幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第八話

大きく客室としてはたいぶ豪華な部屋。

その部屋のベッドには一人のメイドと猫が座っていた。

 

(ん・・・)

 

「ユーリ様、どうかしましたか?」

 

ニコニコしながら猫のユーリに微笑むのは王女であるリディア。

本人はもう王族としての意思は捨ててユーリのメイドとしてあろうとしていた。

 

(メイド・・・可愛い)

 

ディルミアスとの一件後、精霊達もユーリとリディアの説得により態度を少しだけ柔らかくはなっていた。

ユーリが今後活動するときは愛し子ということを秘匿したいとユーリ本人の頼みにより、竜王国の愛し子は未だ存在しないとなっている。

愛し子がいるということを知っているのは迎えに来たレアスとディルミアスだけ。

精霊王の存在は興味本位で近くにいるなど言い訳が出来た。

その本人がそう言ってしまえばそれまでなのだから。

 

「そういえば・・・本日は探検しなくてよろしいのですか?」

 

(ん、リディア、心配)

 

『ふむ・・・ならば我が。主から頼めば自ら来るほどだろう』

 

「精霊王様がこう言ってくださるのです。私は大丈夫ですよ」

 

リディアとルファンが必死に言うのはユーリがあまり部屋を出ようとはしないから。

あまり人目につくのは好きではなかったユーリは人の姿だろうと猫の姿だろうとこの城では目立つ。

だが今回は猫の姿が良かった。

 

(分かった。んじゃぁ・・・フィー、おいで)

 

フィーと呼ぶと空間がたちまち捻れていく。

その捻れた空間はやがて燃えると中からユーリと同等の少女が出てきた。

 

『ユーリ!どおしたの?』

 

真っ赤な長い髪と紅白の装束を着込んだ少女。

ユーリがフィーと呼ぶ彼女はフィアナと呼ばれ、炎を司りし精霊王。

 

(一緒に、着いてきて)

 

『いーよ!ユーリの頼みなら喜んで!』

 

(ありがとう)

 

『全然!何処へでも着いて行ってあげる!』

 

元気で活発そうに見えるフィアナだが、精霊王の中では3番目に力が強い。

見た目の華奢な身体によらず視覚や聴覚は良く、精霊としての能力があるために護衛役としても優秀だったりする。

 

『ユーリ、どこに行くの?』

 

(ん・・・適当。探検)

 

『りょーかい!』

 

フィアナとユーリは部屋を出ると目的もなく歩くことにした。

精霊達が教えてくれるのだがユーリは自分の目で覚えたかった為にこうして時々部屋を出て城を探検していた。

 

(ん・・・)

 

ユーリが探検を何回かやって分かったことが、この城は階層毎に分かれており、ユーリが過ごすのは2階層。

今からユーリが向かうのは1階層。

3階層は以前に探検しており、メイドの部屋や食事・洗濯などを行う場所だった。

 

(着いた)

 

『ユーリ、この階層は竜族が多いよ。あの竜王が前に言ってたけど竜族は可愛い生き物とかに嫌われてしまうから猫のユーリは標的になりやすいからね』

 

(種族的、本能?)

 

『生物的頂点ともいえる竜族は動物に畏れられやすいから・・・畏怖を一切感じないユーリは愛玩動物としてかな』

 

(ん・・・そっか)

 

獣人に撫でられた時の感触が心地好かったのか、ユーリはそこまで嫌そうな感じは出さず、ぽてぽてと足を運ぶ。

 

「それでさー・・・って」

 

「あれ、何でこんなところに猫?」

 

「さあ?クディ様が連れてきたんじゃないか?」

 

「しかし、すごく真っ白だな」

 

「ああ、白くて小さい猫だな」

 

「見た感じ俺らを怖がってないぞ」

 

「そうみたいだな」

 

竜族の兵士なのだろう二人は目を合わせるとユーリに膝を付いて、頭を垂れる。

 

(ん・・・?)

 

「「もしよろしければ触らせて頂けないでしょうか!?」」

 

迫力ある声で発した言葉はユーリの愛撫の許可。

竜族だからこそ飢えているのは癒し。

可愛い生き物を癒しとする竜族は多くとも、種族による本能で逃げられてしまう。

そんな竜族からすればユーリは癒しの頂点に座するのだろう。

 

『ふーん。ボクの目の前でユーリに触りたいだなんてね!灼熱の劫火に炙られても仕方ないよね!』

 

そう言うのはユーリの側で着々と詠唱を済ませて超高密度の炎を手元で遊ぶフィアナ。

 

(フィー、大丈夫)

 

『むー!ボクの可愛いユーリに傷付いたらどうするのさ!』

 

(・・・私は、フィーの、じゃない)

 

『・・・あっ』

 

フィアナは先程自分で言った言葉を後悔した。

ユーリは束縛を嫌い、それを許すのは余程の者じゃないとすぐに何処かへ行く。

自由奔放でもないが、束縛を嫌うためにフィアナの言葉がユーリにとってとても嫌な言葉に聞こえてしまっていた。

 

(・・・竜族も、大変)

 

頭を未だ垂れる竜族の二人の頭をわしゃわしゃと手で荒らす。

それに気づいた二人は頭を上げると同時に膝の上へと飛び乗った。

 

「あ・・・あ・・・」

 

「嘘だろ・・・竜族の俺らが・・・」

 

「ついに猫に懐かれたぞー!」

 

「うぉぉぉぉー!!」

 

その雄叫びは城中に響き、ユーリを優しく抱き上げると訓練している仲間の元へと走っていく。

フィアナの存在など見えていないように、無我夢中で竜族の二人は嬉しかったのだろう。

 

(・・・な、なんだか嬉しそう)

 

全ての精霊王から好かれるユーリでも言われたくない言葉もあった。

精霊であろうと、困ったり、嫌な言葉も当然存在する。

それでも泣きそうになっているフィアナを見たユーリは後で構ってあげようと思ったのだった。

 

 

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