艦娘達は艤装スイッチでその扉を開き、未来を創る!
sea on your hand! その手で、海を掴め!
……だって、「如月」で四文字タイトルとかこれしか思いつかなかったんだもん!
「テイトクーッ! バーニングラ~ブ!!」
「近い近い……」
朝の執務室。今日も今日とて金剛さんが司令官に抱きついている。
ほっぺたをすりすりと擦り付け、今にもキスしそうな勢いだ。
「またやってるよ」「だな。引くわ」「リア充爆発しろー」
「そんな風に見えますかねぇ!?」
呆れと冷やかしの声に突っ込む司令官。
最初は戸惑いの目で見られていたこのアプローチもすっかり見慣れたものになり、私を含め、誰も止める者はいなくなっていた。
「いい加減に……しろぉーーっ!」
「NO~!!!」
一向に離れようとしない金剛さんの顔を、司令官が爪で思いっきりひっかいた。
「ったく……」
「ちなみに今のひっかきまでがセットです」
「これ見ないと朝が来たって感じがしないよねー」
「恒例行事みたいに言うな!」
「提督~、いるか~?」
と、そこへ摩耶さんが部屋に入ってきた。
「摩耶? どうしたデス?」
「おお、今日も派手にやられてるなぁ……」
「イヤー、それほどデモ……」
「褒められてないぞ。で、何だ? 何かあったのか?」
「お客さんだぜ。なんか提督にでぇじな話があるんだってよ」
「大事な話ね。一体何だろう」
「運営に通報されたのかな?」
「それはすげえ嫌だ!」
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摩耶さんに連れられて玄関へ行くと、そこには可愛らしい少女が立っていた。
緩やかなウェーブのかかった栗色の長髪に、花びらの髪飾りをつけている。
「どうも、お久しぶりです。ネコ提督」
彼女は深く礼をして、にこりと微笑んだ。その振る舞いからはある種の上品さが出ている。
「お知り合いですか?」
「いや……?」
『お久しぶり』と言われた司令官だが、相手がだれかピンときていないようだ。
「えっと。君、どこかで会ったっけ……?」
「覚えてないんですか……? ひどい! あの日私に【あんな事】や【こんな事】をしてきたくせに!」
「「「「!?」」」」
少女の爆発発言に、その場にいたメンバーが司令官からサッと離れる。
「いやいやいや! 俺何もしてないよ!?」
「そんなナリしてやることヤッてたんだな!?」
「司令官……」「最低」「サイアクだ」
「だから誤解だって!」
必死に弁解する司令官。普段の素行から、彼がそんな事をする人だとは思えないけど……。
「そもそも猫だぞ!? 猫が艦娘相手にそんな真似できるわけないだろ!?」
「「「ああー……」」」
ここでようやく周囲から納得の声が出る。
「ちっ」
「おい誰だ今舌打ちした奴!」
その様子を見て彼女はくすくすと笑う。
「すみません。冗談です」
「ま、そうだよねー。恋愛奥手のヘタレ提督にそんな度胸あるわけないか」
「あほ。俺が人間だった頃はな、窪田正孝似のイケメンで超モテてたんだぞ?」
「はい嘘松」
「う、噓じゃないし! 本当だし!」
司令官が人間だった頃の話は置いといて、そうなるとこの子は一体何者なのだろうか。
民間人が猫の提督の存在を知るわけないし、もしかして軍属の人? 新しい艦娘?
「OH! 如月! 久しぶりネー!」
そこへひっかきから立ち直った金剛さんがやってきて、彼女に思いっきり抱きついた。
「……そうか思い出した! あなた、ペンギン提督の艦隊にいた……」
「はい。睦月型駆逐艦の二番艦、如月です」
如月さんはそう言うと敬礼をした。
司令官の先輩であるペンギン提督。彼が指揮する艦隊とは以前演習で対戦した事がある。結果はこちらのボロ負けだったが、彼女とはその時以来の再会となる。
「でも、先輩んとこの子がどうしてココに?」
「今日は金剛さんの処遇について報告しに来ました」
「What ? ワタシにデスカ?」
「はい。金剛さんはペンギン艦隊から、正式にこちらの鎮守府に転属となりました」
「「「「「「…………あっ!!!?」」」」」」
そうだった! 金剛さんは元々ペンギン艦隊の人だった!
「忘れてた……。あまりにも自然な感じでいるから、てっきり最初からいるもんだと……」
「YEAH! これでテイトクとずっと一緒にいられマース!」
金剛さんが飛び跳ねて喜んでいる、正にその時だった。パトロール中の北上さんから連絡が入った。
「ん? どうした?」
『こちら北上、大井、二人は艦キュア!』
「そういうのいいから! 何があったのか言えよ!」
『鎮守府近海にて深海棲艦同士のトラブル発生。手に負えないから応援を要請しまーす』
深海棲艦同士でトラブル? 一体どういうことだろうか。
「と、とにかく行ってみるしかないですね!」
「だな。皆頼んだぞ」
「あの……」
如月さんが手を挙げた。
「私もついて行っていいですか? 何かお役に立てるかも……」
「え、でも」
「お願いします」
最初は遠慮していた司令官だったが、やがて根負けして如月さんの同行を許可した。
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「ヤンノカコラァァァ!」
「ナンヤァァァ!!」
現場に到着すると、辺りは騒然とした状況になっていた。
二体の深海棲艦、駆逐ロ級が取っ組み合いの喧嘩をしているのだ。
それは血で血を洗う壮絶な戦いであった。もう、これだけで一つバトル漫画が出来そうなくらいの勢いだ。
周りでは彼らの連れだろうか。他の駆逐艦達がおろおろとその場で見つめている。
「お、こっちこっち~」
その隣で北上さんが手を振ってこちらを呼んでいる。
「北上さん、この騒ぎは一体?」
「実はね、さっき連れの人から聞いたんだけど」
北上さん達が聞いた話によると、彼らは先程まで居酒屋で飲んでいたそうだ。
……深海棲艦も居酒屋とか行くんだ……。いやその話はさておき。
そしてベロベロに酔っぱらったロ級達が談笑していると……。
『イヤ~ソレニシテモ、三+三ハ六ダナ~』
『ソレヲ言ウナラ、四+二ガ六ダヨ~』
『ハア!? テメエフザケンナコノヤロー!』
『地獄ヘ落トスゾバカヤロー!』
それがきっかけで、なぜかいきなり二人が暴れ始めた。ということらしい。
「……何だそりゃそりゃ」
「あいつらの考えることはよう分からんな」
要するに酔った勢いでの喧嘩か。これはちょっと厄介だぞ。
「今大井っちが止めようとしてるんだけど、なかなかうまくいかないみたいね」
「よーし、ここはワタシに任せてクダサイ!」
「お、気合十分だね金剛っち」
「正式メンバーになったワタシの実力、見せてやるデース!」
「よくわかんないけど頑張ってー」
意気揚々と金剛さんが、二体の方へ向かっていく。
「ヘイヘイそこのBOYたち! 喧嘩はいけないデ……」
「「ウルセーッ!!!!」」
「NO~!!!」
「金剛さーん!?」
ロ級に顔面を思いっきりひっかかれ、金剛さんはあえなくダウンする。
邪魔者を倒してなお、二体の勢いは止まらない。
「こりゃもう駄目かもしんないわね……」
ずっと見ていた大井さんもそう匙を投げる。と、その時だった。
不意に如月さんが彼らの前に立った。
「ア? ナンダコノ女?」
「ドイツモコイツモ……、邪魔スルンジャネーッ!」
ロ級が如月さんに飛び掛かる。が!
「!?」
如月さんはその攻撃を指で止め、そのまま強烈なパンチをロ級に浴びせた。
「ロ級Aーッ!?」
殴られたロ級は水面でぴくぴくと震えながら倒れている。
「マッテロ、敵ハ俺ガ取ッテ……!」
「な・あ・に?」
向かってくるもう一体のロ級に、如月さんはウィンクをする。
「……イ、イエ、何デモナイデス……」
顔を赤らめながらロ級が答える。完全に恋する乙女の瞳だ。
「喧嘩はダ~メ。なかよし一番、でしょ?」
「ハイ! 失礼シマシタ~!!」
ロ級はそう言うと倒れたもう一体を抱え、仲間達と一緒にそそくさと帰っていった。
「ふう……。さて、終わりましたよ?」
如月さんはこちらを向いてニコッと笑う。
こっちが散々てこずった相手を、いとも簡単に片づけてしまった。
「ヤベーイ……」「ツエーイ……」「モノスゲーイ……」
その光景に私達はただ、唖然とするだけだった。
「……って事があったんですよ」
「マジか」
鎮守府に戻り、今回の件に司令官に報告する。やはり司令官もその状況に愕然としている様だった。
「あら、こんなのうちじゃ日常茶飯事ですよ?」
「どうなってんだよ先輩んとこの近海は……」
司令官はふっとため息を漏らす。
「でも流石だなぁ。それだけの戦力があれば、こっちの戦闘も楽になるのに」
「ネコ提督……」
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後日。
「というわけで、私もここに転属することになりました♪」
「「「「それでいいのか!?」」」」
まさかの展開に開いた口が塞がらなかった。
こうして我が艦隊に金剛さんと如月さんが加入することになったのだが……。
……うーん……、こんなのでいいのかな……?
ネコ「そういや望月と如月って同じ睦月型の姉妹艦なんだよな」
望月「ああ……。そういやそうだな」
ネコ「でも姉妹って言う割にはあんまり似てないような……?」
望月「色とりどりだからなぁ、うちら」
如月「似てないのは当然ですよ。私達全員連れ子ですから」
ネコ・望月「問題発言!!」
如月「冗談ですっ♪」
『如月なんて出てたっけ?』と思ってる人は「演習」を読み返そう!
名前だけちょろっと出てるぞ!