「提督が主役なのに、あんま出てないじゃん!」
ということで今回はちょっとネコ提督の動かし方変えてます。
私たちが普段いる鎮守府は、海沿いの小さな港町にある。
昔は漁業が盛んな町だったらしいが、近年は深海棲艦の横行で滞ってしまっている。
それでも、この町の人たちは慎ましく暮らしていた。
ある日の昼下がり。私と司令官は鎮守府近くにある商店街にやって来ていた。
そのお目当ては……。
「おや、いらっしゃい吹雪ちゃん」
「こんにちはおばさん」
商店街の中心にある昔ながらの惣菜店。店主のおばさんに挨拶をする。
「猫ちゃんもついてきてくれて、ありがとうね」
「にゃ、にゃーん……」
ここでは司令官は普通の猫のふりをしている。
猫が喋ってその上艦隊の提督だと知られれば、大きな混乱を招くためだ。
「はい。いつもの。コロッケ四つね」
「ありがとうございます」
この店のコロッケは、外はサクサク、中はホクホクしていてとても美味しい。
一口でその魅力にはまった私たちはちょくちょくこの店に買いに来て、すっかり常連になってしまっていた。
ちなみに司令官は食べられない。猫の苦手な玉ねぎが入っているから。
『人間の時は食べられたのに。理不尽だ』。そう司令官は不満を漏らしていたが。
「吹雪ちゃん達が来てくれたおかげで、ここらの深海棲艦も減って、大助かりだよ」
「いえいえそんな……」
「店の前の品をしょっちゅう盗ったり、シャッターに落書きしたりしてて困ってたんだよ」
(そんな悪さしてたんだ……)
あまりにもやり口が小さくて驚いた。いや悪事には変わりないんだけど。
「ばあちゃん」
すると、店の奥から小学生くらいの男の子が出てきた。
「洋助」
「お孫さんですか?」
「ああ。普段は遠くで暮らしてるんだけど、連休中にここに遊びに来てるんだよ」
洋助くんはこちらまで駆け寄ってくると、私たちに向かってぺこりと頭を下げた。礼儀の正しい子だ。
「ばあちゃん。今晩のおかず何?」
「そうだねえ、野菜炒めでも作ろうかね」
「……また野菜炒め? 僕、オキナダケが食べたいよ」
「ごめんね。あれは今、手に入らないんだよ」
「オキナダケって?」
私の問いに対し、おばさんは優しく教えてくれた。
「向かいにタケトリ島っていう島があるんだけどね。そこで採れる竹の子で、凄く美味しいんだよ。この子はそれで作った竹の子ご飯が大好物なんだ」
「へえー」
「昔は町の皆でよく採りに行ったんだけど、今はその島に深海棲艦が棲み着いていてね。危険だからって誰も近寄らなくなったんだ」
「そうなんですか……」
「……あっ、そろそろ夕飯の買い物に出かけないと。じゃあ吹雪ちゃん、猫ちゃん、またいらっしゃいね」
「あ、はい。洋助くんもまたね」
私がそう言うと、彼も手を振って見送ってくれた。
鎮守府への帰り道。
「司令官、どうにかならないでしょうか?」
「そうだな。あの店にはいつも世話になってるし……よし!」
「というわけで、おばさん達の為に皆で竹を採りに行くぞー!」
「「いってらっさーい」」
「お前らも行くの!」
ぶうたれる島風さんたちに、司令官はこう口付けした。
「えーいいのかなー? オキナダケってあの店のコロッケより美味しくて、しかも見つけてくれたらたらふく食っていいって言われてるのになー?」
「よっしゃ行くぞオラァ!」
「やってやるぞこらー!」
「ふ……、計画通り」
単純というかチョロいというか……。とにかく私たちはオキナダケを手に入れるために、タケトリ島へ向かうことになった。
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旗艦の摩耶さんの肩に司令官を乗せ、海を渡る。
船のスピードに振り落とされそうになりながらも、必死に食らいつく司令官。
「大丈夫か提督? 気を付けてくれよ?」
「お、おう! しかし、これはなかなかいいな。風が心地いいぜ」
「呑気な奴……」
「でも、司令官連れてきて大丈夫だったんでしょうか?」
「オキナダケについて知ってるみたいだし、何よりついて行きたいって言ったのが他でもない提督本人だからなぁ。……ま、深海棲艦が出るっつっても駆逐艦だけらしいし、今のアタシらなら余裕だろ」
確かにタケトリ島は鎮守府から三十分ほどの場所にある。比較的近い距離だし、危険は少ないかもしれない。
と、そんな話をしているうちに…。
「見えてきたぞ、タケトリ島だ!」
巨大な島が現れた。
周囲を深い森に包まれ、中心には山頂がとんがった大きな山がある。
「いかにも竹の子採れますって感じの島だなー」
「でっかいねー」
幸いにも敵の反応はない。司令官の号令に従い、島に上陸する。
草をかき分け、山の中に入ると、そこには溢れんばかりの竹の子が生えていた。
「これが噂のオキナダケ……」
「よーし! いっぱいとるぞー!」
私たちは手分けして、その竹の子を採っていった。
数分後。
「結構採れましたね」
「そうだな。よし、帰るか!」
大量のオキナダケを手に入れた私たちは、意気揚々と島の海岸に戻った……。
「ア」
「あ?」
そこで私たちを待ち受けていたのは三つの影。
二体の駆逐イ級、そして生物の顔のような帽子を被り、黒いマントを身にまとった女性。
空母ヲ級。おそらく、最強クラスの深海棲艦だ。
「…………」
あまりのプレッシャーに、動くこともできない。
やがて、意を決したように司令官が口を開いた。
「……おっ、お疲れ様です!」
「「「「「「「!?」」」」」」」
この状況で混乱しているのか、ヲ級に敬礼する司令官。
それに対して、ヲ級はというと。
「…………オツカレ、サマ?」
「「「「「「「ノッた!?」」」」」」」
意味が通じているのかわからないが、こちらに敬礼を返してきた。
速やかにそこから退避する。
ヲ級たちが見えなくなると、司令官たちは口々に喋りだした。
「……あーびっくらこいた……」
「『びっくらこいた』って今日日聞かねぇな」
「しかしあんな大物さらっと出すかね普通?」
「ガチの戦闘回でもないのに気合い入れすぎだよねー」
「とっ、とにかく、急いでこのオキナダケをおばさんの所まで届けにいきましょう?」
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町に戻ると、港で町の人たちが待ってくれていた。急に総出で出撃した私たちを心配してくれたようだ。
おばさんに事情を話しオキナダケを渡すと、おばさんはとても喜んでくれた。
「艦娘のお姉ちゃん、ありがとうございます」
「洋助くん」
「よーし! 今日は皆でオキナダケご飯だ! 腕によりをかけて作るからね!」
町の人たちから歓声が沸き起こる。
「いっぱい食べるぞー!」
「あっ、猫ちゃんは食べれないよ。うちの竹の子ご飯には玉ねぎが入ってるからね」
「……理不尽だーーっ!!」
司令官の悲鳴が町中に響き渡った。
吹雪たちが去った後……。
イ級A「イインデスカヲ級サマ」
イ級B「アイツラハ艦娘。我々ノ敵デスヨ?」
ヲ級「エ、ソウナン? 全然知ラナカッタワ」
A・B「ヲ級サマ!?」
ヲ級「ジャアソロソロ……」
イ級A「アイツラヲ倒シニ行クノデスカ?」
ヲ級「イヤ久シブリニ外出テ疲レタカラ帰ルネ」
A・B「ヲ級サマーッ!?」