世にも不思議な転生者   作:末吉

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あと三話で百話ですね……長くなったものです。


97:変な一日

 ある秋の事。

 普通に目覚めた俺を待っていたのは、泥酔して潰れた神様達だった。

 

「………」

 

 起きてとりあえずリビングへ来てみたはいいが、何でこいつらここで飲み会していたのだったか……あぁそういえば前々日に「お前の家に明日襲撃する」という短い文章が送られてきたから普通に準備してたんだったか。そんで親父に母親、スサノオに雷神、ミカエルにランスロット、オーディンにトールにロキといったとんでもないメンバーが一堂に会し、俺に料理を作らせ自分達は飲んで騒ぐという頭の痛いことをしていた。

 

 とりあえず目の前の惨状にため息をついて下を向き……気付いた。

 

 視線の位置が、高いことに。

 

「ん?」

 

 思わず顔を上げてもう一度同じ風景を見る。気のせいか昨日より視線が高くなっている。

 

「んん?」

 

 首を傾げ、疑問符を浮かべる。

 一体どうして身長が高くなったのだろうか。俺は昨日何かしたっけか?

 思い出そうとしたがどうにも思い出せず、ただひたすらに料理を作ってキッチンで自分は食べていた記憶しかない。つまり、俺は普通に料理を作って風呂入って寝ただけだ。なのにどうしてこう身長が一気に伸びたのだろうか。

 身長が伸びたことを自覚したが不便ではないのでそのまま洗面所へ向かう。そして窓ガラスを見て驚く。

 

「……マジか」

 

 最近俺は表情が人並みに出てきたような感じなので鏡を見て驚いていることが分かるが、身長が前世と変わらないぐらいになっていた。そのせいで服が短すぎて大変なことになっている。

 急いで俺は親父の部屋へダッシュしたところで……またおかしなことが発生した。

 

 遅すぎるのだ(・・・・・・)。普段の移動より。まるで普通の人間(・・・・・)みたいな(・・・・)速度になっているかのように。

 

 とはいえ服を着替えないことには始まらない。そう思った俺は階段を一段飛ばしで駆けあがって親父の部屋の扉を開け、下着やら服を引っ張り出した。

 

 

「しかし一体どういう事だろうか。身体が前世、身体能力が一般人並とは……」

 

 思わず正拳突きをしてみたくなる。だが速度はなく、シュッと空気を切る音だけ。

 

「……」

 

 これは……まずい。さすがに原因究明して解決しないと。ていうかこれじゃ学校行けない。

 そう思った俺は急いで下におりて全員叩き起こすことにした。

 

「おら起きろ親父」

「ぐおぉぉぉ」

「ちっ。やっぱり威力がないから全然起きない」

 

 椅子に座って寝ている親父を殴ったり叩いたりして起こそうとしているが全く起きないので、ため息を漏らす。いつもなら殴った時点で衝撃がすごいので悲鳴を上げて起きるはずなのだが、全く起きない。

 

「…仕方ない」

 

 椅子を引いて親父を机から離す(結構つかれた)。そこから何とか持ち上げようとして……持ちあがらない。

 

「ぐぐぐぐっ」

 

 畜生結構重いぞこの野郎。浮くことには浮いてるがジャーマンスープレックスかけられねぇ。

 腕の方がこのままだと限界になりそうだったので手を放す。その時、場所が悪かったのかゴスッという音とともに「っでぇぇぇ!」という悲鳴が間近で聞こえたために耳を咄嗟に塞ぐ。

 う、うるせぇ。嫌な顔一つしてはいないが内心でそう思った俺は悲鳴が終わったと同時に耳から手を放して確認する。

 

「起きたか?」

「あぁ起きた……ぜ? ……ん?」

 

 段々と俺の違和感に気付いたらしい。俺を上から下まで見てから、親父は首を傾げて聞いてきた。

 

「なんでお前身長そんなに一気に伸びたんだ?」

「俺にもわからん。後、身体能力が落ちてる。ものすごく」

「どれくらい?」

「親父一人持ち上げられないくらい」

「……どうなってんだ?」

「俺が知りたい」

 

 しかし親父に聞いても無駄なようだ。あとはミカエルにロキにトールにオーディンにランスロットに母親に雷神……って、

 

「親父」

「ん?」

「スサノオは?」

「ん~~途中で帰ったんだったかーよく覚えてない。久し振りの飲み会だからな」

 

 スサノオ以外はここにいた。しかし、スサノオがいつ帰ったのかは記憶にないらしい。

 一体何が原因でこうなったのか。とりあえず片付けと学校に行けないと確定したことにため息をついた俺は、親父と一緒に粛々と食器などを片づけ始めた。

 

 

 

 

 朝七時。少し眠い。が、とりあえず親父に全員起こしてもらう。

 起きた奴らも寝起きと二日酔いで辛いのか頭を押さえてたり瞼を擦ったりしていたが、俺の姿を見た瞬間に瞠目していた(ミカエルに至っては恥ずかしさからかダッシュでリビングから消えた)。

 誰かが口を開く前に、俺は分かっていることだけ口にした。

 

「朝起きたら俺はいつの間にかこんな身長になっていた。その上、身体能力が一般人並に落ちている。俺が寝ている間に何があったのか知らない。スサノオもいない。何があった?」

「いや。俺達も知らないんだが…」

「あーそういえば僕達でなんか騒いで何かやってた覚えはあるんだけど……」

「悪いわね。記憶がないのよ」

「昨日は久しぶりに飲んで騒いだからな」

「私も知らないわ」

「……記憶にない」

 

 困ったことに誰も知らないようだ。学校を休みにしてもらったから構わないが、原因が不明となると究明しなければならず、かといってむやみやたらに行動したところで俺の体力が先に尽きるのは分かりきったこと。

 しかしスサノオはなんで消えたんだろうか。ふと首を傾げてそんなことを考えていると、ロキが「だったらさ」と提案した。

 

「スサノオのところに行こうよ。あの人ざるみたいだからさ、行けば案外わかるんじゃない?」

「誰が?」

「ここにいるみんなで?」

「仕事あるんだぞロキ」

「そうよ」

「お前みたいに暇にならないんだ俺は」

「私はいいけど?」

「オーディンと同じで俺も無理だな」

「わ、私は大丈夫です!」

「同じく」

「俺は……分からない」

「「「「「「「??」」」」」」」

 

 まさか張本人が行けるかどうかわからないというのが予想外だったのか、俺を見て首を傾げる奴ら。それに対し、俺は現状の予想の範囲内で最悪な予想を口にした。

 

「回廊に入って大丈夫だという保証がない。確か入るにはそれ相応の力がないとダメなんだろう?」

「まぁな……でも大丈夫じゃないのか?」

「俺は今まで平然と入っていたが、力がないのと変わらない状態で入った場合を経験してないから分からない。そうなると、あまり入ろうと思えなくなる」

「ていうかさ、魔力は大丈夫じゃないの? いくら体が変わっても、魔力はリンカーコアと直結しているんだよ? だったら大丈夫だと思うけど」

「そうなのか?」

「いや分からないけど……君のデバイス持ってきて魔力解放したら? そうすればわかるでしょ?」

「なるほど」

 

 途中から口を挟んできたロキの言葉に俺はその案があったかと思い至急部屋に戻るが、いかんせん以前とは勝手が違うので、どれほど速く動こうとしても体が重くてかなわない。

 

 数分後。

 俺は首を傾げながら戻ってきた。

 

「どうした?」

 

 代表してオーディンが聞いてくる。俺は、正直に「ない」と答えた。

 

「ない? ちゃんと探したのか?」

「二階全部探したが全くといっていいほどないな。いつもより疲れるし」

「インテリジェンスデバイスでしょ? 声かけたら返事ぐらいするんじゃないの?」

「まったく。名前を呼んだが返事すらない」

「不思議だ……」

 

 まったくだ。ランスロットの言葉に同意する俺。

 う~~んと一同で唸っていると、これ以上考えても埒が明かないと思ったのかトールが「この中から暇な奴らでスサノオのところへ行けばいいだろ。大智は今日一日大人しくしていろ」とため息をつきながら提案したので、そんな運びとなった。

 

 

 

 

 

 

「とはいったものの……暇だな。どうするか」

 

 汗を流しながら筋トレを庭で行う俺。たかが腕立て伏せ100回で腕が使い物にならなくなってきてる気がするが、やめようと思いたくなかった。

 

 が、結局仰向けに倒れ込んで空を眺めることになった。

 

 ……今まで流れた汗が肌にひやりとくっついて冷たい。が、今の状態ではとても気持ちがいい。

 腕が痺れてきたような気がしながらぼんやりと空を眺めていると、「大智く~ん!」と高町の声が。

 もうそんな時間なのか。学校に行かないと決まったからどうでもよかったのだが、わざわざこうして呼びに来てくれるのだから言わなくてはならないのだろう。

 そこまで思って今の格好を思い出し、誤魔化すしかないのだろうかと考え直し立ち上がろうとするも起き上れず、逆に眠気が襲ってきた。

 

「大智君? 居るの!?」

 

 ……呼びかける声が聞こえたが、俺は眠気に負け汗も処理せず外で眠ってしまった。

 

 

 

 どのくらい眠ったのか些か覚えはないが、体が冷えたのを直感して目が覚めた。

 起き上がってから家に入りシャワーを浴びるために風呂場へ向かう。身体が少しだるい気がしなくもないが、まぁ大丈夫だろう。

 服を脱いで洗濯かごに入れたら着る服がなくなると思った俺は仕方がないので先に二階へ上がり、親父の部屋で服を一式また借りる。

 それで着ていた服を洗濯かごに入れ、シャワーを浴び、タオルで拭いてから服を着て昼食を食べようと台所へ向かった。

 久し振りの視線の高さに少し戸惑いながらも時計を見ると午後一時。どれだけ寝てたんだ俺は。

 

 とりあえず昼食を作る。いつも通りの量を作ったが、何故か空腹感がなくならなかったのでもう少し作って食べた。

 

 で、特に何もできない俺は、冷蔵庫の中身がなくなりかけているのに気付き、少し早いが買い物することにした。

 

 

 

 普通に道路を歩く。どうあっても屋根を跳んでいくことが不可能なので、もう地道に。

 

「まぁ特に人と会わないから大丈夫なんだが……」

 

 人の気配がしないことに少し喜びながら歩いていく。意外と遠いことが今判明した。

 不便だな、やっぱり。そんなことを三度思いながら空を見ながら歩き、スーパーについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疲れた……。

 自分のベッドに寝転がった俺は今日一日の不便さを思い浮かべながら、この姿になった元凶であるロキとスサノオに恨みつらみを思い浮かべながら、ぼんやりと天井を眺めていた。

 久し振りに桃子さん達がやってる喫茶店へ行ってこの姿でコーヒーを飲んでたが、誰も気付かなかったな。すれ違ったりしたというのに。

 ちなみにスサノオ曰く、「宴会中に悪乗りしてロキと一緒にあいつの姿戻してみようぜ」で始まったことで、もうここで宴会するなと文句を言いたくなった。

 

 

 

 次の日になったら、身体能力だけが戻って身長は戻らず、元に戻るまで結局三日かかった。




次は確か五年生の話でしたね。

ご愛読ありがとうございます。
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