初出撃の翌日。
本部から新たな艦娘が派遣されることになった。
私たちは、鎮守府の門前でその到着を待っていた。
「ううっ……。緊張するなぁ……」
「司令官でも緊張する事があるんですね」
「そりゃそうだろ。俺だって人間なんだから」
「「「いや猫」」」「でしょ」「じゃん」「だろ」
「皆まとめて猫扱いすんなっ!」
「大体、司令官が緊張してどうするんだよ」
「いやだってさ。第一印象って大事じゃん? もしそれが原因で冷たい態度なんか取られたりしたら、俺寂しくて泣いちゃうよ」
「うわめんどくせー」
そんなやりとりをしながら、待つこと数十分。
私たちの目の前に黒色の外国車が止まった。
「黒塗りのベンツだ!」
「追突しないのか?」
「おい。やっていいネタと悪いネタがあるぞ」
「「ごめんなさい」」
司令官に本気のトーンで叱られた二人は素直に謝った。
「あ、出てきますよ?」
車の後部座席のドアが開くと、中から出てきたのは駆逐艦の私たちより背の高い女性だった。
紺色のセーラー服に身を包み、赤いラインが施されたスカートを穿いている。
しかし、それ以上に特筆すべき点は――。
((((で、でけえ……))))
誰もが一瞬見惚れるほどの、美しいプロポーションだろう。
特に胸部装甲の大きさは群を抜いている。それはもう、自分のそれが空しく思えるほどには……。
「お、そこにいるのはここの鎮守府の奴らか?」
彼女は私たちに気づくと、傍まで駆け寄ってきた。
「よぉ、アタシは重巡洋艦の摩耶ってんだ。よろしくな!」
彼女――摩耶さんはふっと笑って私に握手を求めてきた。
その笑みからは、彼女の気の良さが見て取れる。
良かった。そんなに怖そうな人じゃなさそうだ。私は喜んでそれに応じた。
「はい、よろしくお願いします」
「それにしてもこんなちっちゃな嬢ちゃんがアタシの提督とはな。びっくりしたぜ」
「え?」
耳を疑った。どうやら摩耶さんは、私が司令官だと勘違いしているようだ。
その発言に本来の司令官は愕然としており、島風さんたちは笑いを堪えている。
「いやあの、司令官は私じゃなくて……」
「そうなんすよ~。この娘が私たちの提督で~」
「真面目で頼りになるんですよ~、ちょっとドジなんすけど~」
「ちょっ……! 二人とも!」
ここぞとばかりに勘違いに乗っかる島風さんと望月さん。完全な悪ノリだ。
と、ここでフリーズから立ち直った司令官が二人を止めようとする。
「はっ!? おい、お前らいい加減に……」
「ん? なんだ、お前たちの飼い猫か? おーよしよし可愛いなー。名前はなんていうんだー?」
摩耶さんがその豊満な胸に司令官を抱きかかえた。
「むぐっ!? むぐーーーーっ!!!(猫扱いすんなーっ!)」
胸の圧力にのまれながら、司令官は思い切り叫んだ。
「悪い! アタシってばとんでもない勘違いを……!」
しばらく経って、執務室に入った摩耶さんは両手をついて司令官に謝った。
「もう気にしてないよ。確かに傍から見たら完全に猫だし、提督としてのオーラ的なのもなかったみたいだけど。別にっ、全然っ、気にしてないから……っ」
「めっちゃ気にしてるじゃないですか」
「それでもだ。このままじゃアタシの気が済まねえ。せめてもの詫びとして、雑用でもなんでも申し付けてくれ」
「……わかった。そこまで言うなら……」
そう言って司令官は、私たちにある任務を下した。
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「バリバリヨロシクー!」
「パラリラパラリラー!」
特攻服を身に纏い海面を走り回るイ級たち。
大勢で騒音を掻き鳴らすその姿は、さながら暴走族だ。
この集団の撃退。それが今回の任務である。
「おー、こりゃまた派手にやってるなー」
「摩耶さん! みんな! 行くよ……ってうわあっ!?」
私たち四人の前に、突然一体のイ級が猛スピードで突っ込んできた。
「危ない!」
すんでのところで摩耶さんが私を抱え横にすっ飛んだ。
もう少しで轢かれるとこだった。
「大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます……」
「オラオラドケドケ! ボーットシテタラ怪我スルゼ!」
「危ない! 危ない!」
その後も何度も突っ込んでくるイ級たちの猛攻に、私たちは手も足も出ない。
何より、避ければ避けるほど体力が削られていく。
「はぁはぁ……、やべえ。あいつら加減ってもんを知らない……」
「ううっ……、危険運転禁止~~……」
望月さんたちもその場にへたり込んでしまった。
「ハッハー! 何人タリトモ俺タチノ前ハ走ラセネエ!」
「ずいぶん威勢がいいな。肩慣らしにはもってこいだ」「摩耶さん」
私たちの前に、摩耶さんが立った。
あれだけ動いたのに、息一つ切らしていない。
「後はアタシに任せて休んどけ」
「フン。女ナンカニ俺タチハ止メラレナイゼ」
「ヤッチマッテクダセエ! 総長!」
リーダー格であろうイ級が摩耶さんに向かって飛び掛かる。が!
「でりゃあっ!」
摩耶さんは攻撃を避けず、そのままイ級の身体に砲弾を撃ち込んだ。
「ギャアアアーーッ!!!」
砲撃を受けたイ級は大爆発を起こして、その場に倒れた。
「「「「「総長―ッ!」」」」」
「凄い……」
たった一発でイ級のリーダー格をやっつけてしまった。
これが重巡洋艦の力……。
「ソンナ! 俺タチノ総長ガ一撃デ……」
「ヤベエヨ……、マジ半端ナイッテ……」
「さーて。次の相手はどいつだ?」
「「「「「!?」」」」」
頼みのリーダーがやられ、萎縮してしまった様子のイ級たちは……。
「「「「「スイマセンッシター!!!!!!」」」」」
倒れた総長を抱きかかえると、速やかに逃げて行った。
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「……どーだ。アタシってすげえだろ?」
「すごかった!」
「全くだ!」
「「揺れるおっぱいが!」」
「そこじゃねえだろ!」
的外れの感想を告げる望月さんと島風さんに、摩耶さんは顔を赤らめながら突っ込んだ。
この二人は相変わらずだなー……。
「ったく……」
「あの、すみません。あの二人いつもこんな感じで……」
「別にいいよ。賑やかな方が好きだし。それより、これから一緒に頑張ろうぜ」
「……はい!」
新たな仲間を迎え、ネコ艦隊はもっと強くなる。
私はそう確信しました。
ネコ「お前ら摩耶の胸の話ばっかするなよ」
望月「そういう司令官だってあんな大きな胸に押し込まれてラッキーとか思ってるんだろ」
ネコ「そそそそんな訳ないじゃん……」
吹雪「めっちゃ動揺してるじゃないですか」
大きい胸には、男のロマンが詰まってるんだよ。