秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
「秩序の騎空団を無力化した後に、新世界の創造を開始する。
こいつらの戦力では、オレには決して勝てない。
あの男が戻ってきても問題ない。記憶を読み取って底が見えた。
最適な戦術・連携を繰り出そうとも、オレのHPを8割しか削れない。
もちろん、装備ボーナスや指輪や覚醒も考慮に入れての計算だ。
さあ、残りの2割をどうする?
都合よくパワーアップなど起こりはしない。
オレが目指すのは新秩序なので、リーシャは秩序状態になれない。
この島の周辺に、特筆すべき戦力の個人や集団は存在しない。
団長も、前の船団長も、特異点も、某デザイナーすらも間に合わない。
エリクシールを使用した時にオレのHPが全快するフィールドを貼った。
リベンジボーナスも適用されない。
サポアビを習得しても無意味だ。
つまり、オレが創造神になることは確定しているのだ」
白兎のヒント
「一応、今回の伏線は第19話以降にあるぴょん。
でも、わざわざ読み返す必要も無いと思うぴょん」
エピソード1
秩序の騎空団とワールドの戦闘は熾烈を極めていた。
「秩序とは! 人々が幸せに生きるために存在するべきです! 空の世界を終わらせてまで創った秩序なんて、私達の目指す秩序ではありません! これが私の覚悟の形、トワイライトソード!」
リーシャの放った奥義はワールドの巨大な左腕で防がれてしまったが、少しだけ動きを止めることに成功した。その隙に、船団長モニカは負傷の激しい者を下がらせ、再編した部隊を前線に投入する。
「その通りだ。よく言ったぞ、リーシャ! この空に我らある限り、決して貴様の思い通りにはさせない!」
気合十分、秩序十分な2人とは逆に、最前線での戦闘によって限界が近い者もいた。
「あかん、そろそろしんどなってきたわ。狐火も半分ぐらいしか出せへん……」
「ユエルちゃん、もうちょっとだけ頑張ろ。きっと隊長はんも来てくれる思うし」
「えぇ、アイツのことやから、どうせそのまま逃げたんとちゃうか」
「ううん、隊長はんはきっとうちらを助けてくれる……。なぁ、リーシャはん?」
ソシエの問いに対して、リーシャは少し考えてから答えた。
「……そうですね、私も隊長を信じます。あの時みたいに来てくれるって」
「えっと、リーシャ……その……旋律が……」
「ニオ、大丈夫ですか? あっ、指から血が!」
「そうじゃない……言いづらいんだけど……あの……た――」
「空も星も討ち滅ぼす! 破壊あるのみ!」
ニオの言葉を遮るように、ワールドが咆哮をあげた。その口に闇のエネルギーが集まっていく。おそらくは圧倒的な攻撃で秩序の騎空団を一気に全滅させるつもりなのだろう。そして、全方向に放たれたその攻撃を――
「ファランクス!!(ファランクスではない)」
――俺はファランクスのポーズで2アビを使って完全に無効化した。よし、決まった! タイミングは完璧だ! これは間違いなく好感度急上昇だな。人気投票で1位だって狙えるぞ。
「……隊長?」
「ああ、これ以上あいつの……ワールドの好きにはさせない。この世界の秩序は俺が護る!」
そして、さっき物陰で様子を伺いながら考えた台詞も言えた。さあ、これで女の子たちの反応は……リーシャは涙目で喜んでいて、モニカは安堵の表情、ソシエは嬉しそうに尻尾をブンブン振ってて、ユエルはツンデレっぽくフンッとしてて、オリヴィエは満足そうに頷き、ニオだけは何故か『……ッ!?』な顔をしていた。まあ、ニオには後で理由を聞けばいいか。
「愚かなことを……わざわざ無駄な抵抗をするために戻ってきたというのか」
「何度でも戻ってくるさ。それに、無駄だと思っているのはワールド、お前だけだ!」
実際のところ、また送還されたとしたら戻れる可能性は高くない。だから、そのことだけは隠し通す必要があるのだ。上手く騙せるといいんだが……。
「ならば、知るがいい……。オレの力は……まさに! 世界を支配する能力だということを……」
良かった、後は倒すだけだな!
エピソード2
さあ、戦闘開始だ……と、その前に。
「隊員集合! モニカ、部隊編成のために5分だけ時間を稼いでくれ!」
「貴公というやつは……3分でやれ! それ以上は厳しい」
「サンキュー、愛してるぜ」
「いいから、さっさと済ませろ!!」
モニカに怒鳴られた(可愛い)ので、量産型ロボミから受け取った武器や召喚石を素早く装備した。風属性のマグナ編成、メイン武器は四天刃・凪だ。それから指輪を……。
「隊長、全員集合しました」
「リーシャ、これをつけてくれ」
俺は、目の前の彼女に久遠の指輪を渡した。
「えっ、これって……私でいいんですか?」
「ああ」
この状況で温存していられないし、マスタリーボーナスのダメージ上限アップでサンライズソードの威力が上がるのは大きいのと、LBの回数上限が無駄になりにくいのが決め手だ。反射×2さえ無ければニオに渡すことも考えたんだが……。ともかく時間が無いので、長々と説明するのは止めておいた。
「ありがとうございます。……大事に、しますね」
そうだ、それ1つでヒヒイロカネと同じ消費なんだぞ。俺はリーシャに頷くと、次にオリヴィエを呼んだ。
「隊長殿、今回の件は……つまり……」
「……ああ。『今』のところ全てが『順調』に進行している。このままワールドを倒すぞ」
彼女には意味深なことを言えば、しばらくは大丈夫だ。後で辻褄を合わせるのが面倒だが。
「おお、やはりそうだったか。流石は隊長殿だ」
「オリヴィエは宵闇であいつの動きを止めてほしい。だから、弱体成功ボーナスが出るまで使ってくれ」
彼女には覇業の指輪を10個渡した。イベント報酬で数に余裕はあるから、一気に放出しても問題ない。むしろ溜め込むのは勿体ないからな。ということで、役割が明確な者には多めに渡して厳選させ、総合力重視の者には至極の指輪を渡して多方面に伸ばした。ついでに平隊員には栄冠の指輪を適当に配った。そして最後に……。
「モニカ、待たせたな」
「問題無い。だが、勝算はあるんだろうな?」
「ああ、これが最後の鍵だ」
俺は、目の前の彼女に久遠の指輪を渡した。ダメージ上限アップで反撃の威力を伸ばすことができ、LBの回数上限が無駄になりにくいからだ。あと、結婚しよう。
「……くっ、迷っている余裕など無いか。だが変な勘違いはするなよ」
「大丈夫、モニカの気持ちは分かってるから」
言うまでもなく『か、勘違いしないでよね。これはステータスアップのためなんだから!』ってやつだ。間違いない、俺には分かる。
「ええい、仕方ない! これも秩序のためだ!」
Over the Limit!
LB強化回数上限+10 攻撃力+10% HP+10% ダメージ上限+5%
そしてステータス画面にも指輪マークが付いたはずだ。後でちゃんと確認しよう。ということでメインメンバーは俺、モニカ、リーシャ、ニオの4人だ。バハムートダガーの対象がヒューマンだから他に選択肢は無かった。連続攻撃アップのためにニオは外せないしな。
「ワールド! 俺の記憶で少しは強くなったみたいだが、そんなの無意味だって教えてやるよ」
「その程度の小細工ならば、オレの計画に影響はない」
READY
「……白翼の守護神よ、我らに力をっ!」
いつも通り、リーシャの号令から始まった戦闘だが……ちょっと殺気立ってる? やっぱりワールドの計画を許せない気持ちが強いのだろう。俺も確実にここで倒したいと思ってるしな。なお、戦闘は普通に優勢だ。
「どういうことだ……さっきまでのお前に、こんな力は無かった……。お前の状態はほとんど何も変わっていないはずだ……。その力は何だ! いったい何をした!」
「何って……ただ、向こうで新着情報を1つ処理しただけだ」
「新着情報……? そうか、お前!」
「ああ、フレンド申請の通知を確認して承認した。先月に『自分のアカウントにフレンド申請していた』からな」
当然ながら、前世のアカウントではフリー欄にカグヤ様を設定していた。だから、念のため大量申請のついでにID入力で申請しておいたのだ。俺自身がコピー人格で、オリジナルが健在である可能性もあったしな。
結果的には問題なく『もう1人の俺』とフレンドになれて、両面マグナの戦闘力が遺憾なく発揮されている。フレンドが1人(しかも自分)だという事実さえ気にしなければ、何も問題はない。……あ、複アカによるBANだけは勘弁な。
「それでも! 超越する! いかなる困難もオレは乗り越える!」
ワールドの攻撃によって世界がごちゃまぜになる。すぐに復元力で元に戻るが、巻き込まれた俺達のHPは大幅に減ってしまった。だが、背水武器が中心の風マグナに対して、中途半端な全体攻撃は悪手だ。
「一気に決めるぞ、リーシャ!」
「例え創造神が相手でも、私達は諦めたりなんて絶対にしません」(攻撃号令Lv5が発動!)
「今だ、ニオ!」
「九界は尽く隆盛し、我ら唯々その美酒を啜るが如く」(九界の繁栄が発動!)
「行くぞ、モニカ!」
「ああ……この一刀で終わりにしよう」(覇旋雷閃が発動!)
「これで、俺達の勝ちだあああ!!」
HPが少ないほど攻撃力が上がる背水スキルの効果を、両面マグナの加護で大幅に上昇させ、ダメージ上限も伸ばした上で、二重三重に追撃を乗せて、確定でトリプルアタックする瞬間最大火力。プレイヤーからニオリーシャ砲とも呼ばれる俺達の猛攻を受けて、ワールドは実体を保てなくなっていく。
「理想の新世界よ……」
ワールドにトドメを刺した!
エピソード3
勝利に沸き立つ俺達。だが……。
「空の民がオレの秩序に抗うというのか」
ワールドは完全に消滅せず、不安定な状態で浮かび上がっていく。そしてそのまま北の方に移動を始めた。
「まずいぞ、ワールドは逃げるつもりだ!」
おそらく、セフィラ島で潜伏して力を取り戻し、アーカルムシリーズを率いて、再び世界を終わらせようとするのだろう。
「そんなことは絶対にさせない! リーシャ、ピースメーカーHLの出港準備だ!」
「了解しました、隊長!」
「まだ戦える者は、俺と……」
言いつつ周囲を見回したが、立っている者はほとんどいなかった。無理もない、俺がいない間もずっと戦っていたんだ。だったら最後は俺1人でもやるしかない。ワールドだって弱ってるんだ。今日で終わらせないと……アーカルムの転世なんて面白くない作業を延々とやらされるのだから!
そして俺は騎空艇でワールドを追っている。弱点を攻撃するために、装備は光属性に変更した。
「隊長、ワールドの進路は変わりません。やはりセフィラ島を目指しているようです」
「良し! 一気に追いつくぞ!」
「はい。秩序バースト、行きます!」
シロウの改造で搭載された加速装置『秩序バースト』によって、ワールドとの距離をぐんぐんと詰める。だが、まだ少し追いつけそうにない。
「もう1回だ。今度はワールドの少し上方に向かってくれ」
「了解しました」
リーシャに指示を出すと、俺は舳先に移動して接敵に備える。少しして騎空艇は再び急加速し、ワールドが射程に入ったところで……俺は足元を強く蹴った。
「滅べ、アーカルム!!」
「隊長!?」
ワールドに向かって跳躍した俺は、両手で四天刃・真を強く握って、その巨大な頭部を攻撃しようとする。だが、ワールドも最後の力(希望的観測)で腕を振り回して妨害してきた。
「オレは……あの場所へ……あの場所へ……」
その巨大な腕を足場に軌道を修正して、俺はワールドの側頭部に四天刃を突き立てた。その姿が徐々に崩れていくのを見て、俺は――
ボギンッ!!
攻撃された、ワールドの腕だ、背後から、油断した、折れた、力が抜ける、喪失感、取り返しがつかない、心臓が苦しい、致命的。そうだ……ここは現実だから、こんなことも起こるのか。これまでの戦闘の記憶が走馬灯のように浮かぶ。……って、今はそんな場合じゃないだろ!
「来いっ! 白兎剣!!」
俺は右手を四天刃から放して、白兎剣を装備する。そして、そのまま力の限り振り下ろした!
白兎飛跳閃!
「新たな……世界を……」
その言葉を最後に、ワールドは完全に消滅した。
ワールドが消えたことにより、空中で俺を支えるものが無くなった。つまり、普通に落ちる。
「なあ、飛行能力とか……」
「無いぴょん」
「そうか」
空……一面に広がる澄んだ蒼……。いつもは気にも留めないその蒼が、今は何故かとても美しいと感じられた。はぁー、この程度の犠牲で世界が救われたんだから喜ぶべきだよな。まあ、俺としては複雑な気分だけど。でも……皆が無事なら、それでいいか……。
リーシャが、低高度の小さな離島にて自作の『シュバ剣の墓』の前で泣きながら祈っていた隊長を発見したのは、ワールドが消えてから10分後のことだった。
「こいつが……俺の代わりに攻撃を受けて……ううっ……」
「いいから早く帰りますよ」
エピソード4
その夜は、ワールドの討伐を祝して宴会が開かれた。その主役であり今回のMVPとなったのは、勿論この俺……ではなくリーシャだった。
「なんか急にいなくなったよな」「リーシャ副隊長はずっと戦ってた」「敵前逃亡は極刑ですぞ」「最後だけいいところ持っていったくせに」「てか、そもそも記憶がどうとかって一番の元凶なんじゃ……」「リーシャ様最高!」「モニカ船団長の指揮も良かった」
投票の様子はそんな感じだったらしい。当然、俺は自分に入れたが、それは無理だと怒られた。仕方ないので、旧アーカルムの転世を終わらせたジェネラルのノワール氏に投票しておいた。無効票になったけど。
そんなわけで今は会場の隅で1人、折れたシュバ剣を偲んで飲み食いしている。
「隊長はん……ここ、ええかな」
「ああ。ちょうど暇してたところだったんだ」
素早くユエルの位置を確認すると、遠くのテーブルで数人と騒いでいた。チャンスだ! ユエルが気付かないうちに、ソシエを酔わせてお持ち帰りするぞ。早速、お互いのコップに酒を注ぐ。
『乾杯』
「うちな、隊長はんが消えてもうたとき、えらい不安やったんよ……。でも、今までみたいに助けに来てくれるって信じとって……。そやから、本当おおきにな」
「どういたしまして。でも、俺が戻ってこれたのもソシエが信じてくれたおかげなんだ。ソシエの信頼に応えようと思ったから、いつも以上に頑張れた。だから、これからもその純粋な気持ちを大事にしてほしい」
そして、そのまま俺に食べられてほしい。ありがとう、いただきます。俺は酒を追加した。
「隊長はん……」
「ソシエ……」
いける、いけるぞ! ソシエと結ばれたら、それを利用してユエルとも。それからオリヴィエ、モニカ、リーシャ、ニオも最終的には俺のものに……!
「あの……隊長はんは……その……好きな人おるん……?」
「ソシエが好きだ」
「えっ!!」
「もちろんユエルも好きだし、オリヴィエも好きだし、モニカも好きだし、リーシャも好きだし、ニオも好きだし、秩序の騎空団員3(名前を教えてくれなかった)も好きだし、ヤイアも、ナルメアお姉ちゃんも、アニラも、アリーザも、ジオラも、グレアも、アンも好きだ。他にも……」
いや待て、ちょっと気が早かったか? ソシエの表情は……悪くない、まだいける!
「そういう好きとは……ううん、隊長はんの博愛精神やったら納得やけど……」
「なあ、そろそろ2人で抜――」
「うちっ! もっと頑張るから……! そしたら……」
ソシエはそれだけ言うと、急に立ち上がって走り去った。
「あっ、ちょっ!」
よく分からないが、独りよがりなのはどうかと思う。
ソシエに逃げられ……ではなくタイミングが悪かったので、次はモニカかオリヴィエを狙おう。
「あっ、隊長! 隊長がいます!」
「げっ!」
リーシャが来た。しかも、けっこう酔っているようだ。面倒なことになる前に、酔い潰してしまおう。そうすれば、心置きなく本命をお持ち帰りできる!
「ねえ、隊長。どうして貴方はそんなに無秩序なんですか?」
「知らん。お前らの秩序意識が高すぎるだけで俺は普通――」
「今日だって無茶ばっかりして! 私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」
「俺の答えは無視かよ」
駄目だこいつ……早く潰さないと……。俺はリーシャのコップに酒を注いだ。
「私だって、隊長が来てくれたのが嬉しかったんですよ! でも……どうして、あんなに必死だったんですか。やっぱり武器のためですか、いつもみたいに!」
「いや、違うけど」
「秩序のためでもないですよね」
「まあ、はい」
「じゃあ……わた……しの……」
「うん?」
リーシャはコップの中身を一気に飲み干した。そして真っ赤な顔で俺のことをじっと見てくる。かなり酔いが回っているようなので、そのコップに酒を追加した。
「そ、それより『あの時』の話です! あの言葉は本気なんですか? 今さら冗談とか言われたら怒りますよ!」
あの時って何だ? まるで思い出せないけど、怒られるのは嫌だし肯定しておこう。
「も、もちろん本気も本気、大本気だ。俺だって冗談であんなことは言わない」
「そうですか……。あの時はつい逃げてしまいましたが、今からでも返事させてください」
「ああ……いい、けど……」
リーシャが逃げた時っていつだ? 頭の片隅に何か引っかかっている気もするが。
「その……よ、よろしくお願いします! 恋人として!!」
「ええっ、恋人!?」
「はい。えーと、隊長は『私と共に永遠を過ごしたい』って言ってくれましたが――」
言ってない、そんなの俺は、言ってない(グラブル川柳)。
「――やはり、いきなり生涯の伴侶というのは急すぎると思うんです。ですから、まず健全な交際から始めて、お互いのことを深く知ってから次の段階に進むのが秩序的だと……」
おい兎、この野郎、どういうことか俺に説明しやがれ。
(蒼の少女編が終わって牢屋から出た後に『リーシャ、フォーエバー』って言ってたぴょん)
いや、それは言ったかもしれないけどさ。違うだろ、ニュアンスが。
「……聞いてますか、隊長!」
「はいっ、その、えっと、やっぱり俺には……」
「大丈夫です。貴方がどんなに無秩序でも、一生をかけて矯正しますから!」
「ひぃっ!!」
その言葉は、まるで死刑宣告のように俺の心を絶望させた。俺の夢が、ハーレム王が……。
「それと……これは私の気持ちです」
リーシャの両手が俺の頬を包む。そして、そのままゆっくり彼女の顔が近づいてきて、唇に柔らかな感触があった。
「今のって……」
端的に言うとキスされた。人生で初めてだった。
「少し恥ずかしいですね、うふふ」
リーシャは、はにかむように笑うと、そのままテーブルに突っ伏して寝てしまった。待て待て、俺の話も聞こうぜ、おい。ここで終わると結論が出たみたいになっちゃうだろ! くそっ、誰だよこんなに酒を飲ませたのは!!
そう思いつつ見回すと、その場にいた全員が俺達のことを見ていた。あれ、ちょっと空気が重くないか?
「リーシャ様が……リーシャ様が……」「許せねぇ、絶対に許せねぇよなぁ!」「どうしてあんな奴なんかをっ!」「俺達のリーシャ様だったのに」「有罪、そう有罪だ!」「有罪!」「有罪!」「有罪!」「有罪!」「有罪!」
待て、お前ら少し落ち着け。これは違う、誤解なんだよ。焦る俺の耳に、九界琴の音が届いた。来てくれたか、ニオ! こいつらを昏睡させてくれ。その間に俺は逃げるから。
「今のうちに隊長の存在を消してしまえば、きっと無かったことになるわ」
「ニオ!?」
ニオの演奏によって、団員達の能力が強化される。流石に勝てる気がしなくなってきた。さらに焦る俺の側に、オリヴィエが降り立った。助かった、俺を連れて飛んでくれ。
「流石は隊長殿だ。リーシャ副隊長の籠絡に成功するとは。彼女は計画に欠かせない重要人物だ。私が責任を持って送り届けよう」
「オリヴィエ!?」
オリヴィエの離脱によって、リーシャを人質にしての逃亡も不可能になった。そうだ、ソシエは……いない! ユエルとモニカもいないし、量産型ロボミは対人戦闘ができない! 死ぬほど焦る俺の前に、新たな人物が現れた。
「貴様っ、よくも私の娘に……許さん!!」
「ヴァルフリート!?」
何しに来たんだよ! こんな時だけ出張ってくんなよ! ってか世界の危機なんだから、もっと早く来いよ! そんなことを思いながら、俺は全力で逃げ出した。会場を飛び出して、そのまま大通りを駆け抜ける。背後から多数の足音や銃声なんかも聞こえてくるが、振り返らずにひたすら走り続けた。
ふと気づくと、前方にお洒落なエルーンの女性が立っている。見覚えのある彼女は――
「ナイスハッピーエンド!」
――と言ってサムズアップすると、よろず屋に入っていった。
お前の役割それだけかよ!!
翌朝、自室で目を覚ましたリーシャは、少しして前夜のことを思い出した。
「わーっ! わーっ!」
そして、枕に顔を埋めて足をバタバタしていたせいで……生まれてはじめて遅刻した。
そんなわけで、主人公の更生と、リーシャの堕落をかけた恋愛頭脳戦が始まるのです。
Q:ニオの様子が変だったのは?
A:彼女には心の旋律を聞く能力があります。例えば物陰にいる主人公の旋律も。
Q:ワールドに折られたのは?
A:シュバ剣1本だけです。装備武器が9つになり、力が抜けて喪失感がありました。
そして、やむをえず白兎剣を装備して、万全でないものの十分な攻撃力を得ました。
Q:ソシエのルートに入るには?
A:「ソシエが好きだ」で止めておけば大丈夫です。お持ち帰りできます。
・作者の予告
「くぅ~疲(略)
次回、エピローグ。主人公が死にます。
その後は外伝をいくつかやって、ナル・グランデ編(仮)の構想もあります」
グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説
・ファランクス
主人公は使うことができないアビリティ。
1ターンの間、ダメージを70%カットする。
使うときは両手を顔の高さまで上げて、独特のポーズをするのが流行り。
・久遠の指輪
ケッコンカッコカリ。
他の指輪とは違い、各種ステータス画面に指輪マークがつく。
(至極の指輪:強い指輪。覇業の指輪:普通の指輪。栄冠の指輪:弱い指輪)
・ニオリーシャ砲
そのまま検索して、動画を見るのが早いと思います。
ダメージ表示が多くて派手。
・旧アーカルムの転世
失敗したコンテンツその2。同じ作業を数時間やらされた……よくあることか。
3つの陣営で格差があり、強い陣営に対して延々負け戦をやらされた。
一介の参加者であったノワール氏が2日でコンテンツを終わらせた、とされる。
・お洒落なエルーン(コルワ、ワーさん)
ハッピーエンドのためなら星晶獣すらも殴り倒せる、服飾デザイナー。
ハッピーエンドの気配を感じてやってきた。そして満足して立ち去った。
昔は「コルワのエスプリのフィルがアステュースでコール」な性能だった。