『呪い』とは何なのか?
彼は何故ネコになってしまったのか?
いま、全てが明かされる!
昔むかし、二年ほど昔。
日本のとある学校、ある日の昼下がり。
廊下の窓際で一人の青年がぼーっとしていました。
その青年は窪田正孝のようなルックスと、梶裕貴のような声を兼ね備えた、とてつもないイケメンでした。
「おーいタカハル!」
「ん?」
同級生に名前を呼ばれた青年――タカハルが髪をサラサラなびかせながら振り返ります。
「……何やってんだ?」
「別に? ただ、今の動きちょっとカッコいいと思ってさ」
「はぁ……?」
「こいつちょっとナルシストみたいなところあるよな」
指摘を受けたタカハルは膝をついて落ち込みます。
「……調子乗ってすいません……」
「そのくせ凄い豆腐メンタルなんだよな」
「面倒臭えコイツ!!」
そこまで凹む!? というぐらい弱ったタカハルを、同級生二人が何とか落ち着かせました。
タカハルの元気が回復したのはその十数分後の事です。
「……で、要件はなんだよ」
「昼飯まだだろ? 一緒に食おうぜ」
「おう」
三人は、早速食堂へと向かいました。
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天井が高く開放感あふれる食堂。
タカハル達はテーブル席に座り、定食を食べながら駄弁っていました。
「しかし、深海棲艦の動きも活発になってきたな」
不意に同級生Aが切り出しました。
その言葉に同級生Bもタカハルも静かにうなずきます。
当時、日本は海から来た謎の未確認生物からの被害に悩まされていました。
多くの港が壊滅、海運業は撤退を余儀なくされ、経済は大打撃を受けたのです。
その脅威に対抗するため、政府は戦前まで存在した『海軍』を復活。総力を挙げてこの危機を乗り越えようとしていたのでした。
タカハルが通っているこの学校も、海軍に所属する兵を育成するための士官学校。二年間の履修期間を終え、一週間後に卒業を控えていました。
「全くよォ。平成も終わるっていうのに、化け物退治とかやんなっちゃうよな」
「あ、やっぱり平成って終わるんだ!?」
「そうだよ。俺もお前も、あと少しで一時代前の人間になるって事だ」
「うわああやだなー」
いつの間にか話が変わり時代談義に花を咲かせる同級生達。
そんな中、タカハルはあることが気になっていました。
(本当に深海棲艦は倒せるのかな。奴らには通常の兵器が通用しないって言うけど……)
「なあタカハル」
「ん?」
「『ん?』じゃねえよ、話聞いてたか? 平成に代わる年号は何になるかって話。俺は『タピオカ』だと思うんだけど」
「ああ。えーっと……、『令和』かな」
「えー!? 令和はねーわ!」
「タピオカの方がねえよ!」
※この話は今から二年前の話です。
と、ここで呼び出しのアナウンスが流れました。
《三池タカハル、三池タカハル、至急学長室まで来るように》
「タカハル。呼ばれてるぞ」
「お前、なんかやったのか?」
「さあ? わかんないけど……、とにかく行ってくるわ」
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「失礼します!」
ノックをして学長室に入ると、小太りの学長が立っていました。
そして普段学長が座っている奥の席にはもうひとりの男性が座っています。
彼は真っ白い軍服に身を包んだ、背の小さな髭の濃いでんぢゃらすな風貌の老人でした。
「おう三池、よく来てくれたな」
「学長。そしてこの方は……」
「直接会うのは初めてか。この方こそ、日本海軍総司令官・伝蛇羅済蔵(でんじゃらすぞう)さんだ」
(この人が総司令官……。テレビとか新聞によく出てる人だ)
「……サインもらっていいですか?」
「おいっ」
恐れ多くも軍のトップにそんな事を聞くタカハルを学長が叱責します。
普通なら始末書レベルです。
「ハハハ……構わんよ。『タカハルくんへ』とでも書けば良いかな?」
ですが、彼はそんな事気にもせず笑い飛ばしました。
総司令官というから厳格なイメージがありましたが、実際はノリの良いお茶目なお爺さんのようです。
「じゃが、ワシの前に君のサインを貰うことになるかもな」
「え? 俺の、ですか?」
「『三池タカハル』、20歳。『タカハル』は『天晴』と書いて『タカハル』と読む。地元の高校を卒業後、海軍士官学校に入学。生活態度は良く、成績も申し分なし、か……」
総司令官は机上に置かれた資料とタカハルの顔を何度も確認した後、ニッと笑って言いました。
「……うむ、問題なかろう。三池タカハルくん、君をこの春から戸亜流鎮守府所属の提督に任命する。いいな?」
「は、はい!」
一番偉い人にいいかと言われたらつい「はい」と答えてしまう。日本人の性でしょうか。
しかし、いざ冷静に考えてみると、とんでもない仕事を押し付けられたのでは? と、タカハルは思いました。
(待てよ、『提督』って艦隊の指揮をする人だろ? 少なくとも、学校卒業してすぐの人間がやる仕事じゃないはずだ)
タカハルは自分の容姿に自信はあっても、能力的に誇れるものはないと考えていました。
「あの……。そんな大仕事、俺なんかに務まるんですかねぇ…?」
「ん? おっほっほ。心配はいらんよ。女の子とあんな事やこんな事をするだけの、簡単な仕事じゃから」
「は、はあ……」
どんな事するんだよ。『提督』ってそんな感じでいいんだっけ!?
あまりの適当ぶりにタカハルは只々呆然としていました。
「……提督になれば、深海棲艦を倒せるんですか?」
「君次第じゃな」
その返答に、力強く答えます。
「やります、俺! 提督になります!」
正直、今は分からないことだらけ。
でも、頼まれたからにはやり抜く!
と、タカハルは心の中で決めていたのでした。
「うむ、では頼むぞ。日本の平和は君の腕にかかっているのじゃ!」
「…………そう言われると凄いプレッシャーだなぁ……。やっぱり、やめてもいいっすか……?」
「「ええー?」」
総司令官と学長は深い溜息をつきました。
せっかくかっこよかったのに。
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「ここ……でいいんだよな……?」
結局二人に説得されて提督になる事を決心したタカハルは、総司令官に紹介され、ある場所へとやってきていました。
そこは校内のはずれにある、もう何年も使っていないはずの小屋でした。
引き扉を開けるとギシギシと鈍い音がします。やはり大分使われていないようですね。
「すいませーん。誰かいませんかー」
そこは正に物置と呼ぶに相応しい場所でした。
あちこちに物がとっ散らかっているだけで、そこに誰かがいるとは思えません。
「おかしいなぁ。もらった地図ではここで合ってるはずなんだけど」
「ども~」
「うわあっ!?」
急に声を掛けられ、タカハルはビックリして尻餅をついてしまいました。
彼の前に現れたのは若葉マークの付いた水兵キャップを被っている、手のひらほどの大きさしかない不思議な少女でした。
「な、何だお前!」
「君にしか見えない妖精だよ」
「妖精さん!?」
現代日本でまさか妖精に遭遇するとは。
タカハルは夢かと思って何度も頬を引っ張りましたが、痛い思いをするだけでした。
「何度やっても同じことだよ。妖精さんは実在しているのです」
「マジかよ……」
「で? 君は何しに来たんかな?」
「あ、そうだ。総司令官に言われたんです、ここに来れば提督になれるって」
総司令官から貰った紹介状をタカハルは妖精さんに手渡しました。
「どれどれ~? ふんふん……。成程ねぇ、この子が羅済蔵の選んだ……」
妖精さんは紹介状とタカハルの顔を交互に見ながらブツブツと呟いています。
総司令官と動作が似ています。こういう所は人間も妖精も同じなようですね。
「オッケー! 君を提督にしてあげる!」
「軽いな!」
「じゃあこの書類にサインしてね」
「あ、はい」
(良かった……。妖精なんてファンタジーな物が出てきたからどうしようかと思ってたけど、こういう手続きは普通なんだな……)
タカハルは妖精さんがくれた登録用紙に自分のサインを書きました。
「……間違っても中学生の頃考えた自分のオリジナルサインみたいなのは書かないでよ?」
「わ、分かってますよ! ……用紙もう一枚貰っていいですか?」
(書いてたな)
新しく用意された紙に、今度こそタカハルはちゃんと自分のサインを書きました。
「はい。これで手続きは完了だよ」
その後も何枚かの書類にサインとハンコを押して、ようやくすべての作業が終了しました。
「近いうちに、就任に必要なものが送られてくるからね。とりあえず今日のところはお疲れさまでしたー」
「お、お疲れ様です」
この時、彼は気づいていませんでした
自らの身に降りかかる、ある大きな事件の影に……。
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その夜のことのです。
「どこだ、ここ……?」
タカハルは謎の空間にいました。辺りは真っ暗で何も見えません。
すると、前方から小さな光が近寄ってきます。
「やあ、新人提督くん」
「昼間の妖精さん!」
光の正体は登録の際に対応してくれたあの妖精でした。
「いやぁ、あの時言い忘れてたんだけどねー。提督になるにはちょっとしたリスクを抱えなきゃいけないんだ」
「リスク……」
タカハルはその言葉の意味をしっかりと考えました。
「佐藤二朗がこれからずっと付きまとうんですか?」
「いや違うよ。というかこの時はまだそのCMやってないよね」
二年前といえば、共演したあの女優も出だした頃だというのに。
「そうじゃなくて、君に何かしらの呪いを掛けたから」
「呪い!? どういう事ですか!?」
「深海棲艦を倒して平和を取り戻さない限り、君は元の身体に戻れないって事だよ」
「『元の身体』……? えっ? 俺の身体になんかしたんすか!?」
「じゃ、そういう訳だから頑張ってね。よろ~」
「いやちょっと! どういう事か説明してくださいよ! ちょっとー!?」
言いたいことだけ言って消えていく妖精さんを引き止めるため、タカハルはバッと手を伸ばしました……。
「ちょっ――!」
気づくと、彼は自室のベッドで寝ていました。
先ほどまで見ていたのは全て彼の夢だったのです。
ああ良かった。呪いなんてなかったんだ。安心したのか大きな欠伸をしました。
「ニャア~アッ」
……近くでネコの声がしました。でも、辺りを見回してみてもその姿は見えません。
「気のせいか。 …………ん? あれ?」
タカハルは違和感を覚えました。
今喋ったのは間違いなく自分、しかしいつも聞いている声ではありません。
いつもならもうちょっと低い声のはずなのに、今の声は明らかに高かった。
エレンからメリオダスぐらい違う。
……いや待て。よく見てみると視点もいつもより低くなっているような?
「――!」
急に恐ろしくなったタカハルは自分の身体全体をくまなく触って確かめました。
全身を包むフサフサの体毛。手のひらには柔らかな肉球。左右両サイドにピンと伸びたヒゲ。そして頭には萌えキャラが付けているような「あの」耳が直に……!
「な、な……!」
最後に鏡でその全貌を目の当たりにしたタカハルは愕然としました。
自らの姿が、『ネコ』になってしまっているという事実に。
「なんじゃこりゃぁ~!!??」
殉職した刑事のように野太い悲鳴が、早朝の寮内に響き渡りました。
こうして、あのネコ提督が誕生したのです。
ジャンジャジャ~ン! 今明かされる衝撃の真実ゥ!(CV.日野聡)
ついにネコ提督の秘密が明かされました。
悪い魔女--もとい妖精に姿を変えられてしまった提督。
果たして彼はどうなってしまうのか!? というところで後編に続きます。
平成が終わるまでに上げたい!
いやもうこの際最近発表された「あの」ライダーみたいに、年号跨ぐのもありか?
う~ん、どうしましょうハート様?
……ってうわあ! 女ロイミュードが物凄い形相でこっち見てる!
仕方ない。こうなったらやったるぜ。
クライマックスまでもう少し! 次回もお楽しみに。