「あ、ハントマンさん!」
翌日私達は少女のいる民家を訪れていた。
「えっと、これ」
「あっ……それは…!」
私が袋から木の実を三つ取り出すと、少女は顔を輝かせながら。
「どうもありがとう!さっそく作るからちょっと待っててね」
そう言って少女は部屋の奥のほうに行ってしまった。
「えっと、これって待つべき?」
「待つべきよ。仮に出来なかったり、何かあった時に対応できないでしょ」
アリエラに止められ渋々座って待つ。
少しして。
「……完成!」
奥から少女の声が聞こえ、その後何かを片手に持ってこちらに歩いてきた。
「えへへ……手伝ってくれてどうもありがとう!それでね…実はもう一つ旅人のお守りを作ったからお礼にあげる」
「いや、そんな!ありがとう」
少女から旅人のお守りを受け取り袋にしまう。
「それじゃあ大丈夫?」
「うん、みんなの旅も無事でありますように!」
私達が席を立ち家を出ると、少女は手を振りながら見送ってくれた。
「いい子だったね」
「そうね。それじゃ一旦クエストオフィスで報告しましょうか」
「え?」
アリエラの言ってる事が分からず、首を傾げる。
「……本当に大丈夫なの?クエストが終わったらクエストオフィスに行って報告、そして報酬の受け取りでしょ?」
「そんなこともあったような……なかったような」
「あったわよ!全く……」
そのままクエストオフィスに行き、報告をし報酬を受け取った。
「案外簡単なんだね」
「そうですよ。私でも出来るぐらいですから」
キーラが嬉しそうにそんなことを言う。
なんで嬉しそうなんだろ……。
「さて、と。じゃあお次はこのクエストね」
「え、いつ行ってき―」
「昨日、帰り際に良さそうだったから」
アリエラが私の質問を遮って答える。
そのチラシを見て。
「えっ…ギルドメンバー勧誘……?」
私達も苦労したのに、人の勧誘なんて出来るんだろうか。
表情を見て察したのか、アリエラが。
「ま、話し聞いてみて、ね」
「……大丈夫」
ウィミアと共にそう言われ、やむなく依頼人に会いに行くことに。
依頼人であろう女性はギルドオフィスの前に、不機嫌そうに立っていた。
恐る恐る声を掛けてみる。
「あのー……」
「ん?あっ、もしかしてアタシのギルドに入会希望の方!?」
「いえっ、そうではなくこのチラシを見てきたんですけど……」
女性のあまりの剣幕に押されながらも私はチラシを見せながら告げる。
「なーんだ、違うのね。まあ、依頼を受けてくれるなら構わないわ」
少し残念そうにしながらも、仕切りなおして話し出す女性。
「私はリタって言うの。早速依頼内容を説明するわね」
「あ、はい」
とりあえず話だけでも聞こうと思って、促す。
「アタシさ、まだ駆け出しのハントマンなんだけどギルドを立てたのよ。他の新人ハントマン達とワイワイ冒険したほうが楽しいし便利でしょ?…と思ったのに全然メンバーが集まらないのよ。かといって単身で遠くまでメンバーを探しに行くほど腕に自信もないしさ。ってことで、アタシの代わりにメンバーを勧誘してきてほしいのよ」
思ったよりも大変そうな内容で、少し戸惑う。
「えっと、何処を探してみればいいですか?」
とりあえず場所だけでも聞ければ……
そう思って訊ねてみて、リタは不機嫌そうに。
「…知らないわよそんなの」
「え」
思わぬ反応に素っ頓狂な返しをしてしまった。
「あー、ただ橋の向こうとかこの町にはいないと思うわ」
「どうしてそう思うんですか?」
リタは聞き飽きたみたいにうんざりした表情で。
「既に探したもの。探してない場所といえば、ロラッカ山洞とか南東の変な物がある場所とかね。その辺りならいるかもしれないけど」
一体どうやって橋の向こうを探してきたのかが気になったが、とりあえず置いておこう。
「えっとじゃあ、受けさせてもらいます」
「ホント!?助かるわ!最低でも二人は欲しいからね!期待して待ってるわ!」
矢継ぎ早にサラリと重要なことを言われた気もしたが、とりあえず、待っているメンバーに話をする。
「……というわけみたい」
説明すると、ウィミアはこくりと頷き、キーラはぼんやりとしていた。
アリエラがしっかりと頷き。
「じゃあ、実際に行かないとなんともいえないわね。とりあえず行くだけいって見ましょう」
準備を整えて、町から出発したのだった。
まずは近いほうに向かうことになり、南東にある赤い木のほうへ歩いていく。
着いてみると、四角いよく分からない物体がある。
「なんだろ、これ……」
私がそれに見入っていると、ウィミアが私の袖口を引っ張り。
「……仕事」
「あ、うん」
既に、キーラやアリエラは探しに行ってしまっているみたいだった。
私も探して見て周ると。
「……うぅー……あう……また迷子ですぅ……」
涙目になり、辺りをきょろきょろと見回している女性がいた。
「あのー、大丈夫ですか?」
「あわわわわっ!?た、旅人さんですか!?…び、びっくりしましたぁ…」
私が心配になって声をかけると、唐突に叫んだかと思うと、女性は尻餅をついて転んだ。
ウィミアが駆け寄り、手を差し伸べながら。
「……ギルド、入る?」
「ありがとうござ……え?」
その女性は驚きながら、私とウィミアを交互に見る。
「あ、えっと、まずは名前を……私はフレニア、でこっちがウィミア」
「えっと、エミリといいますぅ……それでさっきのは…?」
「実は……」
簡単にリタのギルドの説明を行ってみた。
ちょくちょくウィミアが補足説明を行ってくれたお陰で、何となくできた気がする。
そのお陰か、エミリは最後のほうは悩む素振りもなく。
「…というわけなんだけれど、どうですか?」
「……なるほど、それなら大歓迎ですぅ!私、旅には出てみたものの、おっちょこちょいだし、方向音痴だし……もう、全然ダメダメでして……迷ってばっかりで…仕事もできないで……うぅ…」
途中から悲しい愚痴になってきていたが、苦笑いで流すと、エミリは。
「…じゃあ、お先にカザンに向かってますね。失礼しますぅ」
そのまま、途中で教えたカザンへの行き方にしたがって歩いていった。
「……頑張った」
ウィミアが無表情のまま私の肩に手を置き、そんなことを言ってくれる。
「じゃあ、キーラさんとアリエラさんと合流して行こうか」
同様にロラッカ山洞にも向かってみた。
するとハリスという男性がおり、同じように勧誘したらカザンに向かうとの事。
ともかく依頼達成できそうで良かった。
そう思いながらカザンまで帰る。
すると、ギルドオフィスの前にリタと先ほど勧誘してきた2人が立って話していた。
こちらに気付いたのか、リタが近づいてきて。
「あっ、やっと帰ってきた!あんた達を待ってたのよ」
「どうでしたか?」
「…この2人、あんた達が誘ってきてくれたんだってね。上出来よ、ありがとっ!」
「それはなによりです」
とりあえず、依頼は終了みたいなので安心した。
しかし、まだリタは話を続ける。
「今、3人で話をしててね。とりあえず、このメンバーで旅をしてみることになったわ。これからじゃんじゃん冒険していつかビッグなハントマンになってみせるんだから!」
「それは楽しみね」
アリエラが微笑みながらリタたちを見守る。
「そうそう、私だってただ待っていたわけじゃないのよ。ちゃんと冒険に役立つスキル『地図製作』を入手したんだから!やり方をあんた達にも教えてあげるわ!」
そう言って、地図の書き方とかを教えてくれるリタ。
面倒というか、よく分からなかったのだけれど、ウィミアがちゃんと覚えてくれたみたい。
物凄く助かる。
そう私が感心していると。
「…じゃあ、善は急げってことで私達はそろそろ出発するわ。お礼はクエストオフィスにあずけておいたから、後で取りに行ってね。じゃ、あんた達の旅が素敵なものであるように祈ってるわ。またどこかで、ね!」
そういってリタたちが歩いていこうとして。
エミリだけ逆方向に歩き出した。
慌ててリタが引っ張っていくけれど。
「大丈夫かしら、あの3人……」
アリエラが心配そうにその背中を眺めていた。
キーラとアリエラが報酬を受け取ってくれるという事なので、私とウィミアは先に宿屋に戻っていることにした。
正直、今の活動はハントマンっていうより、何でも屋みたいな感じがしてならないんだけど。
帰り道に呟いたら、ウィミアは、能力の関係だから仕方ない、みたいなことを返してきた。
まあ、そうなんだろうけど。
そのウィミアは今お風呂に入っている。
私はもう済ませて、パジャマに着替えている。
ここしばらく一緒に生活して思ったことは。
「あの、もふもふしたの触りたい……」
そう、とてももふもふしていそうなあの耳を物凄く触りたい。
そんな衝動に駆られることがしばしば。
身長も私より少し低いから、丁度高さが触りやすい位置だし。
でも、年上だし……触ったりしたら機嫌悪くなったりしそうだし……。
なんとか、事故としてでも触れないかなぁ……。
「……触りたいの?」
「うひゃあぁああ!?」
私が思考に浸っている間に、ウィミアがお風呂から上がっていたらしい。
急に声を掛けられ、とんでもない声を出してしまう。
「い、いつから……?」
「………最初のほうから」
バスタオルを巻いたままの姿のウィミアは、無表情で私を見つめてくる。
うう……怒ってるのかも分からないよ……。
「……触りたいの?」
先ほどと同じ質問。
触らせてくれるのかな……でも、欲望に忠実になって大丈夫なのかな……。
「…………」
ウィミアは無言で、表情を変えず見つめてくる。
「さ、触り、たいです」
「ん」
私の言葉に頷き、ウィミアは近づいてきて。
ポフン。
「ん……?!」
私の膝の上にまるで猫みたいな姿で頭を置いてきた。
「………撫でないの?」
んんんんんぅっ!
恐る恐るもふもふな耳に手を伸ばし撫でると、想像以上にもふもふしていて思わず頬が緩む。
何これ、こんなにもふもふなの?!
私の思い込みかもしれないけど、ウィミアも満足そうな表情してる気がする。
そんな至福の時間をしばらく過ごしていると。
「あ、あなたたち、何してるのよ……」
アリエラとキーラが帰ってきて、アリエラが呆れたようにそう呟いた。
キーラが羨ましそうにしていたのはまた別の話。
「まったく、そういう事はちゃんと服着てからしなさい」
「すみません……」
「ん……」
アリエラに怒られて、二人で謝る。
「えっと、まあ、2人も悪気があったわけでもないですし……」
キーラが助け舟を出してくれ、それを受けて。
「…ま、そうね。今度からは気をつけなさい」
アリエラのお説教タイムは終了した。
「それより、明日の仕事よ」
そう言いながら渡されたのは、例のチラシで。
「えっと……配達の依頼……?」
私がアリエラを見つめ返す。
「そろそろこの町の周りから外に出てもいいくらいだと思ってね。もう話は聞いてあるわ。というか受けてあるの」
「え」
「ミロス城下町のモテモテ騎士……当然匿名よ?まあ、その人にこの荷物を届けるって話」
アリエラは袋から預かったと思しき荷物を取り出す。
「大体到着まで半日って所かしら。当然モンスターと遭遇したら戦闘はするしね」
当然の如く進めていくアリエラに。
「ちょ、ちょっと待って!拒否権は?」
「無いに決まってるじゃない」
「ええー……」
がっくりと落ち込む私を見てキーラが。
「観光できますよー?」
と、慰めなのかなんなのか分からないことを言ってきた。
翌日。
「ひやあああああっ!?」
私は思わず後ろに走って逃げだした。
「ん……」
その直後ウィミアが氷魔法でスライムを倒す。
正直橋の向こうの敵が硬く、怖いとは思わなかった。
思いっきり切りつけてみても傷を負ってるようには見えなかったし。
「……何やっているのよ、あなたは。メイジに守られるサムライなんて見たことないわよ」
「だってぇ……」
「だってもなにも無いわよ。大体そんなんだと後衛が困るでしょ!」
アリエラが怒った表情でそんなことを言う中、キーラが困ったように笑いながら。
「まあまあ、アリエラさん。そんなに怒らないで?私が頑張りますから」
「そういう問題でもないのよ……」
がっくりと肩を落としながらキーラの言葉に反応するアリエラ。
「いい?今後この子がこうやって逃げたり、守りに徹すると、私達はその分攻撃しなくちゃいけなくなるし、この子を含め守らなくちゃいけなくなる。今は私達の方がモンスターより強いからいいけど、強敵にあったら、そんなことじゃ勝てないし、最悪誰か死ぬわよ?」
私を説得するようにアリエラは話し始めるが、怖いものは怖いし、無理そうなのになんで攻撃しなくちゃいけないのか分からない。
そんな私の様子を見て諦めたのか。
「……といっても説得できないのはとうに分かっているんだけど」
そう言ってアリエラは先に歩き出していってしまう。
「これから直していきましょう!」
キーラのそんな言葉が胸に刺さったままミロスに到着した。
「じゃああたしとキーラは荷物を届けてくるから、フレニアとウィミアは宿をお願いするわ。取った後は自由に散策していて構わないから」
そう言いすたすたと歩き去ってしまうアリエラ。
私達も宿のほうに向かい予約をしておく。
「それじゃあ、後は自由にしていていいんだね?」
「ん……」
ウィミアが宿に残ってしたいことがあるらしく、私は宿はウィミアに任せ、観光にでる。
カザンとは雰囲気も異なっていて、白に近い石畳で綺麗に舗装され、建物も青い屋根に映える灰色の石壁。
花壇がいたるところにあり、花が咲き乱れている。
まるで時間がここだけゆっくり流れているような、そんな錯覚に陥るような町並。
ぼへーっとしながら歩いていると、騎士の宿舎と思しき場所に差し掛かった。
その入り口の前に、鎧を着た、緑髪の女性が何か悩んでいる様子で立っていた。
「あのーどうしましたか」
「ん?ああ。いや、特になんでもないのだが」
近くに並んでみると私と同じくらいの背丈で、顔立ちに少し幼さが残っている……気がする。
私が声をかけると咄嗟に笑いながら、そんなことを言って立ち去ろうとする。
「あっ、待って!私ハントマンで!もし良かったら相談してくれませんか?」
私が立ち去る寸前のところで呼び止めると、彼女は困ったような表情をしながら。
しかし、話してくれる気にはなったようで。
「ふむ……分かった。実はな、私はまだ騎士見習いなんだ」
どうやら、話を聞いていくと、力不足でまだ騎士団に所属することができないらしい。
女性だというのもその一つの要因になってしまっているとか。
「というわけなんだが……」
どうにもできないだろうな、みたいな、諦めた表情を浮かべる彼女。
でも……。
「だったら、私達のギルドに入って、旅しませんか?」
「え……?」
私の提案に彼女は戸惑いを隠せないようだった。
まあ、無理も無いとは思う。
だって自分でも驚いているから。
「と、とりあえずすぐには答えをだせない。騎士団の人にも話をつけなくてはいけないから」
そう女性は言って、門をくぐる。
「じゃあ、一応名前だけでも!私はフレニア!ギルド、シャルテリアのリーダーなの」
「私はセルリーと呼ばれている。それではまた機会があったら」
そう言ってセルリーは宿舎の中に入っていく。
…………。
綺麗な人だったなぁ。
あの人が仲間に入ってくれれば、私の負担も減る気がするのに。
そう思いながらまた、町の散策に戻った。
依頼を完了したアリエラとキーラと共に、翌日カザンに帰り。
その日はそのまま宿へと帰って泊まった。
その次の日。
なんだか町が騒がしい。
昨日の今日なので今日は予定はない。
そのはずだったのだけれど。
「おい、聞いたか?例の、怪物がでたって話!」
「ああ、聞いたよ。何でも名もなき小洞に手強い怪物が出たとか…」
「まさかあんな場所にな…もう、だいぶハントマンがやられてるんだろ?」
「ああ、事態を重くみて、大統領府の方も動き出したらしいぜ。ミッションを出して討伐するハントマンを募ってるらしい」
宿屋入り口のところで男2人がそんな噂話をしていた。
その噂を目聡く聞きつけたアリエラが。
「ねえ、いいかしら」
「よくないです」
物凄く嫌な予感がする。
「いいから。そろそろ腕を試したい時期だものね?」
「全くそうはおもわないです」
そんなに強い相手と戦いたいなどとは思いもしない。
なるべく安全に活動していければ、なんて思っているのに。
「……これはギルドの力量を見るための試練みたいなものよ?見誤らないように、こういったミッションは積極的に受けるの。で、無理そうなら引く。それが鉄則よ」
「そうですねー。私達もやってみたいですし」
キーラとアリエラは二人揃って頷きあう。
ええ……。
「フレニア………行こう?」
「ウィミアまで……!?」
絶望的な気持ちになりながらクエストオフィスまで向かう。
ミッションを受付で受け、メナスから詳細を聞けといわれた。
今すぐ逃げ出したい気持ちで一杯なのに。
「お前達も討伐に参加するのか?本当に大丈夫なのか?まあいい。今はとにかく人手が必要だ」
メナスはそんなことを言ってくる。
涙目でアリエラを見つめ返すが、怒ったような表情で首を振られた。
うう。
その間にも説明は続き、その小洞の地図を受け取り、送り出された。
「……で、どこだっけ?聞いてなかったから、もう一回……!」
「東の橋を渡って北に行った所!さあ、ごねてないで行くわよ!」
「待ってってああああああああっ!」
アリエラに襟首を掴まれ、私は町の外まで引きずられていった。
第三話投稿させて頂きました、双碧という者です。うだるような暑さが続く中書かせていただいた内容でしたが、お楽しみいただけたでしょうか?中々ゲームと合わせて書いていくと締めを考えるのが難しいなと感じ始めています。こんな調子で続いていきますが、もしよろしければ風鈴を凪ぐそよ風の如く、優しく見守って頂ければ幸いです。
なお、近々オリキャラの詳細を上げる予定です。