世にも不思議な転生者 作:末吉
パチパチパチッと周囲の空気に電気を発生させながら佇んでいる女性――雷神さん。
彼女は自然体のままテスタロッサさんに対し視線を固定する。
一方で、見られているテスタロッサさんは少しばかり気後れしたのか足を一歩後ろへ下げながら「ど、どうしてですか?」と質問した。
対し、雷神さんは肩を竦めて答えた。
「どうして? 彼がランスロットの
一見正論に見える暴論。僕は反論できるけど、割って入ることはできない。
……たとえはやてが悲しもうとも、これは喋れそうにない。
神様が僕達を大智と引き離し、引き渡そうとしながらもこうして障害を設置している目的を。
僕がそのまま傍観していると、雷神さんが「いい?」とテスタロッサさんに念を押していた。
ちなみに僕達は全身に痺れを起こして口を開くことすらままなりません。……テスタロッサさん以外は。
いつの間に、って感じだろうけど、入った途端にやられたから、束になってもかなわないと改めて思い知らされるよ。
「さっきの子は一度死んだ。それだけの実力差が私達とあなた達にあるの。だから大智を連れ戻したいと考えるなら、せめて私達の
この人(?)にテスタロッサさんは教わってたの? なんて思ったが、言う気力がなかったので黙っている。
「といっても、まだ大智のいう『強く』になってないから鍛える気ではあったけどね」
分かった? とウィンクをして確認を取る。
それを見たテスタロッサさんは「分かった」と短く答え、バリアジャケットを展開。
バルディッシュをサイスモードにして構えると、雷神さんが「ルールを確認するわよ」と言ってから、次のように言った。
「ルールその1。私に貴女の攻撃を届かせたら勝ち。その2。私を捉えきれればあなたの勝ち。その3。貴女が死んだら負け。その4。
「はい」
「じゃ、行くわよ。神壁は出さないから安心なさい」
「…ありがとうございます」
神壁ってなんだろう? まぁ神様が使う防御壁みたいなものなんだろうけど。
一瞬そんなことを考えていたら、いつの間にか勝負が始まっていた。
……テスタロッサさんが壁を壊すほどの勢いで激突して。
「
僕らが言葉を失って崩れた壁を見ていると、そんな声がため息と共に聞こえた。もちろん、あいつの腕がやけどするけど。そう付け足して。
今いったい何があったのか理解できないし、見てなかった。いや。見ることができなかった。
僕達の動体視力を超えた動きでテスタロッサさんは動いた。だけどそれ以上の速度で雷神さんが迎撃した――それぐらいかしか分からない。
早すぎてダメなのだ。例えるなら、ニトロマシンに乗っている人が出すサインを間違えずに読み取れないことと同じように。
次元の違う強さ――それこそ僕達人間が勝てるかどうかの話じゃない強さ――を目の当たりにし、僕はランスロットがいかに
彼はただ、思考の探り合いと一回の攻撃を防ぐだけにしてくれた。
それを僕は2度のチャンスでクリアした。
偶々かも知れないけど、あの威力を前に達成感はあった。
だけど現状はどうだ。テスタロッサさんは僕よりも厳しい条件でやっている。きっと、高町さんやはやて達もそうなんだろう。
守るものを決めていたのに、なんでこうなったんだ。僕は明らかに弱いじゃないか。
……こうなったら、意地でも大智を連れ帰って弟子にしてもらおう。絶対に。
とか思っていたら瓦礫が吹き飛ぶ音がしたので、我に返る。
あれ? 僕なんかすごいこと考えてたような気がするけど……なんだっけ。
ってそんなところじゃないね、今は。
地面に伏していたので顔を上げると、テスタロッサさんのバリアジャケットがボロボロになっていた。
「確かにスピードが上がってるけど…駄目ね。これじゃ大智にまだ遊ばれるくらいよ。彼なら魔力を使わずに、身体能力を全開にせずに今のあなたを
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………はい」
「元気ないわね。そりゃぁ片腕折れて、足もやられれば元気なんて出ないでしょうけど。もっと頑張りなさい。そして私に勝ちなさい」
「……はい!」
……完全に青春漫画の1ページを刻んでそうな風景が見えたけど、やってることはデットオアアライブ。
二人の姿が時折見えなくなって、気付いたら爆発音とか聞こえてるからどうなってるかさっぱりわからないこの戦いだけど、正直言ってテスタロッサさんに頑張ってもらいたい。
ま、声が出せないんだよね。痺れてて。
「ハァァァァア!!」
「まだ遅い! 限界じゃないはずよ!!」
……うん。とんでもないスパルタ。まるで昔やってた少女マンガみたい。
僕達いつまでこうしてればいいのかなぁと思っていると、不意に二人の動きが完全に止まった。
一体どういうことだろうかと思っていると、テスタロッサさんが驚いていた。
「長嶋…君?」
「「「「「「!?」」」」」」
「何か用? 大智」
「散歩してたら偶々だ。深い意味はない」
僕達は驚き、雷神さんは首をかしげた。なぜなら、大智が二人の間に割って入るように来たからだ。
にしても、なんでいきなりここに来たのさ? そう聞きたいし、言いたい文句もいっぱいあるけど、とりあえず元気そうでよかった。
そう思っていると、テスタロッサさんに体を向けて、大智は言った。
「見たところ満身創痍だな。もうこれ以上やらなくてもいいんじゃないか? 命が無駄に散るだけだぞ?」
あ・い・つ・は! いうに事欠いてなんてひどいことを!!
他の人たちもそう思ったらしいけど、痺れているせいで誰も言えない。
そして雷神さんは「何言ってるの! まだまだこれからに決まってるじゃない!!」と胸を張っていた。
だけどそんな言葉を無視して、大智は再度質問した。
「何でそこまでする?」
その質問に対し、テスタロッサさんは俯いていたけど、大智に視線をまっすぐ向けて答えた。
「……私は、私が強くなる理由は、なのはと一緒にこれからも働きたいから。そして、君に助けてもらった恩を返したいからだよ」
覚えていないだろうけど。そう付け足して、ボロボロになりながらも笑う。
それを見た大智は何を考えたのか目をつむり、少しして目を開けて右手の人差し指でテスタロッサさんの額に凸ピンする。
頭を押さえながらテスタロッサさんが困惑する中、大智は言う。
「これからお前に簡単な対処法を教えてやる。それをものにできるかどうかは、自分の力を信じるお前次第だ」
「え?」
「さっきの凸ピンで傷は
「あれ、本当だ!? 一体どうやったの!!?」
「そこは気にするな。…で、だ。お前は今自分の装甲を薄くして機動力を上げていて、さらに魔法で速度を上げているんだろ?」
「う、うん」
「ならその上に使ってない魔力を足に込めてみろ」
「…魔力を、足に込める……?」
「リンカーコアから流れている魔力を足に集中させろと言っているだけだ。それができればこの場は何とか切り抜けられるだろう」
いうだけ言うと、大智は来た道を引き返すのか、背を向けて歩き出した。
君って本当にカッコつけだねと思いながら見送ろうとすると、テスタロッサさんが「待って!」といい、彼は止まる。
「どうして助けてくれたの?」
「……
「覚悟…」
「邪魔したな」
そこから数歩も行かないうちに彼は消えた。
記憶がなくとも相変わらずだと思っていると、テスタロッサさんの顔つきが更に真剣になった。
それを見た雷神さんは、いい笑顔になる。
まるで、ようやく同じ土俵に立った相手を見るように。
「アドバイス貰って勝てると思う?」
「…やってみないと分かりません」
「でしょうね。だから、最初の一回は練習。ほら、飛び込んできていいわよ」
そう言って両手を広げる。
おそらく、テスタロッサさんに文字通りの練習をさせるつもりなのだろう。大智が教えた、この場限りの対処法を。
対しこちらはバルディッシュを構え、一歩前に出す。
辺りが静寂に包まれるけど、テスタロッサさんの周りには風がまとわり出す。
「魔力を足に集中…魔力を足に集中……魔力を…」
「そろそろいいんじゃないかしら?」
「…行きます」
そう言って彼女が足を踏み出した瞬間。
彼女はすでに雷神さんを通り過ぎ、その後ろの壁へ激突……せずに、大智が正面から抱き留めていた。
「あ、あの、長嶋、君……」
こうしてみると抱き合っているようにしか見えないね。実際そうだけどさ。なんかテスタロッサさんも顔赤いし。
一方で大智は特に表情を変えずにテスタロッサさんを放し、「魔力を込め過ぎだ。だんだん増やしていけばいいものの」と言ってから、消える。
かと思ったら、雷神さんと脚を交差させていた。
「俺は勝手に体に合わせてくれるから問題ないが、お前はそんなものがないはずだ。だから最初から精一杯溜める必要はない」
その言葉の間に何度か殴り合ったらしく、言い終わった時には口の中のあったらしい血を吐き捨てていた。
「んじゃ、
「…え?」
最後に気になる言葉を残して消えた今度こそ消えた大智。
……ていうか今、「待ってるぞ」って言わなかった?
それをテスタロッサさんも気付いたのか、「ふふっ」と笑った。
「どうやら、記憶は戻ったみたいね」
「そのようです」
「ま、それでもあなた達と一緒に帰せるかどうかは別だけど」
「帰りますよ。大智が教えてくれた方法と一緒に」
「……そう」
急に雷神さんがしおらしくなったと思ったら、バチバチバチ!! っと火花が散る音が激しくなった。
同時に地面を抉る雷が鳴る。
「…意外と大智がいる生活ってのは楽しいのよ。だから弟子である貴女に渡す気はないわ」
テスタロッサさんはその場で先程の様に準備をする。
「私達を助けてくれた。だから今度は私達が迎えに行く。『待ってる』と言っていたから」
互いに睨み合ったまま。だけどその眼には闘志が。
……どうでもよくないから言うけど、僕達は果たして無事に進めるのだろうか。
「勝負は一撃。どちらの速度が相手を上回るか。それだけ」
「はい」
「それじゃ」「行きます」
その言葉を皮切りに、二人の姿は交差した。
ご愛読ありがとうございます。次は、アリサ側です。正直言って、小学生がやる試練じゃない部分が……あります。