幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第六話

竜王国へたどり着いて数日。

様々な種族が集まり作られたこの国にも慣れていたユーリは商店区で歩いていた。

ルファンとは正式な契約を行い、繋がりが出来ているため、ルファンはユーリの守護が幾許かしやすくなっていた。

また初日にたくさんの人に覚えられたからか、ユーリは精霊様の加護を持つ猫として可愛がられていた。

人を信じるわけではなかったが、それでも撫でられたりするのは心地好かった。

だが、人々の目が集まればその分、上級階級にも伝わっていく。

ユーリを利用しようと考える者が。

 

「この猫か。件の精霊の加護を持つというのは」

 

「はい、様々な平民どもが口揃えておっしゃっております」

 

「連れていけ。我が家に利益をもたらすだろう」

 

そういい、従者と思われる人物がユーリに触ろうとした瞬間。

何重にも張られた魔力の盾が可視化されていく。

 

「なっ・・・」

 

『貴様、主に何をもって触れようとした』

 

光が集まり、出てくるのは風の精霊王のルファン。

だが感じ取れるのは怒りと不快感で、それは従者とその主に向けられていた。

 

『失せろ。不快だ』

 

そういってルファンは詠唱も紡がず、手をだせばそこから荒れ狂う暴風がそれを襲う。

怪我を与えるためではない為、当たっても直接的には痛くはないが恐怖は感じれるだろう。

それを見た二人はすぐに逃げ出す。

 

『全く・・・我以外の精霊王ならば存在すら残っているかも怪しいものよ』

 

ルファン以外の精霊王はユーリに対する保護欲が強く、傷でも付けようものならユーリが止めるかしないければ怒り狂うほど。

ルファンは温厚ではあるが、それでも怒りは覚えるために精霊王全員は怒らせるべきではない存在ではあった。

 

(ん・・・大丈夫、なのにな)

 

『大丈夫なものか。我らからすれば主は宝以上の存在なのだ。そばにいて不快感を感じることがないからな。他の精霊も主を好いておるのもそれだ』

 

元々生まれながら魔力量が多いユーリは無意識に溢れ出ている魔力が存在し、それを精霊達が吸い取っている。

本来は精霊と契約すると、契約者が自ら魔力を上げているが、ユーリに至っては勝手に精霊が吸い取る程に多く作り出せる。

 

「・・・全く、話そうとしたら警戒されてたまったものじゃない。勝手なことをしてくれて困るね」

 

そういいユーリを優しく撫で上げる。

 

「紹介が遅れたね。私はレアス・ドラグニア・アーディラスという。まぁ、この国の王族ではあるけど気兼ねなく接してくれるかな」

 

優しい表情をしながらユーリを抱き上げると近くで止めていた馬車に一緒に乗車する。

 

(ど、どうすれば)

 

『王族ともあろう者が主に如何なるご用だ』

 

「これは・・・風の精霊王様。用件は私ではなく兄がそうなのです。私はただこの方を探して連れて来てほしい、と」

 

『ならば、然る書面と日程を決めるべきであろう。無断で我らの主を触れるどころか連れ出すのは困る』

 

「申し訳ございません。ですが、私の見立てではこの方は精霊様に愛されている方ではないでしょうか。そうなれば国としては保護すべき、と考えます」

 

レアスの言うことは国としての正論で、精霊の愛し子は世界的にも手厚く保護される。

王族と同等の扱いをされ、王族以上の権力をも持つ。

それほどまでに()()()()()()というのは貴重であり国家の宝でもあった。

 

『・・・危害を加えようものなら、我等精霊王が容赦はしない。特に我以外の精霊王はな』

 

「しかと、心に刻みましょう」

 

がたがたと少し揺れがあるも、馬車は一直線にとある場所を目指す。

それは竜王国の中心部、竜の王城。

 

(・・・にゃぁ)

 

城に着くまでユーリはずっとレアスに撫でられ続けていた為、ただ移り変わる風景を窓から見てるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンと止まる音が聞こえると、馬車の扉が開いてユーリを抱いたレアスが出ていく。

その外には兵士が立っていた。

 

「レアス様、ご無事でしたか!」

 

「毎回無事か聞かれるのも難儀だね」

 

「そう思われるのでしたら毎回無事に帰ってきてください・・・」

 

「はは、そうだね」

 

兵士はレアスが大事そうに抱いている白猫を見て気になっていると、レアスが大事なお客様だよと言って城の中へと進んでいく。

 

「さて・・・愛し子様の名前が分からないし、どう呼べば良い?」

 

(ん・・・どうすれば)

 

『主の名を呼びたいのならば、自然に待てば良かろう。我等から教えるつもりは一切有り得ん』

 

「それは精霊様からも聞きました。教えれないと」

 

精霊王が全員して徹底的に行ったこと。

それが世界中に存在する全ての精霊にユーリの名前を一切教えてはいけないというもの。

ユーリの名前は、その本人から教えてもらうしかないのだ。

 

「精霊王様に聞きたいのです。どうしてこの方の名前を秘匿したのでしょうか」

 

『たんなる気まぐれでもあり、真名支配を避ける為でもある』

 

「・・・理解しました。教えていただける日まで待ちましょう」

 

着きました、とレアスが言うと至って普通な扉があった。

それを開けると中には一人の人物が書面と対面していた。

 

「兄様、やっと探しましたよ」

 

「ん・・・あぁ、やっとかい」

 

レアスが兄と言ったのはユーリも知る人物。

竜王国の国王であり、最も力が強い。

ディルミアス・ドラグニア・アーディラス本人だった。

 

「僕はディルミアス・ドラグニア・アーディラス。この国で一番偉い・・・んだけど気にしないでね」

 

(・・・前にも、会った)

 

「・・・んー、愛し子様がまさか猫だとはね。それに竜族にも臆さないとは凄い猫だ」

 

「本当ですよ。精霊王様も居ましたからあまり変なことはしないでくださいね」

 

そういってレアスはユーリを床へ下ろすと部屋を出ていった。

 

「愛し子様、言葉は・・・出せますか」

 

『主がその気になれば話せる。話す気がないだけのことだ』

 

「精霊王様・・・それは、どういうことでしょうか」

 

『言った通りだ。初対面に警戒は当然だと思うが』

 

(ルファン、言い過ぎ。警戒は、してない)

 

『・・・主に何かあれば、その身あると思うな』

 

「・・・心得ました。愛し子様、ごゆっくりなされてください」

 

ディルミアスはユーリを抱えると部屋を出て、少し歩くととある部屋へと案内される。

そこそこの広さがある部屋で、そのベッドにユーリが下ろされた。

 

「愛し子様、この部屋はあなた様が使ってくださって構いません。それと、お世話の方なのですが・・・」

 

『精霊達が自ら進んでやる。手を出そうと考えるな』

 

(ルファン!)

 

「・・・分かりました。何かご不満がございましたら城内の者をお呼びください」

 

そういってディルミアスは出ていく。

だがユーリは怒っていた。

 

(何で、あんな言い方、したの)

 

『主は自分の重要性を考えるべきだ。主を利用できれば精霊全てを操れるも同然。だからこそ、主は警戒を持ってほしい。無論関わるなとは言わぬ。だが我らはな、主に幸せになって欲しいのだ。だがそれはすぐに掴み取るものではなく、主の目で見て、信における者と共になってほしい。それが我ら精霊王の全員の意見だ』

 

(・・・ん)

 

生まれたときから父親を知らず、母親は物心がつくまえに世を去った。

そんなユーリを幼くから見てきた精霊王達がこぞって願う。

それを無下に出来るほどユーリは非情でもないし、己のためと考えていたから怒りも冷めていく。

 

(だけど、あんな言い方は、ダメ。ルファン達、嫌われていくのは、いや)

 

『・・・分かった。主がそういうのなら、努力しよう』

 

精霊達の王ともあろう存在が12の少女に怒られているのはどうかと思いながらも、姿を消していった。

 

 

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