セブドラ冒険記   作:双碧

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第五話~探偵フレニア~

「おい、それで一体犯人は誰なんだ?」

 私はそう依頼人にせまられている。

 一体どうしてこんなことになってしまったのだろう……。

 

 

 

 数刻前。

 

 大統領直々のミッションをこなすために今日は戦わないで、準備に専念しようという事になり、町の店へ買出しに。

 ウィミアとキーラは別に必要になるものがあるとかで、私とアリエラが一緒に行動することになった。

 その帰り道。

 

「でも、ミッションなんて大層なもの、拒否権もなかったなんて……」

 私は今朝のことを思い出しうなだれながらそう呟く。

「そんなに戦うのが嫌?」

 私の呟きを聞いてか、何か含みのある笑みを浮かべて尋ねてくるアリエラ。

「えっと、まあ、その、はい」

 

 隠しても仕方ないので素直に頷いておく。

 すると、それは予想していたような動きでチラシを出してきて。

 

「それじゃあ、今日これからこの依頼を受けましょ?急を要するしね」

 

 そのチラシには、犯人を捜してくれと書いてある。

 場所は宿屋の地下の酒場……?

 一体何の犯人なのだろう。

 でもそういった依頼なら、気楽にできるからいいかもしれないと思い、大喜びで頷いた。

 その時は、まだ私は、そう楽観視していた……。

 

 

 

 ウィミアとキーラの到着を待ってから、酒場に向かった。

 依頼人はカウンター席にいるというので、そこまで向かうと。

 

「おめーが俺のエビフライを食ったのかーっ!?」

「ひっ、いえ違いますよ!」

 

 カウンターにいるオジサンにいきなり怒鳴りつけられ、思わず縮こまる。

 

「あ?違う?じゃあ誰が食ったって言うんだ?」

「えっと……つまり、その犯人を捜しにきたのが私達、ということになるの、かな?」

「そうみたいね」

 

 アリエラに内容を確認するとそう言われた。

 

「犯人を捜すためにきた?おー、さっさと犯人を見つけ出せ!」

 

 カウンター席で一人盛り上がっている男性。

 その周りには、酒場のマスター、カップルの男女、旅人と思しき男性と、ウェイトレスのカリユ、そして常連客だという男性が、白けてた目でその男性をみていた。

 

 マスターが軽くため息をつきながら、私達に説明を始める。

「簡単に状況を説明するとだな。被害者のこいつはいつもの時間に来て、いつもの席に座り、いつもの酒を頼み、いつも通りエビフライを注文した。それからやはりいつもどおり酒を三杯飲んだころに居眠りを始めたわけさ。それでしばらくして起きたらエビフライがないって言いやがる。こいつが暴れだす前に犯人を見つけてくれ」

 マスターはそんな無責任なことをサラリと言いながら、私達に全てを放り投げた。

 

「どうしよう……」

 

 私が困っていると、ウィミアが袖をくいっと引っ張り。

 

「……話、聞いてみるべき」

「そ、そうだね!」

 

 気を取り直して、近くに居た常連客の男性に話を聞いてみることにした。

「えっと、一応話を聞いてもいいですか?」

「あーかまわないけどな。俺はここの常連だよ」

「ってことは……」

「もちろん被害者のことも知ってる。本当に誰が食べちまったんだろうなぁ。まあ、ここのエビフライは美味いから気持ちはわからないでもないが…」

 

 そんなに美味しいの。

 あとで来て注文してみようと、心に留めて、今度は近くの旅人の男性に話を聞いてみる。

 

「えっと……」

 私が話しかけようとした時点で、びくりと震え始め。

「ぼ、ぼくは今日、た、たまたま、この店に来たたたたんです」

 おどおどとした感じだったが、えっとつまり。

「旅、しているんですね?」

「え、あ、はい。旅を…しているんです。な、なにが起こったのか、さっぴり……さっぱりわかりましぇん」

 

 情けない声を上げて震えている男性をみて、こうはなりたくないなと思いながら、残りの人の話を聴こうとして。

 

「聞いておきましたよ~」

「ん……」

 

 ウィミアとキーラが既に聞いておいてくれたみたいだった。

 

「えっとですね。マスターと、カリユさんからですが、最後のエビフライだったそうです。あと、カリユさんは動き回っていたから覚えてないって」

「……夕食後、お酒のみにきただけって」

「うーん……」

 

 今まで聞いた話だけだと、全くわからない。誰かが嘘ついていてもおかしくないし……。

 もう少し詳しく話を聞く必要がありそう。

 そう思って、依頼人のお客さんに話を聞いてみる。

 

「えっと、詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

「あ?あー……マスターよー実はあんたが食べたんじゃないのか?俺の所にも近づき易いし、近づいても怪しまれねぇし」

 

 それは一理あるかもしれない……。

 マスターの話も聞いてみることに。

 

「そう言われていますがどうなんですか?」

「俺を疑ってるのか?」

「ええと、一応?」

「はぁ……俺が怪しいというなら料理を運ぶカリユの方が怪しいと思わないか?カウンターの外にいるわけだし。証拠隠滅も楽だぜ?」

 

 そう言われるとそんな気もしてくる。

 

「一応調べさせてもらっても?」

「俺を調べても仕方ないと思うが…」

「そんなことありませんよー?マスターなら被害者に接近し放題ですしー」

 

 キーラがそんなことを言い始める。

 

「まぁ、確かにそう言われりゃあ、そうだろうとも」

 渋った顔でそう告げるマスター。

 キーラは嬉しそうに続けて、

 

「じゃあ――」

「だが、客のを食べる非常識なことをするくらいなら、自分で作って食べるぜ」

 マスターがキーラの言葉を遮る。

 少し残念そうにするキーラだが確かにその方が安全かも。

 私がそう納得しかけたところで。

 

「いや、待て。その証言はおかしいぞ」

 

 被害者が異議を唱える。

「どこが?」

「マスターさっき、『最後のエビフライ』って言ったよな」

「言ったか?」

「言ってましたー」

「俺は確かに聞いたぞ」

 

 キーラと被害者が同時に口を開き、マスターの言葉を否定する。

 

「つまりマスターはエビフライが食べたくても、客に全部出しちまったから食べられない。それで我慢できずに俺のを食べちまったんだな!」

「確かに今日のエビフライは終了したが、でも、さっきのは『言葉のあや』ってやつでだな、エビフライならつまみ食いしなくても、いつでも食べられるって意味だぜ?」

「さっきちょうど食べたくなって食べたんだろ!」

「そんなことないって。やれやれ…困ったもんだ。やったという証拠も、やってないという証拠もねぇからなぁ」

 

 マスターと被害者の会話を聞いていて、わからなくなってきた。

 

「どう思う?ウィミア」

 とりあえずウィミアに聞いてみる。

 ウィミアはいつもの無表情で。

 

「………証拠不十分」

 

 とだけ呟いてくれた。

 

「まだ調べる必要があるってこと?」

「ん……」

「それじゃあ……」

 

 私はさっきマスターが言っていたカリユに目を向ける。

 

「私が疑われてるの?どこに証拠があるって言うのよ。失礼しちゃうわ」

「でもマスターより怪しいって言ってましたし……とりあえず詳しく話が聞きたいので……」

「ウェイトレスならどこに移動しても怪しまれませんからね~確かにマスターよりも怪しさは増すかもしれませんね~」

 

 私とキーラがそんなことを言うからか、怒ったようにカリユは。

 

「マスター、変なこと言わないでくださいよ」

 マスターにきれていた。

 しかし、マスターは毅然として返す。

 

「でも、よく客からいただいてるだろ?」

「え、そうなの?」

 私が驚いたように聞くと、カリユがふくれっ面しながら。

「人聞きの悪い。お客様がくださるのをいただくんです。勝手に食べたりしません」

 そこはプライドがあるのかはっきり言い切っている。

「それに今日は誰からももらってないですよ。うぅー、お腹すいてきたー」

「おー、すまんすまん。いつもなら賄いの時間か」

「早く事件を解決してください!とにかく私は常連さんが怪しいと思います。カウンターの上、よく見てください」

 

 お腹が減っているからか、凄い剣幕で怪しいというカリユ。

 それに気圧され常連客にも話を聞くことに。

 しようとしたところで、キーラが。

 

「ばっちりです!多分あの人ですよ!」

 

 と、謎の自信を持って宣言した。

 

「一応その理由を聞かせてもらってもいい?」

「テーブルの上にエビフライが沢山あります!その中に混ぜてしまえば分かりません!」

 確かにテーブルの上には山盛りのエビフライの皿があるけれども。

「証拠不十分だと思う……」

「じゃあ、あっちの何も注文してない旅人さん」

「どうして?」

「飲食店で何も頼んでないのはおかしいです。言動もおかしいし」

「ままだ注文してないい……だけですよよよ。あ、あそこの男性ではないいいいでしょうか?さっき被害者に近寄ってましたもももん」

 キーラはその発言をうけ、盛大に落ち込んでいた。

 

 ……向いてないみたいだね、こういうの。

 

 というわけでカップルに話を聞いてみる。

「近寄ったって話が出ましたけど……」

 私が訪ねると、面倒だなという表情丸出しで答える男性。

「たいしたことじゃないだろう。手の届くところまでは行ってないしな」

「どうして近寄ったんですか?」

「知り合いに似てたからだな。でも違ったからそのまま席に戻ったんだ」

 私と男性が会話している間に、急にウィミアがその男性の椅子の下にしゃがみこむ。

 

「どうしたの?」

「……これ」

 エビフライの……尻尾?

「……証拠」

「まてまてまて!それだけで俺が犯人とは――」

 焦る男性とは裏腹に、ウィミアは落ち着いて辺りを見渡し。

 

「……わかった」

 ウィミアがすたすたと被害者の席まで行くと。

「ん……」

 大きく頷き、こっちにくるように合図してきた。

 行ってみると、被害者の前の皿は全部きれいに片付いている。

 

「………これで確定……犯人はこの被害者」

「お、俺が犯人だっていうのか~!?」

 

 私が状況を把握し口にしてみる。

 

「エビフライを食べてる途中で寝てしまったから、エビフライの尻尾が床に落ち、それをカリユさんが蹴ってカップルの椅子の下に転がった。……うん。つじつまがあうね」

「そんなのは作り話だ!俺は食べてない!俺は食べて…ない…」

 往生際が悪く食べたことを認めない被害者……いや、犯人。

 そんな風ににらみ合ってると、今まで静観を守っていたアリエラが近寄ってきて。

 

「いえ、食べたのは貴方で間違いないわね……でも犯人はいなかったのよ。ただ美味しすぎるエビフライがあっただけで」

「…あぁ、そうだな。エビフライ…エビフライは美味いんだよ… ありがとうキミたち。よくぞこの難事件を解決してくれた。これは俺の気持ちだ」

 依頼人からフレイムのグラフを何故か受け取った。

 報酬も別に渡すとの事で。

 そして酒場から出て、何故かアリエラに頬を引っ張られた。

 

「痛い痛い!なんで!?」

「今回のは解決が目的で、犯人を懲らしめる必要もなかったのよ!分かってた!?」

「ええ……」

 

 そんな理不尽な……。

 

「でも面白かったです!」

 キーラがそんな風に無邪気に笑っているけれど。

「こんなクエストもうしたくない……」

「なら、戦うしかないわね?採取も敵と隣り合わせよ?」

「ふええぇ……」

 こうして探偵の真似をしたクエストは終わったのだった。

 

 

 

 その夜。

 明日の明朝にミロスに向かい、クエストをミロスで受ける予定になっているので、早めに寝なければならない。

 それは分かっているのだけれど……。

 

「寝れない……」

 

 ハントマンとして生活していくには戦わざるおえない状況にあるという事実が、重くのしかかってくる。

 仕方なく寝返りを何回か打っていると、隣のベッドで横になっているウィミアと目が合った。

 

「あれ、まだ起きてたの?」

「ん……」

 ウィミアはそういいながら、枕元の本を指差す。

 

「……読んでた」

「早く寝ないと、明日起きられないよ?」

「……フレニアも」

「私は寝れなくって」

 

 自虐気味に笑いながらそう告げる。

 

「私さ、ハントマンはもっとスマートで、かっこいいものだと思ってたの」

 

 ウィミアに愚痴をいい始める私。

 かっこ悪いなぁなんて思いながらも、そうしていないと泣き出しそうで。

 空笑いしながら話し続ける。

 

「ハントマンになったらそうなれる、なんてさ。そう思い込んじゃってて。親の反対押し切って飛び出てきたものの、やっぱり言うとおりだったよ」

「……後悔してる?」

「……ううん、後悔は、しないようにしてるんだ。絶対に。いや、ごめん。後悔はしてる。でも、どちらかというと反省かな?なんて安直な判断しちゃったんだろって」

 

 そう、後悔してもなんにもならないなら、同じことをしないようにしなくちゃいけない。

 そんなことは分かっていても、実際はなかなかうまく行かないもので。

 

「ホント、ここ最近、能力もないのにこんな大きな仕事ばかり任されて、困っちゃうよ……私じゃなくてウィミアたちが凄いだけなのに」

 

 怪物を倒したのも、クエストを解決できたのも。

 私はあまりにも無力すぎる。

 でも、自分自身、解決できるかといわれると、無理だと思う。

 

「だからさ、この私の作ったギルドだけど…ウィミア達にあげようかなっても考えたり……どうしたの?」

 突然ウィミアが私の布団に入り込んで抱きついてきた。

 私がわけが分からず困惑していると。

 

「……フレニアは分かってない」

「え」

「……私はフレニアだから力貸してる。アリエラもそう。キーラは……ちょっと違うけど」

 

 ウィミアが意外なことを言い出す。

 

「でも……私が足手まといに――」

「違う!」

 

 珍しく声を荒げるウィミア。

 それに驚き私は声を詰まらせる。

 

「……頑張ってる、大変だけど頑張ってるフレニアだから。信頼できるから」

 

 そういうと更に私をぎゅっと抱きしめてくる。

 その優しさに思わず涙が零れる。

 ウィミアは心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる。

 

「……フレニア?」

「ううん。嬉しくて」

 こんな私でも、必要としてくれるんだから。

 頑張って応えていかなくちゃいけない。

「ありがとね、ウィミア」

「ん……」

 そう決意し、そのまま眠りに付いた。

 

 

 

 翌朝、アリエラに呆れられ、キーラには羨ましがられてしまった。

 その後、出発の食事で一人地下の酒場にきていた。

 

「マスター、エビフライとジュースを一つ。それとトーストを」

「あいよ」

 

 私は昨日のエビフライの話を聞いてどうしても食べたくって、無理してきたのだ。

 だって、もしかしたらもう食べれないかもしれないし。

 周りを見渡すと、今は私しか来ていないみたい。

 

「先日は世話になったな。お待たせ、エビフライとトースト、それとジュースだ」

 

 マスターが直接届けてきてくれた。

 皿を見てみると、エビフライが二つある。

 

「あの……」

「いいんだ。おまけだからな。先日の礼っていうにはちゃちいけどな」

 マスターはそう言いながら軽く頭を掻く。

「ありがとうございます!」

 

 礼を言って、エビフライを口に運ぶ。

「!?おいしー!」

 何これ!?カリカリの衣に、中のエビが滅茶苦茶プリップリなんですけど!

 思わず一本ぺろりと食べきってしまう。

 確かにこれは癖になる。

 二本目も食べようとして……視線を感じた。

 振り向いてみると、いつの間にかウィミアがいた。

 

「ウィミア…?どうしてここに?」

「……食べ終わったからエビフライ」

 

 そういいながら私のエビフライをじーっと見てくる。

 食べたいの、かな……

 

「食べる?」

「ん……」

 

 私がウィミアの口にエビフライを運ぶと、ぱくっと食いついた。

 ウィミアはそのままもぐもぐと咀嚼し始める。

 その様子が何故か小動物を連想させ、とても可愛い。

 って、そんなことしてたら朝食食べ損ねちゃう!

 急いでトーストを掴み、ジュースで流し込んで。

 

「ん!?ぐっ……ゲホゲホ……」

 思い切りむせてしまった。

「……フレニア大丈夫?」

 ウィミアに背中をさすられてようやく落ち着いてきた。

 

「ふうっ……ありがとウィミア。それでアリエラさんとキーラさんは?」

「……入り口で待ってる」

 そうして急いで町の入り口に走っていった。

 




第五話を投稿させて頂きました、双碧という者です。期間をかけた上とんでもなく進展しない内容で申し訳ないです。
半分生存確認みたいになってしまいましたが、温かく見守って頂ければ幸いです。
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