幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第一章
第一話:プロローグ


深緑にて数千の石段を上り。

小動物達が石段を上る人物を見つけると、寄り添うように集まっていく。

 

巫女装束のような着物を着飾り、背には二本の刀を揺らす。

その身から放たれる神々しい威圧にも等しい存在感は人間ではないと語るように。

 

「・・・ん」

 

石段を上りきれば、その頂点には鳥居がそびえ立ち。

こじんまりとしているも、神社が建っていた。

 

「・・・」

 

誰も来ることは叶わず。

その場所を、神社を知るものはいない。

その場にあるのは。

ただただ寂しさと孤独が木霊していた。

 

 

ひとえに求めたのは何だったのだろう。

望んでその身へ変わったわけはなかったが、それでも。

 

幸せになりたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこそこ賑やかな場所で国の中心とも言える城がある王都。

そこにぽつんと建っている小さな教会は捨てられた子供達の拠り所であり、住家でもある孤児院だった。

 

その教会の屋根に座っているその人物は体と顔を隠している。

見た目だけでは怪しい人物ではあるが身長が低く、子供にしか見えない。

 

「ん・・・」

 

ユーリ・トルヴィエ・スカーレット。

その名を知るものは本人しかいないが、教会の孤児達からは頼るになる姉としてその存在を小さく顕わにしていた。

 

「ユーリ姉ちゃんー!ご飯だってー!」

 

「ん、分かった」

 

屋根にいることは珍しくなく、その場に行けるのはユーリ本人のみ。

そのため用がある場合はあのように声をかけなければ気付かない。

 

「ん、よっ・・・っと」

 

数mはある高さから一呼吸して飛び降りると何事もなく呼びに来た子供と共に教会へと入っていく。

 

「ユーリ、また屋根に登っていたのですか」

 

「ん・・・風が当たって気持ちいから」

 

「それは構わないのですが・・・怪我はしないで下さいね」

 

「うん」

 

優しく諭すようにユーリへお小言を言ったのは教会で唯一大人の女性。

教会の管理をしており、孤児を引き取ると決めた人だった。

 

「それでは、頂きましょう。日頃の感謝を忘れずに」

 

シスターと呼ばれる職の女性は慈しむように祈りを捧げると子供達も揃って捧げた。

ユーリも同様に。

 

 

 

食事を終えると、ユーリは子供達の食器を片付けていく。

こういった作業はユーリが率先としてやりたがり、その手際も良いことからシスターは任せていた。

 

「終わり、と」

 

食器を洗うときは魔法による水を使って洗う。

生活魔法と呼ばれる類ではあるがシスターはそれを扱うのは精一杯であった。

だが、ユーリはその比ではない。

生活魔法は勿論、攻撃に用いられる魔法を全て扱うことが出来た。

生まれつき扱える魔法は限られている。

【火・水・雷・土・風】の属性魔法のどれかが一般的だ。

ユーリの場合はその五属性に加え、【闇・光】など特別な属性も扱えた。

当然そのような人物が表れば国は目を付ける。

今のユーリがいる国は平和ではあるが周りの国が争っており、その矛先がいつこの国に向くか分からないのだ。

だからこそ自分の貴重性とその有用性をいの一番に考えた。

国に気付かれないように強力な封印を己に施し。

魔力量も平民に落としきった。

持ち前の身体能力までは無理だったが、それでもごまかせる程にはなっていた。

 

「は、ふ・・・」

 

シスターはこのことを知らず、本当の名も知らない。

生活魔法が扱える少女としか思われていないのだ。

 

「シスター。風、当たって来る、ね」

 

「・・・そうですか。怪我はしないで下さいね」

 

「うん、分かってる」

 

ユーリは教会の外へと出ていくと軽く足に力を入れて屋根まで飛び上がる。

その姿は辺りからはいつものように見られており、特に訝しむ人も無いのだ。

 

「ユーリちゃん、また風に当たってるのかい?」

 

「ん、そだよ」

 

「そうかい・・・気をつけるんだよー」

 

このように怪我をしないように見守る人までいる。

この教会は近くにいる人や、子供好きの大人等がよくやってくる。

最初こそユーリの屋根にいる姿を危なく思っていた人もいたが、それも毎日続けば慣れていく。

 

「ふ、ぁ・・・」

 

寒い寒い冬を越し、暖かい春の兆しが来はじめていた今日。

ユーリの日課であり、暇潰しの屋根で風当たりは心地好い暖かな風が優しい眠りへと導いていく。

 

「ん・・・」

 

いつもの風景と変わらない。

ユーリが過ごすそれは変わることが無いのだ。

 

 

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