秩序の騎空団でグラブる 作:秩序派
エピソード1
「ガチャを回そう!」
入団してから数日後、俺はそう決意した。周囲の団員達が不思議そうな顔で見ていたので、急いで人気の無い場所に移動する。
グラブルで最初に一定の強さを得ようと思ったら、手っ取り早いのはガチャを回すことである。ある程度の戦力が整ってきて、それでも更に強くなろうと思ったらガチャを回すのが有効だ。全てが極まった強さに到達しても、新要素が実装されればガチャを回すしかない。そして基本は9万円分だ。
色々と悲しくなったが、とりあえずは頭の中で『ガチャ!』と念じてみる。何も起こらない。
「ガチャ!!」と大声で叫んでみたが、何も起こらない。
脳内でメニューを開き右上のガチャボタンを押すことをイメージしたが、何も起こらない。
マイページでは右膝の横あたりにボタンがあるので剣を使って押してみたが、何も起こらない。
同じく足元にはバナーがあることが多いので掘ってみたが、何も起こらない。
ああ、こんなときにスマホがあれば、都合よく引けたかもしれないのに! やっぱり異世界転生にスマホは必須だな。とりあえずナル・グランデのある北に向かって、カインに謝っておいた。
次に有名な修行を試してみることにした。ガチャボタンを何百枚かスケッチしてみた。任務中も四六時中ガチャボタンをイメージしていた。数日で夢にガチャボタンが出てきた。そしてとうとう幻覚のガチャボタンが出てきたので押してみたが、何も起こらない。どうしようもないので幻覚のガチャボタンを連打する。
「あの、大丈夫ですか。慣れない仕事で疲れたんですね。一緒に医務室に行きましょう」
何故かリーシャが優しかったが、そんなことよりガチャだ。ナルメアお姉ちゃんを引きたい。
エピソード2
「召喚石が欲しい!」
さらに数日後、俺は次の目標を設定した。ガチャから引けないのなら、それ以外の手段で入手するしかないからだ。周囲の団員達は「またか」といった顔をしている。
様々な検証の結果、召喚石は5つ装備できて、メイン召喚石の加護が効果を発揮すると分かった。もちろんルリアは居ないので召喚はできないが、サブ召喚石も能力値上昇に役立つので強い方がいい。
メインとサブ、装備と所持の違いを明確にするため、俺は専用のベルトを作った。網袋を5つ取り付けただけのそのベルトを、俺はサモンズドライバーと名づけた。
さて、俺はガチャを引けない状況で召喚石を揃えなくてはならないのだ。様々な島を回って適当に星晶獣と戦えば各属性の分を入手できるとは思うが、入団したばかりの新人なので長期間アマルティア島から離れることはできない。せっかくなので、アマルティアで拾える召喚石を最初の獲物と定める。
さあ兎狩りだ!!
事前に調査したホワイトラビット出現場所を探索する。鋭敏な聴覚? 関係ないな、兎さえ出ればそれでいいのだ。俺は森の中を走り回った。モグラに用は無い(一応倒す)。ノーマル装備なんて邪魔だ(一応拾う)。しかしその日は結局、1回も遭遇できなかった。
それから俺は騎空団の任務が無い日に一日中、台車を引いて探索するようになった。焦ってはならない、嘆いてはならない、心を殺してひたすら回すのだ。騎空士ならば、それができて当然なのだ。その甲斐あって俺はついに、10個目のホーリー・ジーンを拾った!!
「ちくしょおおおおぉぉぉぉぉ!!」
「伸び悩んでんのか? 『魔物を倒して修行』なんて普通のこともするんだな」
突然現れたガンダルヴァは、そう言って10本のアイスソードを投げ渡してきた。
「心配すんな、今日のお前はあの時のお前より……建前とか面倒くせえな。暇だから闘ろうぜ」
ああ、あの時の俺の馬鹿! きっちり殺しておけよ!
ちなみに、ホワイトラビットは後日無事に入手できた。
エピソード3
「武器が欲しい!」
また数日後、怪我が治った俺は次の目標を設定した。周囲の団員達は慣れたもので完全スルーだった。ふと気付いたが、俺はすっかり「ぼっち」になっていた。まあ慣れたものだ、ハーレム王に友など不要!
そう、重要なのは武器だ。俺は10個の武器を装備できるので、バランスがいい編成を考える必要があるのだ。細かい計算式は省略するとして、攻刃を4:3:3とか6:2:2とか5:5:0とかにしなくてはならない。守護? 別に無くてもいいだろう。
ここで大事なのは『方陣攻刃』スキルの武器だ。『通常攻刃』は各所で簡単に入手できそうだし、『EX攻刃』は下手をすると入手の機会が無いからな。まずは色々と便利なティア銃から検討してみよう。ティア銃のためにはティアマグと戦闘する必要がある。ティアマグと戦闘するにはティアマグのアニマが必要だ。ティアマグのアニマはティアマトHARDが落とす。
結論:ティアマトHARDをやれ。
なんだ、ただの義務ブルに帰結するのか。なんて分かりやすい。ティアマトHARDはSRの方陣攻刃武器も落とすから何個か繋ぎ用の武器を作るのも悪くないしな。よし、将来的に日程に余裕ができたらポート・ブリーズでティアマトマラソンだ! ふぅ、なかなか有意義な思索だった。ただ、問題は……。
「ああ、リーシャ。いいところに通りがかってくれた。秩序の騎空団ってエルステ帝国に伝手があったりしないかな?」
「少し前に帝国の研究所から実験用の魔物が逃げたとかで、共同で対応していたと思います。そんなことに興味を持つなんて、一体どうしたんですか」
「研究所! ちょうどいい。ポート・ブリーズの星晶獣ティアマトを魔晶で暴走させたくてさ!」
即座に地下の独房送りになった。
エピソード4
「仲間が欲しい!」
やはり数日後、独房から出た俺は次の目標を設定した。周囲の団員達は速やかに避難を開始した。違うお前らのことじゃない。それにしても慌てず落ちついて避難できているな。ああ、2次試験の所為か。
さておき、俺が言いたかったのは仲間キャラのことだ。ガチャ加入が無いのなら、それ以外の手段を考えなくてはならない。イベント加入キャラは時期と場所が重要だ。事件が起こる直前ぐらいに出会って、共同で何かを解決しなくてはならない。しかし、俺は入団したばかりの新人なので今は難しいだろう。
そこで武器の入手による加入である。例えば、宝剣アンダリスを所持していると、「ややっ、それはアンダリス」とか言いつつアレーティアが仲間になったりするのだ。別に嬉しくはないが。
そんなわけで、休日にディケオスィニ通りへやってきた俺は、商店や露店を回ってキャラ加入武器を探している。問題はどの武器で誰が加入するか、ほとんど覚えていないことだ。ナルメアは……さすがに闇属性の刀でいいよな。ユーステスのバンカーは有名すぎるが、他のキャラは……ううむ、自信がない。こんなにwikiが見たいと思ったのは、転生してから初めてだ。
「よお兄ちゃん、そんな顔してどうしたんだい。よかったら見てってくれよ」
露店の男性から声がかかる。どうやら女性用の装飾品を取り揃えているようだ。
「どうせ女絡みだろ? 珍しいのが色々とあるからプレゼントしてあげたら喜ぶよ」
ええい、俺は女そのものが欲しいんだ。そのためにも武器を……と思ったところで、ある商品に目が留まる。それは、赤い扇と簪だった。そこからエルーンの少女を連想する……まさかソシエ、なのか?
「なあ、その扇と簪……」
「おっ、いいところに目を付けたね。綺麗な細工だろ? こんな高級品は滅多に見つからないよ」
問題はそこではない。それがSSRの格闘武器かどうかということだ。グラブル世界ではリボンも団扇も格闘武器なのだから、この疑問は妥当でしかないな。
「ちょっと見せてもらえないか?」
「いいよ」
持ったところで何も分からない。俺が格闘得意なら攻撃力の上昇を実感できたかもしれないが。
「ちょっと1つずつ背負った状態で剣を振り回していいか?」
「いいわけないよ、いったい何がしたいんだ。あんまり変なこと言うと秩序の騎空団を呼ぶよ」
サブに装備して剣を振ったら、スキルの有無は分かるんだよ! とは言えない。独房は嫌だ。
「悪い悪い。それで、いったい何ルピなんだ?」
「それぞれ5万ルピなんだけど、セットで買ってくれたら9万5000ルピにしてあげるよ」
9万5000ルピ! たまたま見た露店にあった赤い扇と簪が、たまたまSSR格闘武器で、たまたまソシエ加入武器だって偶然があると思うか? ありえない。まだ空からヒヒイロが落ちてきた方が信じられるぐらいだ。そもそもソシエは扇を見て加入するタイプではないというのに。
「だが買おう」
「まいどあり!」
なぜならソシエは生娘(公式設定)だからだ。
数分後、俺は裏路地で扇と簪にスキルが無く装飾品でしかないことを知った。だが俺の心には一片の悔いも無かった。なぜなら、もう一度言うがソシエは生娘(公式設定)だからだ。
その後、自室に戻ろうと歩いているとリーシャとすれ違った。
「この前は迷惑かけて悪かったな。お詫びの品ってことで、良かったら受け取ってくれよ」
「ええっ、こんな高そうなもの貰えません」
「じゃあこれからかける迷惑の分も合わせてってことで」
「そもそも貴方は誰にも迷惑をかけないように、秩序の騎空団員であるという自覚を持って――」
「それに、リーシャは着物が似合うと思うから」
「!?」
リーシャが混乱した隙に、速やかに避難を開始した。秩序の騎空団員は避難が得意だからな!
ナルメアのキャラ解放武器は土属性の刀です。