世にも不思議な転生者 作:末吉
今の現状。
ナイトメアに俺の過去を話していたら遅刻が確定し、行かないかなぁと思ったら理事長と名乗る奴から電話で脅されて(?)仕方なく学校へ向かい理事長室にいる。
「で?学校に来る
「すまないね。私は人と面を向い合せるのが苦手なんだ。これで勘弁してくれ」
そういって椅子に座っている理事長。仮面をつけていて変声機でも使っているのか、くぐもった声で男女の性別すらわからない。
俺は内心で警戒しながら訊いてみた。
「分かった。……ところで、どうして今更俺の両親が家にいないことを気にするんだ?三年生になったらいなかったんだぜ?」
「ああ、そのことか。それはただの口実。本音を言うと君と話をしたかったんだ」
「だったら別に今じゃなくてよかったんじゃないのか?おかげで四時間目も欠席だぜ」
「そっちの心配もいらない。私が話をつけてある」
俺は内心感心した。
「随分気前がいいな」
「私としては素直に誘いに乗ってくれた君の方が気前がいいように見えるがね」
そう言って笑う俺達。っていうか、俺たち以外の誰の気配がなくて助かったな。色んな意味で目立つ。
と、ここで理事長が笑うの止めて話をしてきた。
「ところで…あの両親がいない生活ってのはどうだい?」
俺は少し考えて答えた。
「…周りの人たちが優しいおかげで通報されずに暮らしてるよ。その理由は教えてくれないがな」
そういうと、理事長は苦笑しながら言った。
「まぁ教えられないよ。だから私がこうして君を呼んだんだけど」
「?」
もしかして、理事長も知ってるのか?両親がいないのにこうして暮らしてる理由。
「本当は君の家に直接乗り込んで話したかったんだけど…あの二人が『家には入れさせないからな』と頑なに拒んだせいでこうして呼ばざるを得なかったんだ。すまない」
「い、いや」
・・・・・・・家に直接こんな奴が乗り込んできたら、まず間違いなく警察に連絡するな、俺。
そんなことを考えていたら、理事長が「んじゃ、話そうか」といったので、俺は話を聴くことに集中した。
「まず、君がどうして今も一人で生活しているのか教えようか。単に君の両親がどこかへ行ったからってのも理由の一つだけど、あの両親がいろんなところに掛け合ったんだよ。『もし息子が一人で生活するような時になったら連絡するから、あいつを助けてやってくれ』って。まぁあの二人には借りがあったからみんな頷いたけど、みんな不思議だったな。どうしてこんなことを頼むかってね」
「だけど君の話を聴いて納得したよ。君は大抵のことに興味がない。誰かがどうなろうが、世界がどうなろうが、まるで興味を示さない。自分がどうなろうとも、ね」
「・・・・・・・・・・・?」
「分かってない、って顔をしてるね。自覚がないことが一番恐ろしいから君に言っておくよ」
未だに首を傾げている俺に、理事長は息を吐いてから言った。
「君はただの人形だ。姿かたちは人だけど、君は『人』を拒絶するだけしかできない人形だ。おそらく、だから君の両親はどこかへ行ってしまったんだと思う。自分たちより、私達の方が適任だと考えて」
教育者の長としては問題発言をしたなぁ、と何やらぼやいていたが、俺はその言葉など頭に入っていなかった。
人形。人を拒絶する人形。それらの言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。
俺は「人」じゃないのか。どうしたら「人」になれるのか。そもそも「人」とはなんなのか。
『あの世界』の『俺』はどうだった?ちゃんと仲良くできていたか?『あいつら』を助けていたか?
そんな風に考えていたからか、
「……そんなんだから君は死んだんだよ」
理事長がそう呟いたことに全く気付かなかった。
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「失礼しました」
「また来るといい。もちろん、時はわきまえてくれるとありがたいが」
そう言ってクックックと笑う理事長に頭を下げて、俺は部屋を出た。そして教室へ向かいながら先ほどのことを考えていた。
『考えてるところ悪いけど、君は子供なんだから感情豊かに生きないと。孤独を貫くのは寂しいって、気付いてるんじゃないか?』
『え?「人」とは何かって?他の生徒を観察してみたらわかるだろうね』
「……あの世界じゃ、感情らしい感情が最後にしか出なかったようだしな…」
感情、という言葉を知ったのはいつだったのか覚えていないが、少なくともあの世界じゃロクな感情を出せなかったのではないかと思うのだが……、
「あいつら、普通に笑ったりしてたな」
そう呟き、ふっと息を吐く。
あの戦場の中、普通に笑ったり怒ったりできていたアイツら。その中で俺は一人だけ静かにたたずんでいた。
…まぁ、たまにあいつらが俺のことを笑いながら殴ってきたりしたが(俺はされるがまま)。
「……………」
馬鹿らしいとは思えなかった。むしろ、羨ましいと今なら思えた。
感情と人について考えながら歩いていたら、いつの間にかクラスの前に来ていた。
特に良い考えが浮かばなかったため、俺は普通にドアを開けた。
ざわついていた空気が一瞬で静まった。
だが、俺はそんなことを気にせず――こんなのだから人形だと言われるのだと思った――自分の席へ向かった。
その時に高町の雰囲気がおかしいことに気付いたが、何も言えなかった。
「ずいぶん遅かったじゃない」
席に着いたら、委員長が前の人の机をくっつけて弁当を食べていた。
とりあえず席に座り、弁当を取り出して食べ始めながら言った。
「本来ならサボる気でいたんだから遅かろうが関係ない」
ここでふと思った。こいつに訊いてみるのもいいのかもしれない。「人」とはどういうものなのかを。
そんな俺の考えなど知らないといった風に、委員長は質問してくる。
とりあえず話題をそれとなく高町の方へ持っていき聴きづらいものにしたが、同時に俺も話しかけづらくなって大変になった。
そこでさらにバニングス達が登場。どうも委員長に相談事があって来たらしい。
俺は反射的に断る類の言葉を用いてしまったが(バニングスはキレた)、委員長があっちの応援をして結局のところ二人が同席した。
はぁ。視線が鋭い。大体の奴の。俺は内心ため息をついた。
そもそも、同じ学校の生徒なのだから話しかけたりするのは別に問題はないはずだ。なのにどうしてここまで居心地が悪いのだろうか。
頭の片隅でそんなことを考えながら、俺はバニングスの相談事(委員長に対して)を聴いていた。
・・・・・・話を聴いた限りでは、頼ってもらえないことにイラつきを感じているらしい。それで喧嘩になったのだとか。
ふむ。なんていうか……
「……隠し事って、そんなの当たり前だろ。バニングス、お前は馬鹿か?」
「誰が馬鹿よ!?」
思わず言ってしまった一言に、バニングスが机を叩きながら怒鳴った。月村がオロオロしていたが気にせず、委員長は呆れていたようなので無視した。
とりあえずここで引き下がる気が起きなかったので、俺は言った。
「お前だ」
「なんですって!!?」
……ここまで言っといてなんだが、どうやってこいつに話を聴かせようか。そう思った時だった。
突如として委員長が立ち上がり、バニングス同様机を叩いて言った。
「違うよ長嶋君!バニングスさんはツンデレなんだよ!!」
瞬間。クラス内の空気が凍った。
・・・・・・・・・・・・・・・?一体何を言ってるんだ、委員長は?そもそも…
「ツンデレってなんだ?」
俺がそう訊くと、自身の発言がどれだけ失敗したものかを周囲を見て悟り、月村とバニングスが呆気にとられて固まっているのを見て
「……ごめん、忘れて・・・・・・・・・」
力なく座った。なぜか哀愁が漂い、灰色になっていくように錯覚するのだが、果たして大丈夫なのだろうかと心配になる。
が、とりあえず委員長は放置する。まずはバニングスの話を片づけたい。
優先順位を決め、俺は未だに固まっているバニングスに謝った。
「煽って悪かったな」
「……え?」
そんなに俺の謝罪が驚きか。そして周りの奴ら(高町以外)。お前らも息をのんで驚くな。これぐらいはできる。
そう思いながらも、俺は言葉をつづけた。
「それはそれとして。バニングス。友達だから頼ってほしいという思いはあるだろうが、仮にお前が同じ立場だとしたら…高町に言えるか?」
「……それは」
「誰だってそんなものだろ。頼れない理由があって抱え込む。頼れないから悩む。抱え込んで悩むから、周りが心配になる。だが言えない」
「それぐらい分かってるわ。だから悔しいのよ。何もできないのが」
「できるだろ」
「え?」
不思議そうにするバニングスに、俺は言った。
「いつも通りに接する。そうすれば不思議と相手は落ち着く」
そう言って、俺は心の中で「所詮人形の戯言だがな」と自嘲気味に付け加えた。
そんなことをしていたら、バニングスが少し間を置いて言った。
「…ありがとう。本当は委員長に相談したんだけど、助かったわ」
ありがとう。その言葉を聴いて、俺は『何か』が満たされる感じがした。
それがなんなのか分からなかったが、何か心地よかったので俺は自然と言葉を発した。
「どういたしまして」
こうして、昼休みは終了した。
……そういえば。
「斉原」
「ははっ……一体何をやってるんだろうね?あんなこと言うなんて。僕って本当にバカだよ……」
こいつをどうやって元に戻すか考えてなかったな。
・・・どうするか。
読んでくださりありがとうございます。