かのみ……そして
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」
全員の驚きを無視し、ランスロットは門の前に陣取って座り込んだ。
彼女達を入れる気など一切ないという、鋼鉄の気迫を発しながら。
「にしてもランスロットの奴、容赦しないんだな」
「ちょっと。あの金髪少女にもう一度稽古をつけてあげたかったのに! なんて無慈悲な一撃を!!」
「きっと大智との
「そう言われてもな…『来るまで』という条件に合意しただろお前ら」
「途中でゼウスにあなたまで参加したけどね」
「おかげで俺やランスロットの戦闘回数が減ったんだぞ! しかもランスロットはその途中。あれは仕方がないだろ!!」
大智に命令してモニターをこの城に作らせ、それで現在どうなっているのか確認しながら話す面々。
上から順にペルセウス・雷神・ミカエル・オーディン・雷神・ペルセウスである。
そして件のランスロットはこの城――ヴァルハラの門の前で陣取っており、彼の
そんな暗澹たる光景を見ていたオーディンは、髭を触りながら呟く。
「
「ゼウス様の方ですか?」
「あぁ。
「とか言ってるうちにあいつ復活したぞ」
「む? ……っと、大智か。いつ戻った」
「ついさっき。斉原が仰向けで倒れ込んでいて、他の奴らが何もできなさそうにしてる顔を浮かべているところ」
「出来なさそう、ではなく、させてないのだが……まぁいいか」
一人で自己完結し、大智が来たことにあまり驚きを感じないオーディン。大智もそんな彼の姿を見て特に考えることはなかった。
オーディンは大智に訊ねる。
「この挑戦、
「99.6%で無理だが、逆に言えば0.4
「
「そこは関係ない。…今回問われているのは『騎士の姿』。乗り越えるべきは一撃……そんなところだろ?」
「正解だ」
立ち上がった雄樹を見ても顔色変えずに話を進める大智に、頷くオーディン。
大智にとって彼がどうなっていようとも関係がなかった。というより、来た彼女達の理由についてすら興味がなかった。
ただ現状を冷静に、正確に述べることだけ――――前世での彼がそうだったように、変えることのない自分を貫き通しているだけ。
特に不便だとも思わないし、そもそも便利や不便で変わるほど人間らしくない。
それはまさに機械のように、目の前に与えられたものを自分なりに解釈、もしくは正確に汲み取って行動する――そんな生物だ。
そんな彼は、今更ながらに見覚えのある少女達をモニター越しに見て質問する。
「なぜあいつらがいる? 関係ないだろ?」
「あると言えばある」
「ていうかよ。お前が0.4はあるという根拠はなんだ?」
オーディンの言葉に被せるように大智に訊ねるペルセウス。そんな質問に若干不満ながらも大智は答えた。
「すべての力を防御に使った場合にランスロットの一撃を防ぐことができる確率」
「大智だったら避けるわよね、あの
「俺には自前の剣で攻撃してくるから分からんが、避けられると思う」
記憶を失ったというのになんだこの戦闘センスの塊は。
その場にいた全員が大智という
……ただ一人――純白の翼を背中に生やした少女を除いては。
「さすがですね、大智様」
「……いつも思うが、俺はお前に何かしたか?」
「お気になさらないでください」
顔を俯かせてそう言われるものだから、大智はますます首をひねる。
そんな姿を見た面々は、ため息を漏らしつつモニターへ視線を移す。と、ランスロットと雄樹が対峙していた。
「一度殺されたのに随分勇気のある奴だな」
「何か言われたんでしょうか」
「行けるとしたらヘル、ハデス、オシリス……」
「ロキに釈迦、それに……今は休んでるけど輪廻もいるわよ」
「輪廻? それは六道輪廻の事だろ?」
大智は覚えのない神様の名前に首を傾げる。
それに雷神が答えようとした時、モニター側に動きがあった。
「おっ」
「ほぅ。最初に攻撃が来るだろう場所を予測して全力で防いだか」
「ですが全力を使い果たしてまた倒れましたよ」
「それは魔力が空になったからでしょ?」
「勝者に対する敬意でも言ってるのだろうか?」
口々にそんな会話をしていると、どこからか声が聞こえた。
『こちらはすでに第三関門あたりじゃの。大智の両親も参加しておるし』
「俺の両親?」
『…そこだけは記憶を戻しておくかの。後々言われるの面倒じゃし』
「は?」
別場所で待機しているゼウスは、呆けた大智の姿を想像して笑いながら右手をパチンと鳴らす。
「ぐっ」
大智の頭に一瞬痛みが生じ、思わず片手で頭を押さえる。その間に、
この世界の父親の名前――長嶋竜一。母親――怜奈。
その言葉が頭に甦り、復唱する。
「俺の親父は竜一で、破天荒な発明好き。母親は怜奈で、多少常識人だが尋常じゃないほど世話好き…って、ロクな両親じゃない気がするんだが」
自分で言ってはたと気づく。が、すぐに気にならなくなった。
そして、自分と闘ってきた神様達と一緒にモニターを見ることにした。
「心配したんやで雄樹!」
「…心配かけて、ゴメン。もう大丈夫だから」
「死んだはずじゃないのか、お前は」
「「「!?」」」
「……えぇ」
シグナムに指摘され頷く雄樹。それに俯く残りの少女達。
重い空気の中、彼は口を開いた。
「…教えてもらいました。大智の記憶がなくなった理由を。そして、自分が願ったものを」
「死ぬ前に気付いておけ。今回のようなことは二度とない」
「はい」
すべてを語らせるつもりがないのか割って入るランスロット。それに流されるようにまた、雄樹もその先を語ろうとしなかった。
そんな中、はやてやなのはは雄樹に迫った。
「どういうこっちゃ!?」「教えてよ!」
だが雄樹は口を開かず首を横に振るのみ。
なおも食い下がろうとする二人だが、フェイトとシグナムが二人を制止させる。
それを見た雄樹はランスロットに向き直り、頭を下げる。
「ありがとうございます」
「礼を言われることはない。お前には忘れてほしくないだけだ……騎士の本懐を。そして、大智と並び立つということを」
「……分かりました」
「その気になれば名を呼べ。引き続き
そう言って背を向けるランスロットに、雄樹は今気になったことを質問した。
「バニングスさん達は大丈夫なんですか?」
「――先へ進むがいい。さすれば答えは見えてくる」
だがランスロットは詳しく答えず消えた。
知ってるけど教えることはできない……そんなところかな? そう雄樹は思いながら見送り、そのまま門まで歩きだす。
「ど、どうするんや? あの甲冑男に先へ進むなと言われてるんやで?」
「そ、そうだよ。私達、もう先へ…」
「
「「え?」」
そう言った雄樹は門へ近づき、押す。
すると、普通に門は開き奥へと続く廊下が見えた。
女性陣はその光景に呆然としている中、雄樹は平然と入った。
まるですべてを知り、急ぐかのように。
*斉原雄樹視点
はぁ。まさか
廊下を一人走りながら心の中でそう愚痴る。
「待ってよ斉原君! そんなに走らなくても!!」
高町さんがそんなことを言うけど、残念ながら教えることができないんだ。せめて行動で示さないと。
僕はランスロットさんとの戦いで本当に一度死んだ。腹部が貫通し、何もすることができずに。
その時だ。僕はなぜか
前世のように幽霊になったわけではなく、本当に死んだ僕は死を自覚するのにそう時間はかからなかったけど、不思議に思った。
死ぬということは完全なる人格の消滅。僕という存在の消滅。
なのになぜ意識というものが在るのだろう。そこを不思議に思っていると、仮面をつけた身長百八十くらいの白衣を着ている人が現れた。
どこかで見たことがある気がしたその人は、僕に対し笑いながら言ってきた。
『不意打ちだと思うかね?』
それに対し僕はどういう事かと訊くと、『さっきの攻撃の事だ』と返ってきた。
僕は少し考えて首を横に振る。
『なぜかね?』
「あの時すでに警戒していました。けど、反応できない速度で攻撃してきたんですから」
『……スサノオが選んだ転生者は冷めたものが多いな……
「え?」
面白い。その単語を発した時のその人の声が少しだけ変わったことに耳を疑う。
だけど、そんなのが気にならなくなるほど衝撃的なセリフが聞こえた。
『長嶋大智の記憶は
「……どういう事だ!?」
『八神アインス。彼女のためにね』
「…嘘だ」
『真実だ。虚構も虚偽もなにもない。ただ知る者がいないだけ』
「ぐっ……」
言い返せないところを突かれ黙っていると、その人は詳細を語ってくれた。
『あの後、彼は私にこう言ったよ。俺にとってあいつらと過ごした時間は大切だが、それ以上にハッピーエンドへ向かわせるならそれを手放しても構わない。とね』
記憶のあるなしで俺は変わることがないとも言っていたね。そう明るい声で付け足してから、僕にこれからの事を教えてくれた。
『君達は今二分されたまま進んでいるが、どちらか片方でも諦めた場合彼は、
「覚悟……」
言われて僕は思い出す。僕自身がこの世界で守ると決めたことを。
僕は、八神はやてを悲しみから守る。その為なら、何をしてでも――たとえ僕自身が傷ついても関係ない。
覚えていたはずだったのにと苦笑しながら、僕は「お願いします」と言い――あとはまぁランスロットにもう一度挑戦し、急所(心臓)を全力で守って防ぐことに成功してこうして進んでいる。
しかし体がだるい。魔力を凄い量持って行かれたからだろうか。おまけにカートリッジ全部使ったし。
今日は戦うの無理だなと思いながら扉の前に着いたので開けると、
「あら? あの金髪少女――確かフェイト、とか言ってた子じゃないの? まぁ見物客が最初に来るのは私的に盛り上がるからいいけどね」
頭に二本の角をはやしており、周囲の空気をバチバチとさせながら佇んでいる彼女がそんなことを呟いた。
僕はすぐにバリアジャケットを展開しようとしたけど仮面の人に『乗り越えるべき相手以外でバリアジャケットを展開できないから』と言われたのを思い出し、やめる。
その代り、僕は彼女の名前を当てた。
「テスタロッサさんの魔法の威力上昇と速度上昇はあなたのお蔭ですか――雷神さん」
「あら。さすが転生者ね。私達の事を知ってるなんて」
「この世界では神話などあまり出ませんからね」
「ま、無駄話はこれくらいにしましょう……ね、フェイト?」
「ら、雷神さん!?」
驚くテスタロッサさんを無視し、雷神さんは自然体で言った。
「さぁバリアジャケットを展開しなさい。そして、
それでは、次の話に会いましょう。
ご愛読ありがとうございます。