秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
エピソード1
俺の名前は『長主 公人(ながす きみと)』、両親が海外赴任で広い家に一人暮らしの、どこにでもいる普通の高校3年生だ。最近は友達に勧められたスマホゲームにハマっている。
「よぉ、長主。今日こそ帝国高校の奴らを潰しに行こうぜ」
こいつは『龍場 頑太(るば がんた)』、無駄に図体のデカい悪友だ。中学の頃、いきなり殴ってきたのを返り討ちにしてから絡まれるようになった。三度の飯より喧嘩が好きで、よく俺も巻き込まれて酷い目に遭う。あと、老け顔だ。
「うるせー、1人で行って勝手にくたばれ。俺には大事な予定があるんだ」
「またナンパだろ? どうせ成功しねえんだからよ、こっちに付きあえって」
「いいや、今日こそ上手くいくね。なぜなら俺にはこの『モテモテネックレス』があるからだ」
「あ?」
特別な男にしか購入できないという、数量限定の『モテモテネックレス』(税抜9万円)さえあれば、今日から俺もハーレム王だ。効果には個人差があるということだったが、彼女の1人や2人ぐらいは簡単にできるだろう。
「ちょっとそこの男子2人! 自習中ですよ、静かにしてください!」
口うるさく注意したのは『碧野 理紗(あおの りさ)』、同じクラスの風紀委員だ。やれ校則だやれ秩序だと毎日のように絡んでくる面倒な女子だ。だが、いくら学園長の娘だからって調子に乗っていると、俺としても本気で対応せざるをえない。
「うっ、うーん、急に腹が痛くなったから保健室に行くぜ」
「えっ!」
「おい、長主! あー、オレも頭が悪くなっちまったんで、保健室に行かねえとな」
「2人とも、そんな仮病で――」
騒ぎ立てる理紗を無視して、俺達は屋上に向かった。これが俺の日常だ。
エピソード2
トイレに寄った龍場を置いて屋上に到着した俺に、背後から声がかかった。
「煩わしい太陽ね」
とっさに振り向くと、給水タンクの上に女生徒が1人立っていた。長い金髪に短いスカートの美少女だ。それより、この子も俺と同じ蘭子Pなんだろうか。
神崎蘭子。俺がハマっているスマホゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」の登場人物だ。タイトル通りアイドルをプロデュースするゲームなので、例えば蘭子推しのプレイヤーであれば「蘭子P」と呼ばれる。
ともかく、同じ蘭子Pなら蘭子の魅力を語り合って仲を深めていきたい。最終的にはコスプレとかしてくれたら嬉しいし。だから、さっきの『挨拶』に対しては、こう返そう。
「闇に飲まれよ!」
それを聞いた彼女は、驚いたような顔をすると給水タンクから飛び降りてきた。なお、スカートは鉄壁だった。
「まさか……我が同朋なのか……?」
「ふっ、その通りだ」
問題なく『俺も蘭子Pだ』ということは伝わったようで、彼女は嬉しそうな顔をしている。
「長年にわたって探し続けていた同朋と巡り会えるとは、これも『あの方々』のお導きか……」
「うんうん。分かるぞ、その気持ち」
俺もアニメイトの前でナンパした時に『蘭子いいよね!』『えっ、誰?』って会話をして、蘭子の知名度の低さにショックを受けたものだ。
「そういえば自己紹介をしていなかったな。私は宵闇を司る堕天司オリヴィエだ。ヒトの子としての名は『天多 織絵(あまた おりえ)』という」
「うぇっ、あっ、えっと、その……」
「一体どうしたのだ、同朋よ」
まさかこの織絵ちゃん……蘭子と同じ中二病か! だが可愛いからアリだ!
だが、この時の俺は知らなかった。まさか彼女が『本物』だったなんて。
エピソード3
色々あって放課後になった。
「モニモニ結婚しよう」
「『先生』を付けろと、いつも言っているだろう!」
「モニカちゃん先生、愛してる!」
「ああ、もう鬱陶しい!」
いつものように『風白 最仁加(14才、飛び級)』先生に求婚したり。
「それでな、中等部の男の子が入ってくれるみたいで、ようやく九尾同好会を設立できるんよ」
「それはよかった。またあの演舞を見たいと思ってたんだ」
「うち、先輩にやったら――」
「そしえに近づくなって言うとるやろ!」
いつものように『一条 そしえ』とのイベントを妨害されたり。
「やはり感情制御装置が未完成な現状では……」
「なあ、シロウ。そんなことよりキャストオフ機能を付けようぜ」
「……ところで俺も本編に登場したいんだが」
「あー、あー、聞こえないー」
いつものように地質調査部で『ROBOMI』の開発を応援したり。
そんな俺を呼び出す放送があった。
『3年生の長主君。碧野ヴァルフリート学園長がお呼びです。至急、学園長室に来てください』
「名前そのままなのかよ!」
つい、メタなツッコミを入れてしまったが、とりあえず学園長室に行くことにした。
学園長室にて。
「最近、理紗――娘の口から君の名前が出るようになったので、話を聞きたいのだよ」
「はあ」
「娘のことは、どう思っているのだね」
口うるさい面倒な奴だ、と正直に答えるのは流石に駄目だろう。
「その、けっこう可愛いなと――」
「君のような奴に娘は渡さん! どうしてもと言うなら、この私を倒してからだ!」
ヴァルフリートは勢いよく立ち上がると、腰の剣に手をかけた。どう答えてもアウトだったようだ。というか剣とか持ってていいのかよ。秩序どこ行った。
「待て待て、学園長として生徒に怪我させていいと思ってるのか!」
「今の私は学園長である前に1人の父親だ」
完全に手遅れだった。というか、このイベントこそ本編でやれよ。碧の騎士は何やってんだ。
そんなわけで、俺は命からがら学園長室から逃げ出したのだ。
エピソード4
なんだかんだで理紗が機械怪獣『リーシャ・エクス・マキナ』になって暴れだした。
「この学園には何かあると思っていたが、まさかあの装置だったとは」
「どういうことだ、織……オリヴィエ」
「かつて星の民が作った『秩序を極限まで高める装置』だ。あの少女の並外れた秩序に呼応したのだろう。装置に取り込まれ『リーシャ・エクス・マキナ』となった彼女は、高まった秩序を放射して、対象を秩序的歯車にするようだ。このままでは世界中が機械になってしまう」
「なんてこった」
リーシャの秩序で世界がヤバい。いくら俺でも歯車には萌えられないし、全力で止めるしかないだろう。
「他の同朋を待っていては手遅れになる。無謀であっても私達だけで対処せねばなるまい」
「生徒達にも協力させるのはどうだ? 誰だって歯車になりたくないはずだ」
「いや、現在の『リーシャ・エクス・マキナ』に近づけるのは、相当な無秩序者だけだ。耐性の低い者は触れただけで歯車となり、彼女と同化してしまうだろう」
つまり戦力の高い無秩序者がいれば……。
「ずいぶんと面白そうなことになってるじゃねえか!」
「龍場!」
「よく分からねえが、アレをぶっ壊せばいいんだろ? なかなか楽しめそうだ」
「やれやれ。たった3人で、あんなのと戦うことになるなんてな」
俺達は『リーシャ・エクス・マキナ』のいる校庭に向かった。
第9音楽室の前で小柄な少女に出会う。
「貴方たちなら理紗を元に戻せるかもしれない」
「君は『第9音楽室の主』で音楽特待生の鳰!」
「あれの胸部から理紗の旋律が聞こえるわ。理紗は音楽室に篭ってばかりの私に、色々なことを教えてくれた。お願い、どうか理紗を助けて」
「ああ、この俺に任せておけ。その代わり今度デートしよ――」
「ほら早く行くぞ、長主」
学園長室の前で髭面の通り魔に出会う。
「理紗、いったい私の何が悪かったのだ……」
「こいつは無視して先を急ごう」
「待ちたまえ。君は、あんな姿になった理紗と向き合おうというのだな」
「いや、そんな精神論とかじゃなくて――」
「君になら理紗を任せられるかもしれない。この剣を持っていけ、きっと役立つはずだ」
そんなイベントを挟みつつ校庭に到着した。
「秩ー序ー!!」
リーシャの咆哮が轟き、空気が震える。無作為に放射された秩序の光が、校舎や花壇を歯車に変える。
「狙いは胸部の理紗本体だ。正面から行くぞ!」
「分かりやすくて助かるぜ、うおおぉぉぉ!!」
「今の彼女の演算能力を考慮すると、小手先の戦術など逆効果ということだな。なるほど理に適っている」
相変わらずオリヴィエの言うことはよく分からない。そして、そんな彼女は前触れなく黒い翼を広げ、両手に闇を集める。ふむ、最近の『中二病アイテム』にはそういうのもあるのか。俺の家には『違法改造のスタンガン』ぐらいしかないので、少し興味深い。
その一方で、龍場は数メートルも跳躍して、リーシャに拳を連打していた。放射される秩序も残像によって無力化できているようだ。この『喧嘩』で一週間ほど満足してくれればいいんだが。
俺もどうにかリーシャの足元までやってきたのだが、見上げても謎の光でスカートの中は覗けなかった。機械怪獣のパンツを見ても嬉しくないとはいえ、この過剰な秩序は駄目だろう。
「宵闇よ!」
オリヴィエの闇がリーシャの頭部に纏わりつき視界を奪う。そして俺と龍場の猛攻で、たまらず彼女は膝をついた。
「行け、長主! 惚れた女を奪い返すんだろ!」
「そんなんじゃねえ! どんな勘違いだよ! ああもう!!」
リーシャの右腕を抱え込んだ龍場に後押しされて、俺は彼女の胸に剣を突き立てた。
そして『リーシャ・エクス・マキナ』の胸部で、俺と理紗は対峙する。
「秩序……?」
「こんなことは止めるんだ。みんな心配してる」
「秩序」
「だいたい、秩序って皆が快適に生きるためのものだろ。今のお前は本末転倒っていうか」
「秩序!」
「悪かったよ、もう授業中は騒がないって」
「……秩序」
理紗の背後で、謎の装置が爆発した。
翌日。
「長主君! こんなものを学校に持ってきて、どういうつもりですか!!」
「別にいいだろ、早く返せよ俺の本!」
すっかり元気になった理紗の手には『金髪ロリ巨乳先生と秘密の放課後レッスン』があった。
「とりまトッポブで。」回でした。
最初から最後まで主人公の夢です。
主人公の中の秩序イメージは、あんな感じです。