秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
楽しいデート回。最後にキスをした。
エピソード1
俺は深刻で厄介な問題に直面していた。これを放置すると、隊の存続にも関わる悲惨なものだ。
「ルピが無い……」
そう、圧倒的な経済問題である。元々、キャラ加入を狙って武器を買い込んでいて財布に余裕は無いのだ。そこに、3ヶ月前の『3割の減俸(3ヶ月)』、2ヶ月前の『3割の減俸(3ヶ月)』、1ヶ月前の『3割の減俸(3ヶ月)』のトリプルアタックである。そして残り1割の給料に致命的なダメージを与えた、昨日の『グラーシーザー事件』。このままでは、まともな食事すらできなくなるだろう。
「くっ、これが秩序の騎空団のやり方かよ!」
だが、俺には起死回生の一手が残されている。秩序執行巡空独立強襲隊として適当に活動して、出来高払いを貰うのだ。リーシャに申請を頼めば即日支給も可能だろう。その場合、何をすれば分かりやすく功績として認められるのか。
「……とりあえず帝国の要人でも暗殺する、か?」
暴走ティアマトが駄目なら、それぐらいしか心当たりは無い。ポンメルンを殺して給料が貰えるなら、こんなに楽な仕事も無いな。……いや、あいつには『原作主人公を殺す』という重要な役割があるのだ。ここで死なせるわけにはいかない。同様に、あの少将のハーヴィンも駄目だ。じゃあ中将の……!
「そう、ガンダルヴァを殺そう!」
あまり重要な役割がなかった気がするし、そもそも最初から殺すつもりだったし、何より同じ建物にいるから手軽に取りかかれる。そうと決まれば、すぐに部隊を集めて――。
「はぁ、隊長もですか。先程、船団長も同じことを言ってましたが、個人的には冗談でもそういうことを言ってほしくないですね」
いつの間にかリーシャに聞かれていたようだ。それにしても冗談とは心外な。
「冗談なものか。これは――」
「まさか、本気で反逆を企てていた、と」
「いや、その……船団長が忙殺されるぐらい多くの実績を積んでやろうという決意みたいな」
俺が殺すのは船団長ではなく将来の帝国中将なのだ、と言っても独房送りにされるのが関の山だろう。ただ、独房ならちゃんとした食事が出るのだが……いやいや。
「それはそうと、何か用があって来たんじゃないのか?」
「そうでした。ガロンゾ島の工房から『部隊専用の騎空艇』について問い合わせがきています」
「おお、騎空艇! それで何だって?」
「まず、初期のパーツを、このリストから3つまで選べるようです」
騎空艇パーツだな。そんなのは見るまでもなく決まっているのだが、正式名称を忘れたので渡されたリストを見ながら答える。
「金眼の風見鶏、ポーションメーカー、出陣の銅鑼がね、以上の3つだな」
「他の2つは分かりますが、金眼の風見鶏ですか? 私としては訓練用具の方が――」
「リーシャ」
うーん、ドロップ率アップの重要性をどう説明したものか。手始めにスレイヤーズかテイルズの話でもすれば分かってくれるだろうか。当時の絶望的な日々のことを。
「し、失礼しました、隊長。その3つですね」
なぜか突然に意見を取り下げるリーシャ。声が少し震えているが、調子でも悪いのだろうか。
「次に、騎空艇の名称を決めてほしい、とのことです」
騎空艇の名前なんて、よっぽど突飛でポッピンなものでなければ何でもいいだろう。
「リーシャはどんなのがいいと思う?」
「そうですね……秩序執行巡空独立強襲隊として、ファータ・グランデ空域やナル・グランデ空域の秩序を守っていきたいという意味を込めて……」
「意味を込めて?」
「『ジ・オーダー・グランデ』というのはどうでしょうか」
そういう露骨に被ってるのは一番駄目だろ。
エピソード2
同日午後。俺は、かつてないほどの緊張と覚悟で、その建物に足を踏み入れた。
「いらっしゃ~い! ご用件はなんですか~?」
そう、シェロカルテ殿のよろず屋だ。どうやら俺がアマルティアを離れている間に開店したらしい。店に気づいたのは昨日のデートの時なのだが、リーシャに聞かれたくない話になる可能性があったので入るのは止めたのだ。
「――ご入用の際は、よろず屋によろ~ず! うぷぷぷぷ……」
一通りショップでできることを説明しつつ、得意のダジャレを披露するシェロカルテ殿。愛想笑いの一つでもしておいた方がいいのかもしれないが、逆に不快にさせるかもしれないので軽く流しておこう。
「ああ、そうだな。まずはトレジャー交換を頼む」
「トレジャー交換ですか~。それでしたら~こちらのテーブルへどうぞ~」
案内されたテーブルの上に、俺はこの3ヶ月で入手したメダリオンなどのイベントトレジャーを並べていく。任務中の拾得物ということで回収されそうになったりもしたのだが、功績による特別ボーナスの一部または全部と相殺する形で手元に残してもらったのだ。
「ふむふむ~なるほど~」
トレジャーを手に取って軽く確認したシェロカルテ殿は、3枚の紙を持ってきた。
「交換レートは書いてあるとおりです~。決まったらお呼びください~」
「ああ。それから騎空士の斡旋も頼みたいんだ。有望な人がいたら紹介してほしい」
「はいはい~お任せください~」
シェロカルテ殿が資料を取りに行ったので、トレジャー交換を考えることにする。交換レートは馴染み深いものだったが、ガチャチケットが無いのが気になった。もっとも、普通の手段でガチャは回せないので仕方ないのかもしれない。
「最優先はダマスカス骸晶だろ。あとは栄光の証の1段階目を取って……」
数分後、だいたい決まったので、シェロカルテ殿に交換してもらう。案の定、メダリオン以外は多く余ってしまったのだがどうしようか。
「残りのトレジャーは1個5ルピでお引取りしますよ~」
「おお、助かるよ。さすがはシェロカルテ殿だ」
「いえいえ~。そしてこちらが有望な方たちの資料です~」
渡された資料を1枚ずつ見ていったが、記憶にある女の子の名前は無かった。実際のところ、この手段もあまり期待していなかったのでショックは無い。
「やはり隊長さんのお眼鏡にかなう方はいませんでしたか~」
「そうだな、だが今後も有望な人がいたら……っ! どうして俺が隊長だと!?」
「ちっちっち~、商人にとっては情報が命ですから~。先程のトレジャーを見れば、ヴェローナ、ノース・ヴァスト、それにシデロスで大活躍をされた、話題の隊長さんだって分かりますよ~」
なるほど、騎空士斡旋の話がスムーズに進んだのは、そういう理由だったのか。だが、そういうことなら次の話もしやすくなるだろう。アビリティ習得計画その2だ。
「だったら、その情報力で仕事の仲介も頼む。部隊の騎空艇が到着するまでは待機状態で、暇を持て余しているんだ」
依頼でリーシャと森に入って魔物を倒す→さらに魔物を倒す→アビリティ習得、という流れだ。
「おお~それはありがとうございます~。ここ最近は、騎空士さんへの依頼が多いんですよ~。どのような仕事をお探しでしょうか~」
「とりあえず必要戦力が高そうなものを上から10件ほど見せてほしい。できれば報酬として宝晶石が貰えるものがあればいいんだが」
「宝晶石ですか~。欲しがる方は珍しいですね~」
シェロカルテ殿は、じっとこちらを見つめる。まるで何かを見透かそうとするかのように。だが、俺がガチャを回せるということは、可能な限り伏せておきたい。そこで、あらかじめ考えておいた『理由』をこっそりと教えておく。
「あまり知られたくないんだが、実は『天星器』を覚醒させようと思っているんだ。俺に合う武器がなかなか見つからなくてな。できれば、このことは他言無用で頼む」
「おやおや~それは楽しみですね~。ではでは、覚醒を隠せ~ということで~。うぷぷぷぷ」
いいから早く仕事を紹介しろよ!
エピソード3
翌朝、俺達は依頼で指定された森に来ていた。
「悪いな、俺の個人的な依頼に付き合ってもらって」
「いえ、これも人助けですから。それに騎空艇の到着までにやるべきことは終わりましたし」
「そうですよ隊長!」「部隊の実戦演習にちょうどいいです!」「実力を(リーシャ様に)見せるいい機会です!」「俺達で良ければいつでも言ってくださいよ!」「副隊長と2人だけで、なんて遠慮は決してしないでください!」
なぜか隊員10人も一緒だ。どうしてこんなに意識が高いのだろう……やはり秩序だからか?
「おっと、魔物だ。前方の3体は俺がやる。残りは後方の1体を!」
そう指示を出して、3体の魔物を秒殺する。後ろはどうなったかと振り返ると、魔物は前衛隊員達に牽制され、後衛隊員達の一斉射撃で倒されていた。どうやら連携なども問題ないようだ。俺は安心して魔物が落としたオルディネシュタイン等をリュックに放り込んだ。
その後、無事に依頼の魔物を倒した俺達は、森の中で昼休憩を取っていた。俺は隊員達のまともな食事を羨ましく思いつつ、さっき拾ったばかりの『青い果実』を口に運ぶ。これはエリクシールハーフと交換可能なトレジャーであり、つまりは原料でもあるのだろう。だから騎空士の食事としては、それなりに普通であると言えるのだ。
「隊長の食事はそれだけですか?」
「ああ、リーシャ。……グラーシーザー(抱き枕)を買ったから、しばらくは節約しないとな。それに、こう見えて意外と美味しいんだ」
「しかし、それでは栄養が偏ってしまいます。その、良ければ、私の手作りですが半分――」
「隊長、俺の唐揚げを1つ受け取ってください!」「俺のメンチカツも食べてください!」「このパンを!」「卵焼きも!」「タコ!」「隊長!」「隊長!」「隊長!」「隊長!」「隊長!」
あっという間に、1人分の食事と言えるぐらいの量が集まった。どうやら俺は素晴らしい隊員達に恵まれたようだ。いずれ女の子と入れ替えたいとか思って悪かったな。
「ふふっ、皆さん献身的ですね。私からも1つどうぞ」
リーシャの手作りサイコロステーキ! ああ、生きてて良かった。神様カグヤ様シェロカルテ様ありがとうございます。これであと10年は戦える。
「よし! 午後の依頼も頑張るぞ!」
そんなわけで急いで食事を終わらせて力強く宣言したのだが、隊員達の反応は芳しくない。
「えっと、隊長。今から俺達、森を出るんじゃ……」
「いや、これから東に進んで泉の近くにいる魔物を倒すだろ。それから更に東に行くとトロールの変異種が目撃された地点だから調査して、場合によっては倒すだろ。それで時間に余裕があったら、もっと東に行った川でカニを倒して、森を抜けるのはそれからだ。これで合ってるよな、リーシャ」
「ええ、そのルートが最も無駄なく残りの依頼を片付けられます」
「というわけだ。ただ、戦力としては俺とリーシャで十分だし、消耗が大きいなら引き返――」
「いいえ、俺達まだまだやれます!」「余裕っすよ!」「ここで帰るは秩序の名折れ!」
そんなわけで引き続き全員で依頼続行となった。
その後、途中で脱落者が出そうになったりもしたのだが――
「お前、こんなところで立ち止まってていいのか! 秩序の道を歩いていくんじゃなかったのか! 将来、あいつが墓穴を掘ったとき『有罪』って言ってやると誓っただろう!」
「そうだな……こんなことじゃ、あの人に笑われちまう」
――隊員同士で励まし合ったりして進行は続いた。とりあえず俺は青い果実を勧めておいた。
そして夕暮れ時、とうとう俺はアビリティ習得を実感した。
「我が剣に勝利を!」(エアリーフェザーが発動!)
「よし、やるぜ!」「いくぞ!」「うおおおお!」「やってやる!」「イェー!」
それは間違いなく『味方全体の攻撃力をアップする』というリーシャの3アビだった。どうやら今回は俺の習得イベントではなかったようだ、残念。
ただ、依頼の報酬でルピに余裕ができたので、とりあえずは良しとしておく。
エピソード4
騎空艇『ピースメーカー』――調停者を意味する、秩序執行巡空独立強襲隊の専用艇だ。
リーシャの案を蹴るために似たような名前を考えることにしたのだが、面倒だったので下のドラゴンから流用させてもらったのだ。これぐらいなら偶然で済む範囲だろう。
「良い艇ですね、隊長」
「ああ、そうだな」
係留中の甲板にてリーシャに同意する。騎空艇なんて、この世界に来るまで見たことは無いし、速そうな外見をしているとしか思わなかったのだが、リーシャが言うなら良い艇に違いない。そして、俺は以前から考えていたことを提案する。
「この騎空艇の艇長はリーシャに任せようと思ってるんだが、どうだろう」
「えっ……私に、ですか? しかし隊長が艇長を兼ねるのが一般的だと思うのですが」
これ以上、仕事が増えるのは面倒なんだ、とは言えるわけがない。
「例えば、天空の大星晶獣に騎空艇で突撃する状況を想定してほしい」
「なにそれこわい」
近くにいた隊員の呟きが聞こえたが無視して話を続ける。
「その時、俺は舳先に立って剣を構えてるだろう。そして、そんな中で隊員や乗員を気にする余裕は無いと思う。だから『総員、衝撃に備えろ!』みたいな指示はリーシャに頼みたくて、そのために普段から慣れておいてほしいんだ」
「なるほど……いえ、星晶獣に突撃する想定はどうかと思いますが、備えておくという考えは理解できました。それでも私には――」
「副隊長にならできます!」「俺もそう思います!」「艇長になってください!」「俺たち付いていきます!」「リーシャ副隊長、いやキャプテン・リーシャ!」「キャプテン・リーシャ!」「キャプテン・リーシャ!」「キャプテン・リーシャ!」「キャプテン・リーシャ!」「キャプテン・リーシャ!」
急に集まってきた隊員達に励まされ、自信の無い様子だったリーシャは力強く頷く。
「ありがとうございます。私が皆さんを守ります!」
「頼んだぞ、キャプテン・リーシャ」
よし、これで移動中は嘱託団員の女の子と存分にいちゃいちゃできる!!
そして、リーシャは各所の点検や受領書へのサインなど艇長として駆け回り、今も発着所で係員と話している。この後は、各種の確認のためアマルティアの周りを飛ぶという話だったか。それが終わったらどの島に行こうかな……。などと考えていると、1人の男がリーシャに駆け寄り何かを話して、そのまま本部の方に走っていくのが見えた。
「緊急事態です、隊長! バルツ公国で魔物が大量発生したと報告がありました!」
やってきたリーシャの言葉に嫌な予感を覚える。それってディフェンドオーダーじゃないのか。だとしたら絶対に行きたくないし聞かなかったことにしたいんだが。
「魔物は見たことのない姿で、『ウンモゲェェェーーッ!!』と叫んでいるとか」
ああ壊獣か。ロボミイベントだ、良かった。でも、参加する意味もあんまり無いし、今回は戦力増強の方を優先したい。
「でも、とりあえずショチトル島に行こうぜ」
「この状況で何を馬鹿なことを言ってるんですか! そもそも、隊長は入島が禁止されて……はっ! こんな状況だからこそ、冷静な対応が求められます。それを私に気付かせるために……」
えっ、まあそういうことでいいだろう。リーシャがこの調子だと強制参加だろうしな。
「ああ。未知の魔物ということなら防衛を重視したい。発着所の騎空団倉庫から大盾を積み込むよう指示を。上には事後報告で構わない」
「了解しました、隊長」
壊獣が相手なら普通の攻撃は通じない。倒すのはロボミに任せて、部隊には街の防衛を。そして俺はアリーザを口説くことにしよう。アリーザは大きいからな。
数分後、俺が強さアピールの方法を考えている間に、発進準備が終わったようだ。
「リーシャ、号令を」
「はい、隊長。……ピースメーカー、抜錨!」
リーシャの秩序がバルツを救うと信じて……! 第1部完!
当初の予定通りの『第1部完』です。
申し訳ありませんが、しばらく休載します。
お気に入り登録、評価、感想などありがとうございます。
皆様の応援のおかげで、ここまで形にすることができました。
第2部は2018年秋頃開始予定(グラブル語)です。
「リーシャ18才(合法)編」とか「集結、ハーレムメンバー(仮)編」といった内容を予定。
グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説
・金眼の風見鶏
アイテムドロップ率がアップするパーツ。
「なんとなく別のに変更します」とか言われたら、作者は即座に退団するぐらい必須。
・スレイヤーズ、テイルズコラボ
確定で入手できるものだけでは、コラボ武器が完成しない酷いイベント。
多くのプレイヤーがランダムドロップを求めて全力で周回した。
イベント終了後「お前のブラスト・ソード、ステータス低くね?」などの煽りが生まれた。
・よっぽど突飛でポッピンな名称
例えば、ピンキー・ベアハート・ポッピン・ファイターとか。
長いため言いづらく覚えづらく呼ばれづらい。
・シェロカルテ
商人であり、原作主人公を様々な方面でサポートする存在。
最強の格闘家から仮面を剥ぐほど素早く、同じ要領で主人公のサブ装備を奪えば普通に勝てる。
奪わなくても勝てるような気はするが、どこまで強いのかは明らかになっていない。
・最近は依頼が多い
仮にも秩序の騎空団の本部があるアマルティア島で、依頼が多いなんてレアケースです。
おそらく秩序の騎空団は人手に余裕が無かったのでしょう。例えば捜索班の編成などで。
・宝晶石
主にガチャを回すために使われる。宝晶石3000で10連ガチャを1回。宝晶石1≒1円。
天星器と呼ばれる武器を強化するためにも使われる。
・ロボミと壊獣
詳細は「ロボミ」で検索。
イベントには、主人公の好みの女の子は登場しない。
休載の理由。
1、モニカの年齢。
公式設定が「リーシャより年上」とか曖昧な感じなら「知るか作者の趣味で17才だ」とか言えるのですが、モニカ実装の際に具体的な数字が設定されそうなので、それは無視しにくいです。場合によっては第2部から設定変更します。
2、原作への理解を深めたい。
サイドストーリーとか、キャラのフェイトエピソードとか溜まっているので消化します。
3、他の創作物から刺激を受けたい。
具体的には、残量2分のレコーダーを残量20時間ぐらいにするまでアニメを見ます。
Q:再開まだ?
A:第5話のエピソード4が暫定最終回です。とりあえずそれで勘弁してください。