俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:kohet(旧名コヘヘ)
俺はナーベラルと共に心因性の過労の療養のため、デミウルゴスの提案に従い、
アゼルシア山脈へ『旅』することになった。
「…ではいくかナーベラル」
俺は、内心の楽しみを抑えてナーベラルに声をかける。
万が一のためにナーベラルには完全催眠での隠蔽をしている。
俺達、二人とも名前も姿も詳しく認識できないようになっている。
俺達二人は、正体不明の旅人だ。
関わった者からナザリックに即繋がる可能性は低い。
逆に怪し過ぎてバレるかもしれないがそこまでは良い。
要は『旅』がしたいのだ。
「はっ!」
ナーベラルは何度言ってもこのお辞儀は治らない。
一時的には治るのだが。
だが、今回は俺の護衛のため一人でということもある。許容すべきだろう。
何せ、本来ならコキュートスを『仕事』にする予定だったのが、急変したのだ。
しかし、供にナーベラルというのは…不満はないが警戒すべきだよな。
出来得る限りの情報系魔法で周囲を常に警戒する。
これらの魔法程度、膨大な魔力のゴリ押しで一日中展開していても問題ない。
「モモンガ様。私ではやはり不足でしょうか?」
ナーベラルが恐る恐るという感じで聞いてくる。
いかん。Lv113のナーベラルなら普通に魔法を気づくか。
…失敗した。
というか事前の下調べでアゼルシア山脈には、危険はほぼゼロだと俺は知っている。
「すまん。つい、久しぶりの『旅』なので、警…癖で魔法を使ってしまったのだ」
警戒と言いそうになった。
危ない。本当にどうしたんだ、俺。
コキュートスとナーベラルを入れ替えただけだ。
余計な心配は必要ないはずなのに…
「失礼致しました!
私の勝手な思い込みでご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません!」
全身全霊謝罪するナーベラル。
「良い。というよりこれは俺の癖だ。ナーベラルの気にすることではない」
謝らせてしまった。
おかしい。普段ならこのようなミスはしないはずなのに?
心因性の過労とでも言うのか?
「かしこまりました」
ナーベラルが頭を上げる。
…どうも調子狂っている気がする。
気持ちを切り替える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺とナーベラルはリ・ブルムラシュールに来ていた。
ラナーが以前、帝国との繋がりについて、八本指を使い脅して金を巻き上げた貴族。
『ブルムラシュー候』の領地だ。
なので、俺が行動しても隠蔽は容易だった。
何故なら今、王国も帝国も実質支配しているのは俺だから。
ここからドワーフ国の旧王都『フェオ・ベルカナ』に直行するのだ。
『原作』では、
トブの大森林を北上してドワーフの都市『フェオ・ライジ』へ行ったと記憶している。
恐らく、だ。
俺はそもそもリザードマン達とシム〇ティしていたから本当にわからない。
だが、帝国からの情報でその都市は三年前に放棄されたことを俺は知っている。
当初は帝国経由で現ドワーフ国首都『フェオ・ジュラ』へ行こうとも思ったが、
それでは『仕事』だ。
だから、俺は王国経由でアゼルシア山脈を旅することにした。
…まさかデミウルゴスも、俺が旧王都『フェオ・ベルカナ』のドワーフの『財』を奪い、
竜を支配し、クアゴア達との交流をもくろんでいるとは思うまい。
『旅』については俺の好きにさせてもらう。
完璧な『趣味』だ。
もちろんナーベラルにも言わない。
飽くまで『旅』なのだ。
…とはいえ、王国とドワーフとの交流が一切ないのは少し厳しい。
自分で考えないといけない。
デミウルゴスも強引な開拓に近い『旅』に猛反対したが、
俺が好きに『旅』すると言えば反対できなかった。
だから、俺の想定通り、本当に上手く行くかは賭けになる。
結局何も見つからずに帰るかもしれない。
ただ、それで良い。
九人の自殺点(ナインズ・オウン・ゴール)時代の俺達はそうだった。
見知らぬ世界へ、自分の不利な世界へ勇んで踏み込んだ。
それで失敗もあったし、成功もあった。
ワールドアイテムを手に入れたが奪われたりもした。
…あの時は屈辱的な思いだったが、それすら懐かしい思い出だ。
「ナーベラル」
俺はそれを思いだし、ナーベラルに声をかける。
「はっ」
畏まるナーベラル。だが、もう気にしない。
「『旅』に行こう。きっと楽しい思い出になるはずだ。
失敗しても成功しても。だから、一緒に着いてきてくれるか?」
俺はお願いする。決して命令でなく。
「御心のままに」
ナーベラルは、そうはとらえないだろう。
だが、それでも良い。
そうだ。俺は誰かと一緒に『旅』をしたかったのだ。
俺の『願い』だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アゼルシア山脈の麓は木々が生い茂り、
山頂に近づくにつれて徐々に低い木々になっている。
徒歩で『旅』することはナーベラルに言ってある。
勿論、アイテムで各種対策はしている。
火山ガスや溶岩の対策等は万全だ。
だからどこまでも真っすぐ歩く。
ユグドラシル時代のように、マッピングもせずに赴くままに。
地図は役に立たない。それは帝国の、西からの地図だから。
一応の位置関係は確認するが。
今回の、王国からの東のルート等想定されているはずがない。
そもそも大よその位置関係から『フェオ・ベルカナ』に近そうなのが、
リ・ブルムラシュールだっただけ。
霜の竜(フロスト・ドラゴン)の戦いで滅んだ都市に行くかもしれないし、
溶岩地帯に行くかもしれない。
ここまで無策なのは自分でも初めてだ。
ふと、『気探知』に集団でこちらに向かってくる存在を感知した。
大体Lv10もいかない雑魚集団。
「ナーベラル。何か集団で来る。雑魚だが警戒しろ」
俺はナーベラルに声をかける。
「はっ」
良い返事だ。周囲の警戒から会釈もない。まるでパーティだ。
何だか懐かしい。
そう思っていたら、何が来ているか気づく。
ペリュトンだった。
鳥の胴体と翼、オスの鹿の頭と脚。
影を求めて、人を襲うモンスター。
集団で行動するため、注意とされている。
だが、問題ない。
「ナーベラル。少し『魔王』スキルを使う」
戦う義理もないので追い払う。
『魔王』のオーラ。
ユグドラシル時代には意味のないオーラだったが、
この世界だと俺がヤバい存在だとわかるオーラらしい。
錯乱し、ちりじりに散るペリュトン達。
こちらに近づいて来るものはいない。
「お見事です!モモンガ様!」
ナーベラルが俺を賛辞する。
少し嬉しいが…
「ありがとう。ナーベラル。しかし、雑魚しかいないな」
知ってはいたが、あまりにも弱い。
こちらに来る程の度胸があれば用意したボール・シリーズで捕獲したのに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後も山脈を上っていくが、ハルピュイアやイツマデと接触しそうになる度に、
『魔王』のオーラで蹴散らした。
もう面倒になったので、ずっとオーラを垂れ流している。
別に生命に害のあるオーラではないし。
ふと、『気探知』にLv40近くの存在を知覚する。
珍しい。これほどのものは、アゼルシア山脈ではなかった反応だ。
「ナーベラル。どうやら現地の強者らしい存在がいる。接触するが良いか?」
ナーベラルに尋ねる。パーティだから。
「はい。構いません」
段々なれてきたのか、畏まらなくなった。
いや、普段モモンの時に戻りつつある。
今考えると何故か互いにギクシャクしていた。
いい傾向だ。
そう思いながら現地の強者らしき『気配』の近くに来た。
そこにいたのは、
「どうか、命だけはお助けください!!!」
それは見事な土下座をする『霜の巨人(フロスト・ジャイアント)』だった。
…『魔王』のオーラ垂れ流していたらそうなるわな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もう解除するのも面倒になった。
旅の『魔王』でも良くないかと思ってきた。
だってナーベラルと俺の関係知らないわけだし。
認識もできないし、アゼルシア山脈の連中には。
とはいえ、巨人の土下座は邪魔でしかない。
「面を上げよ」
俺は目の前の『霜の巨人(フロスト・ジャイアント)』に声をかける。
頭を上げない。
「…何故あげない」
『霜の巨人』を撲殺しようとするナーベラルを手で制する。
わけがあるに違いないから。
「し、失礼ながら、
偉大な御方には数度声をかけられてから頭を上げるというのが、
正しい姿勢と思いました!不快ならば申し訳ございません!!」
『霜の巨人』は頭を上げて謝罪する。
ナーベラルは納得したのか杖をしまう。
…多分、モンスターとだけ考えていてマナーとか思ってなかったな?
「私達は旅人、別に殺戮にきたわけではない。あまり畏まらなくて良い」
一応信じてもらえないだろうが言っておく。
「は、はぁ」
信じてないようだ。
「貴様!モモンガ様の言うことが信じられないというか!」
ナーベラルが激怒する。
「ひぃ!」
Lv113のナーベラルの殺気に曝されて恐怖の悲鳴を上げる『霜の巨人』。
絵面的にシュール過ぎる。大きさの対比的に。
強さは全然違うのはわかるけど。
「やめよ。ナーベラル。
どう考えても目の前の存在と我らは強さの次元が違い過ぎる。
彼がそれを信じないのも無理はない」
この目の前の『霜の巨人』は、俺達に即座に土下座する程の知性の持ち主だ。
これ以上、攻撃的な行為は避けたい。
…しかし、Lv40前後でこのプライドのなさは凄い。
アゼルシア山脈ではほぼ敵なしだと思うのだが。
「はっ」
下がるナーベラル。
「偉大なる御方々。
アゼルシア山脈に旅ということですが、目的地等はございますのでしょうか?」
なんて話がわかる『霜の巨人』だ。
『御方々』という俺とナーベラルを対等に扱った発言でキレかけているナーベラルを宥める。
「実は『フェオ・ベルカナ』という、昔ドワーフ達がいたという都市を探している。
霜の竜(フロスト・ドラゴン)達を支配して『仕事』を頼みたいのだ」
ナーベラルが『えっ聞いてない』という顔をするが無視する。
『旅』にはこういうことだって含まれるはず。多分。
「偉大なる御方、このまま南東へ行くとすぐでございます!」
『霜の巨人』からは一刻も早く俺達から逃げ出したいのがひしひしと伝わってくる。
だが、逃がさん。
「そうか…案内を頼みたかったのだが、無理か」
あからさまに気分を害しましたという雰囲気を出す。
「いえ!喜びでございます偉大なる御方!!是非、案内させてくださいませ!」
素晴らしい。現地の案内役が確保できた。
何て幸先が良い『旅』だ。
「そうか。悪いな。では、ナーベラル行こうか」
我ながら酷いことしているが、どうせ旅の恥は搔き捨てというし。
うん、問題ない。
ナーベラルは本当に良いのだろうかという顔をしていた。
「ナーベラル。俺が『仕事』をするわけではない。
そうこれは『旅』なのだ。旅の途中で、誰かを支配しても問題ない」
我ながら滅茶苦茶な理屈だ。
「畏まりました」
ナーベラルは本当に聞き分けが良くて助かる。
後でナーベラルと口裏を合わせて、旅の途中で偶々支配したのだと報告しよう。
そう、旅での『出会い』として言えば何も問題ない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
強くなること以上にこの世界に必要なことはない。
私はそう生きてきたし、今も間違っているとは思っていない。
だが、この桁外れの『強さ』の前に私など意味があるのだろうか?
「面を上げよ」
頭を地に着ける私達に言う存在。
目の前の『強者』にとって、私はその辺の虫けらと変わらないだろう。
だが、身に着けている物すら理解できない、『強さ』だけが伝わってくる。
圧倒的力の差のみわかる。だが、それ以外『わからない』。
…絶対勝てない。
この方の前では、私などその辺にいる虫と同様に殺せるだろう。
私の生きてきた『全て』を否定する目の前の存在。
この『強者』は何者なのだ。
私は、この『強さ』を知りたい。知りたかった。
「何故、面をあげない?」
機嫌を損なわれた『強者』。
もはや、なりふり構わない。この『強さ』を知りたい。
「失礼いたしました!わ、私はオラサーダルク=ヘイリリアルと申します!
偉大なる御方!何卒、何卒その正体をお教えくださいませ!」
それを知るためならば、全てを捧げよう。
そのためならばこの命など惜しくない。
正体を隠されているのには理由があるはず。
それを解けというのは死に値する行為だろう。
だが、知りたいのだ。
この圧倒的な、絶対的な『強者』を。
アゼルシア山脈などというちっぽけな物を支配しようとしていた私は馬鹿だ。
「ふむ…」
途端に目の前にスケルトンが現れる。
いや、違う!
絶対的オーラを放つ『強者』の気配は絶対に間違えない。
そして、その身に纏う衣装は、我が『財』すら霞むほどの物だと、
ドラゴンの嗅覚が教えてくれる。
初めにその衣装を見ていたら欲望に身を任せてしまうほどに、素晴らしい。
今なら、この『強者』には当然の衣装だと理解できる。
「我が名はアインズ・ウール・ゴウン。かつてこの世全ての財を手にした『魔王』である」
『強者』はそう名乗られた。
だが、私は知らなかった。この偉大な存在を。
正体を明かしてくれと頼んでおきながら、無知な自分が恨めしい。
だが、
「ま、魔王!九つの世界の神の王!!」
息子の一人ヘジンマールが叫ぶ。
相変わらず見っともないデブゴンともいうべき姿。
だが…私が知らない目の前の偉大な存在を知っているのか!?
「ほう…知っているか私を」
ヘジンマールに興味を抱かれる御方。
そうだ。
ヘジンマールも私もこの『魔王』という『強者』に取ってはどちらも変わらないに違いない。
「は、はい。私は知識を得るために本を読んでおりました!
故に存じております!偉大なる王!世界の財を持つ『魔王』様!」
ヘジンマールは答える。知っていると。
…私は愚か者だ。
この御方のことを知らないなどあってはならない。あっていいはずがない!
「そうかそうか…」
嬉しそうに頷く『魔王』様。
私は決意した。
「偉大なる御方!『魔王』様!私共の全てを捧げます!
何卒、その『強さ』のお役に立ちたく存じます!」
ドラゴンとしてのプライドがないわけではない。
だが、『絶対者』を知った今、私の全てが変わった。
このお方に全てを捧げよう。
この御方の偉大さにひれ伏したいと乞い願う。
「…よかろう。貴様らは今から私の『財』だ」
この日私は真の『世界』に出会った。
???「この人たち何なんですか!」
??????「最初から私共が建てた計画を全否定なされたのです。もうこのまま祈るしかありません!」