秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
リーシャに指輪を贈った。
生まれたままの姿になって、一線を越えた。
エピソード1
第四騎空艇団に所属する騎空士は、約半数がリーシャ非公式ファンクラブの会員だった。彼らはリーシャと共に秩序を守ることを喜びとし、日々の任務に励んでいた。しかし、モニカ船団長補佐の来空によって状況に変化が訪れる。リーシャとは違った魅力を持つ彼女に惹かれる団員も多く、モニカ非公式ファンクラブの結成は必然であった。
団員達はリーシャ派、モニカ派、中立派の3つに分裂し、勢力を拡大すべく互いに布教活動をしていた。そんな中、最も関心を集めていたのは『次の船団長について』だ。
だが、その時の俺はそんな情勢など知らず、気楽な日々を過ごしていた。
ルーマシー群島では――
「それでいきなり殴ってきてさ、普段から秩序秩序と言うわりに理不尽なんだよな」
「……呆れた。いいわ、今日は特別にお姉さんが恋愛指南をしてあげる」
「ええっ! ロゼッタだって、別に恋愛経験とか無いだろ」
「は?」
「若いから! そんなに若いから、つい外見だけで判断してしまったんだ! いやー、お姉さんの恋愛指南とかドキドキだなー」
数時間後、どうにか『ローズクリスタル』を取引できた。
よろず屋では――
「そうだな……今回はレヴィアンゲイズ・マグナを2つ頼む。それからローズクリスタルソードも交換したい」
「なるほど~、そろそろ決戦というわけですね~」
「ああ、シェロカルテ殿には、すっかりお見通しだな。今度こそ俺が引導を渡してやるさ」
「そうですか~。今後も変わらず『お引き立て』をお願いしますね~」
水属性の装備を充実させることができた。
騎空艇でも――
「碧光の星晶炉を購入したいんだが」
「駄目です。隊長のせいで、部隊の資金は枯渇しているんですよ。そもそも今の『秩序の星晶炉』で十分ですよね」
「その……俺に『秩序的攻撃力アップ』は……」
「隊長、もしかして……」
「あっ、そんなことより次の休日にデートしようぜ。近所に美味いラーメン屋ができたんだ」
「お断りします」
リーシャは冷たかった。リミテッドになって、調子に乗っているのかもしれない。
こうして日々は過ぎていき……。
エピソード2
その日は、朝から雲一つない快晴だった。リーシャなら秩序日和とか言いそうだ。
「5年か……ずいぶんと待たせやがって。さあ、あの日の続きといこうじゃねえか、小僧!」
「あれだけ襲っておいて、その台詞はおかしいだろ」
かつて戦った森の広場で、ガンダルヴァと最後の戦いが始まろうとしていた。
「オレ様が勝ったら、お前の命を貰う。精々あがいてみせろよ」
「好きにしろ。代わりに、俺が勝ったら船団長の椅子を貰おうか」
「いいぜ。それじゃあ――」
その言葉が終わる前に、俺は両手で持ったローズクリスタルソードで攻撃をしかける。奇襲は戦術の基本だ。だが、俺の初撃はあっさりと左手の鞘で受け止められてしまった。
「なんだ? 待ちきれないのはお互い様ってか?」
「勘違いするな、別にそんなんじゃないし!」
そう、ただ先手を取って有利になりたかっただけなのだ。理想の展開は、抜刀する前に削り倒すことである。俺はひたすらに攻撃を重ねていく。ローズクリスタルソードは星晶獣ローズクイーン由来の武器であり、普通の武器と比べて頑丈にできている。それを両手持ちで振るえば、流石のガンダルヴァも防戦一方にならざるをえない。
「くくく……ずいぶんと強くなったもんだ」
「ああ、おかげさまでな!」
毎月のように火属性の敵が出る突発クエストがあれば、誰だって水属性を強化するさ。
「だがな、この程度が通用するなんて思うなよ」
ガンダルヴァは、俺の攻撃に合わせて剣を横から殴りつけた。そしてバランスを崩した俺が体勢を立てなおす間に、その刀を鞘から抜き放つ。
「……そ、そうだな。準備運動はこれぐらいにしておこうか」
「オレ様もようやく体が温まってきたところだ。ここからが本番ってわけだな」
まだ想定の範囲だ。俺はローズクリスタルソードを右手に持ったまま、四天刃・雪を左手に装備した。ガンダルヴァの刀に対する新戦法……二刀流である。
「やっぱり、騎空士は四天刃じゃないとな」
「くはっ。そうだ、お前の本気を見せてみろ」
力強く振るわれた刀を、俺はローズクリスタルソードで受け流し、すかさず四天刃で攻撃する。当然だ、メイン武器は四天刃の方なのだから。そもそも、ローズクリスタルソードは『火属性ダメージ軽減』のスキルを持つ防御的な武器なのだ。だから、サブ武器として刀攻撃への対処だけに使うのが効率的だと言える。
だが、それでも状況は五分五分だ。軽減しきれないダメージが、じわじわと俺のHPを削る。このままだと、決め手となるのは奥義の使用タイミングだろう。ガンダルヴァも同じことを考えていたのか、今度は先手を取ってきた。
ブルブレイズバッター!
5年前に見た必殺の横一閃が、現在は数段上の威力で迫ってくる。それを俺は――
(また助けられたな、リーシャ)
――アビリティで『ダメージ無効』にすると、カウンターで奥義を叩き込んだ。
四天洛往斬!
「ぐあっ……」
そして、大ダメージで怯んだ隙に連続攻撃で追い討ちをかける。たまらず刀を落として、片膝をつくガンダルヴァ。
「はぁはぁ……俺の、勝ちだ……」
次の船団長は、この俺だ!
エピソード3
「ははははははっ! 楽しくなってきやがった!」
あれだけのダメージを受けたにも関わらず、ゆっくりとガンダルヴァは立ち上がった。その手に刀は握られていない。待て待て、完全に俺が勝つ流れだったろうが!
「一体どういうつもりだ」
「てめえには見せてやるよ、このオレの本気ってやつを!」
そう言って、ガンダルヴァは徒手空拳の構えをとる。つまり今までは本気でなかったということなのだろう。さすがにこれは想定外だ。だが、ダメージが残っている今を逃せば、もう倒す機会は無いかもしれない。いよいよ、俺も覚悟を決める必要がありそうだ。
「奇遇だな。俺も真の本気でいかせてもらう」
「くくっ、そいつは楽しみだ」
とりあえずローズクリスタルソードを背負う。さて、どうやったら真の本気が出せるのだろう。……考えても分からなかったので、四天刃を右手に持った普段の戦法でいくことにする。
「うおおおォォォ!」
「オラアアァァァ!」
そして、互いの全力を込めた攻撃が激突する――
「団内の私闘は禁止ですよ……?」
――その直前に、俺の四天刃は『彼女』の左手で鮮やかに捌かれ、ガンダルヴァの拳は『彼女』の右手の剣で完全に受け止められた。
『どういうことだ、今日に限ってリーシャが来るなんて』
ガンダルヴァに視線で問いかける。
『今日の戦いが楽しみだったんで、いつもの偽装工作を忘れちまった』
視線で返事がきた。……そうか、だったら仕方ないな。俺は早々に諦めることにした。
「だが、ちょうどいい。お前ら2人まとめて相手してやるぜ」
「つまり、私闘を止めるつもりはない、と……?」
あっ、馬鹿! 今の――秩序状態のリーシャに敵うわけないだろ! 俺だって何度やっても勝てる未来が見えないんだぞ! そんな俺の心の声が届くことはなく、ガンダルヴァは数秒で地面に倒れ伏した。
「見事だ……もうまともに動ける気もしねぇ……。ここまでやれりゃあ、オレにももう悔いはねぇ……。最強は……リーシャ、お前にしばらく預けてやる」
ガンダルヴァは身体を引きずるようにして、クルヴィ山脈の方に歩いていった。おい、勝手に終わらせるなよ。俺が船団長になれないだろうが! と思ったが、リーシャが怖かったので何も言わなかった。
1ヵ月後、船団長補佐の執務室にて。
「失礼します。お呼びでしょうか、モニカ船団長補佐」
「よく来てくれた。次の船団長をどうするか、リーシャの意見も聞きたくてな」
ちなみにガンダルヴァはクルヴィ山脈で修行中だが、失踪した扱いになっている。
「私の意見……ですか?」
「単刀直入に言おう。第四騎空艇団の船団長になる気は無いか?」
「えっ、私なんかが、そんな……」
「そうは言うがな、あの魔物の群れの襲来で指揮能力の高さは見せてもらった。それに、あの船団長を真っ向から倒したのだろう? 経験不足を不安視する声もあるが、そこは私が船団長補佐としてサポートしよう」
「……もしそのお話を受けたとして、部隊は、いえ隊長はどうなるのでしょうか」
「あっ! そうだな……彼はガンダルヴァ船団長の抑止力として入団したと聞いている。船団長が不在となった現状では、素行不良を理由に退団させても問題あるまい」
「しかし、その場合は前貸しした給料の回収が不可能になってしまいます」
「そうか……ならば、いっそ私がリーシャに代わって副隊長に……いや、それだけは無いな。仕方ない、私が船団長になるとしよう」
こうして、第四騎空艇団の船団長に関する問題は決着した。
エピソード4
モニカが船団長になった。あんなにお菓子を食べてて、ちょっと変身しただけなのに、船団長になれるなんて不条理な世界である。
「やはり何らかの修正力が働いた可能性が高いな」
でも、ガンダルヴァに襲われなくなったのは良かった。どうせなら現船団長のモニカに襲われたいところだが。
「いや……逆に考えるんだ。『モニカを襲えばいいさ』と考えるんだ」
「隊長」
「ち、ちち違うんだ。俺もガンダルヴァの『強さを求める姿勢』を見習おうと、無理にでも訓練に付き合ってほしくて……」
「強さを……しかし、秩序と引き換えに得た力なんて間違っています」
よし、事案回避できた。まったく、モニカを襲うのも一苦労だな。
「その通りだ……俺が悪かったよ」
「分かってもらえて良かったです。モニカ船団長には、私の方から頼んでみますから」
「えっ、何を?」
「もちろん剣の訓練の話です。隊長は秩序的に強くなりたいんですよね?」
いや、グラブル的な強さだけで十分だと思うんだが。それでもモニカと過ごせる時間ができるのは大歓迎だ。
「ああ、よろしく頼む」
「……それに、私もお二人との訓練によって力を高めたいと思っています」
その必要は無いと思います、リーシャさん。どうにも俺の被害が増える気しかしないので。でもハーレム王を目指す者としては、この結果は上々だ。
「よーし、俺はやるぞー!!」
「それでは作業に戻ってください」
「はい」
俺は罰当番の甲板掃除を再開した。監督のリーシャは読みかけの本に目を落とした。
数分後、量産型ロボミが滑るような移動で俺のそばにやってきた。
「緊急事態です、マスター。バルツ公国で壊獣が大量発生しました」
ああ、ロボミ外伝が始まったか。参加する意味もあんまり無いけど、量産型ロボミの姉妹のために、それと甲板掃除を続けたくないので、迷わず参加を決意する。敵は覇壊神ダイモンとその配下の四天王だ。
「リーシャ」
「はい、隊長。フレイメル島に針路を変更し、全隊員を招集します」
「それと『壊獣事件』の資料があれば持ってきてくれ」
「了解しました」
リーシャは去っていった。俺は浮ついた気持ちを切りかえる。適当に攻略できる相手ではないだろうし、これまで通り1人だけに専念していたら別方向から横槍が入るかもしれないのだ。だが、これは決して諦めていい問題ではない。俺は強く決意した。
今度こそ、アリーザを加入させてみせる!
俺はようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い秩序坂をよ……。第2部完!
第2部完を記念して、あの方からメッセージが届きました。
グラシ「出番」
はい、ありがとうございます。みんなの人権グラーシーザーさんでした。
さておき、原作開始前にやりたいことが終わったので『第2部完』です。
第3部は原作開始後の話です。ロゼッタ以外の重要キャラとも絡みます。
でも作者都合により、しばらく休載させてください(再開時期未定)。
お気に入り登録、評価、感想などありがとうございます。
このペースで投稿できたのは、皆様の応援のおかげです。
気づいたらこの作品も、もう十万文字です。自分でも信じられません。
小説もRankポイントも日々の積み重ねが大切なのですね。
グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説
・ローズクリスタルソード
星晶獣ローズクイーンから入手できるローズクリスタルから作られた剣。
水属性の攻撃力がアップするだけでなく、火属性ダメージ軽減もある。
どちらかというと『防御寄りの攻撃的武器』が正しい。
・レヴィアンゲイズ・マグナと碧光の星晶炉
どちらも水属性の攻撃力がアップする。
なお、秩序の星晶炉はオリジナルのパーツで、主人公には適用されない。
・ガンダルヴァ
納刀→抜刀→徒手空拳と変化する。
何となく主人公も合わせて3段変化させることにした。
主人公が徒手空拳状態を知らなかったのは、記憶力の問題。
・秩序状態のリーシャ
詳細は「ぐらぶるっ!第1144話」で検索。
リーシャが可愛い。
この作品においては世界で2番目に強い。通常状態に戻せば弱体化する。
・ロボミ外伝
詳細は「ロボミ外伝」で検索。
量産型ロボミ達が、その名に恥じない働きを見せる。
登場する『超鋼巨人・ゴッドギガンテス』が滑るように移動する。
休載の理由。
主に録画したアニメを20クールぐらい見るためです。
休載状態だと心置きなく他のことができるので。
一応、賢者実装後の再開だと、誰か登場できるかもしれません。
Q:再開まだ? ちゃんと完結させろ。
A:第5話のエピソード4が暫定最終回です。とりあえずそれで勘弁してください。