幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第十一話

木々が所狭しと生い茂り、ちらほらと果実が見える風景。

空は雲があるも晴天と言える天気であり、現実では素晴らしい一日と思えるのだろう。

そんな世界でぽつんと一人の少女が寝転がって寝ていた。

真っ白で白銀そのものを束ねたような美しい髪。

日焼けを知らず、色白い肌もまた美しさを。

そんな少女は無防備にも森林の一角で寝ていた。

 

「んぃ・・・」

 

普通ならば猛獣や魔物が生息する森林は危険地帯。

しかしこの世界は寝ている少女が創り出した心象世界。

己の心の風景を具現化した世界こそが少女がいまいる世界だ。

そしてその側には真っ赤な髪に紅白の装束を身につけた少女や、本の山を背に寝ている少女、木の枝に登りそこでくつろぐ少年、剣を側において目を閉じる青年、そしてそれらを見つめて見守る男性が。

有り得ないはずの存在達は招かれた客であり、身内でとても信頼しあう関係。

 

「んぁ・・・んん・・・」

 

『主よ、起きたのか』

 

「んー・・・おふぁ、よ・・・るひゃん・・・』

 

まだ眠たそうにしながらも身体を起こした少女。

主と呼ぶ男性は優しい表情で見ていた。

 

『にゃぐ~・・・んっ、おはよ~』

 

本の山で寝ていた少女も目を開けて周りを見渡す。

 

「んー・・・」

 

『主。眠いのならばまだ眠れば良い』

 

「んーん・・・」

 

少女は横に首を振り、頭を早く覚醒させたいと思いながらもまだ取り付いている眠気に負けかけていた。

 

『ユーリ、まだ眠いなら寝てて良いんだよー?』

 

『そうだ。主ぐらいの子供はもっと寝るべきだ』

 

「あーうー・・・」

 

心配そうに言われながらも言葉の節々に甘やかそうとしていた。

 

『全く、うるさいな。好きなようにさせてやれ』

 

不機嫌そうに言いながら青年は立ち上がるとどこかへ去っていこうとする。

その前にユーリが服の裾を掴んだ。

 

「ん・・・ごめん、なさい」

 

ぐすっと泣きそうな表情になっているが我慢し、謝った少女の姿に罰が悪そうな青年。

 

『あーっ!ユーリを泣かせたなー!』

 

『うにゃっ!?ユーリ大丈夫だよ!?』

 

『ぐっ・・・悪かった。俺もそこまで責めてないから安心しろ』

 

「ん・・・うん・・・」

 

ぐすぐすと声を殺しながら涙を拭くと、ふにゃっと笑う。

他人には絶対に見せないユーリの笑顔。

その表情を見て、また自分達に笑いかけてほしいと願った者が今ここに集っていた。

精霊達の王が集まり、そしてユーリを好く。

 

『・・・ユーリ。その表情、絶対に人には見せるなよ』

 

「んう・・・?」

 

『んー?嫉妬かぁー?ボーデン』

 

『うっせーよ!フィアナ!』

 

『そうやってまた必死に弁明する辺り怪しい!どうなんだー!』

 

「・・・ふふ」

 

フィアナと呼ばれた赤髪の少女はボーデンを追いかけ回す。

その時草が動き、ユーリが視線を送ると。

 

『わー!』

 

『にゃー!』

 

幼い少女と少年が驚いたかーと言った表情で出てくる。

 

「きゃっ・・・」

 

『母様、おどろいたー!』

 

『母様、大丈夫・・・?』

 

年齢的にはユーリはまだ結婚も恋愛も出産もしていない。

それでもなお母様と言われるのはユーリがこの幼い子供達の名付け親だからだろう。

本当の親ではないのを知りながらも、慕ってくれていた。

 

「大丈夫、だよ」

 

『ほんと?こう、びくっ、って動いたから』

 

「大丈夫・・・ルクス、ヘレナ。おいで」

 

ちょいちょいと手招きすれば二人は喜んでユーリに抱き着いた。

 

「・・・出る、よ」

 

ユーリがそう呟けば、精霊達は全員集まる。

どんなことをしていても必ず。

ユーリが手を翳し、縦に凪ぐとそこが裂けて扉が現れる。

現実世界と心象世界を繋げる扉を顕現させるとみんなそこを潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜王国の城内では現在《精霊の愛し子》が隠されながらも存在する。

ディルミナスが実際にそれを見て信じており、それを知るのはごく一部。

 

「・・・どこへ行ったんだ・・・」

 

しかしその本人は現在部屋におらず、違う一人の少女がいた。

 

「・・・?どうかなされましたか?」

 

メイドの服を着て中で過ごしているのは愛し子であるユーリが誘拐した王女のリディア。

 

「ユーリを知らないかなと」

 

「ユーリならば今ここにはいませんが・・・」

 

「ならば何故どこにも・・・」

 

ぶつぶつと言いながらユーリの部屋を去ると、ディルミナスの目の前に扉のような物が現れた。

さっきまではなかったものが突然出てきて警戒をする。

 

「・・・」

 

そして独りでに開いたと思えば、中からはディルミナスも知る人物。

 

「フィアナ様?」

 

『んー?ディルミナス、どうしたのさ?』

 

「ユーリが部屋から居なくてね・・・最近じゃ執務を行うにしても居ないと手が進まないんだ」

 

竜族の兵士による一件から仕事中のディルミナスの膝には猫のユーリが乗っていることが多くなった。

邪魔になり作業が遅れるかと思えば、反対で猛スピードで作業が進むために文句どころか懇願されることがしばしばあるぐらいに。

 

『なるほどねー?ユーリならいるから連れてくといいよ』

 

フィアナが連れて来たのは白銀のような白い髪の少女。

普段猫の姿を見る者からすれば誰となるが、ディルミナスは魔力からユーリ本人だと感じる。

 

「ん・・・国王、様・・・?」

 

「そうだよ。今から執務をしようと思ってね。来るかい?」

 

「ん・・・行く」

 

猫になるのも忘れているのかユーリはそのままの姿でディルミナスの元へ向かう。

 

『手を出せば、分かるな?』

 

「無論だ。僕は幼子の趣味はないからね」

 

「国王様、早く、早く」

 

「わかってるよ。ほら、行こう」

 

淑女をエスコートするようにディルミナスはユーリの手を優しく持って連れていく。

 

『ルファン、良かったの?』

 

『なにがだ』

 

『ディルミナスはユーリに好意を抱いているよ?じ邪悪な物じゃないし、ユーリの事を考えればボクはこのままにするつもりだけど』

 

『・・・我が主が嫌と言えば。その時は人の目から隠してしまおう。だが今は主が幸せそうにしている』

 

『・・・まっ、そうだね。んじゃ今は現状維持ってことで』

 

精霊王二人は姿を消すと、ユーリをまた見守る。

日常は変わらない。

 

 

 

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