秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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加入すると見せかけておいて、そんなことは無かったと思いきや、やっぱり加入する暗示があったりもしつつ、結局は夢だったと思ったら、実際に加入したソシエ。はたして今回は誰が来る?


第14話 つまり、あのロボミイベントは何だったのか

エピソード1

 

 グラーシーザー。闇属性の槍であり、騎空士にとって必須とも言える武器だ。まず、ステータスの高さからして一般的な武器を大きく上回っており、装備するだけで攻撃力が大幅に上がる。しかも、強化を繰り返すことで闇の力が高まり、攻撃力が更に上がる。これだけでも全空で上位の武器と言ってもいいのだが、加えて復讐者の怨嗟により、使い手が傷つくほど攻撃力が上がる効果まである。強敵を前に負傷は避けられないだろうが、それによって力を得るこの槍があれば多少の不利を覆せるのだ。そんなグラーシーザー代を必要経費として認めてくださいお願いします。

 

「却下だ」

 

 せっかく書いた書類は、あっさりとゴミ箱に投げ捨てられた。

 

「そこを何とか頼むよ、モニカ。いや、モニカ様。モニモニ大提督!」

 

「貴様、やはり私のことを馬鹿にしているだろう!」

 

「まさか! 1日でも早く結婚したいぐらい好きなのに」

 

「ええい、経費も結婚も駄目だ。分かったら早く出ていけ。私だって暇ではないんだぞ」

 

 モニカは俺を追い払うように手を振ると、別の書類を確認しはじめた。

 

「……ドーナツ」

 

 俺の言葉に、彼女の動きが止まる。

 

「差し入れのドーナツ、あんなに美味しそうに食べてくれたのに」

 

「それはっ!」

 

「だから、それに免じて必要経費をだな……」

 

「ほう、それはつまり、あのドーナツが『賄賂』だったと言いたいわけか?」

 

 雲行きが怪しくなってきた。このままだとリーシャが来そうだし、速やかに撤退しないと。

 

「つ、次はリングドーナツじゃなくて、エンゲージリングを贈ってやるからな!」

 

「さっさと帰れ!」

 

 モニカ攻略は順調だ。連日のお菓子で好感度は上がっているので、いずれデレるだろう。

 

 

 そして隊長室に逃げ帰った俺は、巨大な金属の箱と対面した。まるで中に人が入っているような形状の箱を、俺は迷わず開ける。

 

「これで女の子が出てこないのなら、ハーレム王なんて目指せるものか!」

 

 箱の中にいた者を見て、俺は2年前のことを思い出した。何もできない無力な自分に絶望した、あの日のことを……。

 

 

 

エピソード2

 

 2年前。壊獣事件終息後のバルツ公国、樹上にて。

 

「よし、ここからなら公爵邸がよく見えるぞ。アリーザはいないな……庭で修行でもしてそうなんだが。しばらく待っても出てこなかったら裏門の方に回りこんでみようか、それとも……」

 

 などと覗いたりしていると、下の方から聞き慣れた声がした。チート聴覚でないと聞き取れなかったであろう、その内容はというと。

 

「秩序の騎空団です。不審者がいるとの通報でしたが」

 

「ええ、あの木の上に怪しい男がいるんです。最近は色々と物騒だし不安で不安で……」

 

「ああっ! そ、そうですね。あとはこちらで対処するので、気をつけてお帰りください」

 

 リーシャが不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。……よし逃げよう。だが、この距離では降下地点に先回りされてしまうのは必至。ならば、当初の目的達成も兼ねて、あの塀の向こう側に下りればっ……!

 

「待ってろよ、アリーザ! うおおおおおお!!」

 

 俺は跳んだ。そして無様に落ちてリーシャに捕まった。

 

「違うんだ。ここの公爵令嬢が狙われているんだ」

 

「ここにいる不審者に、ですね。壊獣事件が終わったばかりだというのに、余計な問題を起こさないでください」

 

 ここでアヴィザの企みを話すのは簡単だ。だが、その場合は彼が失脚してしまうため、俺が颯爽とアリーザを助け出すことができなくなってしまう。せめて一目だけでもロリなアリーザが見たかったんだが、リーシャからは逃げられそうにない。俺にもっと力があれば……。

 

 

 

「あの時は俺も未熟だった。あれでリーシャが来ないはずはないのにな」

 

 当時のことを思い出しつつ、俺は箱の中にいた『彼女』から手紙を受け取る。そこには『量産化できそうだから試験運用よろ! byシロウ』的なことが書かれていた。

 

「つまり、お前は――」

 

「ロボミレプリカ。その先行量産型です、マスター」

 

 メカメカしい外見に、バイザーで覆われた顔。確かに見覚えのある量産型ロボミだった。話していた記憶は無いのだが、少なくともこの個体には会話機能があるようだ。

 

 でも、そんなのいいから美少女顔にしろよ。そこは手を抜いたら駄目だろ。

 

 

 

 量産型ロボミが秩序執行巡空独立強襲隊に加入しました!

 

 

 

エピソード3

 

 騎空団連合ラファール。様々な依頼を騎空士に紹介してくれる組織であり、そこに集まった騎空士はクエストに挑むため『共闘』する。

 

「ラファール……聞いたこともないな。これもゲーム中には無かった設定か」

 

 新たな仲間が加入した俺達は、戦力向上、連携強化、情報収集、そしてルピ獲得のため、共闘クエストに挑むことにした。リーシャと2人だけでは非効率的なので来る気は無かったのだが、今は5人いるため無駄が少ないのだ。それに、せめて設備拡充用の20万ルピだけでも、急いで稼がなくてはならない。

 

「とはいえ最初は低難易度からだ。改めて各自にできることを確認しながらいこう」

 

「それはええけど、共闘せえへんの?」

 

「ああ、共闘しなくても共闘クエストはできるからな」

 

「……? あかん、ウチにはついてかれへんわ」

 

「こういう時の隊長は自己完結しているので、スルーして大丈夫です」

 

「なるほどなぁ」

 

 そんな感じで、難易度ノーマルから攻略していった。ちなみに今回からは、メイン召喚石として『ジ・オーダー・グランデ』を装備している。リーシャが風、ソシエが水、ユエルが火、量産型ロボミが光なので、どの4人でも必ず属性が3種類以上となるのだ。おかげで全員の攻撃力が大きく上がり、数日でノーマルを制覇できた。

 

 

 

 騎空艇ピースメーカー、隊長室にて。

 

「さて、ミーティングを始めようか。まずはリーシャ副隊長」

 

「はい。高難易度のクエストが発行されたので、引き受けてきました。また、次からは他の騎空団との共闘を行うとのことだったので、3つの団との交渉も済ませてあります。隊員達の調査では、いずれの団も実力は確かなようです」

 

 さすがに難易度ハードからは、単独では厳しいだろうと共闘することにしたのだ。それにしても相変わらず交渉の手際がいい。秩序の騎空団のネームバリューもあるのだろうが、俺では同じようにできるかどうか……。募集したのに誰も来てくれないとか寂しすぎるからな。

 

「次に、ソシエ副隊長とユエル副隊長補佐。情報収集の調子はどうだ?」

 

「ううん、誰に聞いても『意思を持った炎』のことは心当たり無いって」

 

「実際に話したんはウチやけどな」

 

「実力が認められれば、情報も集まりやすくなるはずだ。今後も聞き込みは続けていこう」

 

 ソシエは副隊長に任命した。それだけの戦力はあるし、隊員としての雑用なんてさせるわけにはいかないからな。ユエルはその補佐だ。逆の方がいいような気もするが、そこは好みの問題ということで……。

 

「最後に量産型ロボミ隊長補佐。俺達の強さはどうだ?」

 

「はい、マスター。全員が順調に伸びています。3日前と比較した成長率は、隊長が――」

 

 そして、量産型ロボミには俺の補佐をさせている。機械だからか客観的な分析が得意で、俺以外の攻撃力も大まかに測定できるようなのだ。他にも色々と多機能で、ただでさえ少ない俺の仕事が更に減った。さておき、俺にとっては順調にレベルアップしていること以外は重要ではないので、詳細を聞き流しつつモニカに思いを馳せる。

 

「あー、モニモニのモニモニをモニモニってモニモニしたいなー」

 

「……?」

 

 量産型ロボミの言葉が止まる。もしかして口に出てた、とか?

 

「今のは放っておくとエスカレートして奇行に繋がります。正座して反省してください、隊長」

 

「……はい」

 

「な、なるほどなぁ」

 

 

 

エピソード4

 

 共闘クエスト、平原の魔物追撃作戦が始まった。

 

「よし、打ち合わせ通りに行くぞ。前衛は俺とユエル、後衛はリーシャとソシエ、バックアップは量産型ロボミだ!」

 

 風属性の敵に対しては、火属性フォーメーションで挑む。主にダメージを与えるのは俺とユエルで、後衛の2人は援護役だ。そして、他の騎空団と協力して敵を弱らせ、一気に全員の奥義を叩きこむ!

 

「四天洛往斬!」

「これがウチの全力や! 融月緋刃!」

「九尾様に捧げる舞が一つ、白之舞・天華!」

「負けるわけにはいかないの! サンライズ・ブレード!」

 

 FULL CHAIN

 

「いくぜ! プロミネンスフレア!」

 

 こうして最初のクエストは無事に達成できたのだが……。

 

 

 休憩中。

 

「これより、さっきの戦闘の反省会を行う」

 

「えっと、隊長。それは今すぐに行うべきものなのでしょうか」

 

「もちろんだ、これ以上この問題を放置することはできない」

 

「そやかて、ウチらにそこまでの問題なんて無かったやろ。なあ?」

 

「うん、うちもそう思うんやけど」

 

 どうやら3人とも気づいていないようだ。だが、こういう場合は答えをすぐに教えず、部下の考える力を鍛えるんだったか?

 

「量産型ロボミ、戦闘終盤あたりの映像を出せるか?」

 

「はい、マスター」

 

 量産型ロボミの、映像記録機能とプロジェクター機能により、さっきのフルチェインの光景が映し出される。

 

『四天洛往斬! これがウチの全力や! 融月緋刃! 九尾様に捧げる舞が一つ、白之舞・天華! 負けるわけにはいかないの! サンライズ・ブレード! いくぜ! プロミネンスフレア!』

 

「……もう分かったと思うが、連携攻撃のプロミネンスフレアを俺しか言ってないんだ」

 

「んん?」

 

「当然ながら、この場合は4人で声を揃えることが重要だ。もちろん、いきなり合わせるのは難しいかもしれない。だけど、言おうとすらしないのは、やっぱり間違ってると思う」

 

「いや、そんなん別にどうでもええやろ」

 

「そっか、うちらに必要な連携強化ってそれやったんや」

 

 納得したように頷くソシエ。その一方で、どうやらユエルには理解できないようだ。

 

「あかん、ソシエがまた騙されてもうた。頼むで副隊長、真面目にやれ言うたってや」

 

「……声を揃える。実に秩序的でいい考えです。まさか隊長に気づかされるなんて、私の秩序もまだまだみたいですね」

 

「いや、今まで奥義のタイミングを合わせてこなかったから仕方ないさ」

 

 リーシャからは強い賛同が得られた。当然だろう、これは某国の騎士団でも普通に行われていることだからな。

 

「……なんでや!」

 

 

 次の戦闘でも終盤にチャンスがあった。全員の奥義が発動して、その後。

 

 FULL CHAIN

 

「いくぜ!」

 

「プロミネンスフレア!」

「あっ、プロミネンスフレア!」

「……プロミネンスフレア!」

「プロミネンスフレア!」

 

「もっと呼吸を合わせるんだ。次の戦闘でも狙っていこう」

 

 

 その次の戦闘でも同様に。

 

 FULL CHAIN

 

「いくぜ!」

 

「プロミネンスフレア!」

「プロミネンスゥフレア!」

「ップロミネンスフレア!」

「プロミネンスフレア!」

 

「まだ合ってない。こんなんじゃ美城プロダクションにも勝てやしないぞ」

 

 

 クエストは順調に攻略されていく。

 

 FULL CHAIN

 

「いくぜ!」

 

「プロミネンスフレア!」

「プロミネンスフレア!」

「プロミネンスフレア!」

「プロミネンスフレア!」

 

「だいぶ良くなってきた。連携強化されてきたよ!」

 

 

 そして何度も練習を重ねていき、最後の戦いでも。

 

 FULL CHAIN

 

「いくぜ!」

 

『プロミネンスフレア!』

 

「そう、そうだよ! 今の感じを忘れるな」

 

 

 かくして平原の魔物追撃作戦は無事に終わった。

 

「実に有意義な戦術でした。今度はモニカさんも誘いたいですね」

 

 リーシャはすっかりご満悦だ。俺としてもモニカとのチェインバーストは大歓迎である。

 

「これが連携攻撃なんやなあ。大切な人達と一緒に戦う力……」

 

 ソシエは感動しているようだ。今度は俺の部屋で2人の連携強化をしよう。

 

「完璧に揃うと気持ちええもんやなぁ」

 

 なんだかんだで、ユエルも気に入ってくれたようだ。

 

「次はフォーメーションを変えてやってみよう。大丈夫、俺達ならできるさ!」

 

 俺の言葉に全員が力強く頷いた。

 

 

 

 そして、火湧く地底の索敵任務。敵が火属性なので、リーシャがバックアップに回る。さらに、チェインバーストの合図を前衛のソシエに任せることにした。

 

「四天洛往斬!」

「九尾様に捧げる舞が一つ、白之舞・天華!」

「これがウチの全力や! 融月緋刃!」

「エネルギーチャージ完了。ハイパーメガトンキック、発動します」

 

 FULL CHAIN

 

「いくよ」『アブソリュート・ゼロ!』

 

 なんと、まさかの一発成功である。流石は量産型ロボミ、すごい精密性だ。

 

 

 というわけで難易度ハードも問題なくクリアして、パンデモニウムの調査許可が出た。とはいえ戦力的にはまだ不十分な面もある。しばらくはハードを周回するのがいいだろう。

 

 

 

 その後、ある日の深夜。

 

「シェロカルテ殿、このトレジャー40個を売却したい。その20万ルピで設備拡充を頼む!」

 

 ありがとう共闘、そして……名前を忘れた騎空団連合。いよいよニオのお迎えだ。




検索してもヒットが少なく、誤字でないのか不安になる「騎空団連合ラファール」でした。

ツッコミ役ユエルの加入によって、リーシャの役割にも変化があったり無かったり。
そんな中、またしても部隊に加入する女の子が。はたして彼女の正体は……。

次話は「俺はヒヒイロカネを捧げてニオを召喚するぜ」です。秩序スタンバイ!


グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説

・壊獣事件
詳細は「ロボミ イベント」で検索。
続編に「ロボミ外伝」「ロボミZ」があるが、今回は無関係。
ロボミの犠牲で壊獣は倒され、その後ロボミレプリカが生まれた。

・量産型ロボミ
詳細は「ぐらぶるっ!第571話」で検索。
量産化が成功した頃に「ロボミ外伝」が発生する。

・アリーザとアヴィザ
公爵令嬢と、その叔父。ロボミとも壊獣とも無関係。
アヴィザの陰謀で、アリーザは誘拐されることになる。

・共闘
最大4人で挑むクエスト。1人でもいい(共闘とは?)。
換金アイテムが気軽に拾える唯一のコンテンツ。
プレイスタイルによっては、時間さえかければ無限に稼げる。

・チェインバースト
本作では連携攻撃とも呼んでいる。
同じターンに複数回の奥義でダメージを与えると発生する追加ダメージ。
2チェイン、3チェイン、フルチェイン、オーバーチェインなどがある。

・奥義斉唱
同じ組織、友人、兄弟姉妹などのキャラがパーティにいるとき、
チェインバースト時に声を揃える場合がある。
大国の騎士団でもやっているからには、意味があるに違いない。
美城プロダクション所属のアイドル達も斉唱する(微妙にずれてる)。

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