ネコ艦!   作:梶田リク

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 ある時。深海から突如、謎の生命体・深海棲艦が現れたり現れなかったりして、人々を襲ったり襲わなかったりした。
 
 深海棲艦に対抗できたりできなかったりする唯一の存在、艦娘。艦娘は海の平和を守るために、深海棲艦と死闘を繰り広げたり繰り広げなかったりしていた。

 一方。海軍は戦闘拠点として、世界各国に鎮守府を設置したりしなかったりし、提督に艦娘たちを指揮させたりさせなかったりした。

 それから数年の時が流れたり流れなかったりして……。
 日本のとある鎮守府に、一人の提督が着任したりしなかったりした。

 これはそんな彼が、艦娘たちと共に、頑張ったり頑張らなかったりする物語である。



本編
第一話 出会い


「ううっ……。緊張するなあ……」

 

 鎮守府・執務室のドアの前で、私は立ち尽くしていた。

 

 これから私たちを指揮してくれる人に会うのだ。ドキドキしないわけがない。

 どんな人かなぁ。怖い人だったらどうしよう。できれば優しい人がいいけど、なよなよした人はちょっとなぁ……。

 そんな事を考えているうちにどんどんと時間は過ぎる。

 ああいけないいけない。このままでは何時まで経っても進まないよ。 

 意を決して、私はドアをノックした。

 

「失礼します! 吹雪です! よろしくお願いし……」

「おっおーーーーっ!!」

「まぐはぁっ!?」

 

 扉を開けた瞬間、私の体を何か重い衝撃が襲った。

 何が起こったのか理解する間もなく、私はドーンと壁に叩きつけられる。

 

「おいおい。何やってんだ」

 

 倒れる私に誰かが声をかけてくれた。

 顔がめり込んでしまって前が見えないけど、声の感じからして齢は私と同じくらいかな。

 

「あんた大丈夫?」

「ふぁい。ゔぁいぼうびゅべぶ」

「うん。全然だいじょばないな」

 

 このままではダメだ。両手を顔の目の前で上下させて、普段の顔に戻す。

 

 そこにいたのは、茶髪のロングヘアーに赤い眼鏡をかけた小柄な少女だった。

 

「あんた、もしかしなくても新入り?」

「あ、はい。吹雪っていいます」

「ふーん。ま、私もそうなんだけどね」

 

 すると少女は気だるそうに自己紹介を始めた。

 

「望月でーす。よろしくー。で、さっきあんたにぶつかってったのが……」

「島風だよ! よろしくー!」

 

 私の横で倒れていた少女が起き上がって挨拶をした。

 流れるような金髪に、黒いウサ耳リボン。

 それにちょっと……いやかなり露出の多い服を着た、変わった女の子だった。

 

「さっきはごめんねー。初めてのところだったからテンション上がっちゃって」

「犬かよ」

 

 島風さんに対し望月さんが突っ込む。そのやり取りに思わず笑みがこぼれる。

 

 と、ここで私は気になっていることを口にした。

 

「それにしても、ここ執務室だよね? 司令官さんはどこに…?」 

「ここにいるぞ」

「!?」

 

 部屋に響く男性の声。だが、周りには私たち以外誰もいない。

 

「し、司令官さん?」

「どこー」

「声はすれでも姿は見えず……」

「ここだってば」

 

 声のするほうへと近づいていくと、そこにいたのは、

 

「よう」

「うわあっ!?」

 

 軍帽をかぶった猫だった。

 

 

 ――ネコ提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります。

 

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 

「俺がこの艦隊を指揮する提督だ。よろしく頼むよ」

 

 猫の司令官はペコリと頭を下げ、私たちに挨拶をした。

 種類としては三毛猫に近いだろうか。白い毛に薄茶色の丸模様をつけたいたって普通の小さな猫だ。

 

 一方私たちはその様子にあっけにとられて、何とも言えないような表情を浮かべていた。

 

「あれ、何この反応?」

「いやいや。何が悲しくて猫の下で働かにゃならん」

 

 望月さんが怪訝そうに返す。

 

「あの……。司令官はどうしてネコなんですか?」

「うん。それを話せば長くなるのだが……」

 

 司令官は神妙な顔つきになって、自らに起こった不思議な出来事を語り始めた。

 

 

「俺はもともと人間だったんだが、悪い魔女に呪いをかけられてな。元に戻るには、お前たち艦娘と共に深海棲艦を倒さなければいけなくて……」

 

 そこまで言って司令官は口を止めた。

 場に流れるのはシーンとした空気。

 

「信じてないなお前ら」

「うん。全く」

 

 島風さんの返しに、司令官は溜息をついた。

 確かにいきなり魔女とか言われても、ピンとこない。

 

 大きく咳払いをして、司令官は続けた。

 

「えー……、まあこんなナリでも、俺がお前たちの提督になったことに変わりない。そんな訳で、これからよろしくな」

「はーい『タマ』」

「『タマ』言うな!」

「じゃあ『ポチ』」

「犬じゃねーか!」

「「『E・T』」」

「動物ですらないぞ! 普通に『提督』と呼べ!」

 

 望月さんと島風さんのボケに司令官が全力で突っ込む。

 

 すると司令官の体がわなわなと震えだした。やばい。これ怒ってるんじゃ……?

 

「お前ら俺のことなめてるだろ。いいか? 俺はお前らの上司であって……」

 

 その瞬間、望月さんが司令官の喉を撫でた。

 

 司令官は気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らす。が、やがて我に返り、

 

「いい加減に……!」

 

 説教を続けようとするが、今度は島風さんが猫じゃらしを持ってきて遊び始めた。

 それにつられて司令官も一緒になってじゃれ合う。

 

「駄目だー! 反応してしまうー!」

 

 司令官がその場に倒れこむ。私は近くに行って彼(?)に寄り添った。

 

「大丈夫ですか、司令官」

「吹雪。お前だけだよ、ちゃんとしてるのは……」

「司令官……」

 

 泣きそうな顔で私を見つめる司令官。その姿に心打たれた私は、思わず――。

 

 

 

 司令官のお腹を撫でていた。

 

「…………うわあああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

「司令官!? 司令官―っ!!」

 

 

 その後。

 

 執務室から飛び出した司令官を追いかけて、私たちは鎮守府を走り回り、夜は食堂で料理人の間宮さんが作ってくれたごちそうを食べながら、全力で慰めました。

 




~鎮守府・食堂~

吹雪たちが寝静まった後……。

ネコ「はあ……、全くあいつらは……」
間宮さん「まあまあ。何だかんだ言ってても、提督を慕ってくれてるんですよ」
ネコ「だといいが」
間宮さん「それより提督。夜食いかがですか? はいどうぞ」

(山盛りのキャットフード)

ネコ「…………うわあああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

「ネコ艦!」第一話、いかがだったでしょうか?
これからも頑張ったり頑張らなかったりするから、みんな読んだり読まなかったりしてくれよな!
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