世にも不思議な転生者 作:末吉
*……視点
落下した時に開いた扉を通り抜けた三人。
気付いたら地面に立っており、服装が変わっていた。
アリシアは黒のゴスロリ、アリサは赤のドレススーツ、すずかは桔梗色のワンピースに桜色のジャケット。
すべてのサイズがぴったりで、特に違和感がない。
最初に気付いたのは、アリサだった。
「え、何なのよこれ!? 私着替えた覚えないわよ!!」
「…え? あ、本当だ!!」
「なんか、すごい大人っぽいよアリサちゃん」
「……あんたもそう見えるわよ」
「そう?」
アリサに言われ、すずかはその場で一回転する。
少し宙を舞う桔梗色のワンピースの裾。そこはかとなく上品さを感じる。
「ていうかよくヒールで回れるわね。ほとんど履かないんだけど私」
「それより私達落ちてきたんだよね? どこへ進めばいいんだろう?」
感心するアリサをよそに、アリシアは至極まっとうなことを言う。
魔法に少なからず関わっていた彼女にとって、分からない現象は考えるだけ無駄と割り切っていた。
それは二人にとっても同じらしい。言われたアリサとすずかは周囲を見渡し、同時に同じ方向へ指を指した。
「「あっちだね(よ)」」
「え? 本当?」
「いやそこに看板あるし」
「あ、本当だ」
アリサに看板を指され、納得する。
その後三人はその方向へ歩き出したのだが……
「…なんかいるわね」
「うさぎさんだよね?」
「でも寝てるね」
その途中で寝ているウサギを発見。
道の端にいるので直接的な被害はあまりないだろうと当たりをつけた三人は、足音を立てずにこっそり行こうとした。
しかしアリサが通り過ぎようとした時にそのウサギが目覚めた。
動きが止まる三人。が、無情にもウサギは欠伸をして立ち上がり、三人へ視線を向ける。
そしてウサギは
「やぁやぁ君達。
「「「えぇ!?」」」
片手をあげて流暢にしゃべるウサギを見て驚く三人。
だがこちらは意にも介さずに先へ進める。
「招待された君達にはちょっとばかり試練を受けてもらうから。もう一組も同じように特訓を受けてるけど、まぁあっちより危険はないから大丈夫」
「あんたいったい何者なの!?」
「あぁ紹介が遅れたようだね。僕は
最後の方を哀愁漂う顔でつぶやくウサギ――因幡白兎。
それを見た三人は続いて言いたかった言葉を飲み込み、何とも言えない表情を作る。
少ししてウサギは表情を元に戻し、再び説明した。
「君達には僕が先導する道を歩いて無事ゴールしてもらうよ。途中色々な試練が襲い掛かったりするけど、伝説通り僕が身代わりになることはできないから、自分達で頑張ってね」
「「「試練?」」」
三人は首を傾げる。
それを見たウサギは頷いてから「こっちだよ」と促し、先へ進んだ。
ここまで来たらなるようになるしかない三人は、ウサギの後を追いかけた。
数分後。特に話すことのない三人と一匹は黙々と歩いていた。しかしウサギは喋り屋なのかぺらぺらと喋り出す。
「君達の事は話に聞いてるけど、結構綺麗な人達だね~」
「「「…………」」」
「この世界ってちょっとした人が作り出したの…知ってる? わざわざ地球のどこかの国の童話をモチーフにしたらしくてね。僕もその演出で呼ばれた登場人物の一部なのさ」
「「「…………」」」
「…見事に無視、ね。酷いやひどいや。ウサギは寂しいと死んじゃうのに」
ここで代表してアリサが口を開いた。
「あのね。ウサギは一匹でも生きていける動物なのよ?」
「それくらい知ってるよ。ちょっとしたジョークじゃないか」
「あっそ」
「随分素っ気ないねー」
「なのは達はなのは達で頑張っているんでしょ? 私達もさっさとやりたいの」
「……大智はそこまで愛されてるのかー」
「なっ!? ち、違うわよ! べ、別にあいつのこと好きだとか思ってないし!!」
「それよりもさ、うさぎさんは大智君のこと知ってるの?」
「うさぎさんじゃなくて因幡さんか白兎さんね。ま、知ってるよ。僕だけじゃなくて、大体の神様や神獣はね」
あの子ほど色々不思議な人は後にも先にもいないよ。そう付け足したウサギは立ち止まって遠い目をする。まるで何かを思い出しているかのように。
それを見てるアリサたちは、ますます大智の事を不思議に思った。
「着いたよ。ここが第一試練の場所だ」
「……ただの広場じゃないの?」
「ところがそうじゃないんだなー……おーいチェシャ猫!」
「やれやれ。このあたしがチェシャ猫ねぇ……随分出世したと思わないかい、因幡」
「「うわっ!!」」
「…猫耳?」
「あたしは猫又のかんな。ちょっと二千年以上生きてた妖怪だよ」
「「「妖怪?」」」
「そ。妖怪。あんた達の世界でもいたりいなかったりする存在さ」
三人と一匹がついた場所は広場。周りが木々で囲まれ、土が現れた場所。
その真ん中にいたのは、猫耳と三本の尻尾がついている大人な女性――猫又のかんな。
彼女は地面を蹴って一回転して猫になり、見事に着地して言った。
「さて。私としては試練なんて面倒なものを授けたくなんだがねぇ。
「じゃ、僕は少し離れるから」
「別にウサギを取って食おうとか考えてないから安心するといい……じゃ、第一の試練を授けようじゃないか」
かんなはそう言ってニヤリと笑うと、もう一度一回転する。
すると広場だった空間がいきなり家へと変わり、アリサ達は椅子に座った状態になっていた。
「え? 何よこれ」
「すごい。これも魔法なの、アリシアちゃん?」
「魔法じゃない。妖術さ」
テーブルの中心にかんなは降り立ち、そう訂正する。
間近で見たすずかはそっと手を伸ばしたが、三本のうちの一本に叩かれおとなしく引っ込める。
かんなはため息をついてから、試練の内容を口にした。
「さて。お主達には今から遊びをしてもらおう」
「遊び? それが試練なのかんなさん?」
アリシアは疑問に思い質問する。それに対し頷いたかんなは、三人の顔を見渡しながら説明した。
「そうじゃ。主らにはこの問題を解いてもらう。外れたからといって罰則はないから心配するでない。ただし、一人一回しか回答は認められぬ」
言い終えてかんなはテーブルから降りる。それと同時にテーブルの真ん中に箱が三つ現れ、三人の目の前にも紙が現れた。
三人はそれを手に取り読み上げる。
「えっと…『これら三つの箱のうち一つに灰色の玉がある。以下の手掛かりを参考にし、探し当てろ』」
「『手がかり:上記の問題文と答は矛盾していない』『この手掛かりには嘘だらけ』『手掛かりには一つとして嘘はない』」
「他には……『三つのうち二つの玉は輝く色をしている』『その二つは隣同士になることはない』『玉の色は一定時間で変わる』……って、分かんないよこんな問題!」
アリシアは紙を放り投げてお手上げという。残る二人も無言のまま紙を見つめる。
そんな三人を横目にかんなはいつの間にか姿を消し、「答えが分かったら叫びな。当たってたら元に戻れるから」と言い残していた。
「ふぅ。とんでもなく意地悪な問題だよ、まったく。あの人の考えてることが分かんないねぇ」
「小学生にやらす問題じゃないよねー本当。聞いてた限りじゃ面倒過ぎる気がするし」
「本人は完全に帽子屋になりきってるから性質が悪いんだよ。
「ま、大智ならすぐ解けそうな問題だろうね」
「どうだろうねぇ」
立派な家から出てきたかんなは、そんな会話を因幡と交わす。因幡としても暇なのか快く会話をし、一区切りついたところで互いに広場だった場所に視線を向ける。
「どう見るウサギ?」
「最終的には解けるでしょ。ただ納得できるかどうかわからないうえ、相当捻くれてるからねぇ」
「確かに。まるで昔の大智みたいじゃないかい?
「
「もしかしてこの試練って……
「話してくれないから何とも言えないんだよねー」
そんな会話を交わした後、二匹は空を見上げた。
「……こっちがこれだったらここがこう。でもそれだとここが…」
「これどうやって解くの? ていうか、箱があるんだから開けてみればわかるんじゃない?」
「そういうのは大抵開かない様になってるのよ」
「…あ、本当だ。開かない」
一方で家の中。アリシアは考えることをすでに放棄しているため箱を開けようと試みるが、やはり開かない。
アリサとすずかは似たような問題をやったことがあるのか、各々考えていた。
「…ねぇすずか。この問題どう思う?」
「そうだね……すごい難しいよ。どれが嘘でどれが本当か仮定しても解けるかどうかわからないもん」
「アリシアは何か……って、大丈夫?」
「こんなの分からないよー。いったいどうやって解くのー?」
アリシアはそう言って机に突っ伏す。
それを見た二人は苦笑しながらこの問題を説明した。
「この問題は矛盾を潰していくものなのよ」
「矛盾って何?」
「絶対に貫けない盾となんでも貫ける矛をぶつけるとどうなる?」
「えーっと、絶対に貫けないとなんでも貫けるんでしょ? ……って、あれ? おかしいよ?」
「そのおかしさが矛盾なの」
「へぇー…それがこれとどう関係するの?」
「つまりね。この手がかりで矛盾があるものを潰して、答えを出すものなのよ」
「そうなんだー……でもどれが矛盾してるのかわからないんだけど」
「そうなのよねー」
アリシアのもっともな言葉に、アリサは肯定して椅子に座ったまま背筋を伸ばす。
おそらく十分ほどしか経っていないが、彼女達の体感からしたら一時間は経っているような気がした。
考えがまとまらない、というよりは、正解が本当にあるのかどうか疑ってしまう。それほどまでに悩ましい問題だった。
「…分かんないわね」
「手がかりのほとんどが嘘について書かれてるから推測しづらいしねー」
「余計混乱するわね……」
「…………」
う~~んと思わず腕を組んで考え込んでしまう二人。アリシアもまた、頭を悩ませていた。
「……でもなんで答と問題文が矛盾しないって書いてあるんだろう?」
わからないながらも思った疑問。それをアリシアが口にした時、二人ははっと気づき、紙を覗き込む。
「…確かにそうね」
「なんでだろう?」
「当たり前のことを明文化するってことは……これが嘘だってことじゃない?」
「そうなると嘘だらけってことが正しいってことになるね…」
「ひょっとして全部の箱に灰色の玉が入っていたりして」
そうアリシアが冗談交じりに言った瞬間。
「「「え?」」」
三人は思いっきり呆けた顔をした。
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