俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:kohet(旧名コヘヘ)
...その先に何があっても構わない。もう既に『全て』をもらったから。
そのときは、突然やって来た。
私は、すぐに城の異常に気が付いた。
メイドも、兵士も、愛する『クライム』すら、感じない。
城内の自室にいるはずなのに、そこでない空間。
まるで世界が切り離され、『時』が止まったかのようだった。
そこで『私』を私に変えた、変えてしまった『彼』と初めて出会った。
突如現れた楕円の闇から出てきた『何か』。
「初めまして…『鳥籠の姫君』」
『私』は、『彼』を『化け物』というよりも物語にでてくる『魔法使い』のように感じた。
「初めまして、あなたのお名前は?」
驚きはしない。有り得ないことが既に起こっていたから。
「我が名は『アインズ・ウール・ゴウン』。...恐ろしい『魔王』さ」
そうやって、『魔王』と『私』は出会った。
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『魔王』は『私』を『完全』に理解していた。
有り得ない『経験』だった。
全てを理解し、『クライム』の『愛』まで見抜かれた。
いや、『知って』いた。
『魔王』の言葉が、『私』を引きはがしていく。一枚一枚丁寧に。
『魔王』は『私』に『姫』という『役』を捨てざるを得なくさせた。
全てを奪われた『私』は、『クライム』の『愛』を否定されるのかと思った。
『魔王』は『私』の『世界』を奪いに来たのだと思った。
ところが、
「『鳥籠』から出たか…ならば、もう一度だけ『世界』を見に行こう。
きっとそれは楽しくて、美しい『世界』だ。誰も君の『愛』を否定しなくなるだろう」
『魔王』はそう言って『私』に手を差し伸べた。
『私』の『愛』は全力で『魔王』に肯定された。
誰にも理解されないその『愛』を。
…『魔王』に『世界』を見に行こうと誘われた。
だから、手を取った。きっと楽しいはずだから。
『彼』はここまで『私』を理解していたから。
『私』はそこで初めて、私になれた。
『彼』は『魔王』というよりも『魔法使い』だと改めて、私は思った。
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『魔王』と名乗る『彼』は私を全力で『世界』に解き放った。
楽しかった。綺麗だった。愉快だった。
私は『世界』を楽しんだ。
...楽しみ過ぎて、私の大切な、大切だったはずの、『クライム』のことを、時折忘れるくらいに。
そのことに気づいてしまったとき、私は怖かった。
…初めから『魔王』はこれが狙いだったのかと震えた。
私は『クライム』のことを『執着』と理解してしまった。
誰からも認められない中で、私が初めて見た『世界』だったから。
誰も認めないであろう『世界』に、『私』は『クライム』に『執着』したのだ。
だが、どんどん『世界』が広がっていく。
『クライム』が『世界』の一部になっていく。
…私が『私』でなくなっていく。
『私』の『執着』が無くなっていく。
怖かった。
それ以上に『魔王』に、側にいて欲しかった。
だから、『私』は偽りの『愛』に逃げた。
それが『魔王』の狙いだったとしても、
『私』は『恐怖』で『愛』に逃げざるを得なかった。
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そんなある日、いつものように『魔王』と『私』はお茶会をしていた。
『私』は、『恐怖』を隠す。完璧に。
『自分』すら騙す。気づけない。
『彼』にいなくなって欲しくないから。
心の底から楽しんでいた。
全ては『愛』のために。
『魔王』が望んでいるであろうと思った『私』を演じていた。
ところが、
「なぁ、聞きたいのだが…」
『魔王』が心底疲れたような声を出して聞いて来た。
こんなことは今までなかった。
「何ですか?」
わからない『私』は素直に尋ねた。
何を言われるか怖かった。
もはや『魔王』が『愛』を望むなら、その『世界』に閉じ籠っても構わないほどに。
ところが、
「何でこんなに私を…こう何度も呼ぶのだ?
いや本当に。結構忙しいのだから控えて欲しいというか、その…」
私は『理解』した。
私の『恐怖』が全く無意味だったことを。
偽りの『愛』などいらなかったのだと。
私の、本当の気持ちで良かったのだと。
だから、私は心の底から笑って言った。
「そういうところは、クライム以下なんですね!」
私は完全に『執着』も『恐怖』もなくなった。
何て馬鹿らしい。何故気が付かなかったのか。
この『魔王』はただの『お節介焼き』だ。
そう確信して、心から笑って、
…『世界』を改めて、全てを心から受け入れた。
それからの私は『全力』で遊んだ。
国を、貴族を、『世界』の全てを相手取り、遊びに遊んだ。
『お節介焼き』の『魔王』は渋りながらもそれを手伝った。
本当に楽しかった。
もうここで『時』を止めてしまいたいほど美しい『世界』を知った。
『物語』の悪魔に命を捧げて、死んでもしまっても良いくらいに。
こんなに楽しいのは、生まれてから初めてだった。
…だから、私は『魔王』に『全て』をあげた。
もう欲しい物なんてどこにもなかったから。
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ところが、
「なあ…何故、名実ともに『クライム』と結ばれる道を選ばないんだ?」
私は呆れ、そして激怒した。
私でも意味がわからないくらい激怒し、『村娘』と同じ『腕輪』を寄越させた。
…嫉妬だった。
もう、私は彼を愛しているとわかっていた。
…手遅れなまでに。
その後も、何をやっても理解できないこの男。
私の望む『全て』を与えておきながら、肝心なことがわからないこの男。
私は完全にプライドを捨てて、叫んだ。
「わからないのですか!私はあなたを愛しているのです!」
彼の反応は、知らないものだった。
私を愛していないだけならわかる。
別に愛さなくても良い。
だって私は彼を愛しているのだから。
他にはいらないもう十分だ。
だが、
「俺は君を愛しているかわからない」
この言葉で『彼』を真の意味で理解した。
彼は『自分』を愛していない。
最初から壊れている。
愛していないなら『わからない』とは言わない。
…少なくとも私の知る彼ならば。
私を『友』として見ているというが、愛しているかは『わからない』という。
少なくとも、私に嘘を言っていないと確信できる。
この『答え』が誠実なものだと理解しているから。
そう、彼は『誠実』に答えている。
彼が『人間』になれるのはもう知っているし、彼はもはや隠そうともしていない。
だから、確信できた。
彼は『自分』を愛せない人なのだと。
だから、私は側にいることを決めた。
彼の壊れた『心』を癒せる者を求めた。
彼が愛しているか『わからない』、私では無理だから。
『魔王』を倒すのではなく、救う『勇者』を願った。
『御伽噺』でもあり得ない『それ』を待つ。
それまでは側にいよう。たとえ愛されていなくても。
彼からもう一度『答え』が聞けるそのときまで。
生きている間に来るかわからない『勇者』を待ち続ける。
その先にある『答え』で、私がいらないならそれはそれで構わない。
だって私はもう十分、幸せだったから。
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あの時、私はようやく気がついた。
『勇者』はいた。それも彼のすぐ側に。
ならば、私は行動するだけだ。
「あなたが彼の『息子』だというのならば…『父』のために行動しなさい」
目の前の、彼の『息子』に『策』を告げる。
それが彼の望みとは反するかもしれないが。
私はあの時の『答え』さえ聞ければよい。
…他には何もいらない。この『策』に全てを捧げよう。
「おお…」
仰々しく天を仰ぐ、彼の『息子』。
もう既に彼の答えはわかっている。
「Wenn es meines Gottes Wille!」
そう言い放ち、突然敬礼をし始める彼の『息子』。
…何を言っているのか全然わからなかった。
この『親子』は本当に、いつも私の予想を外させる…
????「ドイツ語はやめろぉ!」