秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
『完結おつ』の感想に戸惑いつつも書きました。
でも、内容が気に入らなければ最終話で完結だと思ってください。
『かくして、全空の危機であった「胎動する世界」事件は、第四騎空艇団が一丸となって解決へと導いた。やはり、この時も中心となって動いたのは、彼の率いる「秩序執行巡空独立強襲隊」である。この事件から1年も経たずに団長がヴァルフリートからリーシャへと変わったが、この部隊における彼女の実績の多さが大きな理由であろう。
一方、隊長であった彼の方はというと、リーシャ新団長の主導で新設した部隊の隊長となった。団長直属の戦闘部隊「高度全空救援執行主力部隊」の誕生である。初期メンバーのほとんどが前の部隊からの続投であることからも、部隊の錬度の高さを窺い知ることができる。
当然ながら「彼を新団長に」との意見もあったと思われるが、前線で人々のために戦い続けたいという信条から敢えて彼女に譲ったのではないかと筆者は推測する。
さて、高度全空救援執行主力部隊についてだが、その華々しい活動の記録や逸話は全空中に残っており「知られざる彼の素顔に迫る」という本書の趣旨からは外れるため割愛させていただく。
彼の引退は意外なほどに早かった。様々な戦場を縦横無尽に駆け回った姿を知る者からは、生涯現役で世界秩序に貢献するものだと思われていたようだが「もう俺の戦場は無い」の言葉を残して退団したらしい。きっと「ここからはお前達が秩序を護るんだ」と続くのだろう。自身の影響力を考えて、後進育成のために表舞台から去った彼は、どこまでも秩序のことを考えていたのだ。
その後、彼はアウギュステの海辺にて妻であるリーシャと自給自足の生活を送っていたらしい。ときおり海でとった大きな獲物を、地元民や旅行客に振舞っていたという記録が残っている。また有事の際には誰よりも早く現れて、被害に遭った女子供を救出していたことは現在でも地元民の間で有名だ。
晩年は芸術方面でも注目を集め――』
「ねえ、なに読んでんの?」
本から顔を上げると、幼馴染のシャーリーがいた。
「課題図書だよ。感想文のやつ」
「ふーん。あっ、伝説の隊長様の本だ!」
「伝説って……まあ、そうだけど」
「格好いいよね、隊長様! その本も何回か読んだけど、私のお気に入りはシデロス島の話かな。たった1人で星晶獣と戦って、増援が来るまで民間人を守り抜いたんだよ!」
また始まった。『隊長様』の話になると、すぐこれだよ。あっ、そうだ。
「そんなに詳しいんならさ、僕の代わりに感想文書いてよ。シャーリーなら簡単だろ」
「はぁ? そんなズル、協力するわけないでしょ。私は隊長様みたいな秩序の人になるんだから」
「ちぇっ、ケチ!」
「だいたい、仮にも隊長様の子孫なんだから、もっと真面目にやりなさいよね」
「うるさいなぁ、ご先祖様のことなんて僕には関係ないだろ……」
「馬鹿! 隊長様の名前に傷がつくじゃない!!」
こうなったシャーリーには何を言っても無駄だ。僕は諦めて感想文に取りかかることにした。
「えーと……『大勢の女の子に囲まれてて羨ましいと思いました。きっと毎日がウッハウハだったのでしょう。将来は僕も――』」
「はぁ? どこをどう読んだら、そんな感想が出てくるのよ!」
「だって、ここに……」
『簡単にではあるが、他の人物についても略歴を記しておこう。
リーシャ。
秩序の騎空団の団長に就任。直属の部下である彼と様々な空を駆け巡った。結婚、出産後も変わらず公私ともに支え合う関係であり、多くの者から憧れられる存在となった。彼と同時期に引退した後は、夫婦で仲睦まじく暮らしていたとされる。
モニカ。
第四騎空艇団の船団長として、長期にわたりアマルティア島の発展に貢献した。元部下であった彼からの信頼も厚く、離れた空域にいても月に1度は来訪があったようだ。生涯独身であった。彼との関係を噂されたようだが真偽は不明。
ニオ。
リーシャの団長就任に合わせて正式に入団。団長補佐として夫妻をサポートしつづけた。良からぬ企みをもって団長に面会した者は、一人残らず身体の不調を訴えては矯正されたらしい。リーシャとの同居は結婚後も継続され、まるで姉妹のような関係であったという。
ソシエ。
九尾との因縁が片付いた後に正式に入団。彼の部隊の副隊長として、多くの者を護り癒した。後に『秩序の舞姫』と呼ばれるようになり、結婚の申し込みがあとを絶たなかったという。寿退団した後は、伴侶と共に王家の再興に尽力したらしい。
ユエル。
九尾との因縁が片付いた後に正式に入団。副隊長ソシエの補佐として、多くの敵を斬って焼いた。後に『秩序の焔姫』と呼ばれるようになり、ソシエに近付く者を防ぎきったという。寿退団した後は、伴侶と共に王家の再興に尽力したらしい。
オリヴィエ。
「胎動する世界」事件の直後に正式に入団。星晶獣にも関わらず秩序のために働く姿は、多くの者に明るい未来を予感させた。彼との間に大規模な計画があったらしく、現在でもその調査は続行されているが手がかりは何も見つかっていない。彼の退団と同じ時期に姿を消した。
量産型ロボミ。
壊獣の完全消滅を確認した後、機能停止を願い出たが彼に止められる。その後、母性を活かして、多忙な夫妻の代わりに彼らの子供を育てるようになった。彼の死後、程なくして動かなくなった。
ガンダ――』
本を閉じる。
「こんなに女の子に囲まれてて、目移りしないわけないだろ!」
「そっ……違っ……」
シャーリーは口をパクパクさせている。僕は構わず自論を展開することにした。
「まず、このモニカって人からは普通に好かれてただろ。生涯独身ってのも、それが理由だと思うな。次にニオって人も、姉妹関係ってのは怪しまれないための方便で、実際は略奪とか考えてそうだし。それからソシエとユエルって人も、相手のことを何も書いてないってことは、秘密の事情があったんだ。オリヴィエって人も、実は痴情のもつれで誰かに消された可能性が……」
「ありえないわよ! 馬鹿馬鹿馬鹿! いくら隊長様の子孫でも許さないんだから!」
ボッコボコに殴られた。体のあちこちが痛い。すぐ暴力に訴えるのは秩序的じゃないだろ! と言ったら追撃がありそうなので我慢した。そのまま走り去るシャーリー。
「僕だって、いつかご先祖様に負けないぐらい……あれ? いま何か光ったような……」
少し離れた川の底に何かあるようだ。気になったので近付いて調べてみることにした。
「……白い、剣?」
少年が去った後、風がパラパラと本のページをめくる。
『彼は多くの子供と孫に囲まれて最期の時を迎えた。幸せそうな笑顔で旅立ったと言われている』
時は戻って。アウギュステ列島、海辺の一軒家にて。
「夢を……見ていた……俺が……隊長だった頃の……」
「お祖父ちゃん! お祖父ちゃんが目を覚ました!」
目を開けると、可愛い10人の娘達と大勢の孫娘、あと男どもがいた。男女比率を考えると、男には退場してほしいところだが、それを口に出す気力すら今の俺には無かった。
「そろそろ……限界みたいだ……」
「そんなっ! 死なないで、お父さん!」
「海が見たい……窓を……」
ただちに窓が開かれる。部屋に吹いてくる潮風が心地いい。そして、大勢の観光客! 水着! 水着! 水着! 揺れる胸! くいこむ尻! ビキニ! 紐! えっ……紐!?
「そうだね……お母さんも海を見るの、好きだったもんね……」
娘の言葉はよく聞こえなかったし、気づいたら心臓が止まっていた。
???にて。
「もう! ずいぶん待ったんですよ、貴方」
「あれっ、リーシャ?」
目の前にいるのは、若い頃の彼女だった。そして、気がつくと俺の姿も若返っていた。
「まあ、貴方の遅刻癖は知ってますけど……ずっと寂しかったんですからね」
「それはその、悪かったよ」
「冗談です。でも、もう二度と離れないでください」
そう言って、俺の手を取るリーシャ。体温なんて無いはずなのに、その手は暖かかった。
「ああ、約束する」
「ところで――」
リーシャは俺の耳元に口を寄せる。
「――先日、モニカさんも来たんですが『私の妊娠中に、酔った勢いで貴方と関係を持ってしまった』ことを謝られてですね」
「ひょっ!?」
俺は逃げ出した。しかし手を握られていて無理だった。
「それで『リーシャには俺の方から説明して謝っておく』と言われたらしいんですが……私は何も聞かされてませんよね?」
「ちゃ、ちゃうねん」
「何が違うんですかっ! 貴方はいつもいつもそうやってっ! ふぅ……大丈夫です、落ち着きました。時間はたーっぷりありますから、いくらでも話し合いましょう」
リーシャの笑顔が、怖い。
「ちょっと俺、地獄行きみたいだからさ。残念だけどここで――」
「絶対に離しませんから。覚悟、してくださいね」
完。
2年以内に終わらせることができました(なお遅刻)。やったね。
Q:ヴァルフリートが団長を辞めた理由は?
A:娘に男ができたショックが主な原因です。
Q:高度全空救援執行主力部隊?
A:Highly All-sky Rescue and Enforce Main force
HAREM隊です!(ハーレムとは言ってない)
Q:広報部って凄いですね!
A:何人か過労死寸前までいきました。
Q:少年少女は主人公達の転生後?
A:いいえ、ただの子孫です。適当な性格と身内へのコンプレックスを受け継ぎました。
シャーリーは先祖代々一般人です。隊長様に憧れて大成する程度の関係です。
先に読みたい外伝はどれ? 1年以内の投稿を目指します。
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ハーゼリーラちゃん!(プロット完成)
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原作主人公登場!(プロット半分程度)
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モブ隊員の話(短いかも)
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龍場頑太の没案(下書きを投稿)+α