世にも不思議な転生者 作:末吉
93:四年生
四年生になった。
それで変わったことと言えば名前をで呼ぶことぐらいで、特に何が変わったという訳ではないと思いたかった。
思えない理由はもちろんある。それは……
「おはよう
「よく早起きで来たな、
……それは、管理局に入るとか言ってあっちの方の手伝いをしてこっちに戻ってくることはそうそうないと言っていたはずの高町が、朝五時ぐらいに俺の家の前にいるのだから。
今は五月。抜けていたところでテストどころか運動面やらなにやらが落ちていない俺は、普通に先生が作ったテストを全問満点にして進級。
四月にテスタロッサと八神が同じクラスだということを知り(テスタロッサに至っては隣)、窓の外が見づらくなったことを嘆いていると、普通にマモンが天上に憑りついた形で学校に来ていたのに驚いた。なんでも契約を変え、『天上が屈したら魂をもらう』というものにしたらしい。次は絶対に君を越えてやるさと晴れ晴れした顔で言う天上に、俺は笑ってやれるものならやってみろと一蹴しといた。
で、五月。
力也(天上の名前)とゴールデンウィーク中に勝負をして全戦全勝した俺は、学校が始まる日の早朝にいつも通りのトレーニングをするために外に出たところで……高町がトレーニングウェアを着て待っていた。
随分と元気がいいなと思いながら、「ひょっとしてついてくるのか?」と訊ねると、「うん!」とこれまた笑顔で答える。
朝早いのによくそんな笑顔見せられるなと思いつつ、コースを少し変えないとダメかと思い「好きにしろ」と答えて塀を飛び越え道路に出て、走り出す。
「待ってよ!」
後ろから聞こえた声にいつもより遅いペースで走りながら、時間通りに戻って来れるだろうかと不安になった。
走っているコースは日に日に長くなっていたが、今日は昔の半分ぐらいの距離にする。そうでもしないと高町がついてこれるわけがないから。
チラリと後ろを見る。高町は四メートルほど後ろにおり、自分のペースで走っているようだ。
これならもう少し距離とスピードを変えてもいいかもしれない。そう考えた俺は少し速度を上げて、ルートも少し変更するように左へ曲がった。
かれこれ走り始めて一年か。思えば色々あった気がするな。
思考にゆとりがあるので、過去を思い返しながら走る。後ろから凄い息遣いが聞こえるが、そこは無視しておく。
四月に不思議生物(ユーノという名前らしい)が現れ、そこから高町達がジュエルシードなる忘却神具(誰のかはわからない)を集めている中、夜刀神と再会し原作へ介入。そして輪廻の魂と別れた。
五月はキャンプ行って高町の誕生日やったぐらい。六月は梅雨の季節を結局傘なしで過ごしたな。七月は偽神が現れて夏休みになり、八月に月村の誕生日とリンカーコア蒐集の手伝いをし始めたんだったか。そっから十二月までは特に目立ったことをやった記憶はなく、十二月に闇の書事件をハッピーエンドで終わらせたが記憶を失い、三月、つまり春休みに俺は連れ戻されたんだよな。
本当に色々あったとなつかしんでいると、「おはよう、大智」と後ろから声をかけられたので振り返りもせずに返事をする。
「あぁおはようフェイト。ところで、なのはは?」
「えっと、見てないよ」
「そうか……」
仕方がないので足踏みをしてあいつを待つ。ペースを上げたことは間違いだったようだ。
あとどのくらいで来るかな…と予測を立てていると、同じく足踏みしてるらしいフェイトが「珍しいね」と言ってきた。
「何が? 珍しいといえばそっちの方だろ。俺は毎日走ってるんだから」
「いや、走ってるというよりはどっちかというと跳んでるっていう方が正しいと思うんだけど」
「自分が珍しいことをしているのは否定しないんだな」
「……うん。まぁ」
声が小さかった気がするが別に聞こえているので問題なし。理由を考える気なんて一切ない。
魔法使えて管理局の手伝いに行かないのは俺だけ。その時は全員驚いていたというよりは、ある種納得していた。
群れて行動すること自体は別に不満があるわけじゃない。ただ属するには弱いから嫌悪感があるだけだ。
そんなことを言ったら、なぜだかため息をつかれた。
どうでもいいが、グレアム提督とはよく電話する。
「……ハァ、ハァ…ハァ……ま、待ってくれたの?」
「まぁそりゃな。勝手について来いといったが、迷子になって学校に遅刻なんて間抜けなことになってほしくなくてな」
「そ、それはない…もん」
「どうだか…それより、来た道戻るぞ。時間がやばいかもしれない」
「…分かった、よ」
「うん」
今更だがテスタロッサは近所らしい。家に遊び行ったことはないが。
あークロノ? あいつは確か一足先にミッドチルダに戻ったらしい。リンディさん達と一緒に。鬼の居ぬ間に何とやらって感じだろうか。
そんな感じで、俺達三人は来た道を戻ることにした。
ぎりぎり七時。筋トレができないという状況になってしまったがもういいやと思い朝食を作ることにした。
『なんていうか、平和ってこういうのなんでしょうね…私出番あまりありませんけど』
「そう不貞腐れるな。お前がいないと自力で魔力を使えないんだぞ?」
『使わなくても圧倒できるじゃないですか』
「魔力がなまる」
『そんな見えないものがなまるなんて信じられません』
「…なんていうか、お前も捻くれ者になったな」
『マスターのおかげですね』
作った朝食を、そんな会話を繰り広げながら食べる。料理始めて前世合わせて五年ぐらいの俺は、自分の料理に少し飽きてきてるのがわかるが普通に食べる。
部屋の荷物は減ったぐらいでほとんど変わってない。マイクとか、白い箱とか。
代わりに携帯電話のアドレスに『スサノオ』『オーディン』『ミカエル』『雷神』『ペルセウス』『ランスロット』『因幡白兎』『ゼウス』『かんな』が登録されていた。いつの間にか登録されていたことに戦々恐々したが、とくに日常会話しかしていない。
というか神様、携帯電話持ってるんだな…。
なんか変な知識を知り、感慨深くなったのはいい思い出ではないかもしれない。
「ごちそうさま」
『私も学校に行きますよ』
「ふざけろ」
『……ここで騒げってことですか?』
「そうだな。そこで騒いでろ。俺はそのまま学校へ行く」
『だから連れてってください! どんだけ私の事置いてくんですか!?』
「学校中に呼び出しはないから」
『帰宅途中に呼び出されましたよね、二回! 魔力なしでボロボロになったのはどこの誰ですか!?』
「…さて。準備してくるか」
『逃げるなー!』
こんな感じで、俺は学校へ向かう。
学校と言えば。席は窓側の奥――つまり入口から一番奥の席で俺は固定されている。席替えすると言われた時に「長嶋。お前の席そこから動かさないからな」と言われた時の周囲の反応といったらすごかった。
今では隣がフェイトではなく(始業式の時に聞いた)アリサになっており、ぼんやりと窓を眺めているとよく注意してくるものだからウザったい。
更に言うと、俺の印象がどうやら変わりだしていたらしい。切っ掛けがいつだかわからないが、兎にも角にも俺に声をかけてくる連中は多くなった。
元一や木在は元々なので変わってないが、「お前がいなくてテスト大変だったんだ!」と言われた時には苦笑するほかなかった。
天上は取巻きの奴らとは普通の友達として接し、その姿を見た女性ファンがさらに増えた。本当に天才である。
「あ、さっきぶりだね大智君」
「やはり早起きがたたったか……眠そうだぞ」
「ふぇ? そ、そんなことなあ~ぁ」
「「……」」
「い、今のは!」
「さっさと行くぞ。寝るならバスの中でしてくれ。俺は乗らないが」
「ま、まってよー!!」
やれやれ。慣れないことをするとロクな事ないと思うんだがな。
内心で肩を竦めながら、俺はさっさとバス停へ向かった。
…実際バス停まで行く必要性はないのだが、そこはまぁ習慣だ。
バスに乗り込む姿を一瞥せずに俺は駈け出す。乗っているのはアリサ・すずか・フェイト・なのはの四人。
二週間ぐらい前に一度一緒に乗ろうと言われたが、バスより速い上に襲撃されたり突然消えたりすると色々と面倒だと判断したため乗ったことはない。
今日もいい天気だと思いながら、学校まで屋根を跳んで向かった。
「おはよう大智。今日も走ってきたの?」
「ああ」
「その割には汗一つ掻いてないのが不気味やなぁホンマ」
「汗を飛ばしているだけだ」
いつも通り高町達より先に着いた俺は、普通に自分の教室に向かい普通に自分の席に座ったところで雄樹と八神に話しかけられた。
この二人あの件以降付き合い始めたらしい。随分尚早なカップルだと思いながら、俺は『おめでとう』とは言わなかった。ただ一言、「頑張れ」とだけ。
何を頑張れとは言わなかったのに顔を赤くするのだから、こいつらは耳年増と捉えていいのだろうかと若干ばかり不安になってしまう。
というかお前ら授業の準備は、と訊こうとしたところで、「助けてくれ雄樹、大智!」と駆け寄ってきた男が。
「どうした元一。宿題なら自業自得だろうが」
「先回りするなぁ! ……じゃなかった。俺は今追われているんだ!!」
「どうせ木在やろ」
「あぁ昼食の話?」
「それこそ自業自得だ」
「ちげぇよ! それはそれで大変だけど、そうじゃねぇ!!」
「じゃぁ一体」
「霧生、静かにしたらどうだい?」
別方向から聞こえた声に俺達が視線を向けると、女子の声援を片手で制しながら自分の席に座ろうとしていた天上力也だった。隣にはマモンが。
このマモン。なんと俺と天上以外には雄樹とはやて以外には見えないという素敵能力を普通に披露して、バニングス達にはあれ以降一回も実体を見せていないとか。
そんな天上はカバンを机に置いて俺達に近づくと、元一の肩を叩きながら質問した。
「で、何をそんなに困ってるんだい?」
「あ、ああ……家庭科の先生に見つかって」
「「「「…………あぁ」」」」
言われてすぐに思い出す。学年が上がって始まった家庭科の最初の授業の顛末を。
未だに恨まれているんだなと思った俺達は、何の合図も示さずに元一の肩に手を乗せて意図せずに同じ言葉を紡いでいた。
「「「「どんまい」」」」
「だから助けろって言ってるんだよ!」
まぁそんなことしてるうちに高町達も来たみたいだし。
「とりあえず席つこうぜお前達。見つかったら逃げるしかないな、元一は今のところ」
「せやな」
「そうだね」
「ふっ。確かにそうだ」
「チクショウやっぱりか!」
そんな感じで、四年の生活は始まっていた。
ちなみに、元一と木在と裕也(如月の事)は魔法に関する存在を知っていたりする。同時に悪魔やら神様の事についても。
最初に投稿してから一年休んだ結果二年目に。
これもひとえに読者の皆さんのおかげです。
ご愛読ありがとうございます。