秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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第2部開始です。
リーシャが18才になりました。
リーシャ隊が10人増えて22人になりました。
しばらく長文タイトルにしてみます。


第10話 俺の転生ハーレム計画はどこか間違っている

エピソード1

 

 騎空艇ピースメーカー、隊長の私室にて。

 

 

「隊長ちゃん、隊長ちゃん! お姉さんが起こしにきたよ!」

 

 枕元でナルメアお姉ちゃんの声がする。

 

「……あと1時間」

 

「もう、お寝坊さんなんだから。お姉さんがお手伝いしてあげよっか?」

 

「……」

 

 俺は返事代わりに、声の方へ手を伸ばす。すると、その手を柔らかい手が握って、そのまま引っ張られる。同時に背中の下に差し込まれた腕が、俺の上半身を優しく持ち上げる。ベッドの横側に座る体勢になった俺は、ようやく目を開けた。目の前にいるナルメアお姉ちゃんはマジ天使だった。

 

「おはよー」

 

「おはよう、隊長ちゃん!」

 

 今日も最高の目覚めだ。

 

 

 

 俺のベッドで眠ったままのアンチラを軽く撫でた後、俺達は食堂に向かった。なお、アンチラの主な仕事は俺の抱き枕なので、起きなくても全く問題ない。

 

「朝食は何だろうな」

 

「今日の当番はヤイアちゃんだから、たぶん――」

 

 食堂に入った俺達を元気な声が迎える。

 

「お兄ちゃん、おはよう! もうすぐちゃーはんできるからね!」

 

「おはよう、ヤイアのチャーハンは美味しいから楽しみだな」

 

 朝からチャーハンは少し厳しいのだが、一生懸命料理してくれているヤイアに一体誰が文句を言えようか。俺は漂ってきたチャーハンの匂いで期待感を高めていく。

 

「隊長殿、我の隣に座るのじゃ」

 

 ぼーっと立ち止まっていた俺に声がかかる。十二神将の1人、大きくて可愛くて強いアニラだ。

 

「まだ寝ぼけ眼のようじゃのう。どれ、今日は我が『あーん』してやるとしよう。なに遠慮はいらぬ、隊長殿を助けるのも我の役目ゆえ」

 

「ちょっと待って! 隊長ちゃんに『あ~ん』してあげるのは私なんだから!」

 

「そなたは昨日もしておったではないか」

 

 席に着いた俺を挟んで言い争う2人のドラフ。俺の両腕に押し付けられる柔らかい感触。間違いない、ここは天国だ。

 

「大丈夫だ、俺が2人分食べればいい」

 

 だから調子に乗って、そんなことを言ってしまった。朝からチャーハン2人分か……。まあ、今日も激しく『運動』するから問題ないだろう。

 

「ごはん」

 

 我関せずと向かいの席にいたジオラが、待ちきれない様子で呟いた。

 

 

 

 朝食後、俺は今日の予定を考えることにした。というか満腹なので、しばらく動けないのだ。

 

「島に到着するのは明日だったな。それなら今日は……」

 

「隊長、あたしの修行に付きあってよ!」

 

 いきなり話しかけてきたのはアリーザだ。足技を得意とする彼女との修行は得るものが大きい。具体的には蹴りのたびに白いパンツがチラチラと見えるのだ。さらに正面からだとモロに見えて色々とヤバイ。パンツでない疑惑もあるのだが、そんなことを確かめても誰も幸せになれないので、俺はパンツだと信じて見守っていきたいと思っている。

 

「隊長はん、うちの舞を見てくれへんかな……」

 

 続いてソシエにも誘われる。エルーンらしく露出が高い彼女の演舞を見るのもいい。普段から脚とか背中とか脇腹とか完全に出ているのに、舞だと脇や内腿まで見えたりする。さらに尻尾も俺を誘惑するように揺れて色々とヤバイ。でも、そろそろ『九尾様』って言わないスキンが欲しい。もちろん最終上限解放だったら大歓迎だ。

 

「けんぞくぅは、ヴァンピィちゃんと遊んでくれるよね!」

 

 ヴァンピィちゃん! 隙あらば、かぷっと吸血して俺を眷属にしようとしてくるが、失敗したときに『お仕置き』するようになってからはWin-Winの関係になっている。涙目で上目遣いのヴァンピィちゃんは色々とヤバイ。そして、眷属になってもいいかもしれないと思いつつある俺は手遅れな気がする。

 

「隊長さん、よかったらゼエン教について学びませんか?」

 

 ソフィアとの間にも取り決めが1つある。それは『ゼエン教の話をするときは膝枕してくれる』というものだ。スカートが極端に短いため太股が直に顔に当たって、さらには良い匂いもして色々とヤバイ。ゼエンの話なんて、ぜぇんぜん聞こえないほどだ。

 

「隊長、私の旋律を貴方の心に響かせたいわ」

 

 つるぺた枠で採用されたニオだ。ハーヴィンなので何からナニまで小さい。にも関わらずどんなことをしても合法なので色々とヤバイ。リーシャが湧いてこないのでセーフなのは間違いないが。

 

「たいちょ……あそぉ……」

 

 ダヌアは無防備&無知なところがいい。おままごととかお医者さんごっことかしたい。とりあえず色々とヤバイ。

 

「ごはん」

 

 食べたばかりだろ、ジオラ。

 

 そして隣にいるナルメアやアニラ、さらにヤイアと、ようやく起きてきたアンチラまで参戦して食堂は一気に騒がしくなる。さて、どう収拾したものか……。なおモブ隊員達は離れた第2食堂にいるので問題ない。

 

「いい加減にしてください!」

 

 そう、こんなときは頼りになる副隊長リーシャの出番だ。

 

「嘱託とはいえ皆さんは秩序の騎空団員なのですから、もっと秩序的な言動を心がけてください。本日の予定ですが、全員の希望を考慮して私の方で調整してみました。この通りに行動すれば不公平は無いはずです」

 

 そう言いつつリーシャは紙を掲げる。確かに移動時間やバランスや順番まで考えられているようだったが、そのハードスケジュールで俺の体力は持つのだろうか。

 

「待って! その予定表には午後しか書かれてないけど、午前中は何をするの?」

 

 その鋭い指摘に対してリーシャは……目を逸らした。

 

「えっと……こ、今後の部隊の方針について私と打ち合わせをしたり、ですね」

 

 誰が見ても明白な嘘だった。汗を舐める必要も無いほどだ。でも俺は舐めたい。

 

「わ、私だって隊長と一緒に過ごしたいんです! この予定でいいですよね、隊長!」

 

「隊長ちゃん」「隊長殿」「隊長!」「隊長はん」「けんぞくぅ」「隊長さん」「隊長」「たいちょ……」「お兄ちゃん」「たいちょう」「ごはん」

 

 やれやれ、ハーレム王ってのも楽じゃないな。そしてハーレム要員に囲まれた俺は――

 

 

 

「隊長! 隊長!」

 

 ドンドンと激しいノックの音に目を覚ました。部屋の外からリーシャの大声が聞こえる。

 

「ああ、起きた。起きたから」

 

 返事をするとドアは開けられ、険しい顔のリーシャと目が合った。

 

「『古戦場では朝から活動する』と決定したのは隊長です。疲れているのかもしれませんが自分で言ったことは守ってください」

 

「ごめんなさい、反省してます」

 

「隊員達は所定の配置につきました。隊長も10分以内に来てください」

 

「はい」

 

 必要な連絡だけ済ませると、リーシャはドアを閉めて去っていった。それにしても今日の夢は最高だったな。あれこそ俺の理想のハーレムというものだ。しかし現実は厳しく、いまだに俺のハーレム要員は1人もいない。

 着替えを終えた俺は、ベッドで横たわる『グラーシーザー抱き枕』を軽く殴ってストレスを発散させると、急いで部屋を飛び出した。

 

「今日も戦貨を稼ぐぞ! 待ってろよ、ニオ!」

 

 

 

エピソード2

 

 騎空艇ピースメーカー、隊員用の第2食堂にて。

 

「古戦場お疲れさまでした。乾杯!」

『乾杯!』

 

「それにしても、すっかり慣れてしまったな。星晶獣との戦闘も」

「ですね。戦力さえ十分に整っていれば、余裕を持って倒せると実感できましたから」

「交渉班が別の騎空団との協力体制を整えてくれたおかげで、戦闘班も動きやすかったぜ」

「いえ、実際に戦闘した皆さんの活躍あってこそですよ。こちらは最初にリーシャ様が出向いてくださったおかげで、無理なく交渉できましたし」

「いいや、こっちだってリーシャ様の指揮が無かったら、満足に貢献できなかったろう」

「流石はリーシャ様ですね」

「まったくだ」

 

「ちなみに交代で半分以上は休憩してた俺達と違って、隊長は朝から夜まで戦っていたんだが」

「うわぁ……」

「夜になって僕が弱音を吐いてしまったんですよ。『もう腕が上がりません』と」

「それで隊長の返事はこうだ。『そうか、じゃあ蹴れ』」

「うげぇ……」

「改めて誓おう! 将来、隊長が墓穴を掘ったとき、絶対に『有罪』って言ってやるんだ!」

『おー!』

 

「だいたい、あの隊長は初めからおかしかったんだ」

「部隊が自由に動けるようになって最初の命令が『カジノに行くぞ』だもんな」

「あの時は俺たちも抗議したんだが、それが間違いだった」

「ええ。『1人でも俺より稼げたら言うことを聞いてやる』なんて言葉に踊らされて」

「そうさ、すっかり心を折られちまった。なんであんな作業的にギャンブルできるんだ!」

 

「その後は『アナトを試す』とか言って星晶獣ウォフマナフに挑んだんだったか」

「あの時ばかりは隊長を見直したな。『ただのウォフマナフに負けるかよ!』って」

「しかし戦闘直後に再挑戦したときは正気を疑いました」

「『とりあえず銃か石を落とすまで続けるから』って何だよ! 結局その銃を撃ってるところだって一度も見てねえよ!」

 

「だが、今になって思う。それも終わりがあっただけマシだった、と」

「エンジェル・ヘイロー……」

「あれって『まだまだ先は長いな』って言ってたらしいけど本当?」

「うむ」

『……』

 

「俺としては朱雀との戦闘が嫌だったな」

「そうですか? 定期的に拠点で補給できましたし、比較的楽だったと思うのですが」

「いや、それがさ、朱雀に大技を使われるたびに隊長が『朱雀死ねなの』って言ってたんだぜ」

「それはキツイ……」

 

「そ、そういえば少し前まで帝国兵を倒して回ってましたよね」

「ああ、目撃情報があればどこにでも行って、駐屯地に突っこんだりもしていたな」

「あれは秩序の維持に大きく貢献できていた気がします。現地政権との折衝が少し大変でしたが」

「でも、しきりに隊長が呟いていた『ショテル……ショテル……』って何だったんだろう」

「さあな。気にしても仕方ないだろ」

 

「ところで今週も『グリフォン狩り』をやるんだろうか」

「たぶんやるだろ。部隊の設立から、ずーっとだし」

「最初のうちは俺達のための訓練かとも思ったんだけどな」

「違いましたね。僕たちがグリフォンを誘導して隊長が倒す、ただその繰り返しです」

「一応は魔物退治だし、人々のためになっているのは間違いないが、そろそろ絶滅しそうだ」

「どうせグリフォンに弁当を奪われたとかその程度の理由だろ」

 

 こうして、上司の愚痴などによって初期隊員10人と新隊員10人は親睦を深めていった。

 

 

「皆、明日からも頑張ろう。すべては――」

『リーシャ様と秩序のために!』

 

 団の精鋭から選ばれた新隊員達だが、当然10人ともリーシャ非公式ファンクラブの会員である。

 

 

 

エピソード3

 

 いつものように、俺はよろず屋に来ていた。エインガナ島にある店で、事前連絡などしていないにも関わらず、当然のように応対するのは店の主であるシェロカルテ殿だ。

 

「ティアマトのアニマと、嵐竜の琥珀眼と、えっと……とりあえず先月と同じものを貰おうかな」

 

「はいはい~そう言われると思って準備しておきました~」

 

 俺は、天星器の覚醒に必要なトレジャーを集めるために「武勲の輝き」を使用することにした。そもそも、原作が始まらないとティアマト等とは戦闘できず、普通にアニマを入手することができないのだ。原作主人公に先を越されないためにも、今のうちから地道に交換していくしかない。

 だが、そんなティアマトのアニマを、シェロカルテ殿は一体どこから……。

 

「なにか気になることでもありましたか~」

 

「ひいっ! ひ、品質に問題は無いみたいだ。うん」

 

「それは良かったです~。そうそう、お探しの武器が見つかりましたよ~」

 

「おお、さすがはシェロカルテ殿だ」

 

 俺は、天星器の覚醒に必要な「シャドウワンド」の入手も、シェロカルテ殿に依頼していた。この杖が入手できる「霧に包まれた島」にも、原作が進まないと入れないのだ。しかし、かつて出入りできていた頃に持ち出されたものがあるかもと思ったのだが、どうやら予想は正しかったようだ。

 

「しかしですね~、なかなか珍しい武器だけにお値段の方が~」

 

「いくらなんだ?」

 

「3万ルピですね~」

 

 たかがレア武器に3万ルピもっ……! だがこれもニオのため。ニオを抱っこするためなら!

 

「……領収書をくれるか?」

 

 でも、とりあえず経費で落とせないかリーシャに頼んでみよう。ともあれ、これで必要な武器は全部揃ったな。天星器の覚醒まで、あと一息だ。

 

「それとですね~、『例のもの』も集めておきましたので~」

 

「ああ、ありがとう。これさえあれば……」

 

 

 俺は買い物を終えると店を出た。よーし、武勲のために明日もグリフォン討伐するぞ!

 

 

 

エピソード4

 

 よろず屋からの帰り道。ふと街から出て平原を歩いていた俺は、空間の歪みを見つけた。

 

「これは、星晶獣の仕業か!」

 

 とりあえず、こう言っておけば大丈夫だろう。不思議な現象が発生したら、大抵は星晶獣が原因なのである。そして最終的には物理で殴って解決するのだ。

 

「とはいえ周囲に星晶獣らしき姿は無いし、どうしたものか……」

 

 歪みは、だんだんと大きくなっていき、どこかの部屋らしき光景が映し出される。不鮮明ではあるが、多くの鏡が並んでいるその部屋はテレビ局にある楽屋のようだ。その部屋のドアが開き、1人の少女が入ってきた。

 

『プロデューサーさん、テレビ出演ですよ、テレビ出演!』

 

 間違いない、コラボイベントだ! この後はアイドルがグラブルの世界にやってきて、なぜかアイドルなのに戦う力を持ってて、協力して原因を探って、解決して元の世界に帰る流れになるはずだ。それを、どうにか妨害すれば、元の世界に戻れずに定住してくれるだろう。うまくやれば俺と同居する流れにもできる! ハーレム王への道はこんなところにもあったんだ!

 

『喉が渇いたわ。オレンジジュースを買ってきなさい』

 

 うん、2人目もいいチョイスだ。やっぱりハーレムにはツンデレキャラもいないとな。おっ、よく見えないけど部屋の外にもう1人いるようだ。ここまでキュート(普)とパッション(貧)だから、3人目はバランス的にクール(巨)だな。お姉さん来い! お姉さん来い!

 

『歌以外の仕事なんて――』

 

 くっ!

 

 

 気を取り直していこう。空間の歪みは人が通れるぐらいになっている。アイドルたちの姿もはっきり見えるようになってきた。

 

「さあ、楽しいコラボの始まりだ!」

 

 その時、俺を探していたであろうリーシャが、限界を超えた速度でやってきた。

 

「秩序の騎空団の権限において秩序を執行します。秩序閃!!」

 

 リーシャの剣から放たれた光は、空間の歪みを跡形も無く消し去った。

 

「……え?」

 

「秩序の乱れを感じたので、この辺りを秩序的にしました。いったい何があったんですか?」

 

「なんてことをしたんだ、リーシャ! もう少しで帰る場所の無くなった少女達と、ドキドキ同居生活が始まるかもしれなかったのに!」

 

「……詳しく説明してください。いいですね」

 

 

 こうして俺はリーシャに怒られる羽目になったのだ。おのれ星晶獣。




エピソード4のアイドル3人は全員オリジナルキャラです。
参考にしたキャラはいますが別物のつもりで書きました。

次話は「隊長がリーシャ陵辱ものの絵物語隠し持ってた」です。


グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説

・アナト
カジノで入手できるSSR召喚石。
風属性の中では最強だった時期もあった。

・エンジェル・ヘイロー
十天衆の加入や解放に欠かせないクエスト。
上位者は普通に5000回とかクリアしている。

・朱雀しねなの
火属性攻撃に対して高い防御性能を持つリリィへの対抗手段として、
運営は朱雀に光攻撃を使わせた。それに対するユーザーのツッコミ。

・インペリアルショテル
天星器の覚醒に必要な武器の1つ。はぐれ帝国兵などが落とす。

・エインガナ島
ポート・ブリーズ群島の1つ。

・星晶獣
物理で殴っただけでは解決しないこともある。
星晶獣使いのルリアが力を吸収することも必要だったりする。

・秩序閃
詳細は「ぐらぶるっ!第752話」で検索。
リーシャが可愛い。
秩序的にする技なので、空間の歪みに対しても有効に違いない。


キャプテン・リーシャ(18)の秩序診断

Q:どこで夢だ(現実でない)と気づきましたか?

A1:ナルメアお姉ちゃんが登場した時点。
→いい秩序をお持ちですね。秩序の騎空団に入団しませんか?

A2:雑なハーレム展開になった時点。
→なかなかの秩序ですね。その調子で秩序の道を歩んでください。

A3:11人目が登場して前書きとの矛盾が発生した時点。
→悪くない秩序です。ですが、もう少し上を目指せるはずです。

A4:リーシャが嘘を吐いた時点。
→当然です。私があんな無秩序的言動をするはずがありません。

A5:ノックの音で起きた時点。
→秩序の何たるかを、その身に刻みつけてあげましょうか?

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