世にも不思議な転生者 作:末吉
学校の行事として組み込まれている遠足。三年間参加しなかった自分には全く関係なかったと言っても過言でもなかった行事。
それに今参加している理由はまぁ……テスタロッサが『最後かもしれない』と呟いたからというのもあるし、最近クラスメイトと一緒に過ごしているという実感があるからかもしれない。
――――他の行事に参加してないからかもしれないが。
「で? どこに行くんだっけ?」
「……そういや俺、班編成の話し合いに参加してない気がするんだが」
「あれ? そうだっけか」
「…そもそもいつもいるかどうかが怪しいギリギリの気配で学校にいるだろうに」
「「マジで?」」
「いや。一応認識されるような気配で学校にいるんだが……班編成の話し合いに混ざった記憶がない」
「「「…………」」」
今は俺と元一と裕也と力也で固まって地図(しおりつき)と睨めっこしながらそんな話をしている。
なぜこんなことになったかというと、この事に関する話し合いの場に俺が関われなかったから……だと思う。で、なければ、俺はこの三人と一緒になってる可能性が限りなく低いはずだから。
というより、俺はともかく力也はなぜこちらにいるのだろうか。それと、元一と木在が別々だというのはなんか新鮮だったりするんだが。
ここで、裕也が我に返ったのかニヤリと笑った。
「でもま、おかげでこの班分けになったんだし……じゃ、遊ぼうぜ」
「計画を立てたはずだろう。それに従っていくべきだ」
俺はその計画にすら関わってないと断言できる。そんな覚えがないからな。
なので、正直に言った。
「計画?」
「あーその時はあいついたか?」
「いやーどうだったか」
「そんなのは園内に入ってからにした方がいいと思うんだけど?」
「「あ」」
言われて気付いた。俺達以外の班がいないということに。
ため息をついた力也は、「とりあえず入ろう」という案をだし、俺達はそれに従い入ることにした。
「まずどこだったか元一」
「ジェットコースター乗りたかったな」
「そんな願望聞いてねぇよ……あぁ最初はサーキットだ」
「サーキット?」
「今更だけど大智の無知ぶりには驚くね。しょうがないここは僕が教えよう。サーキットというのはゴーカートでね。小さい車に似た乗り物を操縦するコースの事さ」
「なるほど……それでお前達に悪いんだが、先に飯が食いたい」
「珍しいな大智。お前がそんなこと言うなんて」
「寝不足で飯食べてないんだよ」
「ひょっとして、前言ってた神様とか、高町さん達と同じ魔法ってやつに関することか?」
「あぁそうだ裕也。だから腹減って動きたくない」
俺がそう言うと三人は黙り、それからすぐにこういってくれた。
「なら先に昼にしようぜ! 俺も実は腹減ってた!!」
「早すぎるが…俺も野球やってるから腹の減りは結構速い方だ」
「まぁ仕方ないねそんな理由じゃ。付き合おう」
「……ありがとう」
時刻は午前十時半。そんな時間に朝食(もとい昼食)をとるという近年まれにみるというか絶対に小学生ではありえない時間だが、俺達はアトラクションより先に飯を食べることにした。
「いらっしゃいませ……あらどうしたの?」
「すいません俺フライドポテトとコーラ下さい」
「俺はハンバーガーとオレンジジュース下さい」
「僕はコーヒーで」
「あらそう? 以上でいいのね?」
「俺はラーメンとチャーハン下さい」
「……分かりました」
俺が注文すると何故か店の人がひきつった笑顔を浮かべて奥の方へ消えたため、近くにある席で待つことにした。
1テーブル四人掛けなので普通に座れた。
待っている間、俺達は普通に会話していた。
「しかし朝からラーメンとチャーハンってよ……」
「空腹なんだ文句あるか」
「文句というか、すごいなと思う」
「そんなことより大智。君に絶対勝つよ今日」
「何に勝つ気だ」
「勿論、君と勝負できるようなものだ。例えばゴーカートではどちらが先に五周できるかとかね」
「それ、俺達も参加していいか?」
「別に構わないさ」
「やろうぜ裕也!」
そんな声に裕也が苦笑していると、俺の料理ができたのか呼ばれた。
「早いな」
「取りに行ってくる」
そう断って席を立ち、料理を受け取って戻ると、なぜか俺達のグループの隣のテーブルに高町、月村、テスタロッサ、バニングスが座っていた。それを見ようと同じ学校の奴らが足を止めている。
早々に休憩とはこいつら暇なのかと思いながら席に座ったと同時に俺以外の奴らが呼ばれたので、一斉に席を立って何も言わずに取りに行ってしまった。
……ま、いいか。
どうせ戻ってくるしと考えながら割り箸を割って「いただきます」とラーメンを食べ始めることにした。
が。
チャーシューと共に麺を啜りだしたところで、待ったをかける奴らがいた。
「いやあんた何普通に食べてるのよ」
「気付いてるよね大智君!」
無視。
「…なぁ裕也」
「言うな元一。腹くくって普通にしろ」
「食べるのが速い……くそっ!」
「さっさと座って食べてくれ。終わったら最初の場所行くぞ」
この場にいるのも面倒だし。
やれやれと言わんばかりの雰囲気を醸し出しながら三人は席に座り、注文した料理を食べていると、バニングスが再び声をかけてきた。
「何あんたたち食べてるのよ? まだ来たばかりだというのに」
「食べてないものの気持ちが分かるか」
「……え? 大智食べてないの?」
「色々あってな」
そう正直に言うとテスタロッサは昨日の事を思い出したのか、「そういえばミカエルさん来てたね」と頷いた。
無論それに高町は首を傾げていたが説明する気すらないので俺はさっさとチャーハンを食べ終え、どうやら食べ終わるまで待っていたらしい元一たちに「行くぞ」と言って席を立った瞬間、「ちょっと待ちなさいよ」と言われたが俺はトレイを戻しに向かった。
「さて行くか」
「いやその前にあっちの方で睨んでる女子達に説明してきたら? 彼女たち何も言わないと動かないと思うけど」
「そうだぜ大智! このまま帰りまで続いたら俺の胃が持たない!!」
「元一、どこでそんな言葉覚えたんだ……? まぁ俺も力也の意見に賛成だ。先に俺達で向かうから、お前も後から来てくれ」
最終的に裕也にそう言われ、取り残された俺は仕方なく視線を向けてくる彼女達の方へ向かった。
「お前らは人目を気にしたらどうだ? ただでさえ容姿が抜きんでてて目立っているんだから」
「ため息交じりに言われても嬉しくないわよ」
「容姿が抜きんでてて……」
「そ、そうかな?」
「フェイトちゃん、なのはちゃん。戻って来て」
真面目に応対するのがバニングスのみで、他はまぁ戻ってこない。
別にいいのでこのまま話を進める。
「何か用か?」
「さっきから人と話をしようとしなかったじゃない」
「そりゃ食べてたからな」
「まぁそうでしょうけど…人の話聞かなかったじゃない」
「それは悪かった。で? 一体何の用だ」
そう言うと高町が席を立って「一緒に行かない?」と嬉しそうに提案してきたので。
「却下。自分達の計画に従って楽しんでくれ。じゃぁな」
「「「だから待って」」」
今度は三人に止められた。一体なんだというんだ。
俺は立ち去ろうとした足を止めて振り返り、不機嫌な顔をしたが、三人は止まらなかった。
「いくらなんでもそれはひどいよ大智君」
「そうよ。せっかくなのはが誘ってくれてるのに」
「私達と一緒じゃ嫌なの?」
なんでこちらが悪いように聞こえるんだろうか。絶対おかしいはずなんだが。
理不尽だが怒るのもどうも違う気がする…等と思った俺は、少し考えてため息をつく。
「俺は俺で行く場所がある。だからそっちに合わせる気はあまりない」
その言葉に何を察したのかバニングスは「そう……分かったわ」とあっさり引いてくれた。
物わかりがいいのか何か企んでいるのか……たぶん後者だな。
そんなことを思いながら、俺はすぐさまこの場を後にした。
「少し遅かったじゃないか」
「なかなか納得してくれなかった」
「さっさと乗ろうぜ! そんなこと良いからよ!!」
事前に場所は記憶していたので十秒あれば辿りつける。
で、たどり着いた矢先に力也からにやにやと笑われながら言われたので適当に返すと、待てなかったのか元一がさっさと乗り場へ向かった。
それを見た俺達は何も言わずについて行った。
ゴーカートに乗ってみる。
やはり子供用だからかシートの周りが妙に圧迫感がある。足は延ばせるがアクセルとブレーキしかないところに伸ばしてるのでうっかり踏んで進んで――――
「うわぁやべっ!」
――――いかないようにしっかりとしないとな。少なくとも俺は。
元一がアクセルを間違って踏んだらしく先へ進んでしまった。それを見た俺達はため息をつく。
と、ここで隣で同じく待機状態の力也が俺の方へ向いて「勝負しよう」と言ってきた。
「周回レースか」
「その通り。ここは四周するか一時間経ったら終わりだ。だから四周。それをどちらが早く出来るかで競争しようじゃないか」
「別に構わないぞ。ハンデは?」
「いらない。君との勝負にハンデをつけるほど、僕は志が低いわけじゃない」
「悪かった。スタートの合図は?」
「なら裕也に任せよう。君が『スタート』と言ったら僕達の開始の合図だ」
ここで会話に加わってないが同じく待機状態でいた裕也は「マジかよ」と苦笑してから真剣な顔をする。
ここでスタートダッシュを決めて最初のコーナーをイン側に攻めればほぼ勝ちは確定する。
ゴーカートに乗る前に覚えたコースを反芻しながら、俺はそう考えた。
このコースの全長はざっと四百メートルほど。スタートから二十メートルが直線で、そこから左に曲がる第一コーナーが。
それを抜けた先はS字カーブが続き、それを抜けてすぐにまた左へ曲がり百メートルほどの直線。それが終わったらスタート地点まで大きく描いているカーブ。それがコースの全容である。
「じゃいくか。スタート!!」
「「!!」」
俺達は声に反応しアクセルを踏む。
反応はほぼ同時。ここからの加速で結果が決まる。
本気で来いと言われた以上、情け容赦なく圧倒的な差をつけて勝ってやる。そう思いながら、俺はイン側のに覆いかぶさるように車体を傾けた。
「…………」
「………………」
「楽しかったなぁ遠足! なぁ?」
「元一。今の大智と力也に言っても絶対反応は返さないぞ」
遠足が終わりバスの中。
俺と力也は隣同士で座り、互いに顔を合わせずにそっぽを向く。
その前に座った元一がこちらに顔を出し、それを裕也がたしなめているのが現状。
今の俺の心境は最悪。おそらく、力也もそうだろう。
なにせ…………
「はっはっはっ。お前ら素直に引っかかりやがって。ざまぁネェなァ?」
……マモンに勝負を邪魔されたのだから。
正直に言うと、マモンの掛け声で俺達が始めてしまったのだ勝負を。
俺の圧倒的勝利で終わり二人を待っていると、最初に戻ってきた裕也が「なんでお前ら俺が何も言わないのに勝手に始めたんだ?」と首を傾げて言ってきた。
は? と二人して目を見開いていると、俺達の背後で笑う
瞬間に俺と力也は誰の声で始めたのか悟り、裕也に素直に謝った。
で、俺達は互いに最悪な気分でバスに乗っている。マモンに乗せられたというのもあるが、合図役の確認をしなかったことに対する自己嫌悪で。
「ちっ」
「くそっ」
同じようなタイミングで悪態をついた俺達。だが俺達はそれを気にせず、力也は窓の景色を、俺は通路側の景色――高町とテスタロッサが肩を合わせて寝ている姿を見ていた。
この二人にその後ろの席に座っている月村とバニングスは、俺達のレース中に応援しだし、それが終わってからも行く先々で大体一緒になるという奇怪な現象を引き起こしていた。
別にあっちが決めた行動なんで俺は気にせずに普通にアトラクションを楽しんだ。無表情で楽しんだというと元一あたりが「わからねぇよ…」と力なく言うのだが、一応楽しかったのだからいいだろう。
その一つとしてお化け屋敷という定番に何故か俺とテスタロッサが一緒に行くことになり、怯えるテスタロッサが勝手に俺の腕にしがみついてきたりするのを不思議に思いながら見て行った。
終わった後にテスタロッサが急に顔を赤く染めて離れ、何やら慌てていたが、俺は特に気にしなかった。
それを見た裕也が「……人ってここまで無表情になれるんだな」と感慨深そうに言ったので、俺は軽い口調で「慣れれば楽だ」と言ったら、何故か女性陣から怒られた。解せない。
また、射的があったのでやろうぜという話になり、各々好きなものをとっていき、俺と力也は例にもれず勝負することになったが、俺が全弾命中させた結果跳弾の嵐が起こり、止んだ時には大きな景品とこまごまとした景品の半分が消えていた。
まぁ射撃なんて前世で人をヘッドショットするくらい平気でやってからなぁと思いながら、適当にぬいぐるみや適当なものをバニングス達にあげた。力也も全部当てたらしいが、一発で一個らしいので悔しがっていた。
その後も色々あったが、結構『楽しい』ものだった。
「……ふっ」
ふと笑ってしまう。先程までの気分が一気に明るくなる。
楽しいというのはやはりいいな。心休める。
そんなことを考えながら笑っていると、「……大智」と隣から声をかけられたので、笑うのをやめ表情を戻し「なんだ?」と訊ねる。
「今回の成績は僕の負けだ。レースはノーカウントだ」
「だろうな」
「だが僕は君に勝つ。君の力を越えていく」
「……いい心がけだな」
「だから君は、僕以外に負けないでくれ」
真剣な口調で言われた言葉に、俺は思わず言ってしまった。
「神相手に必ず勝てるなんて思ってないぞ俺は」
「人相手なら赤子の手を捻るようなものだろ。その範疇で言っている。……それに」
「?」
「いくら負けようが、最終的に一回勝てば勝ちという事実が生まれる。そういう事だと思わないか?」
……なるほど。
「つまり負けても勝てばその負けをカウントしないと。随分と傲慢だな」
「傲慢か。そうかもしれないが、僕にとって君は越えるべき壁なんだ。その壁に傲慢さがあった方が、より燃える」
「はっ」
俺は鼻で笑ってから続ける。
「俺に更なる付加をつけて己を律するか。本当にお前同い年か? 大人でもやらないだろ」
「僕は世界ではちっぽけな存在だろう。だが、君を越えれば世界一、いやそれ以上の存在として名をはせられる。それを達成させるのだから、生半可な気持ちでやっていない」
だから、君もこれからの勝負を全力でやってほしい。
そう付け足した力也の声は真剣そのもの。まるで果てのない夢を目指す冒険者のような気迫。
それを受けた俺は、人間らしくニヤリと唇をゆがめてから言った。
「後悔するなよ」
家に帰ったが、夕飯も何もないことに気付いた俺はどうすることも出来ずに寝た。
明日は早朝でコンビニに行かなくては。
いきなりお気に入りが増えたことに驚きが隠せません。
ご覧いただいてる方に感謝を。
ありがとうございます。
次は七夕…です。