ナレーションの石塚さんも亡くなったし、大きな転換期に入ってるのかも……。
しかしとうとうゴールデン帯のアニメがドラえもんとしんちゃんだけになってしまうのか!
土日の朝夕に子供向けアニメが集中してるとこ見ると、今の子がテレビ見るのってそれぐらいの時間帯しかないんだな。
時代の流れとしては仕方ないのかもしんないけど、なんかちょっと寂しいね……。
「「「「でっけえ……」」」」
町の港に見慣れない船が停泊している。
『ヨースケ・サンタモニカ号』。最新鋭のシステムが詰め込まれた大型客船だ。
しかしなぜ、そんな船がこの港に泊まっているかというと……。
「お、みんな集まってるな」
「司令官! じゃあ今回の任務は……」
「ああ。あの船の警備および護衛だ」
海軍に技術提供してくれている機械メーカーの社長息子が友人を集めて船上でパーティーをするらしく、船が通る航路がちょうど俺達の鎮守府が管轄する海域のため、それを護衛してほしいという本部からの直接の指令が下されたのだった。
「知ってるよ! 『えすぴー』ってやつでしょ! 私やってみたかったんだー!」
「またテレビの影響受けてるね……」
「てかさ。提督もついてくんの?」
「フフフ♡ テイトクはワタシたちの事心配してくれてるんデスヨ!」
「……そういう事にしといてやるよ」
「モー素直じゃないんダカラ! テイトクのツンデレさん!」
確かに金剛達の事は心配だ。だがそれは深海棲艦からの被害とは別に、この船が大きな問題を抱えていたからである。
「おいお前ら、何やってる! そろそろ出発の時間だぞ!」
小太りの男が鼻息を立てながらこちらに近づいてくる。
伊屋奈 矢津夫。この客船の持ち主で、俺の高校時代の同級生。
彼はいわゆるボンボンで、親にだいぶ甘やかされて育ったのかとにかく我が儘な性格。他者を見下し、自分の思い通りにいかなくなるとすぐに癇癪を起こすという面倒な男だった。そのため周りからは避けられていたが、本人はそれに気づかぬまま学校を卒業していった。
あれから数年。まさかこんな所で再会するとは。
「ほ、本日はよろしくお願いし……」
「ったくよー。護衛なんかいらねえっつったのに無理やりつけやがって。しかもよりにもよって艦娘とか……」
伊屋奈は吹雪達を指さして、こう言い放った。
「いいか? お前らなんか深海棲艦の弾除けぐらいにしか役に立たないところをわざわざ使ってやってるんだぞ。金ならあるんだ。精々俺様のために働けよ」
ガハハと高笑いしながら去っていく伊屋奈。それを見ながら吹雪はぼそっと呟いた。
「司令官……」
「なんだ」
「嫌な奴ですね」
「嫌な奴だろ」
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船は予定された航路を何のトラブルもなく順調に進んでいる。比較的深海棲艦の出現率が低いルートなので、当然といえば当然だが。
一応横に吹雪達もついているけど、この様子なら大丈夫だろう。と、俺は船の甲板で日向ぼっこをしながら考えていた。
すると後方にあるドアが乱暴に開けられ、中から伊屋奈が現れた。屋内のパーティー会場で数少ない友人たちと騒いでいたはずだが……。
「あ~あ。なんかパーティーも飽きちまったな~」
そう言いながら退屈そうに鼻をほじっている。ここで寝そべっている俺に気づいた。
「なんで猫がこんなとこに……?」
最初は怪訝そうに見つめていたが、すぐに表情が元に戻る。
「ほら猫、こっち来いよ。俺様が遊んでやっから」
ニヤニヤと笑いながらこちらに近づいてくる伊屋奈。正直嫌な予感しかしない。
こういう面倒事はスルーするに限る。俺は伊屋奈のそばからさっと離れた。
「んだよ無視すんじゃねえよ!」
知らん。こっちはお前の暇つぶしに付き合う暇なんてないのだ。
「ちっ、つまんねえな……そうだいい事思いついた!」
伊屋奈はスマホを取り出して電話をし始めた。相手はこの船の船長だ。
「おい。進路変更しろ」
『ええ!? しかし坊ちゃま、予定とは違いますが……』
「ごちゃごちゃうるせぇなさっさとしろよ。親父に言ってクビにさせるぞ」
なんという横暴。しかしこう強く言われれば下の人間は従うしかない。船長は渋々舵を切って、航路を変更した。
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それから数分後。
「「「「「ガー……、ガー……!」」」」」
案の定、船は駆逐イ級の大群に囲まれてしまった。
突然現れた深海棲艦に、船の中は大パニックだ。
「うおー、すげえ! いっぱいいんじゃん!」
一方伊屋奈は船体から身を乗り出して、その様子を眺めている。
「坊ちゃま! 危ないですよ!」
「いいじゃねえか、スリルスリル!」
船長の制止を無視し、呑気にスマホで写真を撮り始めた。
あいつ……、どんだけ危機感ないんだよ!
とにかくここは乗客乗員の安全が第一だ。その為にも早いとこ深海棲艦を片付けないと。
「吹雪! みんな! いけそうか!?」
「もちのろんデス! テイトク、ワタシ達の活躍、しっかり見ててくださいネー!」
「はい。私達に任せ……、て……?」
吹雪達の目の前には見覚えのある顔が立っていた。
怪物のような帽子、黒いマント、そう彼女は……!
「「「「空母ヲ級!?」」」」
「……ン? アア、アンタラ……」
ヲ級は俺達に気づくと、頭をかしげながら敬礼のポーズをとり……。
「オツ……カレ?」
相変わらず意味は分かってないようだが、彼女にとっての挨拶なんだろう。
「HEY! オツカーレ!」
「オツカレオツカレー!」
望月も島風も一緒になってヲ級に合わせている。
……前に自分がテンパったのが原因なんだけど……。敵相手にこんなフランクな感じでいいのだろうか……?
悪者のオーラというか、そういうのがないんだよな。うまくやったら味方になってくれそうな、そんな感じがするんだよな……。
「ソウイヤアンタラ敵ナンデショ? デモ攻撃スンノメンドクサイシサ」
ここでヲ級は、一つ提案をした。
「ナンカ面白イ事言ッテクレタラ帰ルワ」
「何だそのバラエティーみたいなルールは……?」
「はいは~い! じゃあ俺がやるー!」
すると伊屋奈が自信有り気に手を挙げた。
「布団がふっとんだ! …………ぷぷっ!」
自分で言って自分で受けてる。本人は満足そうだが、周りには微妙な空気が流れていた。
と、次の瞬間。
「………………はっ?」
伊屋奈の身体のすぐ近くで爆発が起こった。
「何ダソリャ。クソツマンネエンダケド」
ヲ級の方を見ると、彼女の頭上の怪物が大きく口を開けていた。恐らくそこからの砲撃だろう。
船内には悲鳴が飛び交い、伊屋奈はがくがくと膝をついた。
くそ、やっぱ腐っても深海棲艦か! やる事は一緒だな!
怪物が大きく口を開けた。おそらくあの砲撃をもう一度するつもりなんだろう。先程の攻撃で既に船は大きく傾きはじめている。今度やられれば確実にドボンだ。
「させマセン!」
だが、寸前のところで金剛がヲ級に体当たりした。それにより狙いがずれ、砲弾は上空で爆発した。
「ワタシのテイトクに、……いや、船に乗っている皆サンには手出しさせないデス!」
「ムー……。戦艦金剛カ……」
「撃ちマス! FIRE!!」
金剛の主砲が深海棲艦に向かって火を噴いた。流石にヲ級を倒すには及ばなかったものの、多数のイ級を片付けることはできた。
一方船の上では、伊屋奈が頭を抱えてぶつぶつと呟いている。
「くそ……、くそ……! 何で俺様がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……っ!」
「……いい加減にしろ!」
俺はそんな伊屋奈に向かって叫んだ。
「ね、猫が喋った……!?」
「今日のことは全部お前が招いた結果だ。今まで散々自分勝手にやってきた報いだ!」
これまでこいつに向けていた静かな怒りを、ここで全部ぶちまけた。正直この場で敵に襲われて死んでも文句は言えないはずだった。
ただ、俺は軍人だ。どんなに腹が立つ野郎でも、命は守らなきゃいけない。
「……それだけ怖い思いすりゃ、もう十分罰は受けただろう。吹雪! 撤退するぞ!」
「はい!」
乗客を避難ボートに乗せ、すぐにこの場から離脱した。
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それから数十分後。ボートは連絡を受けた救助隊の船に助けられた。
客船は沈んでしまったが、乗客乗員は全員ケガもなく無事に済んだ。
ほっとするのと同時に、俺は伊屋奈にもう一つ言いたいことがあった。
「おい」
「!」
「今まで迷惑かけた事、ちゃんとみんなに謝れよ」
「あ、ああ……。皆本当にごめん! 俺が悪かった!」
地に頭をつけ、精一杯謝る伊屋奈。それだけで許されることではないだろうが、まあ誠意は伝わったんじゃないだろうか? 少なくとも俺はそう思った。
「お詫びに俺様の金をやる。これで許してくんないか?」
「「「「「全然分かってねえ!」」」」」
……前言撤回。やっぱり嫌な奴だ。
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――――一方、海底の底では……。
「アーア。敵ニマンマト逃ゲラレルナンテ、ヲ級モ大シタコトナイナ……」
黒いパーカーを着た少女が不敵に微笑んでいた。
「……誰カ私ト、遊ンデクレナイカナ……?」