新次元ゲイムネプテューヌ THE UNITED 作:投稿参謀
「つまり、暴走事件はあんたたちセクター7の仕業だと?」
「違うな。セクター7の
社長室で対面しながら、サムとシモンズはこの事件について話していた。
アイスコーヒーを飲みながら、セクター7の捜査官は横柄に語る。
「まずは最初からだ。お前さんはセクター7って組織が何のためにあるか知ってるか?」
「……エイリアンについて、調査するためだろう」
シモンズはせせら笑った。
「いいや、違うな。我々が調査しているのは、
「はあ!?」
思わず素っ頓狂な声が出る。
だが、脳裏に浮かんだのはあの紫の髪の女性のことだった。
彼女たちは確かに異世界からやってきたのだ。
「なんか知ってるって面だな。……ま、いい。それは後だ。とにかく、詳細は省くがかなり前からだな、俺たちは異世界って奴の存在を認知していた」
そう言ってシモンズはいくつかの写真を机に広げた。
写真には、遺跡のような場所や、いくつかの機材があったが、ほとんどサムには意味が分からなかった。
「聞いたことないか? バミューダトライアングルで飛行機や船が消えるとか、遺跡から変な機械が出てくるとか……そういうのを調べるうちに、とにかく『異世界があり、そこには知的生命体がいるらしい』ってとこまでは突き止めた」
サムはシモンズの説明を聞くうちに、自分の中で納得した。
おかしいとは思っていたのだ。
トランスフォーマーがいないのに、なぜセクター7が存在するのか。
「問題はそいつらがどんな連中かってことだ。危険はないのか? 仲良くなれるのか? 知能レベルは? ……ああ、言いたいことは分かる。それと車を暴走させることがどう結びつくのかって話だな。ここまでは前置きだ」
聞いてもいないのに、シモンズは本題に入る。
「まあセクター7はそういう組織だったんだが……ここ数年は事情が変わった。CIAの連中が、介入してくるようになった」
「CIA? なんでまた」
「さあてね。お偉方の権力ゲームは分からんが、CIAのアホどもはいつの間にやらセクター7の実権を握っていた。で、連中が始めたのが、このアンゴルモアの研究と運用だ」
シモンズはアンゴルモアなる液体の入ったシリンダーを手の中で弄びながら、忌々し気に顔をしかめる。
よほど、CIAが嫌いらしい。
おそらく組織内で元々のセクター7の面子は冷遇されているのだろう。
「こいつをガソリンスタンドの店員に化けた工作員がガソリンの代わりに給油するんだ。すると、車は変異を起こし、怪物になる。で、情報操作でそれはお前の会社のせいになるって筋書だ」
「なんでそんなことを……だいたい、警察だって気付くだろう」
「連中は警察にも手を回してる。現場の警官はともかく、署長クラスは間違えなく抑えてあるだろうな」
「そこまでして……」
危険な燃料をばらまいて、その罪を一企業に押し付けるなんて、意味が分からない。
「どうにも、CIAのボスはお前のことが嫌いらしい。……あるいは、もっと遠大な計画の一部かもな」
「なぜそれを僕に?」
「言ったろうに。エージェントの勘、ってことにしとけ」
サムは顎に手を当てて思考を回す。
この燃料が原因だとして、どう対策を取るべきか。
警察に言ったとして、敵はCIAだ。世界的企業
「仕方がない。……彼女の力を借りよう」
一人ごちるサムを、シモンズが訝し気に見ていたが、彼女のことを知ったらこんな顔はしていられないだろう。
何せ、彼女はシモンズにとっても因縁深い相手なのだから。
しかし、気になることがある。
「なんで、僕にその情報をリークする気になったんだ?」
「だから言ってるだろう、三回目だぞ! エージェントの……」
「言い方は変えよう。あんたはセクター7への忠誠心に厚い。それが何で情報を漏らす?」
痛い所を突かれたのか、シモンズがムッツリと顔をしかめる。
そもそも可笑しな話だ。この男はセクター7での職務に人生をかけていた。組織内での立場の悪化ぐらいで、組織を裏切るとは思えない。
『前』で色々とクレバーになったのはセクター7が解散したからだ。
やがていくらかの沈黙の後、重い口ぶりで語り始めた。
「何年か前の話だ。俺が働いてたセクター7の施設に、一人の少女が現れた。……実験体としてな。CIAの連中は、その子を人間扱いしてなかった」
その少女とは……おそらく、うずめのことだ。
「毎日毎日、意味の分からん実験だ。全身に電流を流すだの、聞いたこともないような薬を打つだのな。たかがハイティーンの餓鬼にだぞ? ……俺はな、国のため、任務のためならどんなことでもしてきた。だがな、悪魔に魂を売った覚えはない!!」
ギラギラとシモンズの目が燃える。
そこにいたのは、『前』と同じ戦う男だった。
ハッとなって少しだけ気恥ずかし気な顔になったシモンズは、咳払いする。
「とにかく、そんなワケだ。……とくに最近、セクター7もバタバタしててな。なんだか、トランスフォーマーだかモーファーだかってのを探しているらしい。その隙にと……」
シモンズの言葉を、サムは最後まで聞いていなかった。
重要な事実は一つだけだ。
(オートボットが危ない!)
* * *
バンブルビーとホット・ロッドは、競い合うようにして帰り道を走っていた。
「息が、上がってるぜ」
「ぬおおおお! まだまだぁ!」
「君は、コーナリングが、甘い……止まって!」
突然、バンブルビーが急停止した。
慌ててホット・ロッドも止まる。
「おおっと! どうしたんだよ、突然?」
「隠れて」
ロボットモードに戻ってバンブルビーは木の陰に隠れて、ある方向を指差す。
情報員の後ろに回ったホット・ロッドがそちらを見ると、10台ほどの黒塗りのバンが、ケイドのスクラップ場へ向かう道へ入っていくのが見えた。
「あれは……」
「見るからに、怪しいね。……それに」
木に隠れて上を見ると、ヘリコプターが飛んでいた。
軍用のブラックホークだ。
その時、ホット・ロッドの視覚センサーは、ヘリの席から乗り出した黒コートの男の顔を捉えていた。
「あいつは……!」
「知り合い?」
「俺らが捕まってた施設にいた奴だ……!」
それを聞いたバンブルビーはすぐに通信を飛ばす。
「緊急連絡、司令官、こちら、バンブルビー、です」
『こちらオプティマスだ。どうした?』
「実は……」
「おおー、団体のお客様とは珍しい」
折り畳み椅子に腰かけたケイドの前に、スクラップ場に乗り込んできた何台ものバンが停車し中から黒ずくめのがたいの良い男たちが降りてくる。
全員がサングラスをしていて、見るからに怪しい。
さらにヘリコプターが着陸して、一人の男が降りてきた。この男が一団のリーダーらしい。
その男が、ケイドの前に立ち威圧的に問う。
「ここに女の店員がいるはずだ。どこにいる?」
「生憎と娘のテッサなら大学に通うために家を出た。それで、どんなモンが欲しいんだ? 見ての通り品揃えには自信があるけど」
「探せ!」
惚けるケイドだが、男は無感情に周りの人間に指示を飛ばす。
男たちが散らばって、手に持った機材を振ったり、そこらへんのガラクタをひっくり返す。
「おい! そこらへんにあるのは貴重なもんなんだ! あんまり乱暴に……」
「サヴォイ隊長。反応がありました」
「やはりか」
ラテン系な顔立ちの部下からの報告に、サヴォイと呼ばれた男はサングラスを外してケイドを睨む。
目つきから、酷薄さが滲み出ていた。
「我々は国家の機関に属している」
「それで?」
「……貴様の人生を台無しにしてやるくらい、我々には容易いということだ。無論、貴様の家族の人生もな」
家族という単語に、ケイドの顔が厳しくなる。
同時に、こいつは気に食わない奴だと強く思った。
サヴォイの隣の副官らしい男が、少し柔らかい声を出した。
「我々が探している女は、隔離施設から脱走した危険人物だ。少なくとも数件の破壊行為に関わっている。協力すると思って、教えてくれないか?」
「あっそ」
興味なさげを装うケイドに、サヴォイは冷徹な目を向ける。
「もう一度聞くぞ。女は何処にいる」
「さあ? 知ってても、あんたには教えたくないね」
「……そうか」
その瞬間、サヴォイは片手でケイドの胸倉を掴むと地面に引き倒し、もう一方の手で懐から拳銃を取り出してケイドの頭に突き付ける。
「ッ!」
「隊長、何を!?」
「サントス、お前はまだまだ甘い。この手の輩は甘くすると付け上がる」
驚愕する副官ことサントスに対し、サヴォイの声色は何処までも平坦だった。
拘束から抜け出そうとケイドはもがくが、やはり本職の技は如何ともし難い。
「頭をぶち抜かれたくなければ、吐け。あの女……DC02は何処にいる!」
「分かった言うよ! 昨日、出ていってそれっきりだ!」
「いいか三つ数えるぞ。その間に吐かなければ、貴様の頭が吹き飛ぶ」
咄嗟に言った嘘を意に介さず、サヴォイは引き金に指を掛ける。
「1……」
ケイドは声を出さない。
「2……」
ケイドは体を震わすが、それでも声を出さない。
「さ……」
「待て!」
声がした。
ケイドではない。女の声だ。
廃車の間から、ブラッドオレンジの髪の少女が現れた。
「やはりいたか。……またあったな、DC02」
「サヴォイのオッサン、その呼び方は止めろっつっただろ? さあ、ケイドのオッサンを離しな!」
強気な目つきのうずめに、サヴォイは口角を吊り上げる。
たまらずにケイドが叫ぶ。
「だめだ、うずめ! 逃げろ!!」
「お前は黙っていろ。……お仲間は何処にいった? あの、化け物どもは」
「あいつらは、化け物じゃねえ!」
自分の言葉に怒るうずめに、サヴォイは冷笑を大きくする。
怒りのあまり髪の毛が逆立つうずめに、周りの黒服たちがアサルトライフルを向ける。
「化け物、だ。人面魚だの、喋る機械だのはな。……それは貴様も同じか。人の姿をした怪物め」
この時、少し離れたところでは飛び出そうとするホット・ロッドを、バンブルビーが抑えていた。
ついでにネプテューヌをネプギアが抑えていた。
「俺なら、ここにいるぞ。ミスター・サヴォイ」
そういって、フヨフヨと海男が現れた。
気の抜ける姿だが、黒服たちはあからさまに警戒を強める。
サヴォイとサントスも、顔を引き締める。
「でたな、このクリーチャーめ……!」
「おいおい、ひどい言い草だな」
「貴様のせいで、どれだけ被害が出たか……!」
「俺たちの知能を低く見た、君たちが悪いのだよ」
サントスは銃口を向けるが、海男は真顔のまま余裕がある。
何をしたのだろうか、この人面魚。
「現に、今も我々のことを甘く見ているしね」
「ふん、どうだか……!?」
その瞬間、物陰からメルセデスAMG・GTやシボレー・コルベット、ウニモグの軍用トラックが飛び出してきて次々とロボットに変形していく。
「坊やたち、両手を挙げて膝を突きな!」
「今宵の……もとい、今日のカタナは血に飢えておるぞ!!」
「さあ、さっさと撃ち合いを始めようぜ!」
武器を向けてくるオートボットたちに、サヴォイたちは混乱していた。
彼らはホット・ロッドたち以外のオートボットの存在を知らなかったのだ。
「なんだこいつらは……」
「とりゃあああ!!」
ケイドを拘束する手が緩んだ瞬間、物陰から現れたネプテューヌがサヴォイの顔に飛び蹴りを叩き込む。
「ぐわああああ!?」
「隊長!?」
倒れるサヴォイにサントスが慌てて駆け寄る。
ネプテューヌは華麗に着地して、ケイドを助け起こす。
「ケイド、大丈夫?」
「あ、ああ。ありがとう、助かったよ」
キャノピーとスクィークスも現れ、うずめを守れる位置に陣取る。
サヴォイは思い切り蹴られた顔面を撫でながら立ち上がった。
「ぐおお……貴様らぁ……!」
「お、やろうってのかい?」
ニヤリと笑ってハウンドは三連ガトリングを回転させ始めるが、その肩に背後からオプティマスが手を置いた。
「よさないか、ハウンド。……私はオプティマス・プライム。何者かは知らないが、銃で人を脅すものではない」
「まあ、こっちも脅してるけど、先にやったのはそっちだからね! さあ、そっちも名乗りなよ! 実際、アイサツは大事! 古事記にも書いてある!」
「どこの古事記だよ、それ……」
はしゃぐネプテューヌにケイドが力なくツッコミを入れる。
日本については詳しくないが、何か猛烈に間違っている気がする。
サントスが銃を向けながらも発言した。
「わ、我々はセクター7の者だ。あ、生憎と君たちと直接話す許可は得ていないんだ。申し訳ないが……」
「黙ってろ、サントス。……貴様らが何かは知らんが、我々の任務の邪魔をするなら容赦はせん」
「おいおい、このおチビちゃん、随分勇敢だな」
「状況が分かっていない、言わばHIPのYOUだな」
凄むサヴォイだが、クロスヘアーズとドリフトは小馬鹿にした調子だ。
「黙れ! 我々は国家の意向を受けて行動している。この場を切り抜けたとしてもいずれは……狩ってやる」
それを聞いて、オプティマスは難しい顔をするが、ネプテューヌは強気な表情を浮かべた。
「国家が怖くて女神は出来ないよ! 住んでる人は(支持率的な意味で)怖いけど!」
「女神、だと……?」
女神と聞いて、サヴォイは訝し気な顔になる。
その反応からオプティマスは咄嗟にこれ以上、会話する必要はないと考える。
「とにかく、この場は退いてはくれないか。もし戦うとなれば……多くの血が流れるだろう」
背中から愛用のレーザーライフルを抜き、低い声を出すオプティマス。
サントスや黒服たちがチラチラと自分たちの隊長を見る。彼らは、勝ち目がないことを理解していた。
サヴォイは額に青筋を立てているが、それでも冷静さを完全には失わずに考え込む。
やがて、不機嫌極まりないという顔で周囲に指示を飛ばす。
「撤収! ……今日の所は見逃してやる。だが、覚えておくことだな。我々からは逃げられんぞ」
「へいへい」
恫喝してくるサヴォイに、クロスヘアーズがシッシッとばかりに手を扇ぐ。
怒りを内燃させながらも、サヴォイたちはその場を後にするのだった。
* * *
「そうか、そんなことが……」
しばらくして、大急ぎでスクラップ場までやってきたサムは、事の顛末を聞いてホッと息を吐いた。
しかし、すぐに顔を引き締める。
「CIAの連中が絡んできたとなると、ここも危険だ。移動したほうがいいかもしれない」
「おいおい、何処に行けってんだ?」
「……僕が場所を用意する。しばらくそこに潜んでいてほしい」
ケイドがすぐさま文句を言うが、サムは腕を組んで冷静に言うと、頭を下げた。
「申し訳ありません、ケイド。巻き込んでしまって……」
「はあ、まったくだね! ……でも、まあいいさ」
息を吐いたケイドは、ヤレヤレと首を振る。
うずめたちを匿った日から、いつかこうなるような気はしていた。
そこでオプティマスの傍に立っていたネプテューヌが、明るい声を出した。
「こうなったらさ、みんなでゲイムギョウ界においでよ!」
「いいかもしれないな。さすがに異なる世界にまでは追ってこられないだろう」
顎に手を当ててオプティマスも言う。
CIAの権力がいかほどの物であれ、それはあくまで地球上の話だ。
しかしそこでクロスヘアーズが口を挟んだ。
「とは言うけどな。そもそも俺たちもどうやって帰りゃあいいんだか……」
「みなさーん!」
その時、ネプギアの声がした。
プレハブ小屋の方で、何か作業に没頭していたようだ。
一同がそちらを向くと、ネプギアは笑顔で手を振っていた。
「ゲイムギョウ界と連絡が取れましたよー!」
『そうですか、そんなことが……』
ネプギアがガラクタから組み上げたという次元間通信機のモニターには、ハニーブロンドの髪を縦巻きロールにして背中に蝶のような羽根を生やした少女が、宙に浮いた本の上に座っている姿が映し出されていた。
その前に立つネプテューヌとネプギアの後ろでは、ケイドがジャンクからワケの分からない装置を作ったネプギアの技術力に戦慄していた。
『まったく、揃って何処に消えたのかと心配していれば……メガトロンさんなんか、『どうせまたぞろ厄介事に巻き込まれたのだろう。自分たちで何とかするだろうからホッとけ』とか言い出しましたし……』
深く溜息を吐く妖精のような姿の少女、プラネテューヌ教祖イストワールに、ネプテューヌは苦笑する。
「ごめんごめんいーすん、心配かけて!」
『いえ、ネプテューヌさんたちのことは大して心配していませんでしたよ? ただ、溜まりゆくお仕事が心配なだけです』
「あー……わたし、ずっとこっちに居ようかなー……」
『ネプテューヌさん?』
仕事と言われて急に冷や汗をかきだすネプテューヌと怒りを内在した笑顔になるイストワールに、今度は周りが苦笑いした。
これが、この二人のいつものやり取りだからだ。
「それでイストワール。我々をそちらに転送できるだろうか?」
『そちらの座標は確認できましたので、お時間をいただければスペースブリッジを繋げることが出来そうです……具体的にはみっかかかります』
「きました! いーすんの持ちネタ!」
何故だかはしゃぐネプテューヌ。
笑顔になるオプティマスだが、ふと気になった。
「そういえば、メガトロンたちはどうしているだろうか?」
『メガトロンさんとレイさんなら、サイバトロン星の方に帰られています。……その、オプティマスさんの仕事の穴埋めに』
「……分かった。何か埋め合わせをしなければな」
頭痛を抑えるように、額に指を当てるオプティマス。
同じ仕事が溜まっているという話題でもネプテューヌとは反応が違うことに、サムやケイドは何となく二人の性格の差を感じていた。
「あとは犯罪者どもを捕まえれば、一件落着か」
「それだってスペースブリッジが使えりゃ、応援を呼べるしな」
「やれやれ、これで帰れるってワケだ」
ドリフト、ハウンド、クロスヘアーズが口々に安堵を漏らす。
彼らとしても、そろそろゲイムギョウ界が恋しくなってきたらしい。
うずめは快活に笑う。
「よかったな、ねぷっちにぎあっち!」
「うん、ありがとう! あ、そうだ。紹介するね! いーすん、この子はこっちでお世話になったうずめだよ! うずめ、こっちはいーすん!」
「おう、よろしくな……?」
『いえいえ、こちらこそ……?』
画面越しに挨拶する二人だが、目が合った瞬間、互いに怪訝そうな顔になった。
まるで、記憶の底を浚おうとしているかのような顔だった。
「…………なあ、俺たち前に会ったことないか?」
『え、ええ。……何故か、そんな気がします。初めて会ったはずなのに……』
二人して首を傾げるが、ネプテューヌは空気を読まない。
読めないではなく、読まない。
「お! だめだよ、うずめ! いくらいーすんが可愛いからって、そんなベタな口説き方しちゃー!」
「く、口説……! ち、ちげえし! そんなんじゃなくて本当に……!」
顔を赤くして必死に否定するうずめ。
本当に、こういうネタには弱いらしい。
ケラケラと笑うネプテューヌだが、不意に少しだけ真面目な顔になった。
「それでさ、一緒にゲイムギョウ界に、来る?」
「…………」
「うずめ、俺はそれも一つの選択肢だと思う。記憶に未練がないのなら、向こうの方が安全だ」
躊躇う様子のうずめに、海男が優しく言う。
確かに、セクター7だのCIAだのに追われる心配はないし、すでにトランスフォーマーを受け入れている世界だ。 キャノピーたちも穏やかに暮らせるだろう。
しかし。
「少し、考えさせてくれないか?」
「え?」
意外な答えに、ネプテューヌのみならず海男やケイドも目を見開く。
しかし、うずめは明るい笑みを浮かべた。
「俺はさ、結構好きなんだ。この世界が……」
「うずめ……」
サムは驚いていた。
好きと、言えるのかこの世界を。
ワケの分からない連中に実験体にされ、追い立てられ、人を助けても感謝されなくても!
そこに危うさを感じるのは、決して間違いではないはずだ。
難しい顔をして悩むサム。
一方、バンブルビーは後ろに立つホット・ロッドに声をかけた。
「ホット・ロッド。君は、どう思う? ……あれ?」
しかしそこに、黒とオレンジのオートボットの姿はなかった。
あいつの姿を見た瞬間から、胸の内に自分でも恐ろしくなるほどの怒りが燃え滾るを感じた。
あいつは、うずめを追い詰め、人間たちにうずめが危険な存在だと吹き込み、時に銃で撃つことさえした。
その上、奴らは今度はケイドを撃とうとした。あんないい奴を……!
「俺はさ、結構好きなんだ。この世界が……」
その言葉を聞いた瞬間、心の中の何かが爆発した。
不公平じゃないか!
うずめは憎まないのに、奴らは
俺は、俺の大切な物を傷つけた奴を許さない。
思い知らせてやる……!
居ても立っても居られらなくなってスクラップ場を飛び出した俺は、奴らの後を追った。
奴らの痕跡を追うのはあまりに簡単だった。
……簡単、
「……ぐううう!!」
トランスフォーマーの動きを止める特殊なボルトを四方八方から撃たれ、ホット・ロッドは地に伏せる。
その顔を、サヴォイが踏み付けた。
「馬鹿な奴だ。俺たちは貴様たちを捕らえるために来たんだぞ。当然、貴様ら機械の化け物を無力化する手段も用意している」
冷笑を浮かべて得意げに語るサヴォイをギラギラとした目で睨むホット・ロッドだが、サヴォイは気にせず続ける。
「確かに数が増えていたのは想定外だった。さっきの連中全員を相手にするのは不可能だが……お前一人なら、こんな物だ」
「くっそおお!」
「いずれは、他の連中も捕えて、実験室に送り返してやる。あの女もな。……化け物どもには、それがお似合いだ」
吠えるホット・ロッドに、サヴォイは残酷な笑みを向ける。
あるいは、自分よりも大きな存在を足蹴にする快感に酔っているのかもしれない。
やがて動けぬホット・ロッドの姿に満足したのか、足をどけて周囲に指示を飛ばす。
「移送の準備をしろ。まずは近くの基地に運び、そこから本部に空輸する」
「了解。しかし隊長、よろしいのですか? あそこは米軍の基地ですが……」
「構わん。軍など、すでに恐れるに足らん」
苦々しい顔のサントスの疑問を一蹴し、サヴォイはヘリに乗り込む。
無理矢理トラックの荷台に乗せられながらも、ホット・ロッドは憎しみに満ちた目をその背に向けた。
「俺の仲間に手を出したら、殺す! 必ず殺してやる……!」
「ふん、それでいい。貴様ら化け物は俺たちを憎んでいればいい。友情だの親愛だのを寄せられる方が気色が悪い」
それでもサヴォイは冷笑を最後まで崩さず、サントスは苦々しい顔をしつつ上官の後に続くのだった。
サヴォイたちのやや後方、一台のパトカーが木々の合間から一部始終を観察していた。
フォード・マスタングをパトカー仕様にした物で、フロントに赤と青のランプがある。
何とも力強いシルエットのそのパトカーはサヴォイ隊に気付かれることなく、様々なセンサー類を使って情報を集めていた。
やがてホット・ロッドをトラックに乗せた一団が去ると、パトカーは音もなく走り出した。
木々の合間の影に消えていくパトカーの車体後部には、こう書かれていた。
『To punish and enslave(罪人を罰し、服従させる)』
後書きに代えて、キャラ紹介
ジェームズ・サヴォイ
墓場の風の、話が通じない方。
元CIAの工作員。
原作ではTFを狩る組織『墓場の風』の隊長。
こちらではセクター7の戦闘部隊の隊長を務める。
目的のためなら手段を選ばない冷血漢。
一応、お姉さんが存命なので、心からTFを憎んでいるワケではないが、それでも『化け物』として見下している。
サントス
墓場の風の、まだ話が分かる方。
原作ではTRFの隊長。
こちらではサヴォイの副官。
任務に忠実だが、根は善人。故に色々と苦労人。
だからこそ、ある意味で質が悪いとも言えるが。
プラネテューヌ教祖イストワール
女神を補佐する教会のトップ。
ネプテューヌたちに振り回される苦労人の中の苦労人。彼女がいないとプラネテューヌは回らない。
昔のプラネテューヌの女神が作った人工生命体で、妖精のような幼い容姿に反し長い時間を生きており、歴代の女神を見守ってきた。
なんだかんだでネプテューヌやネプギアを娘のように思っている。
スペックはそんなに高くないらしく、物事に『みっか』かかるのがお約束。