望月「な、なぜそれを!?」
ネコ「島風に聞いた」
望月「島風! お前……!?」
島風「フッ、悪く思わないでよ? だって自供したら帰ってきた後のアイス、倍にしてくれるって言うからさ?」
望月「裏切り者―っ!!」
欲望は時に人を惑わせる。恐ろしいもんですね。
こんな二人はほっといて、第六話どうぞ!
先日。タケトリ島でばったり遭遇した空母ヲ級。
駆逐艦しかいないはずの海域に現れた彼女に、私たちは何もできずに撤退した。
この状況を重く見た海軍本部は、艦隊の戦力増強のため新たに二人の艦娘を配属させたのだけれど……。
「「…………」」
昼下がりの執務室。司令官の前に立つ二人からは、何とも険悪なムードが流れていた。
「あ、あの……? 軽巡洋艦の大井さんと北上さんでいらっしゃいますよね?」
「……はい」
「……うん」
この空気にすっかり委縮してしまった司令官は敬語で二人に質問するが、
「な、なんでそんな不機嫌そうにしてらっしゃるんでしょうか……?」
「知らないわよ。隣のバカにでも聞けばいいんじゃない?」
「ハッ、君だけにはバカ呼ばわりされたくないんだけど」
「何ですって?」
「何だよ」
「「…………」」
互いを睨み、今にも爆発しそうな二人。
そして、それを見た司令官は、
(こ、怖いよお! 助けて吹雪~!)
と言わんばかりに私を涙目で見つめていた。
いや。これは私でも止められないですよ……。
すると、大井さんがふっと溜息をついた。
「……もういい。私、部屋に戻ります。この人と同じ空気吸いたくないので」
「同感だね。じゃ、私も食堂行ってくるかな」
「あっ。ちょっと……!?」
そう言い残すと、二人は足早に執務室から出て行った。
しばらくして、司令官がボソッと呟いた。
「主役降板したい」
「そんな怖かったんですか!?」
「何だあれ……話が違うぞ!? 書類には『二人は滅茶苦茶仲がいい』って書いてあるのに!」
「喧嘩でもしたんでしょうか?」
予想外の事態に、司令官は頭を抱えた。
「……こりゃヲ級どころじゃないな……」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
大井さんと北上さんが配属されてから三日。あの日以来、二人は互いを無視し、目も合わせないようになっていた。
取っ組み合いの喧嘩をするわけではないので物的被害はないものの、間に流れる空気は重く、近寄りがたいものであった。
戦力増強の為に呼んだのに、このままでは艦隊行動にも支障が出る。
あの人が現れたのは、そんな時だった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……何これ?」
執務室の前に高さおよそ二メートルほどのボックスが建っていた。入り口には分厚いカーテン、その上には『鎮守府お悩み相談室』と書かれている。
「ただの証明写真機よね……?」
大井がそれを怪訝そうに見つめていると、後ろから何やら話し声が聞こえてきた。
「あーっ、あれ見てくださいよ~。お悩み相談室ですって~」
「アタシ知ってる~。あの中にはどんな悩みでも聞いてくれるカウンセラーがいて、悩みに対して的確なアドバイスをしてくれるんだぜぇ~?」
「へえ~!」
「あと完全防音で、料金もタダなんだぜぇ~?」
「うっそー。マジヤバくないですか~?」
「ワイルドだろぉ~?」
……どうにも胡散臭い内容だったが、『どんな悩みでも聞いてくれる』という言葉に、少しばかり興味を惹かれた。
「……一回だけ入ってみようかしら……」
半信半疑でカーテンをくぐる。
丸形の椅子に座ると、目の前のスクリーンに男性の顔が映し出された。
「どうも初めまして。カウンセラーの美輪ニャキ宏です」
そこにいたのは金髪ロングに派手な化粧をした女装姿の男性だった。
(やっぱり相談するの止めよう……)
「ちょ、ちょっと待って、出て行こうとしないで! 大丈夫! 全然大丈夫だから!」
何が大丈夫なんだろうか。外見から見ても怪しさプンプンなのだが。
「とにかく、話だけでもいいからお……、私に聞かせてくれない?」
「…………」
まあ話すだけなら……と、大井は渋々応じることにした。
「……実は、仲の良かった恋人とつまんない事で喧嘩してしまって……」
「こ、恋人?」
「ええ。恋人です」
「そ、そう。で、その喧嘩の内容は?
「この鎮守府に来る数日前のことなんですけど……。
私、その日はとにかくお腹が空いていて。冷蔵庫の中をあさっていたら、すごくおいしそうなプリンがあったんです。思わず手に取って食べていたら、彼女が楽しみにとっておいたやつだったらしくて。
普段滅多に怒らない人なんですけど、その時ばかりはすごく怒って。必死になだめたけど全然止まらなくて。
そしたらこっちも段々腹が立ってきて、売り言葉に買い言葉でどんどん盛り上がっちゃって、気が付いたら口も聞けない状態になってたんです」
「なるほど」
「今にして思えば、なんて馬鹿な事したんだろうと……。私、このままじゃ嫌なんです。どうすればいいんでしょうか?」
「……これを見て。数時間前にいらっしゃった相談者の映像よ」
スクリーンの画面が変わった。そこに映し出されていたのは……。
「北上さん!?」
『実は友達とつまらない事で喧嘩してしまって……』
画面の北上は、大井と同じような悩みをカウンセラーに打ち明けていた。
『今にして思えば、そんなに怒ることじゃなかったな、って……』
最初に怒った北上も、今回の出来事に心を痛めているようだった。
「大事なのは誠意を持って謝ること。相手の目を見て、心を込めて謝れば、完全に元通りとまではいわなくても、いい方向に向かうんじゃないかしら」
「……カウンセラーさん」
「美輪ニャキ宏よ」
「ニャキ宏さん。ありがとうございます」
大井は深く頭を下げると、ボックスを飛び出していった……。
「……これでうまくいきますかね?」
走り去っていく大井さんを見つめながら、私は女装カウンセラーに扮していた司令官に問いかけた。
「わからないわ。でも、あの様子だったら何とかなるんじゃないかしら」
「提督。まだ女言葉になってるぞ」
「おっと」
サクラに協力してくれた摩耶さんに突っ込まれた司令官は、慌てて口に手を当てた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「北上さん。あ~ん♪」
「あむ。……美味しい。大井っちも食べなよ」
「はい♡」
翌日の食堂。そこには仲良くプリンを食べあう大井さんと北上さんの姿があった。
どうやら仲直りには成功したようだ。
「一件落着ですね」
「だな。やっぱり仲がいいのはいいことだ」
幸せそうな二人を見ていると、こっちも嬉しくなる。
「さーて、じゃあ次は……」
「オラオラオラオラーッ!」
「無駄無駄無駄無駄―ッ!」
「……こっちの喧嘩を止めないとな」
振り返ると、そこで繰り広げられていたのは地獄のような光景。
望月さんと島風さんが目にも見えないスピードでパンチの応酬を繰り広げていた。
今回出てないと思ったら、前書きからずっと裏で喧嘩してたのか……。
食べ物の恨みって恐ろしいんだな……と、私は改めて思った。
望月じゃないですけど、ほんとに死人が出るくらい暑い日が続いてるので、皆さんも熱中症には気をつけてくださいね!