秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
主人公が6年前に立てた死亡フラグが折れた。
エピソード1
首から『反省中』のプレートをかけている。
「反省してます。もう2度としません」
「いい心がけです。それでは、秩序の騎空団が受けた損害に対する罰を伝えますね」
「……はい、リーシャさん」
「隊長は『抜き打ち演習』であったと主張しましたが、船団長への事前報告をせずにそれを行う権限はありません。また、多くの団員が事態への対処や事後処理にあたったため、第四騎空艇団の機能が一時的に麻痺しました。さらに――」
話が長い。いいから結論だけ教えてくれないかな。
「――ということで、ガンダルヴァ前船団長の前例も考慮した結果、1年間の給与70%カットおよび1ヶ月間の部隊活動停止となりました。なお、個人で依頼を受けるのも禁止です」
「えっ、70%も!?」
そんなファランクスみたいな大幅カットなんて……だいたい、ルピ投げは無属性だからカットできないんだぞ。それに、個人依頼も駄目ってことは生活費が……。
「ええ、妥当なところでしょう。もし民間人にも被害が出ていたら、懲役刑になっていました」
「いや……でも……」
「それに、直接の被害を受けた女性達からの訴えがあれば、さらに罰は重くなります。これは『団への損害』に対する処分でしかないので」
「ええっ、そんなのがあるのか? 普通に殴って倒しただけなんだが……」
「真面目にっ、反省してくださいっ!! いきなり攻撃されて、どれだけ彼女達が傷ついたと思っているんですか!」
攻撃されて傷つく? そんな馬鹿な。十天衆の最終上限解放イベントで、何人かは本気で戦ってただろうが。それでも奴らは特に気にせず……ああ、そういえばソーンが言ってたな。『十天衆は化け物だ』って。つまり、普通の女の子は傷つくのか……そうか……。
「あっ! じゃあ、ニオは!」
十天衆のニオなら、まるで気にしていないに違いない。なにせ、初対面でいきなり攻撃してくるぐらいの戦闘脳なのだ。
「ニオは……今でも寝込んでいます。このままでは、辞めるしかないと悩んで……」
リーシャの声が震えている。そこまで強く攻撃したつもりは無いんだが……かなり深刻な事態らしい。俺が責任を取って結婚するから大丈夫だと言いたいけど、殴られそうなので止めておいた。でも、このままニオが再起不能になったら、俺も再起不能にされてしまう(社会的に)。どうにか治療の方法を……。
「どうやら耳鳴りが酷いらしく――」
「『耳鳴り』だと! それなら何とかなる! ここに偶然『黄金の依代の竪琴』があるんだ!」
ニオが耳鳴りで不調になるのは、彼女自身の最終上限解放エピソードだ。だから、イベントを進めていけば問題なく回復するだろう。それどころか、結果的に九界琴の力でパワーアップできるのだから、俺を訴えることもないはずだ。
俺は、依代をニオの枕元に置くようリーシャに頼んで、残った女の子との示談交渉に向かった。
ソシエとユエルの場合。
「それ以上、ソシエに近づくなや! ふーっ!(威嚇)」
「うちかて九尾のせいで隊長はんに酷いことしたし、お互い様ってことで許してあげよ?」
「ソシエがそう言うんやったら……。でも、次にやったら空の底に叩き落としたるからな」
交渉成功!
オリヴィエの場合。
「私なりに分析したが、今回の件は『非常時における団員達の行動』を確認するため、だな?」
「……えっ。…………ああ、俺が見たところ指揮系統に数ヶ所の致命的な隙があった」
「決起の際は、私がその隙を突こう。そのために隊長殿は私をも攻撃した、というわけだ」
交渉成功!
フラム=グラスの場合。
「隊長室を明け渡したら、どうにか許してくれたぴょん」
「おい、勝手に交渉するなんて――」
「出ていけ、囚人」
「出ていって、囚人」
交渉成功!
最後はモニカだが、どうせお菓子を渡せば許してくれるだろう。ということでリーシャから借金して最高級の菓子折りを購入し、モニカにプレゼントした。
「ふむ……ありがたく頂くとしよう」
平静を装っているが、その視線はチラチラと菓子折りの方に向いている。これなら大丈夫だ。
「それで、その……先日のことは穏便に……」
「ああ、あの時は不覚を取ってしまったな。それにしても貴公、短期間でずいぶんと強くなったものだ。やはり極限状態での魔物退治で剣技を鍛えたのか?」
「えっ、あー」
普段の様子と変わらないように見えるが、これはまさか……。
「私も前々からじっくり鍛錬したいと思っていたのだが、船団長の業務が多忙でな。だというのに最近も愚かな部下に余計な仕事を増やされて……。まあいい、今後もその力だけは当てにさせてもらうぞ」
「お、おう」
間違いない、モニカも十天衆やガンダルヴァの同類だ。これなら好感度も低下してないだろう。俺は安心して執務室を出ようとしたが、モニカに呼び止められる。
「リーシャには礼を言っておけ。貴公への処分が軽くなるよう団員達に頭を下げていたぞ。『隊長の様子がおかしいことに気付いていたのに、未然に防げなかった自分にも責任がある』と」
「そんな……リーシャ!」
そんなことぐらいで、俺のハーレム王を邪魔した恨みが消えると思うなよ、リーシャ!
エピソード2
数日後、俺達は羅生門研究艇が滞在している島に来ていた。部隊の騎空艇『ピースメーカー』のオーバーホールや改造を依頼するらしい。騎空艇に関する仕事はリーシャに押しつけていたので、俺が活動停止状態でも問題なく作業を進められるようだ。
「なのに、どうして俺も一緒に行かなきゃいけないんだ」
「隊長を1人にすると危険だからに決まってます! あんな事件を起こしたばかりですし」
そんなわけで連れてこられた俺は、仕事も無いので暇を持て余していた。量産型ロボミもメンテナンスや蓄積データの提出を行っているので、隠し撮りした動画を楽しむこともできない。
「よし、その辺で可愛い女の子でも口説きにいこう!」
案外、こんな島にこそナルメアお姉ちゃんがいるかもしれないからな。
数分後。
「なんだ、お前か」
「おいおい……久しぶりだってのに、ずいぶんと酷い言い草だな」
街中で出会ったのは、羅生門研究艇に所属する技師のシロウだった。機械部品をいくつか持っているので買い物の帰りなのだろう。
「まあ気にするな。それより騎空艇の整備は順調なのか?」
「ああ、特に大きな問題も見当たらなかったし、予定通りさ。色々と改造もしたいから、作業が終わるまで十数日ってところだ」
「改造か……できればもっと速度が出るようにしてほしいな」
そもそも、島から島への移動に時間がかかりすぎなんだ。ゲームみたいに1クリックで移動できれば楽なのに。ああ、でも別空域に行くのは面倒だったけど。
「なるほど、秩序の騎空団として緊急時には現場に急行できた方がいいってことか。他にも要望があるなら聞かせてくれ」
「えーと、それじゃあ瘴流域を越えられるようにしてほしい。あと人型への変形機能も欲しいな。その時はメインパイロットが俺で、サブパイロットが量産型ロボミ(美少女型)の複座式で頼む。必殺技の高威力攻撃も必須だろ。それから、モニカの騎空艇『グランツヴァイス』との合体機能も欠かせないし……」
「いや、ま、待ってくれ。『ピースメーカー』は、そんなに多く追加できる余地が無いんだ」
「はぁー」
こいつ使えねえな。そんなだから改造されて壊獣になるんだよ。いいからモニカと合体……。
「隊長、無断外出ですか?」
「うわっ、リーシャ! ち、違うんだ、探したけど居なかったから、それで――」
「いいから部屋に戻りますよ。それではシロウさん、私達は失礼します」
「あ、ああ、俺も整備に戻るよ」
くっ、そんな生暖かい目で俺を見るな! あと、量産型ロボミの外見もどうにかしとけよ!
後日、無事にピースメーカーの改造が終わった。古代技術や斥力フィールドの応用で色々と強化されたらしい。あと『秩序バースト』という加速装置も搭載されたとか。活動停止中の俺は報告書を読ませてもらえなかったが、艇長のリーシャが把握しているなら問題ないだろう。
「ところで隊長、艇の名前はどうしますか? 改良型にはⅡ、弐式、ゴッド等を付けるのが一般的だと聞いたのですが……」
「そうだな……じゃあ『ピースメーカーHL』にしよう!」
特に問題も無く、俺の提案は受け入れられた。
騎空艇が『ピースメーカーHL(Harem Lord)』になりました!
エピソード3
ついにこの日がやってきた。そう、俺が自由に活動できる日だ。活動停止中に、天司長が死んでサンダルフォンが力を継承したり、ニオが最終上限解放してリーシャに抱っこされたりしたようだが、そんなことはどうでもいい。いや、後者はどうでもよくないし、抱かせないならヒヒイロ返せと言いたいぐらいだが……。
「とにかくっ、今日からマグナ討伐を再開する! AT良し! 装備良し! 針路、ザンク――」
「隊長! 星晶獣らしき未知の生物を見たとの報告がありました!」
駆け込んできたモブ隊員に命令を邪魔された。まあ、仕方ないので話ぐらいは聞いてやる。
「それで、そいつの特徴は?」
「えー、なんでも『火属性の巨大な人型、頭部に2本の角、言葉が聞き取りづらかった』と」
「ゼノ・イフリートだ! 大至急、その目撃現場に行くぞ!」
「隊長、その『ゼノ・イフリート』というのは危険な星晶獣なんですか?」
隣で聞いていたリーシャの質問に、俺は即答する。
「ああ、相当ヤバい奴だ。急がないと手遅れになるかもしれない」
「了解しました。騎空艇の方は任せてください」
よし、俺はソシエとユエルに準備させよう。相手はあのゼノ・イフリートだからな。
戦闘終了後。
「くっ、斧は無しか。みんな、まだ戦えるな? もう一度挑戦だ!」
「どうせ、そんなことだろうと思っていました。ですが、あんなに急ぐ必要は――」
「EX攻刃の特大だぞ! それに最終上限解放もあるんだ! ここで本気を出さずにどうする!」
「いえ、本気を出すのは秩序のためで……」
最低限1本完成。できれば2本欲しい。
数時間後。
「真アニマが落ちない! 畜生、もう一度挑戦だ!」
「隊長、これが読めますか?」
「うん? えーと『40101』だな」
「はい、意識は正常のようですね」
画像認証? 運営気取りかよ!
さらに数時間後。
「おい、兎野郎。本当にドロップ率アップしてるんだろうな! 不具合だったら折るぞ、オラ!」
「……なあ、副隊長。アイツ、剣に話しかけとるんやけど大丈夫なん?」
「あの程度ならよくあることです。適切な休憩も挟んでいるので、止める必要は無いでしょう」
「えぇ……」
ユエル、ゼノイフから逃げるな! リーシャ、弾幕薄いぞ!
こうして、最終日にゼノイフ斧が完成した。
「あの……隊長は何のために武器を求めるんですか?」
「もちろん強くなるためだ。そうすれば、さらに強い武器が入手しやすくなるからな」
「……」
武器集めに終わりなんか無い。いや、騎空士に『終わり』は許されていないのだ。
エピソード4
ゼノ・イフリート撃滅戦を終わらせた俺達は、アマルティア島に帰還した。火属性の戦力も大幅に上がったことだし、そろそろグリム琴でも取りに行くか。いや、先にアルバハでオメガ武器製作ってのも悪くないな……ん?
「なんか静かだな。発着所に秩序の騎空団員がいないし、本部にでも集まってるのか?」
「いえ、帝国の基地から接収を行うため、人員を軒並み向こうに回しているはずです」
すかさず俺の疑問に答えるリーシャ。どうやらガロンゾ島付近にあった帝国軍の秘密基地の調査を進めているらしい。
「まあ、そんなの俺には関係ないけどな」
「隊長! 同じ組織に所属する者として『関係ない』で済むことではありません。普段から全体の動きに目を向けて、横の連携を意識することで秩序的な――」
あーあ、また始まったよ。そんなわけで説教を聞き流しつつ第四庁舎に向かっていると、大きな荷物を抱えた団員達が歩いているのを見つけた。おそらくは、あれが帝国基地からの接収品なのだろう。……あれ? そういえば帝国軍の秘密基地って何かイベント――
「時は……満ちた」
団員達が抱える荷物から声が聞こえたと思ったら、次の瞬間その内側から飛び出してきた巨大な腕が俺の頭を掴む。
「隊長っ!!」
「こいつは星晶獣、ワールドだ!」
くっ、いきなり襲ってくるとかガンダルヴァかよ! 俺は四天刃を抜くと、目の前の巨大な手に突き立てた。だが、頭を掴む力は全く弱まらない。ひょっとして本気でヤバい状況……!?
「新たな世界を創造するため……お前の記憶を見せてもらう」
俺の記憶? その意味を深く考える間もなく、頭の中を覗かれているような感覚があった。昨日までのゼノ・イフリート周回、先月のホワイトラビット周回、古戦場での周回、イベントの周回、ヘイロー周回、シュバマグ周回、古戦場周回、マグナ周回、古戦場周回、九尾、アウギュステでのイベント、マナリア学院、壊獣、ガンダルヴァ、古戦場、共闘クエスト、ディフェンドオーダー、古戦場……そう、俺は何度も何度も戦い続けてきた……。
「まさか、俺の記憶から学習を!」
俺の推測を肯定するかのように、前世の記憶までも呼び起こされる。古戦場、日課、デイリー、ヒヒイロ掘り、古戦場、アーカルム、CPクエスト、古戦場、シナリオイベント、コラボ、古戦場、MVP争い、青箱、twitter救援、古戦場、極みスキン、バレット生成、撃滅戦、フィンブル、老婆、古戦場、旧アーカルム、ディフェンドオーダー、ミニゲーム、謎ブル、オイラ、古戦場、スラ爆、ヘイロー、四象、ジョブマスターピース、古代布、古戦場、マニアック、積荷、討滅戦、古戦場。もう忘れていた戦闘ばかりだが、確かに俺が経験したことだ。もし、ワールドが俺の記憶から学習できるとしたら……ぐっ、頭が割れそうだ!
「隊長を助けます! 撃ち方、始め!」
リーシャの指揮によって、隊員達の銃撃が俺を掴む手に命中する。力が弱まったのを感じたので強引に抜け出したが、まだ頭の中がズキズキと痛む。
「データは十分に揃った。今こそ悲願成就の時。新世界秩序を以って、神の打倒を果たさん」
腕だけだったワールドの全身が顕現していく。同時に周囲の空間が歪みはじめ、軋むような音も聞こえる。よし、とりあえず殴り倒そう! 戦力は揃ってるし何とかなるだろう。
「大丈夫ですか、隊長!」
「ああ、リーシャ。聞いてのとおり、あいつの目的は『今の世界を終わらせて新世界を創ること』だ。被害が広がる前に、ここで倒すぞ」
「了解しました」
リーシャと最終ニオがいるので風属性編成を使う。4人目は水着ユエル、ティア銃を並べた背水マグナ装備だ。昏睡が通れば楽勝だとは思うけど……。
READY
「白翼の守護神よ、我らに力を」
いつも通り、リーシャの号令から始まった戦闘だが……普通に苦戦していた。
「四天洛往斬! どうだ、これでっ!」
「分析完了。ダメージは推定1%未満です」
量産型ロボミの声に心が折れかける。もしかして、これって負けイベントか? ここでの敗北が理由で、俺がまた最終上限解放できるとか……。
(違うぴょん。ワールドを止められなかったら、この世界ごと消えてしまうぴょん)
は? 冗談じゃないぞ、こんなところで! ハーレム王になるって俺の夢はどうなる!
「みんな! オリヴィエの速度なら、もう本部に着いたはずだ。モニカ達が救援に来るまで、どうにか持ちこたえるぞ!」
ソロでは無理でも、マルチバトルなら負担が軽減される。数さえ揃えば……。
「もう手遅れだ。オレの進化は止まらない。お前の記憶は役に立ったが、もう用済みだ。世界創造の邪魔をするなら……異界へと還してやろう」
ワールドが俺に手を向けると、光る帯のようなものが俺の全身を包む。
「隊ちょ――」
最後に聞こえたのは、リーシャの悲鳴だった。
目の前にはグラブルをプレイ中のパソコン。床にはカップ麺や半額弁当の容器。ベッドの上にはナルメアお姉ちゃんの抱き枕。全体的に埃っぽい部屋。
「ああ、そうだ。俺はフェスで天井まで引いて……SSRが9つしか出なかったんだ」
ふざけんなよFKHR! 消費者庁に通報するからな!
こうして主人公はグラブル世界からの卒業に成功しました。
死亡フラグが折れたと思ったらご覧の有様だよ!
Q:モニカの好感度って?
A:ほとんど下がってません。(初対面で襲ってきた男→急に襲ってくる男)
Q:主人公を転生させたのってワールド?
A:いいえ、近くに戦闘データの塊を感じたので手を少し動かしただけです。
・量産型ロボミの予告
「マスターの反応が完全に消滅したことを確認しました。
これより個人フォルダの完全消去を開始します。
次回、現実。話数表記が無いのは仕様です」
なお、ワーさんがアップを始めたようです。
グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説
・羅生門研究艇
量産型ロボミが生まれた場所。ゴッドギガンテスという人型ロボに変形する。
ロボミや壊獣の研究によって高い技術を持っている。本業は地質調査。
・Ⅱ、弐式
マッドクラウンⅡ、紅蓮弐式、メカサイコヴィーラ Mk.IIなどが登場した。
・ゼノイフ斧
インフレが進みやすいソシャゲにおいて、3年経っても十分に使える強武器。
奥義効果が味方全体の連続攻撃確率アップなので、四天刃の代わりになる。
・ワールド(胎動する世界)
「新世界の神となる(集中線)」ことを計画していた星晶獣。
学ぶ力を持っているので、膨大な戦闘データを読み取ってパワーアップした。