秩序の騎空団でグラブる   作:秩序派

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今回は見直す時間が無かったので、脱字があると思います。
また、指摘があったとしても直す余裕がない可能性が高いです。
まずはハーゼリーラの公式プロフィールをご覧ください。

性別:女
年齢:22歳
身長:84cm
種族:ハーヴィン
趣味:  子作り、絵を描くこと(ただし下手)
好き:子供、絵画
苦手:カッツェリーラ、上っ面な大人

よく知らない方は「ハーゼリーラ」を画像検索していただけると、
「こんな可愛い娘が……」と応援したくなるかもしれません。


Extra5 それいけ! ハーゼリーラちゃん

プロローグ

 

 ハーゼリーラ・アロイス・ガングス。それが、ガルゲニア皇国第六皇子として生まれた私に与えられた名前でした。しかし、叔父の卑劣な策略で国を追われ、今では孤独な放浪の日々。私は誓ったのです、いつか国に戻り叔父達に正しい裁きを与える、と。私の当面の目的は、彼らに対抗できるだけの『力』を手に入れることです。そのために……。

 

「秩序の騎空団。まずは彼らを掌握するところから始めましょうか」

 

 これは私、ハーゼリーラの復讐の物語。

 

 

 

エピソード1

 

 というわけで事前準備や情報収集を済ませた私は、第四騎空艇団の本部があるアマルティア島にやってきました。

 

「あら、なかなか美しい町並みですわね」

 

 秩序的に区画整理された家々、垂直に交差する道路、そして巨大な白亜の建造物。この感動を形に残そうとスケッチブックを開いたところで、頭の中に声が響きます。

 

(……随分と気楽なものだな。これから騎空団と戦うというのに)

 

「あっ! こ、これは偽の身分である『旅の画家ハーゼ』としての偽装行動ですわ。そう、戦いは既に始まっていますの。気が散るから黙っていてもらえるかしら」

 

 小声で文句を言って、スケッチに戻ります。声の主は『ザ・ムーン』、私と契約している星晶獣ですわ。戦闘力はそれほど高くありませんが、幻惑能力は上手く使いこなせば強力ですのよ。

 

 

 しばらくして描き終えたところで、またしてもムーンの声が聞こえます。

 

(何だ、その混沌たる光景は……汝の復讐心を写し出――)

 

「黙りなさい」

 

 私はスケッチブックをバタンと閉じました。

 

 

 

 裏社会の伝手を使って用意させた拠点で一息つくと、私は今後の方針を検討します。

 

「第四騎空艇団には、団長の娘が所属している……つまり、その子を押さえれば発言力が高まりそうですわね。そのために、まずは騎空団の状態を不安定にしてから、この私が立て直すことにしましょう。『恩人』の意思は無視できないはずよ」

 

(簡単に言うが、どのような手段で不安定にするというのだ?)

 

「これでも私は幼い頃から陰謀渦巻く王家で生きてきましたわ。どんなに隙が無いように見える集団でも、弱点の1つや2つはあるものです。何人かの情報屋から買った資料を3日かけて精査したところ(中略)つまり、この秩序執行巡空独立強襲隊――無駄に長いわね――の隊長が弱点、ということですわ」

 

(……)

 

「この男、目立った功績も無いようですし、おそらく後方支援や補給などの事務能力に長けているのでしょう。部隊指揮は副隊長が、実際の戦闘は部隊員が行っていると推測できますわ。まあ、少しは戦えるかもしれませんが、私も正面から攻めるつもりはありません。智略と欺瞞の力、見せてさしあげますわ。ふふ、ふふふっ」

 

 私は勝利を確信して暗い笑みを浮かべました。

 

 

 

エピソード2

 

 庶民的な服を着た私は「噂好きの島民ハーゼ」として、あの男の悪評を広めることにしました。たかが噂話と対処を誤れば手遅れですわよ。というわけで市場の女性と世間話に興じます。

 

「――そうね。私も秩序の騎空団には助けられたわ。でも、知ってる? 最近あの『秩序執行なんとか隊』の隊長が街中で暴力事件を起こしたって。それを聞いて、もう私不安で不安で……」

 

「ああ、知ってるよ! 3日前のことでしょ」

 

「…………え」

 

「ウチのバカ亭主もね、あの店でぼったくりに遭って通報したんだよ。でも相手が巧妙な奴らで、調査が長引いた隙に逃げられるんじゃないかって……。そこであの隊長さんが、何も知らない客として店の連中と喧嘩して全員を病院送りにしちゃったの。それから半日で取調べが終わって、無事にお金も戻ってきたから、もう隊長さん達には感謝しかないねぇ」

 

「そ、そうだったのね」

 

 その後も女性の話は続き、私には少しの疲労感が残りました。

 

 

 

 少し派手な服を着た私は「事情通のハーゼ」として、引き続き悪評を広めることにしました。1回失敗したぐらいでは諦めませんわよ。というわけで酒場の店長と、ここだけの話をします。

 

「――そうね。秩序の騎空団のおかげで暮らしやすいわ。でも、知ってる? 最近あの『秩序執行なんとか隊』の隊長に労働法違反の疑惑があるって。いくら優秀な人でも、そういうのって……」

 

「ああ、知ってるよ! 先週は古戦場だったからな」

 

「………………は?」

 

「でもよ、古戦場は遊びじゃねぇんだ。確かに17時間も走り続けるなんて異常だよ。カガワじゃなくても規制するべきだって思うぜ。でも、上位を目指すなら立ち止まるわけにはいかないんだ」

 

「そ、そういうものなのね」

 

 その後も、元騎空士だった店長の話は続き、翌日の私は二日酔いに襲われました。

 

 

 

 動きやすい服を着た私は「お喋りなハーゼ」として、それでも悪評を広めることにしました。こんな偶然が何度も続くわけないですわ。というわけで大衆食堂の隣席の客と雑談をします。

 

「――そうね。秩序の騎空団はとっても秩序よ。でも、知ってる? 最近あの『秩序執行なんとか隊』の隊長が団の資金を横領したって。私達のお金がちゃんと使われないなんて……」

 

「なんだってー!」

 

 そう、その反応が欲しかったのよ。ここから少し強引にでも反対運動を起こしてみせるわ。

 

「私、考えたんだけど――」

 

「まったく、あの隊長さんも懲りないねー」

 

「……………………な!?」

 

「どうせまた未遂で終わったんでしょ。秩序の騎空団でそんなこと不可能に決まってるのに」

 

「いや、でも万が一……」

 

「無い無い」

 

 その後、何人かに同じ話をしてみたのですが、全員が似たような反応でした。

 

 

 

「どうやら一筋縄ではいかないみたいね。こうなったら少し荒っぽい手を使うわよ」

 

 私は代理人に連絡を取ることにしました。

 

 

 

エピソード3

 

 私は代理人を通して、ならず者に秩序執行巡空独立強襲隊の隊長を襲撃させることにしました。彼が現場から離れることで、第四騎空艇団に隙ができるのです。

 

 

『あの隊長を病院送りにしたら10万ルピを払う』

 

 と、代理人に募集させたところ、話した全員に断られたようです。確かに、秩序の騎空団を敵に回すことを考えると、報酬が安すぎたかもしれませんね。

 

 

『あの隊長を病院送りにしたら50万ルピを払う』

 

 と、再度募集させたのですが、やはり引き受ける者はいなかったようです。さらに、代理人もこの件から手を引きたいような素振りでした。

 

 

 私は、次が最後だと代理人を説得して、追加でいくつか指示を出しました。そして、黒服を着た「隠密ハーゼ」として、募集の様子を物陰から伺っています。

 

「依頼主はこの『仕事』に100万ルピを払うと言っている。これなら人数を集めても、取り分はそれなりにあるだろう。人気の無い場所で不意討ちすれば簡単なことだと思うが?」

 

「馬鹿野郎! そんなんでアイツに勝てるわけねぇだろうが!!」

 

「ならば、前金として10万ルピを先に渡そう。それで武装を整えるといい」

 

「だ、か、ら! お前は何も分かってねぇってんだ! その辺の星晶獣と戦った方がマシだぜ!」

 

 どうやら、予想以上にあの男は戦えるみたいですわね。もっとも、ならず者の言うことですし、どこまで信用できるか分かりませんが。では、そんな彼らに策を授けるとどうなるか……。

 

「だが、相手は秩序の騎空団員だ。その辺の一般人を人質に――」

 

「おい! そんなこと冗談でも言うんじゃねぇ! オ、オレ達は何も聞いてないからな!」

「『それ』をやったイカッチの兄貴は、変わり果てた姿になっちまったんだ!」

「はぁはぁ……秩序のバケモノが来る……」

「ひぃっ!」

 

 ならず者たちは青ざめた顔で逃げるように去っていきました。そして代理人も、彼らの反応から何かを悟ったのか遠くの島に行ってしまいました。 

 

 

 

 拠点にて。

 

「いったい何なのよ、あの男! 悪評も闇討ちも失敗するなんて!」

 

(……少しは落ち着いたらどうだ。素が出ているぞ)

 

「ムーンうるさい。こうなったら最後の手段よ。私が直接あの男に仕掛けるわ」

 

(だが、汝の推測を遥かに超えた戦闘力を持つようだ。戦うのは危険ではないのか?)

 

「なに言ってんの? 誰も戦闘なんてしないわ。ただ、性犯罪者として社会的に抹殺するだけよ」

 

 それで秩序の騎空団を手駒にして、ガルゲニア皇帝になって、叔父や裏社交界の奴ら全員を公開処刑してやるんだから!!

 

 

 

エピソード4

 

 子供服を着た私は「幼女ハーゼ」として、路地裏で泣いてるわ。

 

「ふぇ~ん! お母さ~ん! どこに行ったの~!」

 

 そして、無関係な通行人に「あっ、大丈夫ですわ」と返事しつつ十数分が経過した頃、その男は現れた。

 

「ハ――じゃなくてお嬢さん、どうしたのかな?」

 

「えっと……お母さんとはぐれちゃって……」

 

「そうなのか……? まあいいや、俺が一緒に探してあげよう」

 

 あはははっ、狙い通りに引っかかったわね。最初からこうすれば良かったのよ。さて、この状況で悲鳴を上げても単なる声かけ事案だし、当初の予定通りに油断させることにしましょうか。

 

「わ~い! ありがとう、お兄ちゃん! 私はリーラっていうの~!」

 

「お、おう」

 

 ニヤケ面で挙動不審になる男。調査で妹がいないと分かっていたから、妹キャラにしてみたけど間違ってなかったみたいね。あと、こいつにハーゼって呼ばれるのは何か嫌だった。

 

 

 そして2人でクレープを食べた。

 

「リーラはお腹いっぱいで、もう入らないよ~」

「フヒヒ」

 

 

 なぜか画材屋にも行った。

 

「あっ、この絵筆……」

「欲しいのか? ああ、趣味ね。それじゃあお兄ちゃんが買ってあげるよ」

 

 

 秩序スポットとやらにも連れていかれた。

 

「意味わかんないよ~」

「うんうん、そうだよな」

 

 

 そして日が沈む頃、宿泊・休憩施設の前で。

 

「ねえ、お兄ちゃん。リーラ疲れちゃった……」

 

「そ、それじゃあ、ここで少し休んでいこうか。グヘヘヘヘ」

 

 計画通り。あれから何回か体を接触させたことで、すっかり『その気』になったみたいね。でもお生憎様。部屋で2人きりになったら、幻惑して判断力を奪ってから大声で助けを呼んでやるわ。それから、秩序の騎空団には『無理やり連れ込まれて迫られた』って訴えるんだから!

 

 

 それから部屋に入って、私はすぐに――

 

「猶予なんて与えないわよ!」(ボアズが発動)

 

――ザ・ムーンの力で月影の幻惑状態にした。そのはずだったのに。

 

「悪いな。俺もアビリティを使ったから弱体は無効にできるんだ」

 

「甘いわ」

 

 すかさず、低身長ならではの一撃を、目の前にある急所に放つ。これが王家の護身術よ。

 

「悪いが、それも無効だ。さて、よっぽどハードなプレイをお望みらしいな」

 

「誰か! 助――」

 

 慌てて叫ぼうとしたけど、手で口を押さえられて呻き声しか出せない。トーラの書は拠点に置いてきたし、気付いたら両手も拘束されて何の抵抗もできなくなってしまった。

 

「とりあえず脱がすか」

 

「ムーッ!」

 

 体を捩って必死に抗うと、男の動きが止まる。

 

「ああ、着衣のままがいいのか。大丈夫、俺はどっちでもいけるから」

 

「ムムーッ! ムムーッ!」

 

 服の上を這いずっていた男の手が、どんどん中に入ってくる。どうしてこんなことに……秩序の騎空団なんて簡単に支配できると思っていた。ザ・ムーンの力があれば、逃げるぐらいはできると思っていた。ああ……つまりこれは私の慢心が招いたことね。愚か者には罰を。私は甘んじてこの境遇を受け入れることにしたわ。男の指は、ゆっくりと中に入ってきて――

 

「 浮 気 で す か ? 」

 

すごい勢いで引き抜かれた。次の瞬間、部屋の壁に大きな穴が開く。穴の向こう側では1人の女性が剣を構えていて……あれは確か団長の娘だったわね。

 

「ち、ちち違うんだ、リーシャ! ここここれはつまりその、そう、俺は誘惑されたから、つい」

 

 見苦しく言い訳していた男は、謎の力で『秩序強制機』と書かれた装置に吸い込まれていった。えっと、私……助かったの? 助かったのね。やっぱり日頃の行いがいいからかしら。

 

「ああ、助けてくださって感謝いたしますわ。実は、嫌がる私を無理やり連れ込んで……」

 

 泣きながら被害を訴える私を遮って、団長の娘は宣告した。

 

「今から虚偽の申告をした場合、秩序の下で厳正に裁かれることとなります。いいですね?」

 

「ええ! ですから私は本当に――っ!」

 

 そんな欺瞞の言葉は、彼女の秩序的視線だけで止められてしまった。

 

「今なら見逃してあげます、とはっきり言った方がいいですか? それとも、彼と共に浮気の報いを受けますか? 私としては、それでも別に構いませんが」

 

 ああ、何ということ! あの男達が言ってたのは、このことだったのね。体中が恐怖で震える。一刻も早くこの場を離れなくては! 私は脇目も振らず駆け出した。

 

 

 

 その後。

 

「結局、復讐なんて虚しいだけだと思うわ。これからは画業にでも専念しようかしら」

 

(……そうか)

 

 これは私、ハーゼリーラが復讐を諦めるまでの物語。

 

 

 

エピローグ

 

 一週間後。

 

「やあ、イカッチ君! 今日も気合を入れて街を綺麗にするぞ!」

 

「おはようございます、隊長さん! 見てください、前に造った花壇で花が咲いたんですよ!」

 

 そこには、秩序的に活動する男達の姿があった。

 

 

 

 

 

 なお、某隊長だけはリーシャの谷間、ヘソ、ふともも等が目の毒となり、数日で元に戻った。




秩序の勝利!

主人公「たまたま入った店がぼったくりバーだったから暴れたし、
    いきなりハーゼちゃんに逆ナンされたぜ、ラッキー!」

Q:イカッチってあの……?
A:ただの、名前があるオリキャラです。

Q:ハーゼちゃんは、どこに指を入れられちゃったんですか?
A:お洋服の中じゃねぇの!? 上着とシャツの間とかでしょう。
  その場合、どこぞのラブコメよりもソフトなのでセーフ!
  それはそれとして読者様が他の解釈をするのは自由です。

Q:ハーゼちゃん可愛いですね! 仲間にしようと思います。
A:主人公「マリアの方がいい(ドラフだから)」
A:リーシャ「マリアの方がいい(正義だから)」


グラブル脳でない読者様のための、作者による雑な用語解説

・ハーゼリーラ
可愛い。性能も可愛い。背景に兎がいるのは、性欲が略。
詳細は「ぐらぶるっ!第1290話」で検索。演技が得意。

・秩序強制機
おそらく、秩序を強制する機械。秩序矯正機とは別物。
詳細は「ぐらぶるっ!第1146話」で検索。リーシャが可愛い。

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