秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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忘れられた失敗。
思い出したくない過去。
作者さえも読み飛ばす爆死プロローグ。

それでも物語は容赦なく進んでいきます。独自設定で。


第17話 だから俺はハーレムができない(略してDO)

エピソード1

 

 秩序の騎空団第四庁舎、秩序執行巡空独立強襲隊の隊長室にて。

 

「――であるからして、ここに反省の意を表すものとする。っと」

 

 始末書を書き終えて一息つく。それにしても、この1年で色々とあったな。モニカが来て、ソシエを引いて、ユエルに襲われて、ニオに魅了されて、オリヴィエを言いくるめて……。今後もこの調子で可愛い女の子を加入させたいものだ。まだ美少女ドラフとは出会えてないし。

 

「体型としてはモニカが近いんだけど……あー、挟まれたいなー」

 

「マスター、分析が完了しました」

 

 側にいた量産型ロボミに話しかけられる。彼女は多機能なので、色々と任せているのだ。

 

「おお、ついにできたのか! モニカの声紋分析が!」

 

「はい。これにより、どのような言葉でも再現可能です」

 

 要するに、モニカのボーカロイド化に成功したということだ。必要な音声サンプルを得るためにモニカを追い回したり、その結果リーシャに追い回されたりしたのだが、必要経費としては安いものだ。さっそく言ってほしい台詞を、近くの紙(始末書だったもの)に書く。

 

「これを頼む」

 

「了解しました、マスター」

 

 紙を受け取った量産型ロボミの口から、モニカの声で『あの台詞』が飛び出した。

 

「魔法提督ラブリー☆モニカ! 秩序に代わって指揮を執る!」

 

「おお、間違いなくモニカだ。素晴らしい!」

 

 その時、隊長室のドアが勢いよく開いた。その向こうに立っていたのは本物のモニカだ。彼女の可愛い顔は羞恥で赤く染まっている。

 

「き、ききき、貴様っ! 今のは一体どういうことだ!」

 

「いやその、違って……」

 

「どうして私の過去を知っている! まさか貴様もあの空域の出身なのか!」

 

 ん? 私の過去って? もしかして、この世界のモニカも魔法少女してたのだろうか。

 

「もしこのことが団員に知られれば、今まで積み上げてきた私の威厳は地に落ちるだろう。他の者には黙っていてもらえないか」

 

 あっ、これって脅迫できそうなやつだ。

 

「頼む……私にできることなら何でもするから」

 

「何でも!」

 

 今、モニカが『何でもする』って言った! 俺の脳内で、瞬時に様々な欲望が駆け巡る。

 

「ただし『この場で済むこと』に限らせてもらうぞ。それ以上を要求するなら、私としても穏便な解決を諦めることになる」

 

「分かったよ。それで、このことは誰にも言わないと誓う。モニカへの愛にかけて」

 

「またっ、貴様はそういう! いや、いいだろう。あれだけ愛を口にするような奴だからな」

 

 さて、何を要求しようか。例えば、結婚などは今後にも影響するから駄目だろう。それに婚姻届を書かせたとしても、後で離婚されればそれまでなのだから。次に、キスなんかも駄目だ。実際のところ可能ではあるだろうが、こんな状況でキスしても許されるのは少女漫画の世界だけだ。それに、モニカとは恋人になってからロマンチックなキスがしたい。そもそも、攻略後に頼めば普通に色々とさせてくれるのだから、ノーマルなことを言っても意味がない。

 つまり、恋人にも普通はしないようなマニアックなことを要求するのが正解だ。俺は身構えた様子のモニカを、じっくりと上から下まで眺める……つもりだったが大きな胸から目が離せない。

 

「ううっ」

 

 両腕で自身の身体を抱きしめ、涙目で睨みつけてくるモニカ。

 

「私には……任務があるんだ……どんなことだろうと……」

 

 そんな彼女を眺めること数分。考えた末にようやく結論が出た。

 

「決まったよ、モニカ。今からここで……魔法少女に変身してほしい」

 

「いいだろう。その程度なら…………えっ?」

 

 よし、『いいだろう』って言った!

 

 

 

エピソード2

 

「だから、魔法提督ラブリー☆モニカに変身するところを見せてほしいんだ。やっぱり変身シーンは男のロマンだし」

 

 ぽかんとした顔のモニカだったが、俺の言葉にだんだんと焦りを見せる。

 

「駄目だ駄目だ。そんな恥ずかしいこと、できるはずがないだろう!」

 

「『この場で済むこと』なら『何でもする』って言ったのに?」

 

「それは……その……」

 

 一向に変身しようとしないモニカに対して、俺は最後の手段を使おうと彼女の前に行く。そして両膝をつき、額を床に擦りつけた。生まれて初めての土下座だ。

 

「お願いします。変身するところが見たいんです。どうか俺に御慈悲を!」

 

「分かった、分かったからそれを止めろ」

 

 どうやら俺の誠意が伝わったらしい。顔をモニカの方に向けると、すごく嫌そうな表情だった。

 

「1回だけだからな。いくぞ」

 

 そう言った次の瞬間、モニカの全身が光に包まれた。そして、着ていた服が粒子となって消え、ボディラインがはっきりと分かる状態になる。その後、光が衣装の形になって次々と着用されていくと、数秒後にはラブリー☆モニカになっていた。

 

「おおおおお!」

 

「これで満足したな。約束は守るんだぞ!」

 

 相変わらず嫌そうな表情のモニカ。だが、魔法提督の格好はよく似合っていて、まだまだ現役でいけそうだった。ただ、胸のあたりが窮屈そうだが……これはこれでいいものだ。

 

「待ってくれ、まだ完全には終わってない」

 

「なんだと?」

 

「ちゃんと名乗りを上げないと、変身したとは言えないだろ」

 

「そんな理屈が……」

 

「魔法提督ラブリー☆モニカに変身したら、魔法提督ラブリー☆モニカって名乗らないと、魔法提督ラブリー☆モニカの存在感を示せないし、それで魔法提督ラブリー☆モニカが――」

 

「やる! やればいいんだろう! 本当にいけ好かない奴だな」

 

「もちろん笑顔でお願いします。あの頃を思い出して」

 

「ええい、こうなったらとことんやってやる!」

 

 モニカは深呼吸すると、とびっきりの笑顔になった。

 

「ラブリー! キュアリー! ブレイブリー! マジカルレベル・インフィニット!」

 

 バタンッ!

 

「魔法提督ラブリー☆モニカ! 秩序に代わって指揮を――」

 

「隊長! 緊急事態です!」

 

「執……る……」

 

 その時リーシャが見たのは、尊敬するモニカの魔法少女姿と、土下座したままの俺だった。

 

「えっ! あの……その……お、お邪魔しました!」

 

 あまりの状況に、秩序とか言えず立ち去るリーシャ。

 

「終わった……何もかも……」

 

 愛も希望も失った顔で呆然としているモニカ。

 

『映像、音声は記録できたか?』

 

『はい』

 

 ハンドサインで成果を確認する俺と量産型ロボミ。個人で楽しむ分には何も問題ないのだ。後でスロー再生しよう。

 

 

 

エピソード3

 

 数十秒後、隊長室に戻ってきたリーシャから、大規模な魔物の群れの襲来を告げられる。

 

「クルヴィ山脈で大量発生した魔物が、一斉にここ第四庁舎に向かっているようです。群れの中には上位個体もいて、現在の本部戦力だけでは対処できそうにありません」

 

「それは一大事じゃないか。私は船団長のところへ行く。貴公らの戦力には期待しているぞ」

 

 既に変身解除していたモニカは、いつも通りの毅然とした様子で去っていった。

 

「隊長、私達も早く行動を……!」

 

「その前に状況確認だ。本部戦力だけで厳しいなら、他の騎空団にも依頼を出すのか?」

 

「はい、おそらく周辺の島からも騎空士を集めることになるでしょう」

 

 魔物の群れ、予告イベント、集結する騎空団……どうやら『ディフェンドオーダー』が始まってしまったようだ。蘇る忌まわしい記憶の数々。あんな戦闘は2度としたくない。

 

「それだと人数が多すぎて、間違いなく混乱が発生するな。戦闘に参加できない者も出る」

 

「たしかに、その危険性は十分に考えられます」

 

「だから、リーシャは指揮系統の構築に取りかかってくれ。隊員達も好きに使って構わない。上層部と協力して、戦いやすい状況を作ってほしい」

 

「了解しました、隊長」

 

 リーシャに任せておけば、多くの騎空団が秩序的に動けるはずだ。俺の方も、ボス戦に向けて消耗品の準備をしておこう。

 

 

 

 そして、全ての準備は順調に進み、まもなく戦闘が開始する頃。

 

「それにしても、どうして急にディフェンドオーダーが始まったんだ?」

 

 1人で暇だった俺は今回の原因について考えていた。こんな死にコンテンツをやる意味なんて無いはずなのに、まるで某プロデューサーの気まぐれのような……はっ、まさか!

 

「ラファエル……!」

 

「隊長殿、やはりこれは天司の仕業なのだな」

 

「うぇっ! あっ、あー、その可能性が高い。おそらくオリヴィエの意図を探るためだろう」

 

「なるほど、私が必死で隊長殿を守ったりすれば正体が推測できてしまう、ということか」

 

「その通りだ。情報を得るためなら、ヒトの子の犠牲など気にせず魔物をけしかけるさ」

 

 急に現れたオリヴィエに、どうにか話を合わせる。実際のところ天司達は無関係だろう。もっとディフェンドオーダーである必然性が感じられるのは……ディフェンドオーダー、大勢の参加者、大勢のマルチバトル、大勢のディール、ブラックラビット! まさか、あの時の黒兎が!!

 

(彼女なら、運勢操作で魔物を大量発生させることも可能ぴょん)

 

 頭の中で兎野郎の声が響く。……別に原因とかどうでもいいよな。大事なのは未来だ。

 

 

 

エピソード4

 

 リーシャの全体指揮によって、次々と倒されていく魔物の群れ。そして俺達は、ボスに向かって走っていた。

 

「第2防衛線も突破された。あれ以上は放っておけない!」

 

「はい、マスター。対象の足止めに専念して、味方の参戦を待つのが効果的な戦術です」

 

「隊長はんの大切な場所のため、うちも頑張るから!」

 

「ソシエだけに戦わせたりせえへんからな!」

 

「隊長殿、右前方に魔物の群れがいるぞ」

 

「すぐに眠らせるわ……私だってリーシャに頼まれたから……」

 

 量産型ロボミ、ソシエ、ユエル、オリヴィエ、ニオと共に群れを突破していく。だが、そんな俺達の前に、ボスの支援部隊が立ちはだかった。ヘルハウンド、火属性の速攻部隊だ。

 

「こいつには装備変更しないと……」

 

「ここはうちに任せて。隊長はん達は先に!」

 

「心配せんでも、すぐに倒して追いついたるわ!」

 

「頼む、危なくなったら撤退していいからな」

 

 ソシエとユエルが離脱する。だが、少し進むと再びボスの支援部隊が出た。グランドシザース、水属性の防御部隊だ。

 

「ここは私が残ろう。この状況なら存分に力が振るえるからな」

 

「ああ、助かる。量産型ロボミもサポートに残ってほしい」

 

「了解しました、マスター」

 

 オリヴィエと量産型ロボミが離脱する。しかし目標の間近で、またしてもボスの支援部隊に阻まれる。ワイバーン、風属性の攻撃部隊だ。

 

「よお、オレ様も混ぜろよ」

 

「ガンダルヴァ!」

 

「ここは――」

 

「お前に任せて俺達は先に行かせてもらう。勘違いはしない、俺を殺すのはお前だからな!」

 

「あっ、オイ!」

 

 急に現れたガンダルヴァに敵を押し付けて、先を急ぐ俺とニオ。いよいよボス戦だ。

 

 

 

 ボスは土属性のトロールだ。鈍重な動きではあるが、一歩ずつ確実に近づいてくる。俺達は第3防衛線から少し前に出たところで待ち構える。あと数分でボスとの戦闘が始まるだろう。

 

「こうして2人きりになるのは――」

 

「やめて」

 

 ニオは相変わらずだった。ひょっとすると、迫りくるトロールよりも手強いかもしれない。そんなことを考えていると、目の前に2人の少女が降ってきた。

 

「2人だけで足止めなんて、隊長の無茶にニオを巻きこまないでください」

 

「加勢に来た。今の私は少々気が立っているのでな」

 

「リーシャ! モニカ!」

 

 どうやら騎空艇から飛び降りてきたようだ。だが、2人ともここに来て全体指揮は大丈夫なのだろうか。……もっとも船団長からして最前線で大暴れしているのだが。

 

「あらゆる事態を想定した指示は、既に出し終えています。それに、戦いやすい状況を作ることが私の役割ですから」

 

「ああ……そうだったな。リーシャがいれば心強いよ」

 

「ところで、貴公は少人数での戦闘指揮に優れていると聞く。ならば、今だけは私も貴公の指揮下に入るとしよう。せいぜい上手く扱ってみせろ」

 

「ふっ、俺に任せておけ」

 

 こうして、俺、モニカ、リーシャ、ニオの臨時パーティ(風属性)が結成された。もしかして、ディフェンドオーダーって楽しいのかもしれない。

 

 モニカが秩序執行巡空独立強襲隊に一時加入しました!

 

 

 

 ボスが来るまで残り2分。俺はリーシャを近くに呼んだ。

 

「どうしたんですか、隊長」

 

「その……今のうちに渡したいものがあってさ」

 

「えっと、それは今でないと駄目なのでしょうか」

 

「ああ、相手はかなりの強敵だからな。悔いの残らないようにしておきたいんだ」

 

 俺はポケットから指輪を取り出す。

 

「隊長、それって……」

 

「その通りだ。さあ、手を出してほしい」

 

「ええっ! でも、私なんかに……」

 

「リーシャが一番なんだ。だから!」

 

「……はい」

 

 おずおずと出された左手を握ると、俺は人差し指に『覇業の指輪』をつけた。

 

 Over the Limit!

 攻撃力+1800、HP+900、弱体耐性+10%

 

「うーん、平均的というか、ぱっとしないというか、期待外れというか……」

 

「平均的……ぱっとしない……期待外れ……」

 

「とりあえず、もう1つ使ってみるか」

 

「えっ、いったい何を……?」

 

 ポケットから2つ目の『覇業の指輪』を出して、リーシャの中指につけた。

 

 Over the Limit!

 攻撃力+2100、HP+1050、回避率+8

 

「あっ、回避! どうせ付くならモニカの方が良かったな」

 

「モニカさんの方が良かった……?」

 

「まあいいや。こっちで上書きするぞ」

 

 パキンと音を立てて、1つ目の指輪は砕け散った。

 

「あっ、ああっ……」

 

「これ以上は使っても数値が良くなるとは限らないし、一通り終わった後で試してみよう」

 

 さて、次はニオに『至極の指輪』をつけてもらおう。あれは確か胸ポケットに……。

 

「ああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 急に叫びだしたリーシャにぶん殴られて、俺は意識を失った。やっぱり理不尽な暴力ヒロインは駄目だと思う。

 

 

 

 俺が目を覚ましたのは自室だった。

 

「やはり、ヒトの子の肉体というのは脆いものだな。それにしても隊長殿の策謀は素晴らしい」

 

 混乱する俺に、オリヴィエが経緯を説明してくれた。どうやら、怒りのパワーでリミテッド覚醒したリーシャがブレイブコマンドを駆使してトロールを倒してしまったらしい。

 

「リーシャ副隊長が持つ無効化能力の強化、天司の目を欺くため戦闘からの自然な離脱。それを同時に達成してしまうなんて、隊長殿の頭脳は一体どうなっているのだ?」

 

「お、おう。別に大したことはないさ」

 

 

 

 その頃、トロールと戦った場所にて。

 

「ぐすっ、隊長なんて……隊長なんてっ!」

「私も手伝うわ……『指輪の欠片』を探すの……」

「ニオ……」




やっぱりディフェンドオーダーは酷いですね。

次話は「俺とリーシャとモニカと船団長をめぐる戦い」です。


グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説

・魔法提督ラブリー☆モニカ
別ゲームのモニカが魔法少女になった姿。
検索すると、オープニング映像があったりする。
この世界では秩序に所属しているので台詞を少し変更した。

・ディフェンドオーダー
突然に襲来する魔物を倒せと言われて参加したら、人が多くて戦えない。
早朝や深夜にも発生したので、人が少なくて倒せない。
ブラックラビットを入手したら酷い目に遭う。
そんな失敗したコンテンツ。再開の予定は発表されていない。

・指輪
詳細は「ぐらぶるっ!第1063話」で検索。
ランダムでステータスアップする。
主人公は「最初に一番戦力の低いリーシャに渡す」という当然の選択をした。
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