新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
かつて、戦いがあった。
惑星サイバトロンに生きる変形能力を持った金属生命体、『トランスフォーマー』。
彼らは『オートボット』と『ディセプティコン』の二派に別れて果てしない争いを繰り広げていた。
星を焼き尽くすほどの戦いは、やがて次元を隔てた別世界、『ゲイムギョウ界』へと拡大した。
ゲイムギョウ界、そこは人の形をした人ならざる超常の存在『女神』によって統治される四つの国からなる。
すなわち女神パープルハートの治める『プラネテューヌ』。
女神ブラックハートの治める『ラステイション』。
女神ホワイトハートの治める『ルウィー』。
女神グリーンハートの治める『リーンボックス』。
これらの国々は争いを繰り広げていた時代もあったが、今では競い合いながらも『仲間』として尊重し合う、友好的な関係を築いていた。
トランスフォーマーたちは、女神やゲイムギョウ界の人々を巻き込んでもなお戦い続けたが、女神たちとの出会いと交流は彼らの中に
戦いの時代は終わり、平和が訪れたのだ。
今やゲイムギョウ界は、オートボットとディセプティコン、さらには人間とトランスフォーマーが共存する世界となった。
街を見ればかつては敵同士だったオートボットとディセプティコンが肩を組んで歩き、トランスフォーマーが変形能力を生かして働いていて、彼らのための店も増えた。
サイバトロンは両軍のトップであった総司令官オプティマス・プライムと破壊大帝メガトロンの指揮の下、復興が進みかつての姿を取り戻しつつある。
だが……今、新たな戦いが起ころうとしていた。
* * *
「オプティマァァス!!」
「メガトロォォン!!」
何処とも付かぬ荒野。
雷鳴轟く暗雲の下、二体の金属の巨人が死闘を繰り広げていた。
片方は、騎士鎧の如き丸みを帯びながら重厚な姿の、赤と青のファイヤーパターンが鮮烈な印象を齎す戦士。
もう片方は、こちらも騎士鎧のような意匠ながら刺々しく威圧的な姿で、左肩から突き出た角のような突起と顔の側面のマンモスの牙のようなパーツが特徴的な、灰銀色の戦士だ。
「今日こそ決着を着けてくれるわ!!」
「それはこちらの台詞だ!!」
両者は共に手に持った剣を振るい、全力で斬り合う。
灰銀の戦士が上段から斬りかかれば、赤青の戦士が盾で防ぐ。
赤青の戦士が横薙ぎに剣を振るえば、灰銀の戦士がカウンターとして蹴りを繰り出す。
地響きが起こり、大気が震え、火花が散る。
まさに一進一退の戦いだ。
「ハッ! 腕を上げたな、オプティマス!」
「貴様もな、メガトロン!」
鍔迫り合いを演じながら、赤青の戦士……オートボット総司令官オプティマス・プライムと、ディセプティコン破壊大帝メガトロンは互いに好戦的な笑みを浮かべる。
「はん……どうやら、向こうも一区切り付いたようだな」
「そのようだ」
一旦距離を取った両雄が分厚い雲に覆われた空を見上げると、一際大きな雷鳴が轟き雲の中から二つの光が降りてきた。
一方は紫、もう一方は青だ。
二筋の光はそれぞれ、人の姿になる。
紫の光は、深い紫の長い髪を二つの三つ編みにして、レオタードのような衣装を纏った凛とした美女に。
青い光は、燐光を帯びた薄青の髪を長く伸ばし、頭から二本の角が生えたやはりレオタードのような衣装の女性に。
二人は共に背中に翼があり、瞳には円と一本の線を組み合わせた紋様が浮かんでいた。
そして紫の女性はオプティマスの、青の女性はメガトロンの近くに降り立つ。
「ネプテューヌ。そちらもいい勝負のようだな」
「ええ。やっぱり彼女は強いわ、オプっち」
オプティマスと紫の女性……プラネテューヌを守護する女神ネプテューヌは、互いに微笑み合う。
「ふん、まだ倒し切れてなかったのかレイ!」
「おやおや、メガトロン。まだ終わらせてなかったの?」
メガトロンの傍に降りた青の女性……古の大国タリの女神にして今は彼の伴侶であるレイは、不敵な笑みを浮かべる。
彼女たちは、地上でそれぞれのパートナーが戦っていたように黒雲の中で戦いを繰り広げていたのだ。
「さあオプっち。もうひと踏ん張りよ」
「ああネプテューヌ! もちろんだ!」
「メガトロン、ここからが本番よ!」
「よかろう! 我らが負けるものか!」
両雄と二人の女神は宿敵を見据え、腹の底から声を上げる。
『
四人の声が重なった瞬間、ネプテューヌとレイの体が光の粒子に分解され、オプティマスとメガトロンの体に吸い込まれる。
そしてオートボットの司令官は虹色のオーラを、破壊大帝は稲妻のようなエネルギーをその身に纏う。
姿こそ変わらないが、彼らは今までとは桁違いのパワーを宿していた。
これぞ神機一体。
トランスフォーマーと女神の絆が最高まで高まったからこそ使える力である。
「行くぞ、メガトロン!!」
「来るがいい、オプティマス!!」
両雄は地を蹴って空へと飛び上がるや、エネルギーを込めた剣を振るう。
古代のプライムの遺産テメノスソードと、古の大国タリの剣がぶつかった瞬間、凄まじい光が辺りを包み込んだ……。
「お姉ちゃん、がんばってー!」
「司令官、しっかりー!」
そんな激闘を遠目から応援している者たちがいた。
セーラー服とワンピースが融合したような衣装に長く伸ばした薄紫の髪と深紫の大きな瞳が特徴的な童顔の美少女、プラネテューヌの女神候補生ネプギアと、背中に羽根のように配置されたドアが特徴的な丸っこい造形の黄色いオートボット、情報員のバンブルビーだ。
彼らの他にも大勢の人間やトランスフォーマーが両雄の戦いを見物していた。
そこに真剣な空気はなく、完全なスポーツ観戦気分である。
さもありなん、オプティマス、ネプテューヌ組と、メガトロン、レイ組が対戦するのは、これで実に10回目なのである。
「飽きないわねー、あの四人も」
「これまでの戦績はどっちも3勝3敗3引き分けですからね」
茶色い長髪に大き目のコートを着た小柄でやや鋭い目付きの諜報員の少女アイエフと、フワフワの髪を後ろで縛りフワフワのニットを着た柔らかい雰囲気の少女、看護師のコンパもドリンクを片手に呑気な調子だった。
「ま、あれがあのヒトらのストレス発散方法さね」
人間の子供ほどの大きさの四つ目のディセプティコン、レイの補佐役のフレンジーもプラプラと体を揺らす。
「オプティマスさんはともかく、ネプテューヌさんは相変わらず遊んでばっかりですし、ストレスも何もないんですけど……」
背中に羽根を生やした金髪ツインテールの少女、妖精のようなサイズで開いた本に乗って宙に浮かぶプラネテューヌの教祖イストワールは深く、そりゃもう深ぁく息を吐く。
そんな苦労人な教祖に、ネプギアたちは揃って苦笑する。
世は並べて事も無し。
ゲイムギョウ界は、今日も平和であった。
しかし、この平和に馴染めぬ者たちも確実に存在した……。
* * *
同じころ、ゲイムギョウ界某所の空を一隻の宇宙船が飛んでいた。
余計な飾りがなくゴツゴツとした無骨な外観のこの船は、犯罪者をサイバトロンに連行するための護送船だった。
ブリッジでこの船を操作しているのは、たった一人のトランスフォーマーだ。
人間に近いシルエットで、背中に配置された回転灯と肩のタイヤ、胸のバンパーとヘッドライドに、上腕部の白い部分のPOLICEの文字がパトカーから変形することを如実に語っている。
四つの眼が有り内側に並んだ物は赤く、外側の物は青いことが余計にパトカーの回転灯を想起させた。
そのトランスフォーマー、ディセプティコンのバリケードは、皮肉っぽい表情を浮かべながらも一応は真面目に職務を全うしていた。
この船で護送しているのは、いずれも元はディセプティコン軍団に所属していた者ばかりだ。
ニトロゼウス。
こいつは軍属崩れのゴロツキだ。
科学参謀に似た単眼のディセプティコンは、知能までは似なかったらしく相棒と共に器物破損や傷害、恐喝に窃盗とチンケな悪事を重ねて遂に御用となった。
航空参謀には及ばないまでも高い飛行能力を持ち、情報参謀には及ばないまでも優秀なハッカーだったというのに、残念なことだ。
モホーク。
ニトロゼウスの相棒で、同じくゴロツキ。
人間大のこいつは元々メガトロンへの忠誠が篤かったはずだが、それでも悪事を繰り返していた。
ドレッドボット。
ゲイムギョウ界の四つの国を股に掛け、計九か所で銀行強盗を働いた。
犯行はゲーム感覚で行われ、反省の色なし。
最後にプラネテューヌの銀行を襲ったところでついに逮捕された。
バーサーカー。
かつては恐れを知らぬ戦士として軍団内でも一目置かれていた。
しかしその有り余る暴力衝動を抑えられず、ついにプラネテューヌでの祭りを襲撃。大量殺人を行おうとした。
……こいつにとって不幸で、祭りの参加者にとって幸運だったのは、その場に女神とその相棒のオートボットが勢揃いしていたことだろう。
当然、殺戮は未遂に終わった。
オンスロート。
元は戦術家として名を馳せていたが、こいつは他に比べても罪が重い。
というのも、メガトロンへの反乱を企てたのだ。
しかし、その際に幼体の育成施設を襲撃するという大悪手を打ってしまい、破壊大帝の極限の怒りを買った。
幸いにして幼体に被害は無かったものの、怒り狂うメガトロンとその妻によって反乱はアッと言う間に瓦解。
ゲイムギョウ界にまで逃走してきた所を捕らえられ今に至る。
……囚人たちに共通するのは、この平和な世の中に馴染めないということだ。
多くのディセプティコンは今の世で問題なく生活しているが、中には彼らのような者もいる。
では自分は?とバリケードは自問する。
自分だってかつては平和を築くために戦う側にいた。
今の世界を壊すつもりも全くない。
それでも、たまらなく退屈に思える時がある。
何か、何か刺激が欲しい。
「……馬鹿馬鹿しい」
皮肉っぽく呟いたバリケードは、この退屈な任務を続行するのだった。
同時刻、プラネテューヌ国内、某所。
何処か暗い地下室のような場所。
明かりになる物はいくつかの燭台のみで薄暗いが、部屋の中には柱のような機械装置が円陣を描くように何本か立てられているのが分かる。
柱は不思議な金属で構成され、異界の文字……古代サイバトロン語が刻まれていた。
「ついに……ついに、この時が来た!」
その前に、一人の女性が立っていた。
キツめの容貌で黒い衣装に黒い中折れ帽子、薄紫の肌と尖った耳と言う魔女のような姿の女性だ。
「この時のために、私は長い時間を過ごしてきた……奴らトランスフォーマーの技術を盗み、独自に改良を重ね、ついに完成させた……!」
両腕を大きく広げ達成感に浸っていた女性だが、やがてスッと静かな表情になり、その姿が陽炎のように揺らぐ。
揺らぎが収まると、黒衣の女性の姿は魔女めいた物から、銀色の髪を腰まで伸ばした強い意思を感じさせる女性へと変わっていた。
「今、世界というゲイムのルールが変わる!」
聞く者がなくとも自分を鼓舞するように高らかに叫び、手に呼び出した杖を振るい装置を起動させた。
機械音と共に柱状装置が光り輝き、円陣の内側にエネルギーが渦巻いていく。
やがてエネルギーが最高潮に達すると、女性は意を決しそちらへ向かって歩き出す。
「待っていてくれ。……うずめ」
そして円陣の中へと飛び込むと、女性の姿が煙のように掻き消えた。
しかし、それでは終わらなかった。
女性が消えた後もエネルギーは残り、天井に向かってまるで光の柱のように伸び始めた。
溢れるエネルギーは石造りの天井を容易く貫き、空に向かって伸びていく。
そして真上を航行していた護送船を飲み込んだのだった……。
初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
投稿参謀です。
バンブルビーの公開が決まりましたし、メガトロン・オリジンの翻訳版が発売されましたし、実写TFシリーズが実質的に打ち切りらしいですし、何よりTF愛がまだまだ尽きないので、ヒャア! 我慢できねえ!!
ってことで新連載を開始しました。
生活スタイルが変わりましたのでどれくらいの間隔で更新できるか未知数ですが、お付き合いいただけましたら幸いです。