新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED   作:投稿参謀

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第6話 サム・ウィトウィッキー

 サミュエル・ウィトウィッキーは転生者だ。

 少なくとも、本人はそう思っている。

 ことの起こりは高校生時代のある日、父親に中古車ショップで古いカマロを買ってもらったあの日に遡る。

 

 まあ実際にはもっと前から物語は始まっていたのだが……それは置いておく。

 

 重要なのは、そのカマロが実は異星からきた金属生命体の軍隊の一員で、大きなロボットに変形できたことだ。

 いや正確にはロボットがカマロに変形していたのだが。

 その日以来サミュエルことサムの人生は彼らオートボットと共にあった。

 

 親友になったカマロと共にいくつもの戦場を潜り抜けた。

 戦うのはもっぱらオートボットたちで、サムは走ってばっかりだったが。

 

 最初のオールスパークを巡る戦い。

 リーダーのマトリクスの探索とエジプトでの戦い。

 月の裏側に隠された秘密とシカゴの惨劇。

 

 いつしかサムにとってオートボットたちは大切な友人たちになっていた。

 だからこそ、『墓場の風』なる集団が恥知らずにも彼らを狩り立て始めた時、それに抵抗した。

 

 銃弾一発。

 

 それでサムの人生は終わった。

 親友のカマロ……オートボットのバンブルビーの叫ぶ声が聞こえた。

 

 彼らに謝りたかった。

 

 何度も何度も彼らは自分たちを助けてくれたのに。

 傷付きながら、多くの仲間を失いながら、それでも戦ってくれたのに。

 

 自分は彼らを助けることが出来なかった。

 それが何より悲しくて悔しかった……。

 

 

 

 

 

 こうして一回目の人生を終えたサミュエル・ウィトウィッキーだが、生まれ変わってもやっぱりサミュエル・ウィトウィッキーだった。

 

 前と変わらず父はロン・ウィトウィッキー、母はジュディ・ウィトウィッキー。愛犬はモージョ。

 違うのはウチがお金持ちになっていたことだ。

 

 一等地に建った立派な屋敷に、車はロールスロイス。執事までいる。

 まあ肝心の家族の方は相変わらずで、父親は庭いじり命だし母親は酔うと下ネタを連発してきたが。

 

 屋敷に飾られた曾曾祖父、アーチボルト・ウィトウィッキーの肖像画を見ながら父が説明してくれた所によると、曾曾祖父が北極探検を成功させたことで名誉を得た我が家は、上流階級の仲間入りを果たしたらしい。

 

 5歳の時に、唐突に前世について思い出したサムは、最初こそ混乱したもののこれを幸運だと捉えて自らを鍛えはじめた。

 スポーツにせよ勉強にせよ、劣等生ぎみだった前と違って全力で打ち込み成功させた。

 

 これは自分がハッピーな人生を送るためではない。

 いつか来るオートボットとの出会いに備えて、少しでも彼らの力となるためだった。

 そして高校生活のある日、父が車を買ってくれることになった。

 

 余裕のオールA評価に気を良くして本当はポルシェだのポンティアックだの高級車を買い与えたいらしかった父をなんとか説得し、中古店に行くことができた……前とあべこべである。

 

 しかしそこに、古びたカマロは無かった。

 

 パニックを起こし半狂乱になって詰め寄るサムを、中古ショップのオーナーや父親はどういう風に見たのだろうか?

 

 気付くべきだった。

 アーチボルト・ウィトウィッキー船長が北極探検を成功させたということは、彼は旅の途中で氷漬けのメガトロンと遭遇して視力と正気を失うことがなかったということだ。

 

 それからは彼らを探す日々が始まった。

 心当たりのある場所を徹底的に調べ、フーバーダムの秘密施設に潜り込もうとし、スミソニアン航空博物館のブラックバードに声をかけ、エジプトのピラミッドを調べ、アポロ計画の要人に会うことも出来た。

 

 結果、分かったのはこの世界にトランスフォーマーたちは影も形も存在しないということだけだった。

 

 どうやら人間は氷漬けの破壊大帝がいなくてもコンピューターや飛行機を作れるぐらいには賢く、宇宙船を調べるためでなくとも月に行くことが出来たらしい。

 

 絶望し、失意のどん底に落とされたサムは両親に説得され留年の末にプリンストン大学に進学した。

 そこで彼は奇妙なことに気が付いた。

 頭の中に、知識があるのだ。知りえるはずのない知識が。それがトランスフォーマーたちの科学技術であることに、そしてかつてそこにあったオールスパークに由来することに気付くのに時間はかからなかった。

 

 しかし()()()()の財産だ。自分がみだりに利用していい物ではない。

 

 そう考えていたのだが、周囲に……主に両親とか大学の教師とかに……自分の才能を生かすべきだとしつこく言われ、ついに決意した。

 

 もしも……もしもいつの日かオートボットがやって来た時に、彼らを助けるためには財力はあった方がいいのは確かだ。

 父の助けを借りて設立した会社には、目印になるようにと彼らの母星サイバトロンの名を付けた。

 主な製品は、災害や事故現場での救助作業用ロボットだ。サムのロボットたちは世界中で活躍している。

 他にも自動車のコンピューター制御システムを発売したが、これは巷で言われるような人の仕事を奪う物ではなく、あくまで運転手をサポートする物だった。

 軍事産業には、断固として参入しなかった。オートボットの力を、人を傷つけるために使いたくなかったからだ。

 

 今やサムはビル・ゲイツやスティーブ・ジョブスに並ぶ科学の革命家だった。

 KSI社の社長、ジョシュア・ジョイスなどは、サムのことを自分に匹敵する天才として認め、強くライバル視しているほどだ。

 

 しかし、サムの中では達成感よりも、罪悪感の方が遥かに大きかった。

 これらの発明も、それを使って得た物も、あくまで借り物であることをサムは強く自覚し、驕らないように自分を律してきた。

 

 そして、今……。

 

  *  *  *

 

「メガトロンが結婚んんんんッ!? それに子供までいるって!?」

 

 そして今、サム・ウィトウィッキーは、ケイドのプレハブ小屋でネプテューヌなる女性らから話を聞いて仰天していた。

 彼らの世界でも、トランスフォーマーたちは変わらず戦い続けていたが、色々あって和解したらしい。

 

「本当だって! はい、これ写真!」

 

 紫の髪が美しい、童顔ながらも実に女性的な体つきをパーカー一枚という際どい衣装で包んだネプテューヌがスマートフォンを差し出す。

 画面には、自分が知るのとは違う姿だが面影を感じさせる灰銀色のディセプティコンの肩に、青い髪を長く伸ばし何故か角のような飾りを着けた女性が乗って、幸せそうに笑んでいる写真が映っていた。

 メガトロンらしきトランスフォーマーは何処か照れているのを隠しているかのような仏頂面で、小さな金属生命体の雛を四匹、手に抱いている。

 

「まじでえええええ! っていうか、なにトランスフォーマーと人間って子供作れるの!?」

「だから人間じゃなくて女神なんだけど……そこはまあ、いろいろと裏技的な?」

「いや、ええ……ええ? ごめん、衝撃的過ぎて飲み込めない」

「まあこの作品の作者の暴走の結果だからね」

 

 ネプテューヌたちから聞く話は驚くべきことばかりだった。

 彼女たちは人間ではなく、人間の姿をした別種の生命体であるという。

 確かに全員やや幼い感じではあるもののモデルや女優顔負けの並外れた美貌の持ち主ではあるが、こうしている分には人間と見分けが付かない。

 他にも女の子と疑似親子やってるらしいアイアンハイドやら、小さい少女を守るために戦った航空参謀やら……だが、何よりもサムの度肝を抜いたのは……。

 

「え゛え゛え゛え゛え゛ッ! 君ら恋人なの!?」

「ふふん、その通り! わたしとオプっちは、結婚を前提にお付き合いしてる恋人同士なのだ!! みんな下がるんだ、オプティマス司令官が(末永く)爆発する!!」

 

 揺れる胸を張るネプテューヌ。

 その後ろでは、屈んで小屋を覗き込んでいるオプティマスが照れたような笑みを浮かべている。

 こんなオプティマスの顔は『前』では見たことがなかった。

 サムの知るオートボット総司令官は、いつも重々しく厳しい空気を纏い、自己犠牲的で、そして戦いとなれば敵に対しては一切の情け容赦がなかった。

 あまりに重い責任と苦悩が、彼をそうさせていたからだ。

 

「え、マジ? トランスフォーマーと女神って、恋愛できんの? ……ホントに?」

「ホント、ホント。人間とも、ありだよ。パワーグライドって、奴なんか、オートボットと人間相手に、二股かけて、『お前たちが俺の翼だ!』とか、のたまってたし」

 

 オプティマスのさらに後ろでは『前』では見たことがないホット・ロッドなるオートボットが死ぬほどビックリした顔でバンブルビーと話していた。

 っていうか、どうなったそのパワーグライドって奴。二股男の末路なんて碌なもんじゃないぞ。

 

「そっか……そっかー」

「どうしたの……あ、はは~ん」

 

 何やら凄い衝撃を受けているらしいホット・ロッドに、最初こそバンブルビーは心配げだったが、やがてうずめの方をチラチラ見ていることに気付き、ニヤニヤと悪戯っぽい表情になる。

 黄色いオートボットは、『前』と違って二度も声を失わずに済んだらしい。彼の雰囲気もまた、前世よりも大人しめだ。

 

「ふっふっふー。わたしとオプっちは前世から愛し合う仲なんだよ!」

「え……なに、君その所謂電波系的な……?」

「違うから! マジだから!! こんな設定捻りだした作者のせいだから! わたしは悪くねえ!」

 

 変なことを言い出すネプテューヌだが、サムだって似たようなものである。

 改めて、サムは手元にあるネプテューヌのスマートフォンに目を落とす。

 何せ技術を売りにしている企業のトップ。これがこの地球のいかなる国、いかなる企業の物でもないことが分かる。この地球上に存在しない技術が使われていることも。

 違う世界から来たという、ともすれば支離滅裂な彼女たちの話もこれを見せられて信じることが出来た。

 

 いや、何よりも、サムは彼女たちの話を信じたかったのだ。

 

 スマートフォンには、オートボットたちが映っていた。

 

 ジャズがいた。金髪の美女を腕に乗せ、気障なポーズを取っていた。

 

 アイアンハイドがいた。両腕で力こぶを作るようなポーズを取り、右に黒い髪をツインテールにした少女を、左にクロミアを乗せている。

 

 ホイルジャックがいた。バンブルビーに似た姿の赤いトランスフォーマーの肩に手を置き、微笑んでいた。

 

 ラチェットがいた。

 ミラージュがいた。

 サイドスワイプがいた。

 スキッズとマッドフラップがいた。

 ホィーリーとブレインズがいた。

 ジョルトがいた。

 レッカーズがいた。

 

 戦いの中で死んでいったオートボットたちが、人間たちに狩られていったオートボットたちが、全員無事な姿でそこにいた。

 

 ディセプティコンたちもいる。

 サム自身が止めを刺したスタースクリームも、

 バンブルビーに頭を吹き飛ばされたサウンドウェーブも、

 オプティマスに目玉を毟り取られたショックウェーブも、

 他の欺瞞の民も勢揃いしていた。

 

 皆笑い合い、穏やかな顔をしている。

 

「ははは……」

 

 自然と笑いが漏れた。それから涙も。

 ああ、何と都合の良いことか。

 

 こっちは散々苦労して、多くの物を失っても、幸せな結末には辿り着けなかったというのに。

 

 オートボットとディセプティコンは殺し合うのを止められなかったというのに。

 

 人間たちは、トランスフォーマーたちを利用するだけ利用して、用が済めば捨てたというのに。

 

 自分は彼らを守ることが出来なかった、恩に報いることが出来なかったというのに。

 

 彼女たちの世界は、あまりにも幸福過ぎる。嘘くさい。まるで三文小説だ。

 だから……。

 

「ありがとう。本当に、ありがとう……!」

 

 だから、サムは彼女たちに対し感謝しかなかった。

 厳密には、このオプティマスたちはサムの知る彼らとは別人であると分かっていた。でも、そんなこと関係ない。

 人間はトランスフォーマーを幸せには出来なかった。しかし異世界の女神たちは、見事に彼らを幸せにしてみせた。

 これを感謝せずして、何に感謝すればいいというのだ?

 

 嬉しさと無力感が複雑に混じり合った嗚咽を漏らすサムの肩に、何かを察したらしいネプテューヌはそっと手を置く。

 

「こっちこそ、ありがとう。オプっちたちのことを、そんなに想ってくれて」

 

 その顔は、まさしく女神と呼ぶに相応しい、美しく慈愛に満ちた物だった。

 




あとがきに代えて、キャラ紹介。

サム・ウィトウィッキー
もはや語るまでもないだろう。
実写トランスフォーマーシリーズ三部作の人間側の主人公、オートボットの友人、バンブルビーの相棒、サム・ウィトウィッキーその人である。
厳密には平行世界の同一人物だが、原作におけるサムの記憶……あるいは魂を引き継いでいる。
前世でオールスパークをその身に宿した影響か、トランスフォーマーの科学技術を知識として知っており、そのおかげで発明家、企業家として大成功した。
名家ウィトウィッキー家の御曹司であり、KSI社と並ぶロボット産業の最大手であるサイバトロン・システム社の経営者。メディアに露出も多い有名人。

生まれ変わってなお、オートボットに対する友情は一切、揺るがない。

ちなみに、妻子持ち。
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