世にも不思議な転生者 作:末吉
*高町なのは視点
「大丈夫か、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル」
「はい」
「ああ」
「うむ」
「大丈夫です」
はやてちゃんの呼びかけに短く答える四人。どことなく満足げだったり不満げだったりしてるけど、なにはともあれ。
「おめでとうはやてちゃん」
「頑張ったね、はやて」
「うちだけの力やない。八神家の力や!!」
そう言って笑うはやてちゃん。その笑顔を見て安心した私とフェイトちゃんも釣られて笑う。
「おうおう。お前ら。随分呑気だな。
「え、そうなんですか、ペルセウスさん」
そんな私達を見たペルセウスさんがため息交じりにそう言ったので斉原君が訊ねると、「あたぼうよ」と言ってから教えてくれました。
「大智の記憶は戻った。そんでもって、アリサ・バニングス、アリシア・テスタロッサ、月村すずかの三名は、見事試練を乗り越えたとよ」
「「「! やったぁ!!」」」
思わず二人の顔を見てハイタッチをする。それを見たペルセウスさんは頭を掻きながら「大丈夫かよこいつら……」と呟いていましたが、特に気になりませんでした。
長嶋君の記憶が戻ってる。
嬉しくて胸が高鳴る。なんだか気分が高まってくる。
久しぶりに会えるからかな? とても緊張してきた。
いてもたってもいられなくなった私は、誤魔化すように「わたし先に行ってるね!!」と言って先に進める扉を走り抜けました。
長嶋君が消えてから三ヶ月。
いつも通りの生活を表面上過ごしていましたが、内心では彼の記憶がなくなっていたことによるショックと、いなくなってしまったことによりぽっかりと空いた気がする心がありました。
度々ボーっとしてしまうこともあったけど、その度にアリサちゃん達も似たような気持ちだということを知っていたので思い返して何とか踏ん張っていました。
管理局のお仕事の方は逆に熱心に働きました。リンディさん達に心配されるくらいに。
いなくなったということは、少なくとも海鳴市にはいない。ならば他の世界にいるはず。
そんな考えの下、私はフェイトちゃん達と共にいろいろな世界を探し回りましたが……見つかりませんでした。
絶望感と焦りを感じた私は、更に頑張ろうと思いましたが、斉原君に「ゆっくり休まないと、過労死して大智に会えなくなるよ?」と言われ、さすがに反論もできませんでした。
でも、いてもたってもいられませんでした。
十月の長嶋君の指導のお蔭で未だに走るのが辛くない。逸る気持ちを抑えることなく、足がもつれることなく、普通に走れる。
長嶋君には助けられてばかりだと心の中で確認する。本当に、いつも。
だから今度は私が――――
そう思いながら走っていたら、いつの間にか目の前に扉がありました。
息を整えながら私は、ここに私が乗り越える相手がいると直感しました。
何故かはわかりません。正直、自分自身でも戸惑っています。
そんな気持ちのまま、私はみんなの到着を待たずに扉をあけました。
「ようやく来ましたね、高町なのは」
「あなたは……え、その翼は……?」
扉を開けたら部屋の中央に、純白の翼を背中に生やした160ぐらいの女の人がいました。
その翼に目を奪われていると、女の人が「こちらまで来てください」と言ってきたのでおとなしく従います。
言われた通り女の人の近くまで行きましたけど、間近で見るとこの人の神々しさとか結構綺麗なところとかをさまざまと見せつけられてしまい、若干気後れします。…翼の存在感もあります。
その人が自己紹介をしてくれました。
「私はミカエル。聖書の四大天使の一人で、全天使のトップになります」
そう言ってお辞儀をしたので、私も慌ててお辞儀をしてから「た、高町なのはです!」と名乗りました。
お互いに頭を上げると、女の人――ミカエルさんが言いました。
「あなたは長嶋様の事をどう思っていますか?」
「え?」
ど、どうって……
「とってもカッコ良くて頼りになる人だと思いますけど…」
「そうですか。なら……」
私の答えにミカエルさんは空を飛び、見下ろしながらこういってきました。
「
「えっ!? ど、どういう事ですか!!」
驚く私をよそに、ミカエルさんはため息をつきます。
「
その声に含まれている苛立ちを感じましたが、私はそれでも聞きます。
「どうして!?」
その瞬間、風が私の横を駆け抜け、後ろの壁が壊れました。
「三度目です。何も訊かずにお帰りなさい。そうすれば命の保証はしてあげます」
あくまで冷静に、それでいて拒絶するように宣言するミカエルさん。
だけど、それを聞いたら……
「みんなで頑張ってここまで来たのに、諦めて帰りたくない!」
「そうですか……なら」
そう言ったと同時にミカエルさんは私の目の前で羽ばたいていて、その綺麗な顔で笑ったりせずに
「――――
――――私のお腹のあたりをトン、と人差し指でつついたのが分かった瞬間、
「なのは!」「なのはちゃん!!」「高町さん!?」
「……あ、え………?」
どうやらフェイトちゃん達が来たようだけど、私の気は遠のき始めていました。
何がどうなったのかは……分かりませんけど……私、もう………
「なのはぁぁぁ!!」
――――ごめんね、みんな。
「さて、今度は夜刀神風に言うと『正規の役者』が来るとはな。いよいよもって世界というのは思い通りにいかないものだ」
「―――え? ここは…。それに、私…………」
「なにも私ではなくロキあたりが出しゃばればいいだろうに。こういう時に限って介入しないのがあいつらしいとは思うが……昔取った杵柄とは言え、一日に二人も来られるといささかつらいぞこちらも」
「あの…」
「なんだ。君はどうしたい? 彼に会って君は何を言いたい? 彼女が話を聞いてくれないのなら君はどうすればいい?」
「……え、あ、」
「
「…………あれ?」
「! なのは? なのはなんだね!」
「…フェイトちゃん。どうして泣いてるの?」
「それは誰だって泣くやろ! ついたらなのはちゃんが血を流して地面に倒れ伏していたんやから!!」
「え?」
目を空けたらフェイトちゃんの泣いてる顔が近くにあったので首を傾げると、はやてちゃんが顔を寄せて説明してくれました。
……? どうにも私が倒れ込んだ前後の記憶がありません。が、やることだけを思い出した私はフェイトちゃんの腕から起き上がり、浮いているミカエルさんを見上げて叫びました。
「ミカエルさん! 私の話を聞いてください!!」
「断ります」
予想にはあった答え。なので私は「分かりました……」と俯いてレイジングハートにバリアジャケットを展開してもらい、顔を上げてレイジングハートでミカエルさんを指しながら叫びました。
「だったら、全力でぶつかって話を聞いてもらいます!!」
「――――
少し遠くから見ているからミカエルさんの表情は分かりませんでしたが、雰囲気が少し柔らかくなった気は一瞬しました。
けれども一瞬。次の瞬間には、彼女の周りに100を超える光球が現れました。
私が身構えていると、ミカエルさんは表情一つ変えずに言いました。
「来るならどうぞ? ただし、全部防げればの話ですがね」
ミカエルさんの細く白い腕が振り下ろされる。それと同時に一斉に落ちてくる、私に向かってくる光球。
だけど私は恐れずにその中に飛び込みます。
長嶋君が、以前私にやったことを真似るように。
光球はそのまま私を無視して落下――せずに、私を追いかけようとして他の光球とぶつかって爆発していました。
「くっ」
距離としては多分4メートル。その中を私は光球の動きを集中して読み切って躱し続けて進む。
絶対に近づいて一発お見舞いする! 長嶋君に会うために!!
「はぁぁぁ!」
「…流石です。それでこそ
「レイジングハート!」
『ディバインシューター!!』
私の周りに七個ほどの魔力弾が出現し、それらすべてをミカエルさんへ向かわせる。
「アクセル!」
光球を避けつつ自分もミカエルさんに近づきつつ、魔力弾の速度を上げて当てる!
そう思って必死に動かしていましたが、急に光球がすべて消えました。
「え?」
私はいきなり消えたことに戸惑っていましたが、魔力弾は全てミカエルさんのところに届き――そのすべてが翼が巻き起こした風で吹き飛んでしまいました。
「この程度で消えるとは。やはり人間とは弱いですね」
「私達は弱くないもん!」
「
「本当に!?」
「えぇ。どの道今のあなたじゃ私の足元にも及びませんからね」
おそらく事実を述べられているのだろうけど、今の言い方にはカチンときた。
だけど薄々当たっていると思ったので言い返せずにいると、ミカエルさんが試練の内容を教えてくれました。
「――
いきなり翼を広げるミカエルさん。その行動に嫌な予感がした私は、急いで魔力障壁をカートリッジを一つ消費して展開。
それが終わった同時に、彼女は叫んできました。
「想いで勝負する以上、私は絶対誰にも負けません!!」
ウソっ! 広げた翼から落ちた羽が、まるで意志を持ったかのようにひとりでに動いてこっちに向かってきた!?
矢のごとき勢いで、魔力障壁をたった三枚の羽で破る。残りの羽も全部こちらに向かってきてるけど、私はアクセルシューターで全部撃ち落す。
「まだです!」
「ぐふっ!」
その場に留まっていたことにより、ミカエルさんの右ストレートがお腹に入る。
一瞬意識が飛びそうになるけどそれを堪え、私は無意識にミカエルさんの右手首をつかんでいました。
必死に振りほどこうとしていますが、私も必死につかみます。
自分でもどうしてか分からない。けれど、ここがチャンスだという確信があった。そのチャンスを生かすためには、放してはならないということも。
普通なら絶対に私は振りほどかれていたでしょう。でも誰かが私に力を貸してくれている感覚があり、そのおかげで何とか振りほどかれずにいます。
「あぁぁぁあ!!」
絶対に負けたくないという気持ちがひしひしと伝わってくる。
だけどそれは――――
「
『ディバインバスター』
「はなせぇぇ!」
片手で持っているレイジングハートをしっかりと構え、痛みに耐えながら撃とうとした直前。
「
「「え?」」
聞こえるはずのない声が聞こえたのでそちらへ視線を私達が同時に向けると、何故か力が抜けていきました。
「お前の合格だ、高町」
その声を聴いた瞬間に安心した私は、そのまま意識を失いました。
今日中にもう一話あげます。
ご愛読ありがとうございます。