ネコ艦!   作:梶田リク

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前の投稿から結構日が空いてしまった……。
大丈夫、エタってないよ! まだ続き書くよ!

待たせた分(待ってくれた人ってどれくらいいるんだろうか……?)
いつもより大分長いよ!(というかいつものが短すぎるのか……?)

第十四話、どうぞ!


第十四話 さんま祭り

 昔々、この町に杉富美という若い漁師がいました。

 ある年の秋。彼を女手一つで育ててくれた母が重い病気にかかってしまいました。しかし杉富美の家はとても貧乏で、薬を買うお金もありませんでした。

 それでもせめて魚だけは食べさせてやろうと、仲間を連れて漁に出かけます。

 その日の海は大しけ。船は嵐に見舞われ、杉富美は海に投げ出されてしまいます。

 波にのまれ、薄れゆく意識の中、杉富美は神に祈りました。

「神様。オラはどうなってもいいから、どうかおっ母を助けてくんろ」

 翌日、港に黄金に輝くさんまが打ちあがっていました。

 生き残った仲間がそのさんまを調理し、杉富美の母に食べさせたところ、すっかり元気になりました。

 町の人々は考えました。杉富美はさんまとなって、母の命を救ったのだと。

 それから町では杉富美とさんまの為に、毎年秋に祭りを開く事になったのでした。

 

 

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「へえ、そんな話があるんですか」

 ある日の昼下がり。鎮守府近くの商店街へ買い出しに行った私・吹雪と司令官は、惣菜店のおばさんからこの港町に伝わる伝説を聞いた。

「『秋のさんま祭り』と言ってね。近年は深海棲艦が出て危険っていう理由で中止になってたんだけど、艦娘の皆が頑張ってくれたおかげで随分被害も減ったでしょ? それで今年から復活することになったのよ」

「へえ!」

「今度の週末にやるの。よかったら吹雪ちゃん達も来てね」

「はい、ぜひ!」

 そうおばさんと約束をして、私たちは鎮守府へ戻った。

 さんま祭りかぁ……。いったいどんな祭りになるんだろう?

 

 

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迎えた祭り当日。

 普段はひっそりと物静かな町だが、今日は朝から町中に祭囃子の太鼓や笛の音が鳴り響いている。海沿いの沿道には出店が立ち並び、既に多くの住民が詰め寄っていた。

「賑やかだなー」

「そうですねー」

 肩に司令官を乗せて、私は祭りのメイン会場へと向かう。

 今日は任務も休み。艦隊みんなで祭りを楽しむことになっている。

 司令官もいつもの軍帽ではなく、『祭』と書かれた鉢巻を巻いて青い法被を着ている。完全にお祭りモードだ。

「テイトク……♡ そのコスチュームもベリーキュートデス!」

 それを見た金剛さんがすかさず携帯で写真を撮りまくっている。息が荒々しいのはいつものことである。

 

「おーい! こっちこっちー!」

 先にメイン会場である町の広場に到着していた摩耶さん達が大きく手を振っている。

「すいません、こっちが準備に手間取っちゃって。待ちました?」

「いやこっちも今来たところだから」

「そんなデートの待ち合わせみたいな……」

「フフフ、テイトク♡ 今日は二人でラブラブデートしましょうネ♡(すりすり)」

「近い近い……」

「あ、司令官だー」

 

 人ごみの中から望月さんと島風さんが現れる。たこ焼きや焼きそば、綿菓子など多くの食べ物を両腕に抱えていた。

「お前らもうそんなに食ったのかよ。後で港の人たちがさんま料理をご馳走してくれるっていうのに、ちゃんともつのか?」

「大丈夫大丈夫。あたしらの腹はブラックホールレボリューションだから」

「何じゃそりゃ」

 その自信はどこから来るんだろう……。

 

「ふーん、『サンマ』って食べ物だったんデスねー」

 

 ――金剛さんが呟いた一言に、周りが凍り付いた。

「……ま、まさか、金剛さん知らなかったんですか……?」

「? ハイ」

金剛さんはしれっとそう告げた。

「ワタシはただ、テイトクがお洒落してるから気になってついてきただけデース!」

「マジかー……」

 がっくりとうなだれる司令官に、望月さんが言う。

「あれだよ司令官。『アニメ映画見に行ったけど、それは好きな男性声優が出てるからってだけで、作品の内容については全く知らない』ってパターン」

 なんて分かりやすい例えだ。望月さんの解説に思わず納得した。

 

 まさか現代日本でサンマを知らない人がいるとは。

 そういえば金剛さんはイギリスからの帰国子女だって聞いたことがある。日本の食に疎いのは、こういった事情もあるのかもしれない。

 しかしこれは逆にサンマを知ってもらう絶好の機会だ。

 私達は金剛さんを連れて、メイン会場の中へ入っていった。

 

 この町には一つだけ鉄道駅があり、駅前の広場では普段からよくイベントが開催されている。その中でも今回の祭りは特に規模の大きいものだった。

 まず広場の真ん中には、この日のために作られた高さ10メートルほどの巨大なさんまのオブジェが建っており、それを囲むように町内会の白いテントが張られていた。

 

「吹雪ちゃん、待ってたよ~」

 その中の一つ、惣菜屋のおばちゃんがいるブースに向かうと。

「艦娘のお姉ちゃん。……こんにちは」

「洋介くん!」

 おばちゃんの孫で現在は遠くの町で暮らしている洋介くんがいた。今日は家族と一緒に、祭りのお手伝いに来たそうだ。

「久しぶり! 元気にしてた?」

「う、うん……」

 私が聞くと洋介くんは顔を赤くして答えた。どうしてそんな顔をするんだろう。風邪かな。

 と、その様子を見ていた望月さんがニヤニヤと笑う。

 

「あんた、吹雪の事好きだろ」

「ふえっ!?」

「洋介! そうなのかい!?」

「ち、違わい!」

 腕をバタバタと振って否定する洋介くん。司令官は望月さんの肩に乗り、そっと告げる。

「あれだよ望月。これはな、小学生男子特有の照れってやつだ。このくらいの男は、年上の女性の事が色々気になる年頃で……」

「わー言わなくていいよ! って、誰が言ってるのこの声!?」

 洋介くんは辺りをキョロキョロと見回すが、まさか猫の司令官が話していたとは気づいていないようだった。

 

「それよりブッキー! 早くサンマを食べてみたいデース!」

 後ろにいた金剛さんに声をかけられた。

「そ、そうですね。おばちゃん、早速料理の方を……」

「泥棒だー!」

 するとその時、広場中に大きな声が響いた。

 

 声がする方を見ると一体のロ級がさんまを食わえて逃げていくところだった。

「フッフッフ。コノサンマをヲ級様ニプレゼントシテ、ホメテモラウノダ!」

「大変! こら待ちなさい!」

「おばちゃん、ここは私たちに任せてください」

「わ、分かった。頼んだわよ」

 私達は逃げて行ったロ級を追いかけた。

 町の人々が楽しみにしていた祭りを邪魔するなんて、絶対に許せない。

 

 

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「「「「「待てーーっ……」」」」」

 

 

 あれからどのくらい経っただろうか。

 私達はロ級を追って町中を駆け回った。だが、相手のスピードが速く、なかなか追いつけない。

 皆息も絶え絶え、足もフラフラ、体力の限界が近づいていた。

 と、ここで司令官があることに気づいた。

「……おい……、島風がいないぞ……。どうした……?」

 その問いかけに、望月さんが息を切らしながら答える。

「島風なら……、ここに来る最中……、着ぐるみ見つけて……、写真撮りに行ったよ……!」

「肝心な時に……、役に立たない……!」

 艦隊一の瞬足を誇る島風さんがいたらとっくに追いついてはずなのに。マイペースにも程がある!

「ハア、ハア、シツコイ奴ラダ……!」

「絶対に……、追いついてやる……!」

 双方身も心もボロボロになりながら走り続ける。

 

 その様子を端から見ていたのは祭り会場の騒ぎを知らない観光客だった。

「なんだなんだ何やってるんだ?」

「祭りのイベントかしら?」

「よくわかんないけど、どっちもがんばれ~!」

 何かの競技と勘違いしているのか、人々が声援を送りはじめた。

 時間を追うごとに大きくなる声。それを聴いているうちに、いつしか私達にも変化が……。

 

「……何で俺ら走ってるんだっけ……?」

「さあ……?」

「何デ俺、サンマ食ワエテルンダッケ?」

「さあ……?」

 

 もはや敵も味方も本来の目的を忘れたまま、メイン会場へと戻ってきた。

 大きなさんまのオブジェ。その目の前にはおばさん達が用意したゴールテープが!

 あのゴールテープを切れば、この長い闘いも終わる!

 

 依然トップを走るのはロ級。が、ゴールまで残り数メートルと迫ったその時、後方から猛烈な勢いで追い込んできた白い影、あれは――。

「うおおおお! さんまはワタシのものデース!」

 金剛さんだった。今までどこにいたのかわからないが、ここにきて驚異の追い上げを見せてきた。あっという間に私達を抜き去り、ロ級との差は縮まっていく。そして。

 

 

「ゴール!!!」

 

 ゴール直前でロ級を抜き、金剛さんが一着となった。

「やりマシタ……。 一等賞デース……!」

「クソ~……、アトモウ一歩ダッタノニ……」

 地団駄を踏んで悔しがるロ級。そんな彼に金剛さんは優しく手を伸ばす。

「ナイスファイトデシタね! またやりマショウ!」

「……フフ。次ハ負ケナイカラナ!」

 二人は固い握手を交わす。激闘の末に生まれた友情に、会場中から拍手が起こった。

 

 

「みんなお疲れ様! 腕によりをかけたさんま料理を召し上がれ!」

 おばちゃんの言葉にわあっと歓声があがる。

 広場の中央、テーブルにずらっと並べられたのはおばちゃんを含めた町内会の皆さんが作ったさんま料理たち。

七輪で焼いた塩焼き、和風オイルパスタ、そしてかば焼き丼。どれも美味しそうだ。

 椅子に座り、皆で手を合わせる。

「「「「「いただきます!」」」」」

 早速塩焼きから頂こう。箸で肉を割いて骨を抜き、大根おろしとカボスをかけて一口。

「うわあ、美味い!」

 頭の中で『うまい!』と言う女性の声が流れるほど、絶品であった。

「WAO! このサンマ料理すごくデリシャスネ~!」

「金剛さん。いい食べっぷりですね!」

「YES! ワタシ、さんまが大好きになりマシタ!」

 初めてさんま料理を食べた金剛さんも大満足のようだ。しかも大好きだなんて言うとは、おばちゃん達もうれしいだろうな。

 

「うっぷ……、もうお腹いっぱいだー……」

 一方、望月さんはげんなりした顔で口を押えている。

 先程たらふく出店のものを食べてすでに満腹、その後長いこと走ったせいか気持ち悪くなって完全アウトらしい。そんな望月さんを見て、司令官は呆れかえっている。

「言わんこっちゃない。お前のブラックホールはどこ行ったんだよ」

「あたしのブラックホールは新世界と共に消えちまいました……」

「何じゃそりゃ」

 

 

「さあ祭りもクライマックス! 皆で『さんま音頭』を踊りましょう!」

 おばちゃんの号令で、陽気な音楽が流れ始めた。それと同時に町の人たちも音楽に合わせて好き勝手に踊りだす。振り付けは特に決まってないみたいだ。

「何だか楽しそうだな……。吹雪、俺らも参加しようぜ!」

「は、はい!」

 司令官に連れられ、私達も踊りに参加する。

 何か忘れてるような気がするけど……、まあいいか!

 

 

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 一方その頃。町外れの深い森の中で島風が一人泣いていた。

「……ぐすん。着ぐるみ追っかけてたら変なとこまで来ちゃった……。ここどこ~!? お腹すいたよ~~っ!!」

 

 その夜は犬の遠吠えのような鳴き声が、一晩中響いていたという。

 




さんま音頭
作詞:村下じょうじ 作曲:ジーニー東

さんさんさん ささんがさん
さんまうまいなおいしいな 鉄分ビタミンカルシウム
元気者も泣き虫もガキ大将も みんな食べれば笑顔になるさ
「は~! うまいでんなぁ~!」
「ホンマでっか!? ……ホンマや!」
さんさん太陽 ありがとさーん
これが噂の さんま音頭だよ

さんさんさん さざんがきゅう
サザンすごいなかっこいいな TSUNAMIジョニーにシンドバッド
元気者も泣き虫もガキ大将も みんな聴いたら笑顔になるさ
「エリー マイラブ ソウスイート」
「今何時!? そうね大体ね~!」
さんさん桑田さん ありがとさーん
これが噂の サザンオールスターズ


ネコ「後半全然関係なくなっちゃったよ!」

ちなみに島風は翌日の朝泣き疲れて眠っているところを近隣の方に発見され、無事に鎮守府に戻ってきました。

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さて、ネコ艦!十五話いかがでしたでしょうか。

色々ありましたが、またこうやって吹雪達の活躍を描けて良かったです。
このお話はあとちょっとだけ続きます。
更新頻度は不定期になると思いますが、ぜひ最後まで見届けていただければ幸いです。
以上! 梶田リクでした!
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