セブドラ冒険記   作:双碧

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第二話~新たな仲間~

 私がハントマンになってから数日、いつも通り外で戦闘を行って、カザンの町に戻ってきていた。

 

 この数日で私は徹底的にトラウマを植え付けられてしまった。

 ここら辺のモンスターのどれに相対しても脚が震えて動かなくなる。

 守りに徹しているからか前より傷を負うことは減ったけれど……

 

 今日はあまり傷を負わなかったので、誰か加入してくれないかとギルドに来ている。

 毎日来ているものの、声を掛けた相手には顔をしかめられるばかりで、流石に堪える。

 

「はあ……やっていけるのかな……」

 私はギルドの机の上で突っ伏して呟く。

 

 やっていけるも何も、やるしかない訳で……

 

 思わずため息も吐き出してしまう。

 

「……大丈夫、少しずつ上達しているから」

 

 隣に座っているウィミアが励ましの言葉を掛けてくれる。

 でもそれは多分守りのほうで……。

 

「攻撃は……違うよね?」

「……死なないほうが大事」

 

 ウィミアの言葉には説得力があるものの、どうしても私が足を引っ張っている感じは拭えない。

 

「でも、なんとか戦っても一日の宿代だけって……」

 私の暗い雰囲気に、どうしていいのか分からず困惑しているような表情を浮かべるウィミア。

「ごめんね。大丈夫、唯の愚痴みたいなものだから」

 机に突っ伏したままもう一度ため息を吐く。

 

「少しいいかしら」

 

 机に突っ伏していると突然声を掛けられ、私は上体を起こし、声の主を見る。

 視線の先には明らかに私達よりお姉さんだろうと思える女性が立っていた。

 

 色白で釣り目がちであり、顔立ちは整っている方だと思う。

 そして青髪で後ろの腰ほどまである長い髪をポニーテールに纏めている。

 

 服装は少し露出が多い気もするけど……

 そんなことより。

 

 私達より経験を積んでいそうな女性が、何で話しかけてきたのだろう。

 

「な、なんですか?」

 私が少し躊躇いながら聞き返すと、

「貴女達が女二人で頑張っている駆け出しのギルド、シャルテリアで合ってるわよね?」

「そうですけど……」

 

「一時的にギルドに加入してあげようか?」

 

「え!?」

 

 今まで断られ続けていたので驚いてしまった。

 突然知りもしない人にそう言われるなんて、思ってもいなかったし。

 ウィミアは相変わらずあまり表情を変えずに女性を見つめているけど。

 

「ごめんごめん、名乗りもせずにいきなりこんなこと言っても困るわよね」

 女性は頭を掻きながらそう告げてきた。

 

「私はアリエラ。ローグで基本ソロで活動しているのよ。たまに臨時で他のギルドに入ったりもするけどね」

「えっと、私はフレニアでこっちがウィミアです。でもアリエラさん、何でソロで……?」

 私がそう聞くと、アリエラは少し微妙な顔をして、

 

「まず聞くのがそっちなの?まあいいけど。固定のギルドだと、どうしても人間関係が仕事に影響してくるからね。したい仕事ができなかったりとか茶飯事よ。実力に見合わなかったりとかも。で、一人ならそれはないということよ」

 

 そういう事なんだろうか。

 サバサバした様にあっけらかんに言われたけれど。

 私が少し考えていると、ウィミアが口を開いた。

 

「……どうして加入してくれるの」

「駆け出し支援、というわけよ。エランさんに頼まれてね。クエストもまだ受けてないらしいじゃない」

 呆れたようにアリエラが告げてくる。

 

 まともにモンスター達を相手できないから、クエストは先延ばしにしていたのだけれど。

「で、どうするのかしら?」

「是非お願いします!」

 アリエラに頼み込むと、彼女は微笑みながら、

「それじゃあ、まずは実力がどれくらいか確かめさせてね」

 私達はアリエラに連れられ町の外に向かった。

 

 

 

「それじゃあ、あたしは手を出さないから普段どおりにやってみてくれる?」

 アリエラが手近にいたラビ二匹と、ブルーグラス――青い蝶のようなモンスター――を指して言う。

 

 あんまりしたくはないけれど。

 とりあえずショートソードを構えて防御の姿勢をとる。

 ラビの攻撃を半身でかわして……

 

「っ!」

 

 ひやりとした感覚が肌を掠めるが、とにかく敵の動きに集中する。

 その間にウィミアがフリーズでブルーグラスを固め終えたようだった。

 

「ウィミア、じゃあこっちのラビは任せて!」

「ん……」

 

 自分に近いラビに視線を向ける。

 

 …………。

 やっぱり怖いけど、流石にそろそろまともに戦えるようにならなくちゃいけない。

 そう自分を奮い立たせ斬りかかる。

 

 切り筋と剣が入った感覚から、深く傷をつけられたのが分かった。

 

 が、

「いつっ!」

 

 ラビは反撃とも言わんばかりに手に噛みついてきた。

 しかし、与えた傷が深かったからか、それほどの怪我にはならなく。

 もういちどショートソードを振り、止めをさした。

 

 そして視線をウィミアに移すと、もう既に仕留め終えておいたらしく、こちらを見ていた。

 

「……まあまあ、ね」

 

 見ていたアリエラがそう言いながら近づいてくる。

 

「連携はなかなかだけど……ウィミアに頼りすぎてる気がするわ。もう少し攻めに行ってもいいんじゃないかしら?」

 

 そういわれても……正直攻撃を行ってみたのは今回が初めてみたいなものだし……

 そんな風に微妙な表情をしていたからか。

 

「仕方ないわね。しばらくあなた達のギルドに加入させてもらうわ。危なっかしいもの」

「本当ですか!ありがとうございます!」

 

 とにもかくにもこうして初めて新しい仲間がギルドに入ってくれた訳で。

 浮かれかけていた私に。

 

「じゃあ、もう一戦してから帰るわよ?」

「え……」

 泣く泣く戦いに赴かされるのだった。

 

 

 

 その翌日アリエラ指導の下、朝から外で戦いを行った。

 

 当然攻撃するよう言われ……

 もはや身体の痛みに耐える訓練か何かかと思いながら。

 昼過ぎになり。

 

「無理っ!これ以上は死ぬから帰らせて!」

 

 血が身体の所々から出て、塞がって傷だらけに。

 正直、もうやだ。

 身を守ろうとするとアリエラさんから「何してるの!」と叱咤がとぶし。

 対してウィミアやアリエラは殆ど傷を負ってない。

 

「はあ……傷を負うのが戦士系の役目でしょ?まあ頑張ったほうだと思うけど」

 アリエラが呆れたように呟く。

「もう少し……ん、何?」

 アリエラが何か言おうとしたのをウィミアが袖を引いて止める。

 

「……マナが」

「え、ああ。そうよね。仕方ない帰りましょ」

 

 た、助かった……

 ウィミアに礼を言うつもりで目を向けると、ふるふると首を振っていた。

 

「その代わり、午後はクエストを引き受けるからね」

「うぇえええ……」

 

 アリエラさん、やり手なのは分かるけど、かなり厳しいよ……

 本格的な治療は後回し、みたいに……。

 うなだれながら町への帰途に着く。

 

「それで、クエストの受け方ぐらい覚えてるわよね?」

「え、ええっと……」

 

 ウィミアは隣ですぐに頷いていたけど。

 あれ、どうやるんだったけ。

 説明があったような、なかったような……

 悩んでいる私を見てアリエラは呆れたように。

 

「はあ……よくそれでギルドマスター出来てるわね……。いい?まずは依頼のチラシを探して。その後依頼人本人と話す必要があるわ。そうして受ける流れになれば依頼人がクエスト管理部に登録してくれるから。それでようやく『ギルド』の仕事として請けられるわ」

「えと、管理部に登録しなくても受けられは……」

「出来なくはないけど、個人のやり取りになるからね。どちらかというならボランティアになるのかしら。というか聞くところそこなの?」

 

 何か聞く場所がおかしかったのかな……?

 私は考え込みながら歩いていると。

 

「いずれにせよ、やってみて、ね」

 

 いつの間にかカザンの町に到着していた。

 そのまま人通りの多い道を進んでいき、立ち看板の前に辿り着く。

 

「大抵はここに貼ってある奴から選んでいくけど、たまに家の壁とかにも貼ってあるわね」

 そういい沢山貼られたチラシを一つ一つ見ていくアリエラ。

「ふーん……じゃあ明日はこれをしましょう」

 アリエラが差し出したチラシを見てみると。

 

「……木の実を集める……?」

「詳しい話は聞いてみてからよ」

 そう言い早足で歩き出したアリエラを慌てて追う。

 そのまま追っていくと、民家の前にアリエラは止まった。

 

「ごめんください、依頼のチラシを見てきました」

 ドアをノックしアリエラがそう告げると、中からは私より少し下ぐらいの少女が出てきた。

 

「ハントマンさんですか?」

「ええ」

 アリエラがそう対応するとすんなり中に入れてもらえ、とりあえず私達も入って椅子に座る。

 

「あの依頼、私のなの。今度ね私のおにいちゃんが新人ハントマンとして旅に出るの。それで『旅人のお守り』っていう旅人の無事を祈って作られるお守りをあげたくて――」

 少女は熱心にアリエラに話し始め、アリエラも相槌を挟みながら話を聞いていく。

 

 依頼ってこうして受けていくのか……

 と、感心していると。

 

「というわけで、どうするの、フレニア?」

「えっ!?何を!?」

「……まさか、聞いてなかった、とか言わないわよね?」

 

 少し笑いながらアリエラは訊ねてくるが……明らかに怒ってる……

 

「すみませんでした……」

「はあ……この子のために木の実を三つ集めるかどうかよ」

 少女がいる手前かため息を吐きながらそれだけ言ってくる。

 

「え、ううんと、その、やると思います」

「……だって。よかったわね」

「うん!どうもありがとう!登録、後でしてくるね!」

 少女は嬉しそうに微笑んでいる。

 

「集めたらまたくるね」

「うん!」

 

 頑張らなくちゃ、いけない。

 私はそう思いながら、その民家を出て。

 

「……フレニア、大丈夫?」

「何が?」

 ウィミアに何か心配されてしまったが、訳が分からず聞き返す。

「……マスクナッツよ。木の実を集めるためには戦わなくちゃいけないわよ?まあもう拒否させないけど」

「え、ええ……」

 

 思わず顔が青ざめる。

 何って。

 一番苦手な相手だから。

 そんな私の肩にウィミアは優しく手を置いてきた……。

 

 

 

 翌日。

 

「いやぁ!もう私帰る!」

「何言ってるのよ!まだ一匹も倒してないでしょ!それに依頼は比較的急ぎ!」

 

 散々町の外をうろつくも、マスクナッツには遭遇できず。

 それどころかそれ以外のモンスター達に襲い掛かられ。

 それなりに傷も深くなってきて帰ろうとしたところをアリエラに引っ張って止められている。

 

「でも、もう無理っ!このままだと死んじゃう!」

「はいはい、分かったからさっさとこれでも食べて次行くわよ」

 そう言ってアリエラが渡してきたのはパロの実。

 

 仕方が無くかじって、アリエラを追う。

 

「しかしおかしいわね。ここまでマスクナッツに出会えないなんて」

 不可解だといわんばかりの表情を浮かべながらアリエラは辺りを見渡す。

 

「このままだと日が暮れるわ。もう少し急ぎ足で探しましょ」

「ええー………」

 

 前線で攻撃を受けている私としては、もう帰りたい。

 ウィミアは勿論後ろにいるけれど、アリエラも武器が弓なので後ろにいる。

 つまり、全部の攻撃を私が引き受けるわけで……

 服もあちこち血の染みが出来始めたり、解れたりし始めてるし……

 

 私が不満そうにしていると。

「……どちらにしろ、一旦マナ結晶でスキルを習得しておきなさい。そろそろ覚えられるでしょ?」

 私は袋から渋々マナ結晶を取り出し、前と同じように……

 

 ん……?

 練丹……?

 どうやら傷を癒せる技みたいだけれど…

 基礎強化のINTボーナスを取って……と。

 とりあえずその『練丹』というスキルを取ってみた。

 すると身体の使い方が何となく分かる感じがした。

 

 少しびっくりしながらウィミアを見ると、どうやらウィミアも同じようにしていたらしい。

「二人とも終わったわね。さあ探すわよ」

 

 

 その数刻後、

「いた!ようやく見つけた!これで帰れる!」

「まだ一匹目!」

 ラビ二匹に囲まれたマスクナッツを見つけ、すぐに切りかかりに行こうとして。

 

「ひゃっ!?」

 

 辺りが急に冷え込み、私は驚いてたたらを踏む。

 前を見ると三匹とも凍て付いた。

 後ろからつかつかとウィミアが歩いてきて、そのままラビやマスクナッツを触って、素材を回収していく。

 

「い、今の何?」

「……『ブリザード』……あんまり無茶しちゃ駄目」

 

 何故かウィミアに諌められた。

 まあ、見つかって浮かれていたのは確かだけど。

 

「で、肝心の木の実はちゃんとあったの?」

「ん……一つ」

 アリエラの問いかけにこくりと頷くウィミア。

 

 

 

「三つ目、と。二人ともお疲れ」

「ん……」

「やっと、帰れる……」

 

 その後結局日の沈む頃まで木の実集めに時間がかかり。

 とりあえず木の実は次の日に届けに行くことに。

 丁度、町にも到着し、宿屋に足を運ぼうとして。

 

「あ、一旦ギルド寄るわよ」

「いいけど……どうして?」

 アリエラが何か用があるらしくとりあえず付いていく。

 

「いえ、今日あまりにもマスクナッツが見つからなかったから何か原因でもあるのかと思ってね。まあ、あたしの思い過ごしだと思うけど」

「……それより、回復を使える誰か欲しいと思う……」

 

 今日一日戦い続け思ったこと、それは明らかに私達が長期戦に向いてないこと。

 アリエラさんは強いからいいけど、ウィミアは途中でマナ切れて杖で殴らざる負えなくなったし、私も私で傷を多く負うから嫌だし。

 

「まあ、今後はそういう人を探すこともしなくちゃいけないわね」

 元々分かっていたかのごとくあしらうアリエラ。

 

 そうして話をしているうちにギルドに辿り着き。

「じゃああたしは確認してくるから、二人はその辺にでも――」

「あ、あの!すみません!」

 アリエラが入ってすぐに、誰か女性に話しかけられたみたいだった。

 

 アリエラに続いて入ると、そこには金髪を後ろ一つの三つ編みでまとめている、前髪が短い白衣を着た女性がいた。

 

「えっと、あたしに何か用?」

「えっと、その。あのっ!」

 

 とりあえず私とウィミアは関係無さそうなので、近くの席に移動して話を聞きながら見守ることにした。

 

「もし用がないならもう行かせて貰うけど……」

「ま、待ってください!そのっ!今日見てました!ギルド、入れてもらえないですか!」

 アリエラは苦笑いし。

 

「……あたし、ギルドマスターじゃないのよ。一応今はあそこに座ってる黒髪の女の子のギルドメンバーなの。悪いわね」

 

 そのまま去ろうとして。

 ぐいと腕を掴まれつんのめる。

 

「わっ?!」

「それでもいいです!これでもヒーラーやってるんです!」

 

【挿絵表示】

 

「えっと、それなら……あの子と話をつけてきてもらえるかしら」

 アリエラは私を指差しながらそういう。

 

 ヒーラー……回復系……。

 取るしかない!

 

 その女性がこちらに振り向き。

「という事なのですが……」

「分かりました!」

「即答で大丈夫なの?」

 私が即答したのに対してアリエラが呆れたように返す。

 

「だってヒーラー……回復系だよ!」

 興奮して私が言うと。

 

「えっとー……その、なんていうかあれなんですが」

 おずおずとその女性が。

「回復……あまり得意じゃないというか、その……」

 

 えっと……つまり……?

 私がどういうことだか理解するのに時間がかかっていると。

 

「……回復、できないの?」

 ウィミアが代わりに質問したいことを言ってくれた。

「えと、その。有り体に言うとそうなります……」

 

 回復できないヒーラーって……ヒーラーなの……?

 そんな疑問が私の頭を過ぎっている。

 

「あっ、でも大丈夫です!殴るのは得意なんです!入ったら前衛で殴ります!」

 自信満々にそう宣言する彼女。

 

「……フレニア……フレニア、どうするの?」

「えっ?……あ、うん」

 呆然としている私をウィミアが声をかけて呼び戻した。

 

 まあ、回復使えなくても、前衛なら……

 

「分かった。大丈夫です。お名前は?」

「キーラです、一応それなりにハントマンはやってたりしてます。これからよろしくおねがいします!」

 

 名前を言った後、何故かアリエラに向かって礼をしている。

 

「いや、あたしじゃなくて……まあ、いいや。ところで見てたって言うけど…いつから?何かあったの?」

 アリエラがキーラにそう訊ねると。

「えっと、朝からで、特に何もありませんでしたけど……」

 キーラが不思議そうに答える。

 

「どうしたんですか?」

「いや、今日やけにマスクナッツが出てこなくてね」

「……?あ。ああ!私が倒しちゃってたのかもしれません!近くにうようよいたので!」

 

 アリエラが呆れたようにため息を吐き出し。

「フレニア、ウィミア、帰りましょ」

 どうでもよくなったみたいな表情を浮かべて、ギルドから出て行く。

 

「あ、あの、ギルドの手続き!」

 キーラが私を呼びとめ。

「あ、はい!」

 こうして新しく仲間が増えたのでした。

 




第二話投稿させて頂きました、双碧という者です。ぽちぽち戦闘しながら書かせていただいた内容でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか?書きながら進めていると、物凄くストーリー進行が何故か遅くなります…。こんな感じで進んで行きますが、もしよかったら、夏の空に浮かぶ積雲の如く、静かに優しく見守って頂けると幸いです。
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