俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:kohet(旧名コヘヘ)
他人の気がしない『魔王』はついでにと『策』に彼を関わらせる。
だが、無意味だろうと確信していた。
スルメさんから『ズーラーノーン』の『盟主』について聞いたとき、
『盟主』と『生徒』の魂の同化の『第八位階魔法』儀式が行われたと言われた。
その被害者の『生徒』の名前は、
『フリアーネ・ワエリア・ラン・グシモンド』。帝国魔法学院の生徒会長だという。
公爵家令嬢でもある。また、アルシェの『親友』と聞いていた。
公爵家令嬢、生徒のまとめ役なら、『外部』の人間と接触してもおかしくはなかった。
スルメさんは帝国魔法学院なら、この『生徒会長』なら、
ズーラーノーンの魔法的手段のやり取りがあってもバレないと確信した。
そう仮定して、徹底的に、だが、足が付かないように周辺情報を調べ上げた。
結果わかったことは、
帝国魔法学院の学長が、ズーラーノーンの下部組織に加入して、
不老不死のための意味のない冒涜的な儀式に参加していたこと。
グシモンド公爵は帝国の公爵でありながらズーラーノーンの同じ組織に加入していたこと。
グシモンド公爵は、娘フリアーネの内部に潜む『盟主』の存在については、
恐らく、ほぼ確実に知らないこと。
娘フリアーネ自体は本当に何も知らない貴族令嬢で、
帝国に忠誠を誓っている真面目な娘であること。
『盟主』と同化している『事実』にすら気づいていないこと。
…確定で『盟主』だという事実だった。
凄まじい『洞察力』であると俺は感心した。
常識に囚われない発想の『柔軟さ』と、情報からの『洞察力』こそ、
スルメさんの強みだと改めて知った。
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俺はフリアーネと盟主の『魂の同化』の解決法として、
魔将の『魂と引き換えの奇跡』を使えばすぐに解決できることに気が付いた。
『魂と引き換えの奇跡』はユグドラシル時代、
第八位階までのどのような魔法でも一度だけ発動可能という能力だった。
つまり、『第八位階魔法』相当の無効化が可能なのだ。
『第八位階魔法』儀式の無効化等容易だ。
ナザリックでは、別の形でそういった研究してもいた。ほぼ確実にできる。
さらに、デミウルゴスは魔将を50時間に一度召喚可能だ。
ノーコストで研究できた。
結論として、『魂と引き換えの奇跡』は第八位階相当の『魔法』に変化していた。
従って、デミウルゴスを『人化の指輪』で変装させて法国の任務に同行させて、
魔将を召喚すればその場で『盟主』は分離できた。
『財』すら消費しない。スルメさんに断言できた。
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…ところが、ツアーから聞いた『教授』の件で俺は悩んだ。
デミウルゴスに手伝ってもらう当初のプランを変更して、より良い成果でもないと、
どう考えてもテロリストの『教授』の『復活』などは無理だからだ。
俺はふと、思った。
別に『魔将』を連れて行かなくても、分離できる『魔法』があれば良くないかと思った。
要は、『魂と引き換えの奇跡』で『盟主』を分離する『魔法』を保存しておけば良いのだ。
エ・ランテル魔術師組合長のラケシルさんが知っていたのだが、
『魔封じの水晶』は『法国の至宝』として稀覯本に載るくらいには有名らしい。
…つまり、法国の手で封印できる。対外的には。
転移前あらゆる物を揃えた俺は、『魔封じの水晶』なら宝物殿にいくらでもあった。
俺はさらに思考を飛躍した。
その『魔封じの水晶』を法国と険悪な関係の人物に使わせれば、その者は『英雄』だ。
法国としても無碍にはできないと。
『教授』と戦った『十三英雄』から外れる人物。
だが、『十三英雄』の関係者イビルアイ。いや、『キーノ・ファスリス・インベルン』。
彼女の身柄を法国から保証することができれば、
『国堕とし』とすら法国は和解したと宣伝できれば、
『十三英雄』の『白銀』ツアー達が築いた国、
『評議国』との和解の布石になるのではないかと考えた。
勿論、盟主討伐及び被害者救出は、非公式任務だ。公表はできない。
だが、それを『十三英雄』の生き残りが知れば、感謝してくれるのではないかと考えた。
後の関係改善の契機には十分なりうる。
つまり、こういうことだ。
法国と共同任務をさせて、『実績』を作る。
ただし、俺ではない『国堕とし』キーノが行う。
…そのためには、『盟主』を嵌める必要があった。
スルメさんの当初の計画とは、別な形で、その『任務』内で。
そのために、『教授』を潜入させて『場』を整えさせる。共同作戦のために。
ここで、『教授』の必要性と、万が一のための保険を提案した。
『教授』の体内に最大出力で死ぬ魔法道具を埋め込むのだ。
その道具のスイッチを俺、ツアー、スルメさんの三人が管理する。
…『教授』を完封できる俺が彼女をペットにする。ハムスケの後輩だ。
俺は、彼女の奥の手だった『ギャラルホルン』を完封できるからだ。
彼女は『時代』を破壊しかけたテロリストだ。
これくらいしないと納得してもらえない。
…普通女性にこんなことするのは心苦しいはずだが、
何故か『教授』なら別に良くないかと、自分でも不思議なくらい俺には葛藤や罪悪感がなかった。
…実際ここまで、ツアーに言ったらドン引きされた。
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ここまでツアーに説明し、ドン引きされながらもスルメさんを再び呼んだ。
『緊急事態』になったと言った。
…嘘ではない。俺にとっては緊急事態だ。
スルメさんは、ここまで話しても『教授』の蘇生を嫌がった。
…無理もない。
そこで俺はさらに追加で説明した。
『教授』を潜入させる場合、『学長』として潜入させる。
…もはや、鮮血帝はこれに従うしかない。
スルメさんの調べ上げた情報のみで国が崩壊する。
何せ、ようやく大改革が終わったばかりなのに、
公爵家や魔法学院の学長がズーラーノーンの支配下にあったのだ。
解決してやるから全面協力しろ。
でないと全部バラすぞという取引に快く応じてくれるだろう。
まさしく両得。誰も悲しまない。素晴らしい友好関係だ。
ズーラーノーンの影響下にある『学長』を排除して入れ替えれば、
彼女なら余裕で帝国魔法学院を洗脳できるとスルメさんを説得した。
なんせ、『世界』を騙した演出家なのだ。一国の学校くらい余裕だ。
…『盟主』は困るだろう。せっかくの隠れ蓑だった『場』が無くなっていくのだ。
そこに『イビルアイ』を生徒として送り込む。『学長』の娘として。
そうすれば、『盟主』は『娘』を新しい寄生先に選ぶと思った。
…普通は、ここまで上手くいくはずがない。
フリアーネを、『生徒会長』を捨ててまで、寄生するとは思わない。
なにより、いくら何でも都合が良すぎる。
だから、『手紙』を出させる計画を説明した。
フリアーネの『親友』のアルシェから間接的な形での『手紙』を。
有益な『情報』を、そして、致命的な『猛毒』を。
…与えられた『情報』を自分で調べたと錯覚させる。
『教授』ならそれくらいの、『盟主』が正確な判断できなくなる状況に追い込める。
必ずだ。これには、ツアーも同意していた。それくらいは容易と。
…その後の計画も話した。
『昇級試験』という絶好の舞台で、最大級の演出する計画までスルメさんに話した。
そこまで話をして、ようやくスルメさんも納得してくれた。
…『教授』のことを不快なのは当たり前だ。
だが、ここまで『実利』と『計画』を示されると、
スルメさんも上に立つ者としては聞かざるを負えない。
まして、『友』のツアーと俺の二人がかりで、だ。絶対聞く。聞かざるを得ない。
…凄まじい罪悪感をツアーとスルメさんに抱いたが、
それほどまでして俺は『教授』と会いたかった。
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肝心要の『手紙』を送る相手は一人しかいなかった。
用心深く、疑り深く、それでいて善人。
彼から情報を伝えられれば、追い詰められた『盟主』なら引っかかると思った。
…アルシェの貴族時代、仕えていたメイドの息子が帝国魔法学院にいた。
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その息子の名前はジエット・テスタニア。
タレントで魔眼の持ち主だそうだ。
あらゆる幻覚を見破る目のタレントを持っているという。
ただ、幻覚を見破ったら相手にもそれがバレるらしい。
本人は問答無用で見破るので気持ち悪い微妙な能力、
ジエットは普段から『目』を隠しておかなければならずに、
迷惑ばかりかけられていると嘆いていたらしい。
…俺はこの『能力』を持つジエットが欲しかった。
使いどころさえ間違わなければ、
戦闘参加者全員が感覚共有すれば、幻覚に惑わされずに戦える。
素晴らしい能力だった。
そこでジエットについて調べた。アルシェの話以外でも。
…どうも母親が簡易な魔法で回復できないほど重病らしいので、
俺が助けたら、働いてくれないかなぁと思い報告書を読んだ。
報告書を読んで分析した結果、どうもこの男、ジエットは、正義感が強過ぎる上に疑り深い。
アルシェの現状を知ったら俺に敵対しかねなかった。
…アルシェを『商会』に閉じ込めたと逆恨みしそうなのだ。俺のせいじゃないのに。
アルシェの方から闇金融から『商会』に逃げ込んだのに。
…逃げ込んだ、アルシェの妹達だってしっかり教育しているのに。
さらに言えば、『魔王』が重病の母を助けても心の底からは感謝しないで怪しむタイプだ。
ジエットなら、その行為を自分の価値と釣り合わないと判断して、
家族を人質に取ったと考える。思い込む。
…俺はこの疑り深さは嫌いではない。だが、面倒臭いタイプだ。
俺が、本気で、善意で助けようと動いても意味がない。
自分のことは自分でやると言い出すタイプの人間。
要するに『頑固』なのだ。ドワーフ国の『鍛冶工房長』と同じだ。
説得までの労力と対価が見合わない。自分の『世界』で完結したがる男。
言い方は酷いが、アルシェからの話を聞いて、調べてそう思った。
普通に感謝してくれるなら、速攻でジエットと接触して母親の病気を治してやりたかった。
アルシェの話を聞いても『メイド』のことを気にかけていたみたいだし。
…それにこちらにも『利』があった。
ンフィーレアのポーションの宣伝にもなったからだ。母親が。
第六位階魔法並みの回復能力の青のポーションのデモンストレーションにはうってつけだ。
この『利』をジエットに説明したらどうなるか色々考えたのだが、
やはり、確実にジエットは話が上手すぎて疑うと判断した。
ジエットは、取引が自分に有利過ぎると一歩下がり、断るタイプ。
大損はしないが、大成を逃すタイプだ。
元営業の俺からすれば二流だ。…そういう視点で考えるのもおかしいが。
さらに、その疑り深さからアルシェの現状を知り、
正義感で今後の計画を阻害しそうだった。…正義感から来る行動力があり過ぎる。
ジエットを最悪殺さないといけないレベルで俺に被害が出る可能性が高い。
…調べた普段の行動からもそれが容易に想像できた。
俺は、『商会』はアルシェに、本当に何もしていないのに。寧ろ逆なのに。
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だが、彼は『身内』なら聞き分けが良いのだ。アルシェの話を聞く限り。
その『身内』判定が極めて面倒臭い。
自分から助けたネメルという下級貴族の娘のような存在なら『身内』になる。
逆に言えば、助けたら身内判定が容易だ。
『策』が嵌ればズーラーノーンの手下、建築学科の生徒が接触して、
ジエットは取り込まれかけるだろう。悪人だと思わないで。
…だが、ジエットにそこまでしなければいけない程の『価値』はない。正直。
だからこそ、『囮』になるのだが。
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ジエット自体は善人だ。俺は嫌いではない。
自らの身を省みずに他人を助ける姿勢には、寧ろ好感すら覚える。
だが、ひたすら面倒臭い。
俺は調べたせいで、ジエットの母親の病状が心配になり、
『休憩時間』で勝手に治してやろうかなどと、
利にもならないことを考えてしまう程、ジエットの扱いに困っていた。
有能なタレントを持ち頭も悪くない。正義感も強い。俺はジエットの力が欲しいのだ。
『未来』のためにその能力を使って欲しい。
ジエットの持ち前の正義感で一緒に『世界』を変える手伝いをして欲しかった。
…だが、どう考えてもそれに見合わない『労力』がかかる。
というかもう無駄にかかっている。
…そこまでしていらないのだ。本当に。
『教授』の件がある前に俺は、アルシェに『説得』させようと考えていた。
俺はアルシェにこんなことで頼りたくなかったが、本当に面倒臭い。
俺の母が過労死したこともあり、人ごとでないように感じた。
…俺ならなりふり構わずに助けを求める。
…それをしない、できないジエットという男は面倒だった。
能力を上手く活用できれば、本当に役に立つのに。
ジエットは関わったらイラっとくる者が多いタイプの人間だ。
彼を良く知っている者か助けられた者以外。
実際、それで大貴族の三男に敵視されている。
…『身内』のネメルが被害にあっている。
ジエットは毎回庇っているがどんどん悪化している。
…だから、俺のアルシェに書かせた『手紙』を持って『生徒会長』に確実に交渉しに行く。
容易だ。誘導しなくてもそうなる。
…『教授』にもそれとなく誘導させれば絶対になる。
『フリアーネ・ワエリア・ラン・グシモンド』は冷酷な判断もできる貴族だが、
同時に慈悲の心を持ち合わせている。
ある程度見返りがあれば。試練をクリアできればジエットを救うだろう。
ジエットならそのクリアできる。根性はあるのだ。
毎回、自分の周りからの評価が下がることを知ってまでネメルを庇っている。
フリアーネの中にいる『盟主』も『真実』だと錯覚する程の真実味があるだろう。
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…今回ここまでやらせて、『盟主』作戦終了後に
俺が、接触してダメならもう「ジエット」は諦める。
ジエットが俺に借りを作らせたはずなのに疑うようでは、協力できない。
…俺と似た境遇だからジエットに色々考えたのがわかった。
しかし、彼は『頑固』過ぎる。頼むから俺に借りを返させてくれ。
もうこれ以上、ジエットには時間が取れない。
…母親を救いたいなら俺の提案を疑わずに受け入れてくれ。
…内心を含めてここまで説明したら、ジエットは俺を逆に疑うからできない。
疑り深すぎる。
俺が本気でやれば、簡単に言葉で『従える』ことはできる。が、したくない。
俺と似た境遇なのだ。
頼むから、心から提案を受け入れて欲しい。
…多分無理だと思う。アルシェを解放しろと叫ぶ。絶対。
無理なら、『休憩時間』でパパっと済ませよう。
『仲間』が欲しかったんだけどなぁ…