世にも不思議な転生者   作:末吉

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一ヶ月ぶりです。忘れていました。


87:アリサ達の試練2

 元の広場に戻った三人。だが、表情は驚いたまま。

 それに気付いたかんなが「おや解けたみたいだねぇ」と猫の姿のまま言ったことで、三人とも我に返った。

 

「…まさか全部の箱に入ってるとはね」

「納得できないかい、金髪のお嬢ちゃん」

「そうね」

「だがそれが正解だ。人生の答えが一つとは限らないのと同じようにね」

「……分からないわよ、そんな事」

「まぁ長く生きてるからこんな問題にも寛容なのさ」

 

 そう言うとかんなは、アリサの頭の上に乗る。

 驚くアリサが抗議しようと思ったら、「これぐらいで騒ぐんじゃないよ」とすまし顔でかんなが先に言ってきたので、ため息をついて怒気を逃すことにした。

 なんですずかじゃなくて私なのよと思いながら、ウサギに質問した。

 

「これで第一の試練は終わりなんでしょ?」

「そうだよー。まだまだあるから気張っていこう。あっちの方もまだ一人目らしいから」

「…なんでそんなこと分かるのよ?」

「あはは。そこはほら、君達と一線を画してるからってことで納得してくれないかな?」

「できないわよ」

「だよねー……じゃ、第二の試練を乗り越えたら教えるよ」

 

 そう言うと同時にウサギは二足歩行で器用に駆けだしたので、アリサ達は見失わないように追いかけることにした。

 

「…ねぇアリサちゃん」

「何? すずか」

 

 ウサギはある程度走ったが段々とスピードが落ちてきたらしく、ついには徒歩に戻るほどに。

 その間にすずかは、気付いたことをアリサに言った。

 

「なんか知ってるなーと思ったらさ、ここ、『不思議な国のアリス』の世界じゃない?」

「え、なにそれ?」

 

 そこに初耳だという顔で参加するアリシア。アリサは思い出そうとしたが、覚えていたのが曖昧だったため、正直に「ゴメン忘れた」と答えた。

 

 それに対しすずかは、特に嫌な顔をせずに説明した。

 

「主人公のアリスがうさぎさんを追いかけて冒険をするお話だよ。そこにチェシャ猫も出てきたし」

「ふーん……ってことは、私達がそのアリスの役なのね」

「大きくなったり小さくなったりしないけどね」

「望むならかけてあげようかい? ただし元に戻らないけど」

「それは御免被るわ」

「いやー若いっていいねぇ。僕はほら、かれこれ千年以上は生きてるからさ。体力がね……」

「何言ってるんだい若造が」

「……日本神話の時代より長生きしてる化け猫ってのもすごいと思うけどね」

「そりゃあたしが、動物学的に進化する過程の中に生きて死んだ猫だからに決まってるじゃないか」

「…もう深くは突っ込まないよ」

 

 猫の姿で笑うかんなの言葉にため息をついて項垂れるウサギ。だが先に進むことを忘れない。

 そんな哀れな姿を見て和やかな雰囲気が消し飛んだ三人は、どうすることも出来ずにウサギについて行くことに。

 

 そして、その少し先に人影が見えた。

 

「誰かしら」

「木に寄りかかってるから…ひょっとして私達を待ってる人かな?」

「きっとそうだよ」

 

 三人はそのままそこへ近づいていく。それに比例して、段々人影の姿が明確になってきた。

 その人は白衣に身を包み、茶色のフェドーラを頭から被っているせいで正確な性別も顔も分からないが、身長は百八十ぐらいだというのが分かったため、すずかはすぐにこの人がどんな役だか見抜いた。

 その確認のため、木に寄りかかっている人に声をかけた。

 

「あのー」

「……ん?」

「あなた、帽子屋さん(・・・・・)ですか?」

 

 そう問われた途端。白衣を着たその人は顔を勢いよくあげ、帽子の先を上へあげる。

 あらわになった顔を見て、すずかとアリサは見覚えがあるため(・・・・・・・・)に思わず声を上げた。

 

「え、竜一、さん!?」

「ど、どうしてここに!?」

「竜一? おいおい何言ってるんだい、この御嬢さん方は。俺はそこの紫髪の嬢ちゃんが言ってた通り帽子屋だ。それ以上でもそれ以下でもない。…にしてもチェシャ猫がいるってことは、次は俺の番だな。時間と同じようだ」

 

 そう言って両手を広げ、背中を三人へ向ける帽子屋。そこで動きを止め、ふと何を思ったのか「ではお茶会でもしようか」と言ったと同時。

 一瞬にしてその場が変わり、彼女達と帽子屋と名乗った男は白い椅子に座り、白いテーブルを囲むように配置されていた。

 次第にテーブルの上に紅茶受けとなるショートケーキ、フォークに角砂糖にカップに紅茶がそれぞれの目の前に置かれていく。

 めまぐるしく置かれていく品々に驚きすぎて声も出ない三人に、帽子屋は椅子から立ち上がって再び両手を広げ、三人へ向けて言った。

 

「改めてようこそお嬢様方! そしてお茶会に参加してくれてありがとう!! いやー話せる人がいないというのはどうにも神経に来てね。こうして君達に出会うまでは暇で暇で考えてしまったものさ」

 

 そこでいったん区切り、呆気にとられている三人を見て頭を掻く。

 

「いや悪いね。どうにも口というものは止められないのだよ。ほら漢字で書くと開いたままだろ? そのせいかどうか知らないけれど、喋るのが好きでねぇ。おっと! 別にしゃべらないと生きていけないという訳ではないからそこは間違えないでくれ。俺は考えたことを疑問にして口に出し、そのまま喋り出すというだけなんだ。だから別に考えなければしゃべることは止まるんだが、いやはや。一人という時間は好きにやれるものだから、ついつい考え込んでしまってね。待っている間えらく考え事をしていたものだから、君達に出会った途端に喋りたくてうずうずしてたんだよ!!」

 

 やたら高いテンションでマシンガントークの如く喋っていく帽子屋。そんな彼を見た三人は、今だ喋り続ける彼を無視してひそひそと話し始めた。

 

「ねぇ、あれ竜一さんよね?」

「だよね……本人は否定してるようだけど」

「ねぇ竜一さんって誰?」

「長嶋の父親よ。なんか、どこか遠い場所で仕事してるって聞いてたけど」

「普通の人じゃないの?」

「どうなんだろう? 怜奈さんも竜一さんも年をとってるのに姿変わってないらしいし、長嶋君の両親だから、普通の人じゃないとは思うけど」

 

 すずかがそう言って帽子屋を見て、それにつられるように二人も視線を向ける。すると彼はいつの間にか座って紅茶を飲んでいた。

 

「う~んこの香りと味が最高だね。さすがは最高級だ。ウサギとチェシャ猫も飲むかい?」

「いやー、その前に僕はどうしてこちら側(・・・・)にいるのかな帽子屋」

「その通りだよ。何の権利があってあの三人から離したんだい」

 

 ――――テーブルの上に、彼を挟むような場所で檻に収容されたかんなと因幡がいる中で。

 二匹の抗議に、彼は紅茶を一口飲んでから答えた。

 

「そもそも君達は俺のそばに居てはいけないという命令的な何かを与えられているのかい? それにだ。これは彼女達の試練であって君達が混ざるものではない。そんなことも分からないのか? あと、嫌うのは勝手だが今この場では不要な感情を持ち出すのはやめてほしいね。せっかく楽しいお茶会をセッティングしたというのに、まったく台無しじゃないか。更に言う事があるのなら、俺が質問したのになぜその内容を答えないのってこと。だってそうだろ? 紅茶を飲む飲まないの話を勝手に変えてくれたのだから。今私は怒ってるああ怒ってる。こんなんじゃ試練をする気分(・・・・・・・)でもないから(・・・・・・)さっさと(・・・・)このお茶会を(・・・・・・)終わらせようか(・・・・・・・)。いや悲しいね。お嬢様方のお気に召すようにお茶菓子まで出したというのに手を付けてもらえないというのは」

 

 そう言って顔を伏せ、今度はちびちびと紅茶を飲みだす。時折ショートケーキをフォークでうまく切り取りながら。

 咄嗟に言葉を掛けようと思ったアリサ達だったが、ふと彼の長々しいセリフの中に出てきた自分達にとって大事な単語を聞き取り思わず顔を見合わせる。

 

「今、『試練』って言ったよね?」

「うん。試練をする気分じゃない、って言ってたよ」

「となると、このお茶会を起点に試練を始めるのかしらね」

「どうするのアリサちゃん?」

「どうするも何も、やらなきゃダメでしょ。そうしないとあいつを連れ戻せないんだから」

 

 そこに、帽子屋が混ざった。

 

「そうそう。僕は別に構わないよ、君達が試練を受けられなくても。困られても知らないし」

「…随分口調が変わるわね」

「あっはっは。口調なんて変わってないさ。それよりほら、終わっちゃうよ(・・・・・・・)?」

 

 そう言って彼はコップの中身を三人に見せるように持つ。

 中身はほとんど空。後二口もしたら完全に飲み干してしまうだろう。

 わざわざ見せる必要があるのかと思った一同だったが、そこにある意図に気付いたアリサは二人に「私達も紅茶を一口でも飲まないと!」と言って上品さの欠片もなくコップを手に取り、その勢いで紅茶を飲む。

 慌てた二人もそれに倣う様に紅茶を飲むと、彼は拍手した。

 

「いやー気付くなんてさすがだね。チェシャ猫の試練を越えてきただけの事はある」

わざと(・・・)カップをこちらに見せなければ気付かなかったわよ」

 

 素直に称賛した帽子屋だったが、アリサは憮然とした態度で答える。

 アリサは自分で気付いたのではなく、帽子屋に気付かされた(・・・・・・・・・・)ということに腹が立っての態度だったが、それでも気付かない人がいることに、彼女は気付かない。

 

 フンと鼻を鳴らし紅茶を――今度は上品な手の動きで――飲み、アリサは切り出した。

 

「で、試練ってなんなの?」

「先程まで頭を使ったのだから少しばかり休憩しても構わないさ。糖分をとるという意味でお茶菓子や角砂糖を出したものだし、万全…とまではいかないがそれに近い状態で受けてもらいたいと思って」

「私は一刻も早く終わらせたいのだけど」

「何のために二分されてると思っているんだ? 片方が終わっても、もう片方が終わらなければ帰れるわけもないし、彼を連れて帰ることも出来ない」

 

 やれやれと両肩の高さで手の平を水平に上げ、首を横に振る帽子屋。

 正論を言われたアリサは言葉に詰まった後、視線を落としてケーキを食べ始めた。

 

「…どう?」

「食べやすいけど、甘いわね」

「それは良かった」

「お代わり!」

「あっはっは。元気のいい御嬢さんだ。だけど、試練が終わったら、だ」

「えー」

「アリシアちゃん。早く試練が終わればきっと食べれるよ?」

「早くやろう帽子屋さん!!」

「はっはっはっ。ずいぶん元気のいい子だ。そんな君のために、さっそく試練を行おうか」

 

 帽子屋はそう言って立ち上がり、ポケットに手を入れる。

 そのままテーブルを回るように歩き、一周して立ち止まってからニカッと笑いこう言った。

 

「さて問題(・・)長嶋大智は(・・・・・)料理を(・・・)作れるか否か(・・・・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

 長嶋大智は料理を作れるか否か。

 

 そう問われた三人のうちアリサとすずかは「作れる」と即答し、アリシアも続いて「作れる」と答えた。

 

「正解」

 

 そう言って帽子屋はポケットから紙とペンを取り出し、『1:○』と書く。

 書き終ってから、彼は試練について(・・・・・・)説明し始めた。

 

「さて、これから三人には二択の問題を答えてもらう。俺のネタが切れるまでに三人のうち一人でもいいから解答権を持っていたら君達の勝ち。三人ともなくなったら俺の勝ち。ちなみに一度でも間違ったら解答権はないし、問題数は僕の気分によって幅があるから気張って答えてね……では、第二問」

 

 説明を終えて間髪入れずに出題する帽子屋。それに思わず身構える三人を見てにっこりと笑いながら、彼は問題を出した。

 

「長嶋大智に誕生日はあるか否か」

「「「…………」」」

「ありゃ、難しい?」

 

 黙る三人を見た彼は、思わず首を傾げる。

 すぐにわかるはずの答え(・・・・・・・・・・・)なんだがなぁと思っていると、「…あなたは知ってるの?」とアリサが質問してきたので、「勿論だ(・・・)」と頷く。

 

「そう……」

「そうか難しいか…ちなみに黙ってたらさっさと進めてしまって君達が間違いとみなしそこで終わってしまうけど……いい?」

 

 ある意味脅しと言える発言。それを聞いた三人は慌てたのか考えもせずに答えを出してしまった。

 

「「「ある(・・)」」」

 

 そう答えた瞬間、彼はニヤリと笑って宣言した(・・・・)

 

残念(・・)♪ 正解は、否。あいつに誕生日なんてないんだよ」

「「「!!?」」」

 

 驚く三人に、彼は高笑いをする。

 

「はっはっはっ! 残念だったね(・・・・・・)お嬢様方!! これで君達の試練は――」

 

 非情にも終幕の宣言をする前準備のように――――

 

「――――ようやく(・・・・)始まった(・・・・)

 

 ――――希望をもたらす宣言を、その笑い顔でした。

 




ご愛読ありがとうございます。試練編は残り五話ぐらいで終わります。後はのんびり日常を書いて……ストライカーズ編ですかね
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