ほんとに毎度お目汚ししてごめんなさい。
ポンコツ可愛いというワードが打ち込まれたので衝動的に。
今日も黒森峰女学院の戦車道を履修する乙女達は、厳しい特訓に熱を入れている。
そんな彼女達は、多くのメンバーを纏め上げる若きカリスマの下で高校戦車道で頂点を目指している。
全員の期待を寄せられつつも、それを重荷とすることなく自らが先頭となって己の戦車道とはこうである、と示し続けるその一人。
不満も不安も砲弾とともに吹き飛ばすように前を行くリーダーを見て、彼女達もまた己の信念に従って共に闘いたいと彼女の後をついていく。
そんな一種の理想的な形を体現しているリーダー。
プロからのスカウトも多く、有力選手として期待され、各種のメディアにも報道されている人物。
質実剛健。由緒ある西住流の次期後継者足らんと日々己を磨き続ける現黒森峰戦車道チームの隊長を務める彼女。
そんな彼女、西住まほは、現在内心物凄く焦っていた。
彼女は思う。ーーどうしてこうなった、と。
彼女の両親や元家元の祖母をして、堅物と言われた彼女がそのめったに崩さない整った鉄面皮を崩しそうになるほどには、彼女が相対している人物から受けた一言は衝撃的に過ぎた。
しかし、彼女は持ち前の自制心をもって、引きつりそうになる頬を押さえ付け、極めて冷静に思考を回す。
そして、その原因を作り出した人物。目の前にいる、副隊長を務めるまほの後輩。
ハンバーグ好き過ぎだろwでも可愛いw。
ツンデレワンコ属性とか最高かよ。
みぽりんとのいちゃラブ早よ。
立ち絵が格ゲーw
などと、いろいろとイメージだけで侮られている彼女。
……侮られているというか、ポンコツ可愛いというか。
チームメイトにも実はほんわかとした気分で愛されているのに本人が気づいているかどうかはさておいて。
普段持っている真面目さとのギャップがチームメイトの結束を固める一役を買っているならば、それはそれでいいであろう。
話がずれたが、隊長であるまほを尊敬し、またまほからも信頼を得ているその副隊長。
逸見エリカ、その人である。
彼女は、相談があると言って、休憩時間にまほを倉庫に呼びだした。
普段なら自分が伺いを立てるのだが、プライベートな質問を公の場で話したがる若者は少ないだろう。
普段からまほが公言しているように、個人的な相談については遠慮をしないで欲しいという彼女の言葉に甘えた結果だ。
そして、まほもまた、真面目一辺倒を通す自分についてきてくれる彼女からの珍しいお願いを受け、新鮮な気持ちで快く話を聞きにきていた。
いつも全力をもって行動で自らの言葉と信頼に応えてくれる後輩の力になれるのならば、堅物な自分でも紳士に答えようと、意気込んで訪れた…のだが、
ソワソワするようにしながらまほを待っていたエリカ。
これもまたあまり見れない姿のため、ほっこりした気持ちになったりもしたまほ。
そして、到着してからすぐに、
時間を割いて頂いてありがとうございます。
いや、構わない。
と、挨拶を交わした。いつも通りだ。
しかし、問題はその後である。
唐突に、
「隊長、隊長は気分が昂った時はどうなさっていますか?」
と、聞かれた。
その時点でまほは、ああ、やはりプライベートな相談だったな、と当たりをつけた。
それは、自分にも覚えがある。
好きゆえに、戦車道で熱くなり過ぎて、折り合いがつかないとき、感情のやり場の無い時。
自身は、身体を鍛えたり姉妹での団欒を楽しんだりしながらも、時にぶつかり合い、涙をこらえ、支えられながら、一歩ずつ進んで来た。
エリカの相談も、伸び悩むことに関して、焦りや不安に関して、そんな思春期故の悩みであろうと思った。
ここは、隊長としてではなく、一つ年上の戦車道を嗜む一人の生徒として、繊細な心を傷つけぬように答えなければ、と。
が、エリカの質問は続いた。
「隊長は、今、好意を寄せている人物はいらっしゃいますか?」
と、聞かれた。
それに対してまほは、あ、そっちもか。多感だな思春期乙女。
あれ?恋愛相談?じゃあ、私専門外じゃないか?と、思いながらも、そのような対象はいないことを伝える。
この時点で後輩の乙女心が爆発しているな〜と、少し和みつつ、経験値ゼロな己を自覚しちょっぴりいたたまれない気持ちになったまほ。
しかし、こちらも気恥ずかしい気持ちはあれど、相談を受けたからには最後まできちんと聞かなければ、と思い、続きを待った。
「隊長は夜ご自身でなg「エリカ、ストップだ。」」
最後まで言わせたら終わりだった。
ん?どうしたんだエリカは。ハンバーグでも食べ過ぎて体調が悪いのか?
と、自身の耳を疑いつつ、少し目を細まるまほ。
タチの悪い冗談だとしたら、お説教が必要かな?などと思うが…。
「しかし、隊長!戦車に乗って昂ったこの衝動を私はいつも隊長を見t「エリカ、ステイ。」はい。」
目の前のハンバーグは割と真剣に真っ直ぐな目をしていた。
そして凄く素直に黙ってくれた。
「………。」
「…………。」
「…落ち着いたか?」
「はい!」
「うん。良かった。エリカ、君の悩みがその、凄くセンシティブな問題なのは分かった。」
暴走しかけてるエリカを宥めつつ、まほは眉間に指を置いて言葉を紡ぐ。
端的に言って頭の痛い話であった。
しかし、彼女なりに悩み(?)を打ち明けてくれたのだ。
信用に対して応えるためにも、本題を聞くことにする。
「エリカ。君は、私に相談とお願いがあると言ったな。それを聞かせてくれ。相談に関しては、私は力になれそうに無い。」
というか、徐々に距離を詰めて来ないで欲しいと切にねがう。
正直に言って、もう少し恥じらいをもって打ち明けて欲しかった。
普通はそうであろう。
それなのに、目の前の後輩は何故こんなに澄んだ目を向けてくることができるのだろうか。
「私から出来るアドバイスは、一度気分転換をして自分と向き合うこと、くらいかな。
……私も思春期ゆえに悩んだことがある。だから、エリカの気持ちを笑ったり否定したりしない。信頼を置く君の頼みだから、私もなるべく答えたいと思う。」
そして、少し考える時間も欲しかったので穏便にかつ丁寧に言葉を続けようとしたが、
「本当ですか!?ありがとうございます!なら、是非とも今夜いっs「エリカ、シャラップ!」はい。」
駄目だった。割と自分なりにシリアスに努めようと頑張っていたまほだったが、これはまともに応えてはいけない類のものだと理解した。
というか、この後輩今なんて言おうとした?
私もしかして男っ気なさ過ぎてそんな風に思われてるのか?
というか、その前に、それを言ってきたエリカはそっちの気が……
うん。一時の気の迷いだろう。
「エリカ、そろそろ時間だ。練習に行こう。」
「はい、隊長!」
はぐらかすつもりでは無い。
偶々時間が来てしまいそうな気がしたので移動することにしただけだ。
休憩時間も自主練に使う生徒もいるにはいる。熱心な生徒がその後の練習でバテてしまうのはご愛嬌だが。
今日は私もそんな気分だっただけである。
促すとすぐに素直な返事が返って来たので、ああ、いつものエリカだな、と安心したまほ。
「私はいつでもウェルカムですよ?」
だから、そっと発された一言は聞かなかったことにした。