幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第七話

王城へと連れていかれ、与えられた部屋で暮らせと言われてから数日。

精霊王達の過保護により、ユーリに関する殆どが精霊達が行っていた。

一緒に連れて来ていた王女であるリディアは未だ教えておらず、ディルミアスも知らない。

食事や掃除は精霊達が率先しやってしまうためメイドのやることがないのだ。

 

「ユーリ、来て下さい」

 

リディアがこうしてユーリを呼ぶときは、猫ユーリを愛でるためだった。

ブラッシングや風呂はリディアがやってくれている。

 

(リディア、ありがと)

 

「いいえ、王族誘拐の大罪を担ってくれたユーリには感謝しています。それにユーリと一緒に居るととても心地が良いのですから」

 

(ん・・・)

 

ユーリにとってもリディアの膝の上は定位置になっており、一緒に居る時では何もない時はこうしてゆっくりとしている。

精霊王全員がリディアを隅々まで観察して、逆に一緒にいるべきだと言うほどに精霊達も信を置いていた。

 

「・・・すまない。扉を開けても良いかな」

 

三回ノックされ、開ける許可を貰おうとした誰か。

その声は少し焦っていた。

 

『何用だ』

 

「この部屋に、人の気配がすると言われててね。危険があるのかもと思った」

 

人の気配は恐らくリディアなのだろうと察する。

気配を消す技術を持つわけがないのでいつかはばれるとは思っていたが早い。

 

『我ら精霊王が判を押す。危険はない』

 

「それでも一度みたいんだ。僕の目で危険がないと分かれば皆が理解してくれる」

 

『少し待っておれ』

 

ルファンだけでは決めることが出来なくなった。

恐らくこれを断ればこの部屋の中を見てリディアを見ようとする。

無論リディアには物理的にも魔法的にも守護があり、リディアの精霊ティルも護っている。

それほどまでに精霊達が信用と信頼を向けている。

ユーリは少し考えて、見せることを決めた。

 

(ルファン、良いよ)

 

「私も構いません。元はといえば私がユーリに頼んだからこうなってしまっているので」

 

『・・・はぁ。良いと言われたから入るが良い』

 

「ありがとう。失礼するよ」

 

ディルミアスが入ると気配が出ているベッドを見る。

どのような人物なのかを見極めるため。

 

「僕は竜王国の国王ディルミアス・ドラクニア・アーディラスという。用件は城で働く子達から人の気配がすると言われてね。それを僕の目で見に来た」

 

「私はリディアといいます。呼び方はお好きにしてくれて構いません」

 

(リディア、リラックス)

 

国王相手だからかリディアの表情が少し強張っていた。

それをユーリは気付いていて、和らげようとリディアの指を舐めはじめる。

 

「愛し子様に好かれてるんだね。とても仲が良いみたいだ」

 

『当たり前だ。お互いに信頼をしあっているからこそ、ああやって過ごしている』

 

「・・・竜王国には()()()()()()がいない。精霊との相性が良いと言われる竜が暮らす国でだ」

 

ルファンは気を利かせて部屋に防音の魔法を張った。

 

「もし精霊を傷付ければ、他国から批判は来る。余所の精霊の愛し子が竜王国へとけしかける。そんな恐怖もあるんだ、この国には」

 

「だから精霊の愛し子がこの国に来たときは手厚く歓迎しようとした。だが、現状見れば迷惑をかけているようにしか見えない。僕らが余計なお世話をしていた」

 

「教えてほしい。何故未だこの国に留まってくれてるのかを。余計な迷惑をかけているのにも関わらず」

 

ユーリはその言葉をしっかり聞いた。

確かに迷惑、と言われれば迷惑だったのだろう。

精霊の愛し子だからと偉そうと思われても勝手に国が歓迎してお世話しているだけだ。

だがユーリは数日過ごして分かった事があった。

他国の事は良くは知らない。

それでもこの国はとても豊かだ。

資源だけじゃなく、国王自身が人に敬われている。

国王が国民に慕われたり敬われるのは簡単ではない。

精霊達も楽しそうにこの国で過ごしていることからも、精霊に対する接し方が良いのだろう。

ただ相手の機嫌を窺うだけではない。

そんな国がユーリにとっては心地が良かった。

 

(ルファン、姿、戻す)

 

『・・・主が決めたのなら構わない』

 

( 【我の姿よ元へ戻れ、この身を本来の姿へ、その存在を変えん】)

 

ユーリは人間の姿へと戻るとローブを着けず、ディルミアスに向かい合った。

 

「・・・この国は、色んな意味で、豊かで良い国」

 

「そう、なのかな。僕が国王の座を受け継いでしまって良かったのかと、今も思う時がある」

 

「初日、来たとき。色んな種族がいた。それでも、沢山の人が、笑ってた」

 

ユーリが初めてこの竜王国へ来たときは獣人の親子に会った。

頭を撫でられただけでだが、それだけでも国のことが分かる。

良い国でなければ、国民は関わりを作ろうとはしない。

人を信じないユーリだからこそ、どんな人なのかを見極める技術が必要だった。

それを活かされたのが竜王国での人々の関わりだろう。

 

「私は、悪い人も、見てきた。だからこそ言える。この国はとても居心地がよくて、ずっと住んでいたい」

 

「・・・そう、か・・・」

 

それを聞いた時にはディルミアスは涙を流していた。

国王という立場だからこそ涙を弱みを見せるべきではない。

国を思い、国の事を考えてきたディルミアスにとってユーリに言われた事はどんなものよりも耳に残った。

 

「名前、教えておく、ね。私は、ユーリ。愛し子様って呼ばれるの、好きじゃない。敬語も、様付けもいらない」

 

「・・・分かった。ユーリと呼ぶよ」

 

「国王、様。街行きたい」

 

「護衛は・・・つけたら怒られそうだ。精霊王様がいるから大丈夫だろうけど・・・もし、なにかあれば僕の名前を大声で叫んでくれると良い」

 

「来てくれる、の?」

 

「この竜王国の国内ならね。あとは、城の中を自由に探検してくれていい。実は言うとね、城に仕える殆どが竜族だからか、ユーリのような怯えない猫はとっても貴重なんだ」

 

「・・・?」

 

「用は、癒しだよ。目の保養。人の姿でも猫の姿でもどっちでも構わない。竜というのは生物で上位に位置するから怯える人が多くてね・・・」

 

「ん・・・構わない」

 

「・・・僕の長年の悩み、解決してくれて本当にありがとう。リディア、君の事は城内にいる全員に言っておくよ」

 

そういいディルミアスは少し生き生きとした表情で部屋を出ていく。

人の姿になったユーリはベッドに寝転ぶとそのまま眠った。

リディアの手を握っているのでリディアも共に寝ることにした。

 

 

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