秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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第2話 2次試験

エピソード1

 

 2次試験は、クルヴィ山脈の麓の森での実戦演習だ。秩序の騎空団1人と受験生数人からなる班単位で行動しながら走ったり魔物と戦闘したり走ったり素振りしたり走ったり探索したりするらしい。走るの多いな……やはり騎空士に必要なのは17時間走り続けられるスタミナだったか。とまあ、そんなわけで今は森の中を歩いている。

 

 さて、ここで俺の班の愉快なメンバーを紹介するぜ。

 

「貴方もちゃんと周囲を警戒してください。不意討ちされたら班全員が危険に晒されるんですよ」

 

 1人目は当然ながらリーシャだ。やらかす優等生イベントの目は消えてないようだ。警戒しろと言われても索敵技能とか持っていないので、なんとなく目つきを鋭くしてそれっぽい動作をしておいた。

 

「この辺の魔物なんぞ何十匹かかってこようが、オレ様には傷一つ付けられないがな」

 

 2人目は班長のガンダルヴァだ。メンバー紹介は以上だ。つまり解放十天衆の実力を持つ俺にも危険は無いということで、さっきのリーシャの発言は『不意討ちされたら私だけがピンチなので警戒してください』という意味も同然であり、『怖いから私を助けて』と言われたようなものだ可愛い。

 

 それにしても、どうしてこの班だけ3人なんだろうな。他の班は5~6人だったりするのに、ついでに森の奥深くまで入り込んでるのも俺達の班だけみたいだし。とりあえず班長に聞いてみた。隠し事をするような性格でもないだろう。

 

「小娘の方は知っての通り、あの野郎の子供だからだ。他の奴らは無意識に手心を加えちまうかもしれねえって、やりたがらなくてよ。良かったな、これで七光りって言われずに済むぜ」

 

「望むところです」

 

「小僧の方は、てめえみたいな問題児を扱えるのが、オレ様しかいないからだ。他の受験生に影響が出ねえようにする必要もあった。何かしでかしたら牢屋にぶち込んでやるから覚悟しろよ」

 

「の、望むところだ」

 

 リーシャの冷たい視線が痛い。おい周囲の警戒しろよ。

 

 

 

エピソード2

 

 森の中の広場のような場所で小休止する。リーシャは少し疲れたのか、手頃な石に座って水分補給をしている。対して俺の方はチートのおかげか、ほとんど疲れていない。近所のコンビニにモバコインを買いに行ったようなものだ。

 せっかくなので武器の確認をすることにした。2次試験の開始時に貸与された剣、スチールスパタ(ボーナスなし)だ。所詮は試験用の武器なんて、こんなものだろう。もっとも、この俺が使えば弱い魔物ぐらいは一撃で倒せるに違いないのだが。一応、念のために軽く素振りをして手に馴染ませておく。

 

「ぜんぜん魔物が出ねぇな。こんなんじゃ試験にならねえからよ、お前ら2人でかかって来い」

 

 広場の中央でガンダルヴァが拳を握り身構える。ハンデのつもりか刀を使う気は無いようだ。なるほど、この展開にするため威圧感で魔物を寄せ付けなかったってわけだ。ここでなら邪魔も入らないし、試験の範囲を超えて戦えるだろう。

 

 一方でリーシャも、これを想定していたのだろう。持ち込んだ愛用の剣を構えてガンダルヴァと対峙する。

 

「おそらく私たちに連携は無理でしょう。前衛は引き受けますから、貴方は援護をお願いします」

 

 確かに連携の訓練もしてない信頼感も無い俺たちでは、その戦術が無難だな。俺が投擲用にブロンズダガー(ボーナスなし)を借りたのも確認していたっけ。俺はホルダーからダガーを3本取り出して左手に持つ。

 

「ようやく明かされるその実力に彼らが驚愕するのは、それからすぐのことだった……」

 

「真面目に! やってください!」

 

 言いつつリーシャがガンダルヴァに切りかかった。そのまっすぐな性格を体現したような鋭い一撃は、ガンダルヴァを両断した……ように思えたが、それは残像にすぎない。そういえば使ってきたな、幻影効果。ここはセオリー通り全体攻撃による対応でいこう。

 

1アビ使用!

 

 ……別に動作アシストとかされないらしい。仕方ないので足止めすることを強く意識しながら投げた3本のダガーは、狙い通りにガンダルヴァの動きを一時的に止め、残像を消すことに成功した。続けてリーシャが手数重視で攻めたてる。フェイントを交えつつの2段攻撃や3段攻撃に対して、防御に専念しているとはいえ徒手空拳で全てを捌ききるガンダルヴァ。俺はとりあえず、これ見よがしに新たなダガーを構えつつガンダルヴァの死角に回りこむ素振りで、その意識を散らしにかかる。

 

 そして数ターンの後に、無理にダガーを避けたガンダルヴァの体勢が大きく崩れた。すかさずリーシャは奥義を放つ――

 

「負けるわけにはいかないの! サンライズ・ブレード!」

 

――が、あっさり避けられて逆に体当たりでふっとばされてしまった。受身はとれたようだが、衝撃でしばらくは動けないようだ。

 

「少しは楽しみにしていたんだが、まだまだだな。さあ、次はお前だ小僧」

 

 オーケー、前衛交代だ。やつの動きはだいたい分かった。

 

 

 

エピソード3

 

 実際のところ、今の俺には致命的な問題がある。いくら何でもスチールスパタ1本で勝てるわけが無いということだ。せめてミュルグレスが20本は欲しい……さすがに贅沢か。だが完成ミュルグレス1本は俺のデータに存在したのだ。目を閉じてミュルグレスの姿を想像する。自分の体内にある『それ』を取り出すイメージだ。ゆっくりと目を開けると、右手には相変わらずスチールスパタがあった。

 

「……行くぞ!」

 

 精神を統一していた振りをして誤魔化しつつ、ガンダルヴァに攻撃をしかける。リーシャも麻痺から回復したようなので有効な時間稼ぎだったと言えるだろう。最初から全力で繰り出した斬撃は、服1枚を裂いたところで止まる。予想はしていたが攻撃力が低いにも程があった。

 

 仕方ないので攻撃パターンを変更する。防御力の低そうな手首への攻撃、脳震盪狙いの顎への攻撃、頚動脈狙いの首筋への攻撃を中心とした部位狙いだ。殺す気でやらないと、そもそも勝負にならない。それに現船団長を殺すことは次期船団長への第一歩だからな。今から起こるのは試験中の不幸な事故ってやつだ。

 

「くくっ……上出来だ……楽しいなぁ! さて、こっちからも行かせてもらうぜ!」

 

 そして、そんな状況なのにガンダルヴァは楽しそうだ。巧みな足捌きで打点をずらしてダメージを無視できるレベルにまで軽減しつつ、隙を見て拳による攻撃をしかけてきた。それを受ける度に安物の剣が軋む。ちょっと厳しくなってきたから、早くバフをよこせリーシャ。うろ覚えだけど、リミテッドの号令の元になったレイジ系アビリティがあっただろう。攻撃の合間に一瞬だけリーシャの方を伺うと、風を纏わせた剣を構えていた。なるほど、バフはエピソードクリアで覚えるやつか。部下を鼓舞する方向のアビリティなら、まだ習得してないのも納得だ。

 

 再度、方針を変更する。どうにかガンダルヴァの隙を作って、リーシャのダメアビを叩き込む。そして怯んだところに俺がトドメを刺すというやつだ。手始めに立ち位置を調整しつつ、パターンを変えて全力で攻撃する。

 

ダブルスラッシュ!(スチールスパタの奥義)

 

 これまで同様にダメージはほとんど無かったが、動きを止めて右手を使わせることには成功した。

 

「今だ!」

 

「覚悟はよろしいですか?」

 

 リーシャの剣から出た無数の風が高速でガンダルヴァに向かっていく!(ソニックブレード)

 

 まともに直撃すれば有効打ぐらいにはなったであろうそれは、だがしかしガンダルヴァが左手で振るった鞘によってかき消されてしまった。そういえば戦艦の攻撃すら受け止められる特別製だとかいう設定があったな。

 

「楽しませて貰った礼だ。死ねぇ!」

 

 そう言いつつ、右手で刀を抜くと俺に向かって振り下ろしてきた。このままだと確実に死ぬとしか思えなかったので『切り札』の1つを使う。イメージするのは左手から噴き出す霧! それはガンダルヴァに絡みつき動きを鈍らせる。そのおかげで、どうにか防御が間に合っ――

 

バキン!

 

――たのだが、スチールスパタは即死した。ああ、試験中の不幸な事故ってやつか。

 

 

 

エピソード4

 

 帰り道は魔物を倒しながらの移動となった。

 

 目的が達成できたからかガンダルヴァは周囲を威圧することなく、まさに「話は魔物を片付けてからだ」状態だ。俺は予備武器のブロードソード(ボーナスなし)でサクサクと魔物を倒していく。ガンダルヴァを油断させて一気に致命傷を与えるために敢えて温存しておいた武器(ちなみにミストも同様)なのだが、スチールスパタが使えない以上は仕方ない。

 

 そういえばリーシャがちらちらと俺の方を見てくる。これは間違いない、俺の強さを目の当たりにして惚れたな。だが安心してほしい、俺も同じ気持ちだから両想いだ。モニカ共々幸せにしてやるよ。善は急げと言うし、試験が終わってから上手く2人きりになって告白しようそうしよう。おお、テンション上がってきた(ダメージ10%アップ)!

 

 魔物を倒す。魔物を倒す。魔物を倒す。オルディネシュタインを拾う。魔物を倒す。魔物を倒す。予見の双葉を拾う。魔物を倒す。魔物を倒す。魔物を倒す。魔物を倒す。オルディネシュタインを拾う。だんだんと面倒になってきたな。オート戦闘機能の実装が待たれる。

 

「はぁはぁ、貴方は先ほどから何を拾っているのですか」

 

 戦闘の合間、息を整えながらリーシャが聞いてきた。

 

「オルディネシュタインって石で、属性の力の純度を高めるだかの効果があるらしい」

 

 必要な数を揃えるために、お前とモニカに300発はグラゼロ打ってやったぜ、とは言えなかった。

 

「進行に影響ない範囲で集めるなら問題ないだろ?」

 

 なにせ、ここではリーシャを何回倒しても入手できないのだ。見過ごすなんてできるわけがない。

 

「まあ、それぐらいだったら」

 

 あっさり引き下がるリーシャ。どうやら少しは信用されつつあるようだ。

 

 そして10オルディネ(時間単位)ほど進んだところで森の出口が見えてきた。他の班も集まってきているのか、少しざわついている。

 

「そういやヴァルフリートの野郎だが、近々別の空域に行くそうだ」

 

「父さんが……」

 

「あの野郎とは前々から本気で戦ってみてえと思ってたんだが」

 

 なるほどな、ガンダルヴァ追放間近ってことか。今からだと流石に俺が次期船団長になるのは無理だな。となると、モニカか別のモブが船団長になるのだろう。自分の実力も十分に実感できたし、ハーレム王になるためにも、ここから最短で行ってやる。

 

「だからお前ら……悪く思うなよ!」

 

 突然、背後から攻撃を受ける。薄れていく意識の中で、俺はどこか納得していた。

 

 やらかすのお前かよ。




死ねぇ!と叫んだのは事実。殺すことを目的とした宣言はしておりません。
思い切り、それくらいの気持ちで切ってやると、そういう意味で言いました。
死んだら所詮はそこまでの奴でしかなく、問題なかったと思っていました。
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