秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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生存報告。


第21.5話 フラグメント

・来訪者たち

 

 船団長の執務室にて、モニカとリーシャは思わぬ人物と対峙していた。

 

「では、用件を聞こうか……黒騎士」

 

「そう警戒するな。今さら秩序の騎空団と敵対しようとは思っていない」

 

 黒騎士アポロニア、かつて隔離房に捕らわれていた女性だ。

 

「言っておくが、私としては脱獄の件を許していないからな」

 

「ふん……勝手にしろ。そんなことより、ある囚人との面会を要求する」

 

「面会……ですか?」

 

「そうだ。私の隣の房に男がいただろう? あの時、少しばかり世話になったからな」

 

 それを聞いて、モニカとリーシャは視線を交わす。

 

(あの時、隣の房にいたのって隊長ですよね。何か失礼なことでも言ったのでしょうか)

(ああ……こうしてわざわざ『世話になった』と『お礼参り』に来るほどだ)

(ど、どうしましょう。もし隊長と会って戦うことにでもなったら……)

(ううっ、やはり早めに追い出すべきだったか。だが、この場はどうにか切り抜けるしかない!)

 

 モニカは不思議そうな顔で黒騎士を見る。

 

「何のことだか分からないな。あの時、両隣とも『囚人』はいなかったはずだ。なぁ、リーシャ」

 

「はい、間違いありません。(隊長は被疑者だったので嘘ではありません)」

 

「そんなはずっ……! いや……そうか、記録上は存在しない囚人というわけだ。あれだけの事情通であれば無理もないか……」

 

「さあ、どうだろうな?」

 

「ふん……それならば仕方ない。邪魔をしたな」

 

 黒騎士は去っていった。

 

 

 

 数十分後、モニカとリーシャは入団希望者の面接を行っていた。

 

「俺達、秩序の兄貴に憧れて追いかけて来たっス!」

「秩序の兄貴と同じ部隊を希望するぜ!」

「兄貴の秩序道、俺達が切り開く!」

 

「……は?」

 

「ええと、その『秩序の兄貴』というのは、どなたのことでしょう」

 

 彼ら――マナリア魔法学院を卒業見込みの入団希望者――から出た名前を聞いて、モニカは頭を抱えた。

 

「いったいどうしたものか……なぁ、リーシャ」

 

「ありえないありえない隊長が秩序なんて絶対にありえない私は認めないあんな無秩序者がどうして許せない秩序の秩序が秩序で秩序に秩序と秩序秩序秩序秩序秩序……」

 

 そこには虚ろな目でブツブツ呟くリーシャがいた。

 

「えー、あー、貴君らの今後の活躍をお祈りする」

 

 

 

 船団長の一日は長い。がんばれモニカ。(主人公に)負けるなモニカ。

 

 

 

・ヤイアに出番を削られたリーシャ隊の雑談(第3部開始前)

 

 秩序執行巡空独立強襲隊、隊室にて。

 

「あー、あの隊長、早くボロ出さないかなー」

「だよなー」

 

 おなじみの会話である。

 

「そういえば誰か、隊長が槍や斧を使ってるのを見たことあるか?」

 

「いや」「私も見ていないです」「いっつも短剣だよな」

 

「それどころか、遠くの魔物に対しても銃を使わず突撃するほどだ」

 

「……だったら、どうして常にあれだけの武器を持っているんだ?」

 

「言われてみれば」「今まで気にしたことも無かった」「最初っから『あれ』だったしな」

 

「まさか、あれが隊長なりのファッション……!」

 

『!!』

 

「いや……前に聞いたことがあるんだが、ザンクティンゼルという島にあらゆる戦闘スタイルを使いこなす老婆が住んでいるらしい。もしかしたら、隊長も本気を出せば全武器を駆使して……」

 

「だけど、さすがに剣ばっかり10本も使わんだろ。確か、一時期そんな感じだったはずだ」

 

「それもそうか。やっぱり頭がおかしいだけだな」

 

 

 そこに1人の隊員が駆けこんできた。

 

「おい、大変だ!」

 

「どうした、まさか隊長が何かやったか?」

 

「いや、さっきそこで不審者がいたんだ! それも隊長に匹敵するほどの!」

 

「嘘だろ……」「まさか、そんな奴がっ」「くっ、こっちは隊長だけで手一杯なのに!」

 

「残念だが本当だ。非常にうさんくさい、にやけ顔の男だった。それで、よりにもよって隊長のことを色々と質問されたな。『秩序の騎空団には凄腕の短剣使いがいるみたいだけど、どんな人なのかな~』って。一応、こっちも不審尋問してはみたんだが、特に問題は見つけられなかった」

 

「類は友を呼ぶってやつでしょうか。今後は、より一層の警戒が必要になりそうですね」

 

「そういえば、最後に『んー、次は星屑の街にでも行ってみようかな』とか言っていたぞ」

 

「星屑の街といえば、多くの子供達が住んでいるが……まさか、人攫いっ!!」

 

「はっ、そう考えると、あのにやけ面も辻褄が合う!」

 

「こうしちゃいられない!」「早急な対応を!」「俺は隊長の動向を見張るぜっ!」

 

 こうして、なんだかんだで星屑の街の治安は少しだけ良くなった。

 

 

 

・ジモトがアマルティア

 

 少し未来の話。

 

「シュバ剣が落ちない!!!」

 

 俺は連日のシュバマグ戦の成果に絶望していた。どれだけ倒してもシュバ剣がドロップしないのである。あまりに落ちないのでホワイトラビットを装備して挑んだら全滅したほどだ。

 

「やはり物欲センサーの仕業か! せめて期待値通りならっ! この偏りこそ無秩序だ!」

 

「何が無秩序なんですか?」

 

「ほわぁっ、リーシャ!」

 

 突然に現れるのは止めてくれ。また心臓が止まるかと思ったじゃないか(転生者ジョーク)。

 

「良かったら話してください。秩序に関することなら力になれるかもしれません」

 

「実は――」

 

 俺は、藁にもすがる思いで彼女に事情を話した。

 

「……分かりました、何とかしてみましょう」

 

「えっ、シュバ剣の在庫があるのか!」

 

「いえ、そうではありませんが……隊長はそこに立って動かないでください」

 

「あ、ああ」

 

 俺はリーシャの言葉に従った。そして、彼女は少し離れた場所で謎のポーズをとりはじめた。

 

「裁きの門! 秩序! マナー! わらびもち!」

 

「リーシャ……?」

 

「秩序! 合法! 秩序!」

 

 謎のポーズで秩序的単語を連呼するリーシャ。一体、何を!?

 

「あれはチツジョセントレーションによって、チツジョーラを高めているんだ」

 

「モニカ! その……秩序何とかって?」

 

「歯車! ルール! 立方体!」

 

「チツジョーラ。簡単に説明すると、秩序的オーラのことだ」

 

「なるほど、完全に理解した」

 

 少なくとも、このエピソードが『ちつじょるっ!』だってことはな。

 

「正六面体! 秩序! 歯車!」

 

「そろそろのようだ。出るぞ、リーシャの技が」

 

「正八面体!!」

 

「えっ、技ってそれ大丈夫なやつな――」

 

 

「“秩序執行拳”奥義……『有意水準』!!」

 

 

 リーシャを中心に広がっていく光に包まれる。これは秩序の光か……!

 

「ふっ、相変わらずのチツジョーラだな」

 

「いえ……父のチツジョデンティティに比べたら、私なんてまだまだです」

 

「……それで、結局のところ何がどうなったんだ?」

 

「おそらく隊長の運から極端な偏りが消せたと思います」

 

「そ、そうなのか」

 

 つまりシュバ剣が普通に落ちるようになったってことか。よし、ザンクティンゼルに行くぞ!

 

 

 

(念のために伝えておくぴょん。本来なら今日はシュバ剣が2本は拾えるはずだったぴょん)

 

 うん?

 

(さっきの技で、超幸運状態が解除されたぴょん。今はせいぜいドロップ率1%ぴょん)

 

 は? はあああああああああ!?

 

「……秩序なんて、秩序なんてっ!!」

 

 

 

・ニオ 捕獲 作戦(コラボ)

 

 俺は木の上で『彼女』の動向を観察していた。

 

「隊長殿、こんなところで何をしているんだ?」

 

「ああ、オリヴィエか。ここまで楽に来られるなんて、やっぱり飛行能力は羨ましいな」

 

「……あまりにも自然な演技で、本当はヒトの子なのではないかと思ったぞ。諜報任務のため、私も見習いたいものだ」

 

「そ、そそそういえば何をしているのかという話だったな。俺が見ていたのはニオだ」

 

 俺が指差した先で、ニオは1人歩いている。

 

「なるほど。彼女と親密になるため、密かに情報収集をしているということか」

 

「違うな。間違っているぞ、オリヴィエ。今から行われるのはニオの捕獲作戦だ」

 

「捕獲作戦……?」

 

「ああ、彼女の行き先を見るんだ。ピザが置いてあるだろう? ニオがそれを食べると、カゴが倒れて出られなくなる仕掛けになっている。昔からの罠にアレンジを加えたんだ」

 

 対象がニオなら、近くでひもを引っ張る罠は気づかれてしまうからな。そんなわけで、こうして俺の旋律が聞かれない距離から見ているのだ。ちなみに、捕獲装置は量産型ロボミが一晩で作ってくれた。

 

「…………どうやら私には作戦の全貌が見えていないようだ。ところで『ぴざ』とは一体?」

 

「あまり知られてはいない料理だが、実はニオの好物なんだ」

 

「そうだったのか。なかなか興味深い食べ物だな」

 

「なんなら今度またリーシャに作ってもらおう。チーズの風味が美味しいんだ」

 

「では……まさか、あのピザもリーシャ副隊長が……?」

 

「ああ、文句を言いながらも、なんだかんだで作ってくれたよ」

 

「……なんという非情。やはり隊長殿には、ヒトの子など利用するだけの存在だと――」

 

「おっ! ニオがピザに気づいたぞ!」

 

 ニオはピザを一瞥すると、そのまま歩き去った。

 

 

 

 翌日、俺とオリヴィエは、同じ場所でニオを見ていた。

 

「今日こそニオを捕獲してみせる!」

 

「そのために用意したのが、まさか『あれ』とは……」

 

 そう、グラーシーザー抱き枕カバーだ。ニオが中に入ると拘束される仕掛けになっている。もちろん、それも量産型ロボミが一晩で作ってくれた。

 

「何もかもこのためだったんだ。昨日の失敗も、あの日の買い物も」

 

「しかし、その……大丈夫なのだろうか? 拘束するというのは秩序的に……」

 

「ああ。ニオ(20)はハーヴィン、ハーヴィンは合法、故にニオ(20)は合法という三段論法さ」

 

「…………やはり私には作戦の全貌が見えていないようだ」

 

「条件は全てクリアされた。ニオを拘束したら持ち帰って、じっくりねっとり仲を深めていこう。そして冷たく『童貞坊や』と詰ってもらうんだ!」

 

「……隊長殿?」

 

「おっ! ニオが抱き枕カバーに気づいたぞ!」

 

 ニオはグラーシーザー抱き枕カバーを一瞥すると、そのまま歩き去った。

 

「……失敗したようだが」

 

「ば、馬鹿な……戦略が戦術に潰されるとは……」

 

「隊長殿、その……少し疲れているのではないか? その肉体がヒトの子と同じなら、十分な休息が必要だろう。私で良ければ……慰めることぐらいは……」

 

「えっ」

 

「こ、こういうことは初めてだから、上手くできるかどうかは分からないんだが……」

 

「あ、ああ。ぜひ頼むよ」

 

 その後、木から降りた俺は、その場で気持ちよくしてもらった。普通に頭を撫でられて。

 

 

 

 エンディングテーマ『モザイクカケラ』




今回の話が本編でない理由は「グラブってないから」です。
次こそは水着回を投稿したいと思います。
あるいは「Extra4 それいけ! ハーゼリーラちゃん」かもしれません。

Q:なにやってんだよ、にやけ顔!
A:フュンフの年齢を考えると、十天衆結成は近年のことでしょう。
  メンバー選定は慎重に行われたはずで、頭目は素行調査等していたと思われます。
  聞き込みの時点で主人公は不適格だったため、原作通りにカトルが選ばれました。

Q:ジモトが~って?
A:グラブルの広告でおなじみの週刊少年ジャンプに連載していた某漫画のネタです。

Q:ピザトラップとか主人公の知性を疑う。
A:作者の解釈では、もしC.C.なら余裕で捕獲できていました。
  捕獲できなかった理由は、唯一「ニオはC.C.でなかった」というだけです。

O:モザイクカケラ?
A:メテオライトの欠片を繋ぎ合わせて、延々と周回を繰り返す、騎空士にぴったりな歌です。


グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説

・主人公のファッション
詳細は「カッタクリ コラ」で検索。
主人公のキャラデザ原案の大部分を占める。

・にやけ顔の不審者
自称・全空一の剣の使い手、シエテ。主人公を除けば間違いなく全空一のはず。
詳細は「ぐらぶるっ!第782話」で検索。うさんくささは空域一。

・ピザ
グラブルの世界においては一般的でないらしい。
詳細は「ぐらぶるっ!第635話」で検索。ニオが可愛い。

・グラーシーザー抱き枕カバー
ニオが自分から中に入るほどの逸品。
詳細は「ぐらぶるっ!第1325話」で検索。ニオが可愛い。
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