幼い少女は龍の上にて眠る   作:紅風車

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第九話

竜族の兵士は腕に抱いた白い猫を訓練所へと連れて来ると、休憩中だったのか休んでいる兵士に見せて全員でユーリを撫でたり抱っこしていた。

 

(ん・・・)

 

『あぅー・・・』

 

涙目になりながらもユーリに危険がないと分かるとフィアナはしゅんとしながら見守っていた。

 

「ずいぶんと長い休憩だこと」

 

「クディ様!?」

 

「休憩するのは構わないけれど程々に。しっかり訓練してるのなら何も言いません」

 

「は、はい!」

 

クディと呼ばれた青年は優しい微笑みをしながらユーリへと近づく。

 

「可愛い猫ちゃんだこと。竜を怖がらないとは」

 

ユーリに触れるか触れないか、寸前でユーリを守るように炎が発した。

 

「わっ、と」

 

『ユーリに触れるな!』

 

ぎゅっとユーリを抱きしめるのは先程しょぼくれていたフィアナ。

触ろうとしていたクディに対して強く警戒をしていた。

 

「君は?ここの者じゃないね」

 

(フィー?)

 

『【我が名の元、その理よ、顕せ】』

 

3節の短い詠唱を紡ぐと暴れ狂う劫火が出現する。

竜族としての能力を持ってしても危険と感じるほどの熱量を持った炎はその場にいた兵士とクディに冷や汗をかかせる。

 

「それは・・・!炎の精霊王様でしょうか」

 

『ふんっ!勝手にボクの契約者に触れないで欲しいね!』

 

(・・・別に、良いのに)

 

「精霊王様の契約者とは露知らず・・・」

 

『触れようとしたとき、術式が見えてたけどね!』

 

ばれていたのか、とクディは驚きを隠せなかった。

精霊王だろうとばれないだろう魔法の自信を、少し見ただけで見破られていたのだから。

 

「なんの騒ぎかな?」

 

ひょこっと出てくるのは竜王国の王であるディルミアス。

その姿が見えるとユーリはフィアナから抜け出てディルミアスの足元に移動する。

 

「どうかした?ユーリ」

 

猫の姿のユーリと喋れるのはユーリだけが扱える《幻想魔法》によって会話をしているだけであって、本来は叶わない。

 

「少し困ってそうだね。気休め・・・になるか分からないけれど仕事場に来るかい?」

 

(フィー、抑えて)

 

『むー・・・ユーリがそういうなら仕方ないなぁ』

 

渋々と言った感じで魔法を消すとユーリの元へ歩く。

 

「クディ。この猫は僕の正式な客人だ。あまり下手なことをしないでくれるかな?」

 

にっこりとクディへ伝えるも、凄まじい威圧が差し向けられており、顔面蒼白になりつつも頷くのを見るとユーリを抱き上げて機嫌が良さそうにその場を去っていく。

 

「さて、返答を聞く前に連れて来たけれど・・・構わないかな?」

 

(フィー、行くって伝えて)

 

『行きたい、って言ってるよ』

 

「そっか。じゃあこのまま連れていくよ」

 

『ボクのこと聞かないんだ?』

 

「あれほどまでの炎なんてユーリか炎の精霊王様ぐらいだろうと思ってたからね。困ってそうな感じがしたから少し見に来てあんな感じだよ」

 

『ふーん?優しいんだね』

 

「ユーリに何かあればまずいからね。それに個人的な恩人だから」

 

ディルミアスの言葉を一つ一つ、聞いていたフィアナは少し考えると、小さく炎をパチパチと鳴らす。

 

『君の名は?』

 

「僕はディルミアス・ドラグニア・アーディラスだ。この竜王国の国王であり、竜族の頂点」

 

『・・・ふうん。その名前覚えたよ。ボクは炎を司る精霊王のフィアナ。特別にボクの名前を紡ぐ事を許してあげよう』

 

「・・・良いのかな?まだ会って初めてだろう?」

 

『これでも見る目はある方だと自負してるんだよ?

それに個人的に気に入ったんだ』

 

「分かった。その期待、裏切らないよう尽力するよフィアナ様」

 

『ボク以外の精霊王も君の事は見てる。そのことを忘れないことだね』

 

精霊王自ら己の名を言うことは滅多にない。

愛し子ですら精霊王に見初められるかすら怪しいのだ。

ユーリという一個人だからこそ全ての精霊王が気に入り、その加護を与えていた。

 

「そうみたいだね。少し前に風の精霊王様に会っているから気を引きしめないとだ」

 

柔らかそうな声色でディルミアスは言うとユーリを優しく撫でながら仕事場へと向かう。

 

『ユーリ、幸せそう』

 

いつの間にかディルミアスの腕の中ですやすやと寝てしまっていたユーリにフィアナの呟きは聞こえていたのだろうか。

 

 

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