世にも不思議な転生者   作:末吉

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94:遠足

「はいという訳で遠足が明日在ります」

 

 わーーーー!!! と歓声が広がる中、俺は一人そのしおりをパラパラとめくっていた。

 隣の席のバニングスがそれに気付き、小声で注意してきた。

 

「ちょっと。何あんた、嬉しくないの?」

「……良く考えたら、遠足なんて行ったことなかった」

「…そうだったかしら?」

 

 まぁどうでもよかったからな。そうは言わずに俺は、しおりに書かれている目的地の場所を肩肘を突きながら見ていた。

 

 

 

 五月も終わりに入る頃。

 その前から連絡があったらしい遠足という行事に参加することになった。

 参加自体はおそらく初めてだろう。前世の『戦場ハイキング』が遠足という部類に入らなければ。こちらの世界に来てからは気配薄くした弊害で連絡事項聞いてなくて、その日誰もいないの知らないで学校行ったからな、俺。普通に帰ったし。

 そんな訳で普通に初めてだったりする。……このまま参加できれば(・・・・・・)、の話ではあるが。

 

 でもこういう時に限って何か起こるものなんだよなぁと連絡を聞き終え掃除の準備をした俺は考えながら机を運んでいると、何やら一塊になっている気配がしたのでチラリを視線を向ける。

 すると一瞬視線が合ったと思ったら、すぐに蜘蛛の子を散らすように人が逃げて行った。おそらく掃除の持ち場にでも行ったのだろう。

 

 おそらく明日いないだろうからいつもより念入りに掃除するかと思いながら、掃除道具入れ箱から箒と塵取りと叩きとバケツを取り出し、雑巾をロッカーみたいなところから取り出して、残っている数人と掃除を始めることにした。

 

「よしっ」

 

 時刻はおそらく日暮れ。というか四時半ぐらい。

 一応掃除をやり終えたので帰らせ、一人でそのあと納得がいくまで掃除をし終えたところ。

 制服のひじやひざの部分がほこりまみれのような気がしたので外で払ってから教室に入り、背筋を伸ばす。

 ふむいい気持ちだ。途中何人かが俺の姿を見て驚いていたが、その理由に興味がなかった俺は黙々と掃除をするだけに従事した。

 首を左右に振って鳴らしながら帰ろうかと思い鞄を手に持って教室を出ようとした瞬間、教室内から「久し振りです」と声がしたので思わず振り返ると、夕日を浴びているからか肌が赤く染まっているミカエルがいた。

 俺は怪訝な顔をしてから一言言った。

 

「すぐに教室を出ろ。せっかく掃除していい気持ちになったんだ。汚されても困る」

「……あ、すみません!」

 

 すぐさま彼女は俺の隣に移動する。なんというか、回廊というのはメートル単位で移動できるんだな、発見だ。

 そんな適当なことを考えながら俺は、ミカエルがついてくることを信じて昇降口の方へ歩き出した。

 

 ミカエルは校門で待っていてくれた。

 

 その事実に思わず「なんでお前教室に来たんだよ」と言ってしまい、なんか藪蛇だったと素直に思ってしまったのは仕方がないはずだ。返ってきた答えは「驚いてほしかったから」だからな。頬を赤らめるというおまけつきで。

 何の気無しに少し歩いてから屋根へと跳び、そのまま駆けていると、ついてきたミカエルが「あ、あの!」と声をかけてきたが無視した。

 

 家に到着し。

 俺は最後までついてきたミカエルに話しかける。

 

「…で、何を話したいんだ?」

「あ、え、えっと……」

「早くしてくれ。俺もやることがある」

「………分かりました」

 

 そう言うと覚悟か何かを決めたらしく、一拍置いてから用件を言ってくれた。

 

明日(・・)私の手伝いをしてくれませんか(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 ………ほらな。やっぱりこうなったか。薄々気づいてはいた。

 しかしながらこうも宣言されるというのは初めてだな。意外とストレートに物事が……進まないだろうな。

 

「なぁ。俺は何を手伝えばいいんだ?」

「え……」

「…いや、なぜそこで沈む?」

 

 思わず振り返る。するとミカエルが肩を落としている雰囲気を醸し出していた。

 

 …………。

 困ったな。正直言ってこんな場面他人に――――

 

「大智君……またミカエルさんに何か言った?」

「…フェイトか」

「あーミカエルさんを泣かせる一歩手前になってるー!」

「それと、アリシアか……明日の買い物か?」

 

 ――――テスタロッサ姉妹に見られるとは思いもよらなかった。

 訊ねると同時に声がした方へ振り向くと、レジ袋を両手で持っている二人の姿が見えた。フェイトはまた悲しそうな顔をし、アリシアはミカエルの状態を指さしていた。

 俺はそのレジ袋を一瞥してフェイト達に視線を戻し、質問した。

 

「明日の準備か?」

「うんまぁ。今年が最後かもしれないし」

「私は大丈夫だよ!」

「……そうか」

「そういえば大智君。ずいぶん遅かったね。何してたの?」

「掃除」

「「…………」」

 

 なぜか目を見開かれた。ミカエルに変わったところはない。

 普通に学校が終わってやる作業をみんなでやった後に個人的に行っただけなんだが……何をそんなに驚いているだろうか?

 少しして、フェイトがクスリと笑った。

 一体どうしてだろうか。特に笑われることを言った記憶もつもりもないのだが。

 

 人の反応を見るとやはり自分の特異性が浮くなと思いながら考える気を放棄し、俺はミカエルに「家に入れ。そして説明してくれ。事と次第によってはすぐに終わらせる」と言って俺は家の中に鍵を開けて入ることにした。

 それを聞いたミカエルは慌てて後を追うように入ってきた。

 

「……不機嫌そうだな」

「そうでもないです」

「なら別に構わないが。わざわざ前日に言うとは気が早いことをするな」

「……私よりあっちの方(・・・・・)を優先ですか」

 

 嫌味たらしく「あっちの方」を強調し、テーブルに頬杖をついて俺から視線を外すミカエル。

 なぜ機嫌が悪いのかわからないが話を聞かせる気がないのなら一人で行ってほしいと思った俺は、ため息をついた。

 

「話す気がないなら帰れ」

「……っ」

 

 こちらを向いた気がしたが言い終えた俺は席を立ち冷蔵庫へ向かう。時間的に夕飯だし。何かあったか思い出すのが面倒だったから。

 そのまま冷蔵庫へたどり着いて中身を確認していると(案の定ほとんど入っていなかった)、彼女が痺れを切らしたのかいつも通りクールな口調で説明しだした。

 

「…雨岩戸に天照様が引き籠ってしまわれまして。彼女を出す手伝いをしてもらいたいのです」

「……またか(・・・)。今度は何の理由で」

「四月のアレに呼ばなかったことが主な原因らしいです」

「あれって確かその場のノリで決まったようなものなんだよな?」

「ですね。きっと仲間外れだと思われたのでしょう。そういうのは人一倍、いえ神一倍敏感ですから」

「どうりで雲が急に立ち込めてきたわけだ……」

 

 うちの洗濯物は全部洗濯したその日に乾くというある意味で常識の外にあるので干す必要がない。だから俺は家に帰っても庭の方をあまり見ない。今は夕飯の買い出しに行けるか否かを見極めるため、冷蔵庫から離れてリビングへ戻り庭を見ている。だから天候の急変に気付いた。

 

 先程の会話を思い出した俺はため息をついてから椅子の近くに置いたバックからナイトメアを取り出して腕に着け、ミカエルに言った。

 

「さっさと終わらせるぞ。明日なんて日を跨げるか」

「…………分かりました」

 

 さっさと行こうというのになぜ不満げなんだろうかミカエルは?

 そんな疑問をゆっくり席を立った彼女を見ながら思った俺は、明日の準備してないけどどうするかと考えながら回廊が出るまで待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~あ」

「珍しいわね、あんたが欠伸してるなんて」

「徹夜だ徹夜。おかげで金としおり以外何も持ってきてない」

「……え、それ本当なの大智?」

「あぁ……だから、………」

「…何があったのかしらね、一体」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠足当日。

 何とか夜通しでアマテラスを引っ張り出して色々やって帰ったら午前三時。

 寝ようにも集合時間が七時半あたりなので諦め、準備しようとしたが食材も何も買ってないことに気付き、仕方がないので風呂に入ってからしおりと財布だけを用意し、しおりに書かれていたものを探したのに一つもなく、それで時間が近づき仕方なくリュックとしおりと財布と携帯とナイトメアと家の鍵だけ持って家を出た。

 で、学校の前に止まっていたバスに乗り込み出発と同時に寝た。

 

「起きなさい大智」

「………」

「着いたわよ」

「そうか」

「うわっ!」

 

 ついたと声をかけられて眼を開けて立ち上がると、なぜか隣のバニングスが驚いていた。というより、こいつ隣にいたんだな。

 バスの中を見渡すと俺とバニングス以外誰もいない。どうやら本当についたらしい。

 まだまだ俺の中から抜けていないんだなと思いながら首を回していると、「お、起きてたらちゃんとそう言いなさいよ!」と叫んできた。

 

「言われて起きた」

「……本当にそうなのかしら?」

「そんなことより早くバスでないとダメだろ」

「そうね」

 

 そんな会話があり、そのあと俺達はバスを出た。

 

 

 今回の遠足の目的地は遊園地なるテーマパーク(暇潰し場)。そこで午後三時まで遊んで帰るとしおりに書いてあった。

 これなら別に公園で遊んでても構わない気がするんだが…と思っているのは俺だけだろうか。

 

 まぁそんなことは口には出さないが。

 

「はやく来なさいよ」

「…分かった」

 

 やれやれ。色々な意味でどうするべきか。

 

 欠席者がいない中、列の一番後ろに並んだ俺は空を眺めながらそう思った。




ご愛読ありがとうございます。
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