ジリリリリ!
けたたましい音を立てて目覚まし時計(母がすぐに起きれるように、と買ってきたかなり甲高い音が鳴る時計だ)が鳴る。なんとか布団から這い上がり、その音を止めようとするが、なかなか捕まらない。そう、実はこれ、音を止めるまで部屋中を縦横無尽に転げまわる悪魔のような時計なのだ。その音で目を覚ました者は、嫌がおうでも布団から起き上がらなくてはならない。この少年、「下崎 優馬」も例外なく布団から引っ張り出される。
「…ねむ…」
目覚まし時計を止めながら言った彼の目はスッキリ覚めている。
「…夢…」
そう言いながらも彼はテーブルに目を向ける。そこには奇妙な文字のような、記号のような、絵のようなモノが書いてある栞のようなものがある。
「じゃないよな…」
それは昨夜、銀髪のシスターからもらったものだった。紛れもなく、
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4月6日、高校の入学式の前の日。すなわち、あのシスターと出会った日。彼は空腹で倒れていたシスターに菓子パンを分け与えそして噛み付かれた。
その数分後…
「で?」
「なに?」
「『なに?』じゃねえーよこのやろう! いきなり人の腕に噛み付きやがって! 犬かお前は!!」
「むっ! 人を犬呼ばわりするなんて! あなたこそ躾がなってない犬みたいだよ!」
「んだとこらぁ! そんな格好でうろつくやつにいわれたかねえわ!」
「そんな格好ってどういうこと!? これは神聖なものであって…。ってあなたが理解できるような代物じゃないけどね! ふふんだ!」
「っな…! 馬鹿って言いたいのか! 俺を馬鹿って言いたいのか!」
「まあそれはともかくとして…」
「おい! なに話変えようとしてんだ」
「ありがとう」
「…え?」
「あなたが食べ物分けてくれなかったらあのまま死んじゃうところだったんだよ!」
「お…おう」
割とすんなりと少女の口から発せられた言葉は、少年を少し赤面させた。素直で真っ直ぐな言葉とはそういう物なのだろう。恥ずかしさに少年が少女の顔から目を背けていたため、下崎 優馬は、彼女の表情が深刻な面持ちに変化したことを悟れなかった。
「行かなきゃ…」
「え?」
「食べ物の件はありがとう! あたし行かなきゃ!」
「お…おう! 今度は行き倒れたりすんなよ!」
優馬は安心した。
よかった。
彼女にも
それがわかっただけで疑問が晴れた気がした。
『
「そうだ!」
彼女はなにか思いついたような表情を浮かべた。
「紙とペンある?」
「え? ああ…ほらよ」
彼女にノートとボールペンを渡すと、彼女は器用に紙を栞のような長方形に切り取った。そしてなにか不可解な記号、もしくは文字を書き始めた。数秒後…
「…できた!」
「‥‥‥」
「これさえ持ってれば安心だと思うよ!」
「なにこれ?」
「これは…お守りっていたほうが一番近いかな?」
「油性のインクで書かれたお守りなんて聞いたことねえぞ…おい」
「む! さては馬鹿にしてるね!? いい? これはルーンとか古代文字、象形文字などを組み合わせた一番手軽で便利なものなんだよ!? そもそも――――」
(ああ、なるほど。こういう系が好きな女子か。シスター服なのも納得。……ってかお守りならシスターじゃなく巫女さんじゃね?普通)
そんなことを考えている間に彼女の説明が終わる。
「というわけ! わかった!?」
「え? ああ‥‥‥だいたいな…(んな長ったらしい話聞いてられっか!)」
「それじゃあね! それさえ持ってれば大丈夫!」
そう言って彼女は駆け出す。
「大丈夫って…」
「少なくとも命の危険はないよ!」
「……行き倒れからは守ってくれよ‥‥‥」
少年は微笑を浮かべ、家路へと戻る。
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そして今。
優馬は学生寮を出たところ。4月にしては暑い日差しが照りつけている。
『今日の最高気温は平均24℃。先週よりも気温が高い日が続きそうです。十分に水分をお取りになってください。新入生の皆様は事故にあわないよう――』
学園都市上空を飛ぶ飛行船のディスプレイからアナウンサーの声がする。
「よし! 行くか!」
自分に喝を入れ、少年は歩き出す。ポケットに彼女のお守りが入っている。それだけで、いつもより良い一日になりそうな予感がしてならなかった。
下崎 優馬 15歳。
今日から高校生活の始まりである。
みなさんお久しぶりです。
やっと忙しさから解放されました。
これから投稿頑張ります。
次回、ついにあの人が…!?