魔法科高校の魔法使い   作:独辛

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劣等生にでてくる用語難しすぎるだろっ!




入学編ー1

 

 

ーー魔法

 

この言葉が実際に存在する現象を指すものとして世間に認知されてから、約1世紀の時が過ぎた。

 

開示された情報と、非現実的なその響きに当時の人たちはさぞ困惑したに違いない。しかしそれも昔の話だ。この1世紀に渡る時間の中で歴史は積み重なり、同時にそれが日常とかした。

 

今では、そういった人がいる(・・・・・・・・・)程度の認識だ。

 

そんな魔法を行使出来る者達のことをこう呼んでいる。

 

ーー魔法師

 

これは魔法適性があるものを指すものではない。魔法を実用(・・)レベルで使用できる者たちの総称だ。ここでいう実用とは、先の第三次世界大戦を振り返れば明らかだろう。

 

世界はあの日を機にして変わったと言っていい。

 

魔法師とは兵器であり”核”である。

即ち、優秀な魔法師の数が国力そのものであると。

 

故に各国は魔法師に大きな投資を働くのだ。より多くの兵器を作るために。

 

 

✳︎

 

【国立魔法大学付属第一高校】 通称【一高】と呼ばれるその高校には、昔からの忌むべき伝統が存在する。

 

「ねぇ、あれ見てよ」

「え? ……うっわ〜アレ新入生でしょ? 気合い入れちゃって馬鹿みたい」

「それにこんな朝早くくるなんて……所詮、雑草(ウィード)なんて私達の補助品(スペア)でしかないのに」

 

一高の校門を潜り抜けて直ぐ。早い時間に来たこともあり、登校している生徒が少ない中だからこそ、その声は僕の耳に届いた。

2組の女学生が騒いでいる。なにやらベンチに座る男子学生を見て声をあげているようだが、ベンチの彼にとっては残念なことに、色めきだっているわけではなさそうだ。

その目には明らかな嘲笑の色が見てとれる。アレをみて喜ぶのは相当のレベルの紳士に違いない。

 

ふと、視線を男子学生に移す。至って無表情ながらも、若干眉間に皺がよってると見えなくもない。どうやら彼は至ってノーマルなようだ。

 

「ねぇ」

「ん?」

ポーッと考察をしていると、気づかないうちに先程の2人組が近づいて来ていた。まさか僕にまで何かする気だろうか。入学者日からなんてツイてないのだろうか。

自分の運のなさに絶望していると。

 

「君、新入生でしょ?」

「まぁ、そうですね」

「ね、ね。私達二年生なんだけどさ、良かったら学校案内してあげるよ!」

 

その時、彼女達が僕の左肩に視線を向けたのを僕は見た。

成る程、このエンブレムがさっきの言葉の意味か。しかしなんて表面的な評価だろうか。たったこの紋様一つでその人物の評価を決定付けてしまうとは。

 

別にこの学校の評価基準に文句を述べるつもりはないが、その評価を絶対視する彼女らには、同意しかねる。

 

上部だけで人を見る人間は男を選ぶのも外見重視のアクセサリー感覚で選別している人が多い。この人たちがそうであるかは知らないが、今のを見ていてこの人たちに案内をお願いしたくはならなかった。

ここは、丁重にお引き取り願おう。

「申し訳ありません。連れと待ち合わせしてるんです。ほら、そこに見える男子」

「え、あの子?」

「でもあれって……」

「まぁ、おっしゃる気持ちは理解できますが。 でも僕にとっては中学からの付き合いでして」

 

あはは、と苦笑いを入れる。これによってしょうがない感を出すのが波風立てないポイントだ。

 

 

「そっかー。んじゃしょうがないか!」

「残念だけどまた今度だね。 あ、入学おめでとう! 君も一科生として頑張ってね!」

「……一科生ね」

 

 

手を振りながら去っていく先輩方に手を振り返しながらもひとりごちる。

現代魔術にそれほど詳しくなかった僕が入試試験で得点を取れたのは間違いなく教師役がよかったからだ。後でさくらさんにお礼の手紙を書こう。

 

 

ま、今はそれより目の前の問題を片付けよう。どうやら先程の会話は彼の方まで届いていたらしい。

先程から、こちらをずっと見ていた。

 

 

「さっきはすいません。 突然のことで、つい目に付いたのが貴方だったので」

「気にしていないさ。しかしよかったのか? せっかくのお誘いを断って」

「ええ。それにいきなり異性の、しかも先輩方相手では僕も緊張してしまいますよ。 やはり最初は難易度低めに同性の友達から作りたいな、と」

 

 

目の前の男子生徒は無表情ではあったが、どうやら先程のことは気にしていないらしい。案外さっぱりした性格なのかもしれない。

しかし初対面でこっちを軽くからかってくるとは、どうやら見た目に反して茶目っ気もあるみたいだし女子にモテそうな人だ。

是非ともお近づきになりたい意思を伝えてなぜか引かれでしまったが。

 

 

「そ、そうか。 自己紹介が遅れたな俺は司波達也。 気軽に達也と呼んでくれればいい」

「OK達也。 僕は芳乃清隆、こっちも清隆でいいよ」

「そうか、よろしく清隆。 ところで今日は随分と早く来たんだな」

「まぁね。 なにせ島から引越ししてきたんだけどまだ部屋に荷物が届いてなくて。 暇だからこうして早くきたってわけさ」

「島? 本島出身じゃないのか?」

「そうだよ。 月読島っとこなんだけど知ってる?」

「いや……聞いたことがない。 1度聞けば忘れそうもないからな」

「だよね。 ウチの島って割と都会的というかなんというか」

「いいことなんじゃないのか?」

「それがそうでもないんだよ。 離島っていうのはやっぱり本島にはない野生的かつ自然の息吹を味わいたい観光客が多いわけだけどさ。 月詠島は何故か本島とそう変わりない発展のおかげで全然そういう気分が味わえないわけ。 だから観光客もほぼなし、いてもマングローブ林への探索隊」

 

 

改めて島を思い返すと本当に何もない。いや、物はあるんだけど島の特色とか特産物とかが思い浮かばない。 島周辺を囲む海は綺麗だけどそれを言ったらどこの離島も一緒だ。

これは僕の地元愛が足りないわけではないと、弁護しておきたい。

 

「だが、やはり空気の透明度は違うだろう。島の潮風や木々の匂いは独特のものだと思うぞ」

「フォローありがとう。でもさ、達也は空気の透明度や潮風を感じるためだけにわざわざその島に行きたいと思うかい?」

「いや……それは」

「つまりそういうことさ。 しかし潮風や木々の匂いなんてよく思いついたね。 達也ってもしかして島出身だったりするの?」

「いや、俺は本土出身だ。 昔、家族で旅行に行ったことがあるだけだ」

「成る程ね」

 

 

適当な会話をやりとりしていると、時間もだいぶ過ぎてきた。僕達と同じであろう新入生が真新しい制服に身を包んでいる。

 

 

「しかしこう見ると一目瞭然だね」

「なんのことだ?」

「ん? いやね、一科生は堂々と胸を張りながら我が物顔で中央を歩いてるのに対して、二科生は周りの目を気にしながら隅を歩いてる奴らが大半だと思ってね」

「……それだけ意識的格差というものは根強いということだろうな」

「……かもね」

 

 

入学式前だというのに少しばかり暗くなる。島では差別なんて見たことなかったから、余計に現状をおかしく感じてしまう。勿論、1人の力でどうにかなるものではないが上辺だけで人を判断するのはやめようと改めて思った。

周りの生徒を見る中で、中庭に立つ時計が目に入った。

 

「っと。 僕はそろそろ講堂にいかなきゃ」

「なにか急ぐ用でもあるのか? 」

「ああ、新入生総代がかなりの美人らしくてね。できれば前列で近くから拝みたい」

 

 

スッ、と達也の目が一瞬細くなった気がした。

 

「……あまりそういうことに気があるほうじゃないと思ってたんだがな」

「そんなことはないさ。 僕だって健全な高校生だよ? 今まで彼女いない歴=年齢の人生だったんだ、そりゃあ多少はね」

「さっきは袖にしていたみたいだが?」

「言っただろ? まずは同性の友人を作りたかったって。それが達成されたんだ、次を求めてなにが悪いってね」

「……はぁ。 そうか俺はもう少ししてからにしよう」

「あれ? 達也は興味ないの?」

「なくはないが……これから同じ学び舎で過ごすんだ。急がなくてもいいと思ってな」

「実にクールな受け答えだ。 じゃ、僕は先に行くよ。また会ったらその時はよろしくっ」

「おう、またな」

 

 

さて、会話の流れで軽く走りながら講堂まできたがどうするか。

まず目につくのは通路を挟んで見事に分かれている一科生と二科生の団体。

しかし僕の目的と一科の席が合致したいる為、別段問題はない。さっさと席を確保しよう。

 

最前列が運良く空いていた。いや、運良くではないな。そもそも最前列は人気がないみたいだ。背丈の問題やら退場順やら不遇だからかもしれない。

まぁ、一般男子の平均より高い僕にはあまり関係ないことだが。

 

 

しばらく席でのんびりしていると、そろそろ入学式開始の時間まであと少しというところに来ていた。席もだいぶ埋まってきているしアナウンスがなんかがそろそろ流れるかもしれない。

そんなことを考えていると横から声がかけられた。

 

 

「すまない。ここは空いてるか?」

「ええ、どうぞ」

「すまない。助かった。もう席がどこも埋まっていて」

「なに。間に合ったんだからよしとしよう」

「それもそうだな。あ、自己紹介が遅れて悪い。 僕は森崎駿、よろしく頼む」

「芳乃清隆。 呼び方はお好みで」

「なら清隆でいいか? 僕も駿でいい」

「OK駿。 こらからよろしく」

「こちらこそ」

 

丁度互いの挨拶の区切りが付いたところで、照明が切り替わる。どうやらようやく始まるらしい。

まず、登壇したのは現生徒会長だという七草真由美。

なるほど、美人だ。

しかし何故かわからないが僕の直感はこう言っている。彼女に目をつけられると面倒なことになると。

 

よし、従おう。

僕はこの直感に幾度となく救われてきた。きっと今回も決して的外れではない筈だ。

 

七草会長の激励が終わり、次がいよいよ我ら新入生総代の登壇となる。

 

 

「では、続いて新入生総代挨拶。 司波深雪さん」

「はい」

 

 

それは透き通るような声だった。

艶やかな黒髪がさらりと風に流れて靡く。歩く姿は堂々としていながら、美しく慎ましい。そしてその人並外れた容姿は、その登場の仕方も相まってまさに美しいという言葉以外にない。

きっと彼女の周りは心を射抜かれた男達で埋め尽くされるだろう。そんな未来が容易に想像できてしまった。

 

すこし彼女に訪れる未来に同情していると、なにやら隣からポツリと声が聞こえた。

 

「綺麗だ……」

 

隣の駿も、どうやらやられてしまったらしい。

しかし彼女の可憐さは分かるが口を半開きでいるのはやめたほうがいい。少しばかり間抜けに見える。

 

 

肝心のスピーチの内容を覚えている人は、ほとんどいないだろう。それこそ、彼女の魅力に囚われなかったごく少数の人達以外は。もしかしたら、その数は両手の指で足りてしまうかもしれない。

達也なんかはその1人に入ってそうだ。

 

 

 

滞りなく式は終わり、次々と生徒が席を離れる。かくいう僕も早く行きたいのだが、後から入ってきた駿が移動しないことには出られない。

 

 

「駿、いつまで惚けてないで立ってくれないかい? もうすでにあそこに代表はいないぞ」

「あ、す、すまない! って別に僕は司波さんを見てたわけじゃ!」

「あ、そういうのいいからまず進んで。話はそれからだ」

 

尚も弁明する声は、IDカードが配布されるまで続いた。

 

 

 

✳︎

 

 

所変わってここは校舎内。何故だかぞろぞろと足音が異様に多く聞こえるのは決して耳の錯覚ではない。

なにせ10人あまりの生徒が、たった1人の少女の後ろをついていっているのだから。

司波深雪。

あの総代挨拶でたちまちこの学び舎のアイドルと化したそのカリスマ性は、やはり懸念通りの結果をもたらした。いや、まさかそこに同性まで加わるとは思わなかったが。

 

つまり現在その司波深雪をストーキング中というわけである。

正確には生徒会のメンバーと共に行動している総代が、解放されたところを狙うつもりだろうが。

 

正直、何故僕まで付き合っているのかわからない。

 

 

「駿、そろそろやめない? 足が疲れてきた」

「ダメだ。 まだ目的を果たしてない」

「目的ってなにさ。 ただ女生徒ストーキングすることが君の目的なら、僕はうっかりポリスメンを呼ぶことになるけど?」

「ち、違う! 僕はただ、そう! ただ同じクラスになったもの同士交流を深めようと」

「……なんで代表が同じクラスだと?」

「え? それはさっきチラッと見えたからだが」

「……ポリスメーーン!」

「ちょっ、清隆でかい! 声が大きいっ! やめ、やめてくれ、やめてくださいお願いします」

 

 

と、駿で遊ぶのもそろそほ本気で飽きてきた。そもそも生徒会はどこに向かってるのか。

 

 

「お兄様!」

 

お兄様、なんて素敵な響きでしょう。しかしそれを、現実で耳にすることになるとは思いもしなかった。思いがけないその言葉に、周りの者は発言者へと視線を向けた。

 

それはまるで、長年にわたり切り離されていた恋人との再会のようなワンシーンだった。

咲き誇らんばかりの笑顔で駆け寄る乙女。

少なくとも、司波深雪の方はこれ以上ない笑顔でその”お兄様”との会合を喜んでいた。

 

 

「お兄様、お待たせしてお申し訳ありません」

「早かったね」

 

その声で、ふと気づいた。

達也じゃないかと。

 

 

「成る程2人は兄妹だったのか。 しかしなんだな、距離感が恋人のソレに近い」

「どこがだ! 司波さんの兄が雑草(ウィード)だって!? 釣り合ってないにも程がある」

「そんなこと言っても血縁関係は変わらないでしょ」

「……僕は認めない。 アイツは司波さんの兄に相応しくない」

 

思わず、お前は司波深雪のなんなんだと口にしてしまいそうになったがすんでのところで抑えた。

余計にややこしくなりそうだ。

 

 

これ以上駿が暴走する前にと、彼を引きずりながら今日は退散した。収穫といえば駿のあしらい方くらいか。

本当に足が疲れた。

✳︎

 

 

翌日も滞りなくオリエンテーションは終了した。教室の空気は未だにぎこちないが、それもあと数日すれば気にならなくなるだろう。

さて、今日は早めに帰ろうと思い鞄を手に取ったところで思い出した。

職員室に用があるんだったと。

 

 

「では、これは顧問の先生に渡しておく」

「お手数おかけして申し訳ありません。どうかよろしくお願いします」

「うむ。それにしても入学2日目にしてもう入部届けとは驚いたよ」

「ここに来る前からしていたこともありまして、続けたいと決めていたんです。 それでは」

「ああ、勉学の方も頑張りたまえよ」

 

 

要件があった先生は残念ながら不在だった。そのため在中していた他の教員に剣道部への入部届け(・・・・・・・・・)を渡してきたが、どうやらここまで早いのは自分が初めてらしい。少し驚かれてしまった。

 

しかし剣道は続けなければならない。己の鍛錬はもちろんのことだが、剣の師匠であるなぎささんに鈍っていると知られたらどうなることか。怖くて想像もできない。

あの人、剣道だけには鬼になるからなぁ。

 

すこし感傷に浸りながら窓の外を見ると、なにやら人だかりができている。なにやら揉めているらしく、あまりよろしい空気ではないみたいだ。

しかもその位置が悪い。なぜ校門で問題を起こすのか、これでは帰りたくても帰れない。

無視して帰ろうにも、最悪なことにその問題の中心に駿がいるのが見えたのだからもうお手上げだ。僕は仕方なしに解決へ奔走した。

 

ある部屋の前で一度呼吸を整え、身なりを正す。

ノックを2回、響くように叩く。

 

 

「どうぞ」

 

女の人の声に促され、中へと入る。

 

「失礼します。 1-Aクラス所属の芳乃清隆です」

「はい、こんにちは」

「こんにちは」

 

部屋を見渡すと、どうやら生徒会長ともう1人だけらしい。他は出払っているようだ。

「新入生が入学早々自発的に生徒会室とは珍しい。なにかあったのか?」

そのもう1人であるボーイッシュな女性が、今必要な問いかけをしてくれた。

「はい。 校門前にて一科生と二科生の争いが勃発。他生徒も足止めを食らっている状態です。 この学校は生徒による自治運営が推奨されているとオリエンテーションで聞いていた為、生徒会へと参った次第です」

 

「なにぃ!? まだ2日目だぞあのバカどもがっ」

「すぐに向かいます」

そう言ってからの行動は早かった。手早くCADを装着すると、こちらに一言お礼を言ってすぐに現場へと急行して行った。

 

「報告ありがとねっ」

美人のウィンクはやはり様になる。しかし、全然トキメカないのは何故だろう。

ま、なにはともあれこれで帰れる。

 

案の定、ゆっくり歩いて玄関に向かった頃にはすでにあの団体の姿はなく、駿も見えない。

さて帰ろうと校門をくぐった時に、思わぬ伏兵がいた。

 

「清隆?」

「ん?」

 

そこには昨日知り合った達也と妹の司波深雪。そして他数名の皆様。

おそらく今まで達也と司波深雪を中心に会話していたのであろう。その中心人物がいきなり見ず知らずの人物名を呼んだものだから皆さんしっかりとこちらを向いている。

目は誰と問いかけてきている。

 

「達也か。 いきなり声をかけられるから誰かと思ったよ」

「すまない。 丁度視界に捉えてたものでな。迷惑だったか?」

「そんなことはないさ。 それよりもいいのかい? 僕なんかの相手をしていて」

 

暗にその子達の相手で手一杯だろ? 僕は帰らせてもらうよ

という意思表示を込める。

しかしどうやら達也にそれは届かなかったらしい。

 

「ああ、すまない。 みんな1人俺の知り合いも誘いたいんだがいいだろうか?」

「俺は構わねぇぜ?」

「あたしも平気」

「私も大丈夫です」

「私とほのかも問題ない」

 

届かない”フリ”かもしれないが。

 

「私はお兄様がお決めしたことなら」

「そうか。みんなありがとう。と、言うわけだ自己紹介を頼む」

「はぁ、なにが『と、言うわけで』かは知らないが自己紹介はするよ。 1-Aの芳乃清隆です。 清隆と呼んでもらって構いません」

 

達也のペースに飲まれて自己紹介を済ませる。これは確実に一緒に帰らなきゃならないやつだ。ああ、今日は早く帰れると思ったんだがな。

 

軽く互いのことを紹介しわかったことは達也、レオ、エリカ、美月は二科生。司波、ほのか、雫が一科生で尚且つ同じクラスということ。しかし美月からは距離を感じるが、引っ込み思案な性格なのかもしれない。

そんな中で、エリカがどこか意地の悪い質問してきた。

「でもいいの〜? あたし達、二科生だけど」

 

どこか挑発めいてるというか、試している雰囲気の問いかけだが、今の俺はそれに付き合うだけの気力がない。

 

「そういうのはやってないんだ。バチバチしたいなら駿とでもやってくれ」

「……駿?」

「あー、森崎だ」

「げぇっ、アイツと知り合いなの!?」

「ま、達也と同じくらい付き合いは長いよ」

「まだ会って2日目で長いとは言わないな」

 

それにしても。

 

「2人が兄妹なら、あの時ついてこなかった理由に納得がいくよ。そりゃ席なんて確保しなくてもいいはずだよね、なにせ毎日特等席で見れるんだから」

「それはーー」

「なんのお話ですか?」

ひょっこりと、件の中心が顔をだす。

 

「いやさ、新入生総代は美少女だって噂があったから1番前で拝もうと思って達也も誘ったんだけど、あまり興味ないみたいだっから」

「そんなっ。お兄様は深雪に興味がない、のですね」

「まて誰もそうは言ってないだろう。 深雪、お前は俺にとってかけがえのない存在なんだ。他のなににも代え難いお前のことを、なんとも思ってないわけないだろう?」

「そ、そんなお兄様! “思っている”だなんて!」

『いってない、いってない』

 

 

そんななんとなく人となりが掴めた下校だった。

 

 

その中で途中、突然頭が痛いと俯いていた美月のことを清隆と達也だけはどこか、探るような目で見ていた。

 

 

✳︎

 

家に着き荷物を下ろす。

 

下校帰り際、美月と目が合った瞬間だった。彼女は突然蹲り、歩けなくなった。普通であればたまたまだと考えるかもしれないが、今回に限っていえばそれはないだろう。

霊子放射光過敏症。別名、見えすぎ病とも呼ばれるその症状は意識して霊子放射光を見えないようにすることができない知覚制御不完全症だ。

霊子放射光、つまり霊子の活動によって生じる非物理的な光に対し、過剰な反応を示しそのことが原因で体調不良、又は精神の均衡を崩すこともある。

おそらく彼女はそれだろう。このご時世で眼鏡をかけてるのなんてあの2人(・・・・)以外に見たことがない。以前あの人達に言われた。

 

『魔法師と呼ばれる者達と、私達では纏う魔力がまるで違う』

 

 

もし、彼女がこっちを見たのだとしたら。

 

彼女には、僕がいったいなににみえたのだろうか。

 

 

 

 

✳︎

 

 

帰りの間際に柴田が起こしたあの騒動。

まず間違いなく原因はあの()で清隆を覗いたことにある。

しかしあれがただの霊子放射光過敏症じゃないのは既に確認済み(・・・・)だ。

通常の霊子放射光過敏症は色まで見分けられるほど鮮明には見えない。可能性として考えられるのは古式魔法師にごく稀に出現するという水晶眼か。

 

精霊の源たる神霊を見ることができるというその眼を。

通常、精霊を使役する術者は術を介して精霊を見分ける。術者が自分の頭で分類して色を塗って居るので、実際の色調を識別できているわけではない。

しかし水晶眼は術を介さず、精霊の力量、性質の違いを色調の違いとして知覚できる。

もし、その眼を本当に持っているのならやはり彼女は危険だ。

可能性の話ではあるが些細な変化から答えに辿り着いてしまうことはありえる。それにーー、いや、今は優先度としては低い。それに彼女の性格上、俺達と敵対することはまずないとみていい。

 

それよりも。彼女が見たとする清隆にいったいなにがあるというのか。

 

これは恐らく俺だけが気づいていたことたが、彼女は頭痛など起こしてはいない(・・・・・・・・・・・・)

それはこの眼で視た()ことから間違いはない。

 

彼女は怯えていた(・・・・・)

 

 

どうやら少し、探る必要があるらしい。





人物紹介

さくら
D.Cに登場する芳乃さくらのこと。この物語では現代魔法の使い手になっています。

なぎさ
fortissimoに登場する鈴白なぎさその人。剣道バカ。どこでも迷子ちゃん。愛する人の為なら世界すら斬っちゃう人。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

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